ニュース
首都高、2013年度は「損傷数削減の元年」と位置づけ補修の体制強化
定例会見より。建設・管理技術や省エネルギー対策なども積極的に推進
(2013/4/24 21:32)
首都高速道路は4月24日に定例会見を実施。このなかで、2013年度(平成25年度)の事業計画の概要、昨年4月からの1年間における首都高速の通行台数状況などについての報告した。
同社の菅原秀夫社長は、今年度の大きな実施事業が、「道路の適切な維持管理」「ネットワーク整備・ボトルネック対策」「新しい分野での事業開発」の3点であると説明。このなかでも特に長い時間を割いて説明されたのが、昨年発生して社会的にも大きな問題として注目された笹子トンネルの天井板落下事故を受けた補修強化の取り組みについて。
首都高速では開通50周年という節目に前後して、大がかりな強靱化計画を推し進めているが、老朽化と日常的な酷使によって大小さまざまな構造物損傷が定期点検で報告されている。ここ数年では年間4万3000件ほどの損傷箇所が発見されているが、時間的、人材的なハードルで処理される件数は3万8000件ほどにとどまり、毎年5000件の損傷箇所が次年度以降に持ち越しとなってきた。
この結果、現状では約10万件の累積未補修損傷が残されているが、2013年度(平成25年度)から2017年度(平成29年度)にかけた中期計画でこの累積を一掃。さらに、今後発生が予想される未補修損傷についても2017年度には半減させると定められた。
具体的な対策としては、今年度の予算に330億円の緊急補修予算を追加して、昨年度の4割り増しにするほか、補修の担当部署ごとの責任者を明確にして着実な進捗を促し、関連子会社にスタッフや首都高のOBを派遣して体制の強化を図るとのこと。こうした取り組みにより、2013年度は首都高速にとって「損傷数削減の元年」になると語られた。
これに加え、笹子トンネルの天井板落下事故後には国土交通省からの指導もあってトンネル内の道路付属物の点検を行い、さらに4月からはトンネル以外に設置された遮音壁、橋桁下の裏面吸音板、各種標識、高圧ケーブルを接続する大型プルボックスなどの自主的な一斉点検をスタート。この点検と並行して、5年に1回行っている遮音壁や裏面吸音材などの定期点検を1年以上前倒しして行い、安全性の確認に大きく力を入れると発表された。
培ってきた技術を外部に提供する新規事業にも進出
高速道路事業以外の面では、再生可能エネルギーの技術開発についてサンプル品を紹介しながら解説。首都高速では平成5年から道路施設やPAなどに太陽光発電施設や風力発電装置などを設置して省エネルギー化の取り組みを進めているが、新たな技術開発として日本写真印刷、三菱化学の2社と有機系太陽電池を共同開発することになった。首都高速はPAを実証実験場所として提供し、日本写真印刷の「色素増感太陽電池」は5月から大黒PAで、三菱化学製の「有機薄膜太陽電池」は今夏から代々木PAに設置される予定となっている。
また、昨年3月から社内に設置された「知的財産戦略会議」で検討された今後の活動方針に基づき、中期経営計画では知的財産を積極的に活用して社会貢献を行うことも発表された。首都高速では長年の高速道路事業で道路や橋梁の建築技術、既存の建築物を補強する耐荷重力向上技術、道路診断のノウハウなどを高いレベルで保有しており、すでに国内外にも提供しているが、これをさらに推進していくという。