開通50周年の首都高、次の50年に向けた中期経営計画を発表
今年度中に横浜環状北西線に着工、川口PAのハイウェイオアシス化も計画

首都高速道路の定例記者会見を行う代表取締役会長兼社長 橋本 圭一郎氏

2012年4月25日開催



 首都高速道路は4月25日、定例記者会見を開催し、距離別料金移行後の通行台数の変化や、中期経営計画などについて発表した。

1~3月の前年比は、通行台数で+6%、料金収入で+12%
 同社代表取締役会長兼社長 橋本 圭一郎氏によれば、距離別料金移行後の1~3月の通行台数は、1日辺りの平均台数では、1月、2月ともに減少したが、3月は昨年が震災の影響で通行台数が減っていたため前年比20.6%増となったと言う。また、うるう年のため、2月が1日多く、月間通行台数では2月、3月で前年を上回っており、1~3月の総通行台数では、前年の8043万台を6%の上回る8499万台となった。また、料金収入においては、昨年の563億円に比べ12%増の633億円となっている。

 料金圏の撤廃により、旧料金圏境における交通量が増加していると言う。従来の東京線と埼玉線の境である美女木JCT(ジャンクション)付近の交通量は19%の増加、東京線と神奈川線の境である羽田および浮島付近では8%の増加となっている。また、戸田南や羽田、浮島など旧料金圏境付近の出入口は、料金圏撤廃後に交通量が減少、代わりにそこから隣接するエリアの出入口において、通行量が増加しており「料金圏をまたぐ前に首都高を降りていた利用者が、料金圏をまたいで連続利用していることが伺われる」とした。

1~3月の通行台数の前年比旧料金圏境の交通量が増加

新たな50年の第1歩となる中期経営計画
 橋本氏は2012年について「開通から50年を迎え、首都高としては新たなステージに向けてスタートする節目の年である」と述べ、今回次の50年に向けた一歩として、2012年~2014年の中期経営計画にまとめたとした。「首都高ではこれまでの50年間、首都高のネットワークの整備、首都高のメンテナンス、地震に対する取り組み、お客様第一の取り組みというのを続けてきた。さらに民営化以降は、民営化の目的を踏まえた取り組み、民間会社としての取り組みを続けてきた」と言い、2012年~2014年に掛けてもそうした取り組みは引き続き推進・拡充しつつ、新たに目指すものとして、中期経営計画に大きく3つの施策を掲げた。

 その1つめが、首都高の大規模更新だ。過酷な使用状況下にある首都高はその年数からも損傷が進んでいるが、今後50年間、首都高のネットワークとしての機能や安全性を確保するため、戦略的な取り組みを行う。より長期にわたって利用可能で、また保全に掛かるコストなども踏まえた更新事業を目指すとし、そのための第一歩として、有識者による大規模更新のあり方に関する調査研究委員会を設立。具体的な個所や優先順位の検討を行っていくとした。

 中期経営計画の2つめは、首都高ネットワークの拡充だ。アジア圏における都市間競争に勝ち残るためには、陸海空が一体となった交通・物流ネットワークの整備が必要だとし、横浜環状北西線の事業着手や、川崎縦貫線や湾岸線の機能強化、埼玉大宮線の延長といった整備についても検討を進めるとした。

 3つめは、技術力を活かした事業の拡大だと言う。首都高だけでなく、日本全国の道路インフラは高齢化が進んでおり、各地の道路管理者がその対応に苦慮しているため、そうした道路に対しコンサルティング事業や保全事業を全国に拡大する。また、海外でも道路インフラに対するニーズは高く、海外でのコンサルティング事業や道路建設、ITSの整備などへの参画を目指すとした。

これまでの50年と新たな50年の第一歩となる中期経営計画高齢化した道路の大規模更新首都高ネットワークの拡充
事業領域の拡大2012年~2014年の重点施策

中央環状品川線のシールド掘進が完了、横浜環状北西線も事業着手
 具体的な今年度の事業計画についても説明した。現在進行中の建設事業については、中央環状線の大橋JCTと大井JCTを繋ぐ品川線が、本線のシールド掘進について3月22日に完了、大橋連結路のシールド掘進も3月8日に完了していると言う。現在は本線内の床や内装の工事、五反田出入口の掘削工事などを実施しており、平成25年度には完成する予定だとした。

 また、横浜環状北線においては、用地取得率が約98%となり、シールド掘進は延長5.5kmの内、約2.4kmまで掘進。並行してシールド内の床板の工事や、港北JCT、生麦JCT、生麦付近での鉄道交差部の工事などを実施している。

 北線と接続し、東名高速道路の横浜青葉IC(インターチェンジ)まで繋がる横浜環状北西線についても、今年度から事業着手を開始する予定とのこと。「すでに4月20日に国土交通省の事業変更許可を得られており、夏頃都市計画の事業認可が得られるのではないか」と言い、「北線と北西線が繋がると、初めて横浜港と東名の物流ルートが直結することとなり、また保土ヶ谷バイパスの渋滞緩和が期待できる。さらに東名からアクアラインに繋がるため、千葉方面への連携も期待できる」とした。

中央環状品川線の進捗状況横浜環状北線の進捗状況横浜環状北西線の事業着手について

川口PAをハイウェイオアシスに
 事業計画には、首都高川口線にある川口PA(パーキングエリア)を使った、ハイウェイオアシス化も盛り込まれた。首都高速では初めてとなるこのハイウェイオアシスは、地元川口市と共同で整備するもの。川口PAから首都高を降りることなく、川口市の公園や施設にアクセスできるようになる。公園面積は約8.9haとなり、オアシスゾーン、自然体験ゾーン、歴史探索ゾーン、地域振興ゾーンなどが設けられ、地域物産品の売店や歴史・自然史料館、休憩施設などの導入が検討されている。また、災害時には防災拠点としても活用できるよう計画しており、今年度より基本設計を実施する。

 そのほか、これまでも実施していた国内外での道路建設のコンサルティング事業の拡大、首都高で使用した木製の工事案内看板を再利用したスケートボード「Hi-W8(ハイウェイト)」の発売や、首都高の取締車両、パトロール車などを食玩や玩具としてメーカーと商品化など、さまざまな事業を執り行うとした。

川口PAを使ったハイウェイオアシスの整備廃看板を再利用したスケートボードを商品化2枚合わせのため、表裏ともに柄がある。黄色が1万8900円、数の少ない白は2万1000円
首都高で働くクルマを玩具化海外展開の基本方針と状況
海外コンサルティング業務受注状況国内の技術コンサルティング事業の展開

開通50周年記念イベントを展開
 今年の12月20日に、1号線京橋~芝浦間の開通50周年を迎える首都高では、各種イベント等を企画していると言う。すでに2月に行われた東京マラソンでもPRを実施しており、今後もオープンデッキのバスを使ったツアー企画や、東日本大震災で被災した子供達を招待してのツアーイベント、PAを活用した写真展やイベントの実施などを行っていくとした。また、キャッチコピーは公募により決定した「東京がいちばん見える道」とし、記念ロゴマークの制作なども行うとした。

50周年記念事業を展開

(瀬戸 学)
2012年 4月 26日