トヨタとBMWがスポーツカー開発などの協業に関する正式契約を締結

　トヨタ自動車と独BMWグループは1月24日、トヨタ自動車本社で共同記者会見を実施。両社が進めている協業に関する正式契約を締結したと発表した。この模様は東京本社でも生中継された。

BMWグループのヘルベルト・ディース上級副社長

トヨタ自動車の内山田竹志取締役副会長

　両社は2011年12月に次世代環境車と環境技術における中長期的な協力関係を構築すると合意。2012年6月には、「FC（燃料電池）システムの共同開発」「スポーツカーの共同開発」「電動化に関する協業」「軽量化技術の共同研究開発」の4テーマで協力していくという覚書を締結しており、今回はこの中から「電動化に関する協業」以外の3点について正式契約が行われることになった。

　また、この3点に加え、2012年3月に開始した「次世代リチウムイオンバッテリー技術」に関する共同研究について、研究の第2フェーズとしてポスト リチウムイオン電池である「リチウム空気電池技術」の共同研究を開始すると正式契約を締結したことも併せて発表された。

　ちなみに、「電動化に関する協業」については今回は間に合わなかったものの、両社ともに非常に大切な協業だと考えており、できる限り早い段階で内容をまとめて協業プロジェクトの1つしたいとコメントしている。

●主な契約内容
1：FCシステム
・BMWとトヨタは、ゼロエミッション社会の実現に向け、FC技術の普及を共通の目標とし、中長期的な協力を進めていく。
・2020年を目標に、両社の技術を持ち寄り、FC車の普及拡大を目指し、FCスタック・システムをはじめ、水素タンク・モーター・バッテリーなど、FC車の基本システム全般の共同開発を行う。
・また、FC車の普及に必要な、水素インフラの整備や規格・基準の策定に向け協力していく。

2：スポーツカー
・両社は、ミッドサイズのスポーツカーに搭載する共通のプラットフォームのコンセプトを決定するためのフィージビリティ・スタディを開始することで合意。お客様によりご満足いただけるよう、両社の技術と知見を高いレベルで融合していく。
同フィージビリティ・スタディは、本年中に完了する予定。その後、両社は、スポーツカーの共同開発に向けた将来の更なる協力について検討していく。

3：軽量化技術
・強化樹脂など先端材料を活用したボデー構造の軽量化技術の共同開発を行っていく。成果は共同開発するスポーツカーのプラットフォームや両社の他の車種にも織り込む予定。
4：ポストリチウムイオンバッテリー技術
・エネルギー密度や燃費の面で、現在のリチウム電池の性能を大幅に超えるリチウム空気電池を共同研究する。

　会見でBMWグループのヘルベルト・ディース上級副社長は、「私たちBMWグループは、モビリティの新時代に踏み出そうとしていると確信しています。この重要な変化を生み出しているのは、一連の世界的なネガトレンド。例えば、都市化の進展や天然資源の希少化、規制の増加、ユーザー嗜好の変化などです。しかし、こうしたネガトレンドは自動車産業にとって大きなチャンスでもあります。トヨタとBMWグループはこのユニークなチャンスをつかみ、モビリティの将来に向けて業界をリードしていくつもりです。本日調印した正式契約は、まさにそのビジョンに一歩近づくことになります」と語った。

　また、トヨタ自動車の内山田竹志取締役副会長は、「本日締結した4つのプロジェクトは、両社にとって、そして私個人にとってもじつにわくわくする内容となっています。それは、この4つが現在に自動車産業が抱える問題に真正面から取り組む内容で、自動車の未来を約束するプロジェクトだからです。先端技術とクラフトマンシップに長けたドイツと日本。そのなかで培われたBMWとトヨタの協業にぜひご期待ください」とコメント。

　さらに、会見終盤に行われた質疑応答で内山田取締役副会長は、多数の自動車メーカーがあるなかで、この一連の協業を進めることになった理由やそれぞれのメリットについての質問に、「今回の協業は単純なOEM供給ではなく、いっしょに研究をする開発まで伴った内容です。それにあたっては大事な2つの要素があり、1つは双方の強みを持ち寄って新しいステージに突入できること、そして開発期間は長いので、長期に渡って信頼できるパートナーであるかという2点です。この1年で我々はともに作業を進めてきましたが、両方についてBMWは十分以上に満たしてくれると考えています。実際に作業に関わったメンバーやエンジニアなどが、BMWとの共同作業を楽しみながら進めており、私もこれから生まれてくる新しい成果に期待しています」と回答した。