アルファ ロメオ、“アンチ・ジャーマン”の「ジュリエッタ」発表会
ドイツ車席巻の輸入車Cセグメントに“エモーショナル”で風穴を

新型ジュリエッタとポンタス社長

2012年1月5日開催



 フィアット グループ オートモービルズ ジャパンは1月5日、都内で新型「ジュリエッタ」の発表会を開催した。ジュリエッタの詳細なスペック等は関連記事を参照されたい。

会場に展示された3台のジュリエッタ。左から「スプリント」「コンペティツィオーネ」「クアドリフォリオ ヴェルデ」

ドイツ勢が90%を占める市場に挑戦
 1954年の初代、1977年の2代目に続く3代目ジュリエッタは、「147」の後継車となる欧州Cセグメント車だ。

 フォルクスワーゲン「ゴルフ」を筆頭に多数のコンテンダーが犇めき合う輸入Cセグメント。年間4万台で安定している市場だが、ドイツの主要3モデルが2002年の約50%から、最近では約90%のシェアを占めるようになってきたと言う。

 そんな激戦区に投入されるジュリエッタの武器は「“ジュリエッタ”の認知度」と「“アルファ ロメオ”というブランドへの強い期待感」と、フィアット グループ オートモービルズ ジャパンの海谷博樹プロダクトマネージャーは言う。

 同社の調査では、新型ジュリエッタを「購入したい/知っている」人が34%、ジュリエッタの「名前を知っている」人が41.6%と、ジュリエッタの認知度は低くない。そんなジュリエッタに期待されていることには、走りやスタイリングといったアルファ ロメオらしいポイントの他に、「お洒落」「洗練」「高級感」というキーワードが見られると言う。

 海谷プロダクトマネージャーはこうした結果を「ドイツ系ブランドでは、絶対性能や燃費、スペース効率やユーティリティなど“ラショナル”(合理的)な理由が主たる購入理由になるのに対し、ジュリエッタはエモーショナルかつファッション的な要素が非常に強く、極めて特徴的」と言う。こうしたことからジュリエッタは「ドイツ系ブランドが持たない独自の価値と魅力を持った、新しい選択肢」として訴求される。

 一方で、ドイツ車が選ばれる理由には“機械としての信頼性”もあるが「従来はドイツ車が圧倒的に優れていたパッケージや安全性、実用性といった側面においても、最新技術の惜しみない投入によってそれらの競合車を凌駕する性能を実現している」と言う。

発表会場に展示された初代ジュリエッタ スプリント ヴェローチェ。1.3リッターのアルミブロックDOHCエンジンとウェーバーのツインキャブレターで90PSを発生した。この初代ジュリエッタの先にあるスクリーンの向こうに、新型ジュリエッタが登場するという仕掛け
新型ジュリエッタの「コンペティツィオーネ」。1.4リッター マルチエア ターボエンジンと6速デュアルクラッチAT「アルファTCT」を搭載し、225/45 R17タイヤと専用ホイール、フロントに330mmのベンチレーテッドディスクブレーキとブレンボの4ピストンアルミキャリパーを備える
コンペティツィオーネのインテリア。レザー/ファブリックのパワーシート(シートヒーター付き)、アルミペダル、シフトパドル、シートやステアリングホイール、シフトブーツには赤いステッチが入る

 

1.75リッター直噴ターボエンジンと6速MTを搭載する「クアドリフォリオ ヴェルデ」。アルミマット仕上げのドアミラーやサイドスカート、赤いブレーキキャリパーなどはコンペティツィオーネと同じだが、エンブレムやツインエキゾーストパイプ、ホイール、225/40 R18タイヤはクアドリフォリオ ヴェルデ専用
インテリアはコンペティツィオーネとほぼ同様だが、シートがレザーになり、シフトノブがアルミになる。またボーズのサウンドシステムが装備される

 

エントリーグレードの「スプリント」。パワートレーンはコンペティツィオーネと同じだが、タイヤは205/55 R16に、フロントブレーキは305mmのベンチレーテッドディスクと鋳鉄フローティングキャリパーに、ドアミラーはボディー同色になり、サイドスカートは装着されない
インテリアはファブリックでステッチが入らないが、スプリントのみボディー同色のインストゥルメントパネルが用意される

 

LEDデイライトは昼間時に点灯・消灯が選択できる。ヘッドライトはクアドリフォリオ ヴェルデとコンペティツィオーネがバイキセノン、スプリントがハロゲンになる147同様にCピラーに隠されたリアドアハンドルラゲッジルーム容量は350Lで、幅は1,024mm。リアシートを倒すと1,045Lに拡大する
室内長は1,716mm、幅は前席1,546mm、後席1,549mm、前後席の間隔は799mmシフトレバー右上にあるのが「D.N.A.」システムのスイッチ。ダイナミック、ノーマル、オールウェザーの3モードで車両を設定できるダイナミックモードでは新たに「プリフィル」を搭載。緊急時と判断したときにブレーキを与圧し、ブレーキングのタイムラグを短縮する
カーナビは全車ディーラーオプション新開発の「コンパクト」プラットフォーム。フィアットグループでの広範囲な共有化を前提に開発された高張力鋼板などを多用して剛性と軽量化を両立した
前後サスペンションも新開発ボディーカラーは4色

 

ポンタス社長

ジュリエッタ効果で年間1万台目指す
 フィアット グループ オートモービルズ ジャパンのポンタス・ヘグストロム社長兼CEOは発表会で、2011年は同社が3年連続で前年を上回る販売台数を記録したこと、フィアットとアバルトの2ブランドは過去最高の年間販売台数を達成したこと、フィアットは6年連続で成長したことなどをアピール。また豊橋に共同の新車整備センターを設けるなど、クライスラーとの統合と効率改善を進めたことをアピール。

 一方アルファ ロメオブランドの2011年はジュリエッタの投入が遅れ、「ミト」のみで乗り切ったことになるが、ミトについては「これまでも、これからも、重要なクルマであり続ける。アルファの最初のエントリーカーというだけではなく、全く新しい商品群の第1弾だからだ」と、ミトのバリエーション投入を伺わせる発言があった。

 ジュリエッタ投入で大きな飛躍が望まれるアルファ ブランドだが、このほかにもフィアットブランドで人気の「500」の限定車投入や、新型「パンダ」を2012年末に導入すること、クライスラーと同社のディーラーでお互いのブランドの取り扱いを始めることなどで、2012年年間の販売台数はフィアットとアルファ ロメオだけで10,000台超を目標とする。これにやはり堅調なアバルトで、さらなる積み上げを狙う。ちなみに2011年の同社の販売台数は約7,800台と言う。

新型ジュリエッタのマーケティングキャンペーンは「I AM GIULIETTA」。さまざまなアーティストがジュリエッタを体感し、その経験を活かした作品を制作するクライスラーとの統合は日本でも着々と2012年は10,000台超を目指す

 

【お詫びと訂正】記事初出時、「LEDデイライトが常時点灯」と記述しましたが「点灯・消灯を選択可能」の誤りでした。また、カーナビはメーカーオプションではなくディーラーオプションでした。お詫びして訂正させていただきます。

(編集部:田中真一郎)
2012年 1月 5日