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首都高、2013年度は「損傷数削減の元年」と位置づけ補修の体制強化

定例会見より。建設・管理技術や省エネルギー対策なども積極的に推進

夏から代々木PAに試験設置して性能や使い道などを共同研究する、三菱化学製の有機薄膜太陽電池を紹介する首都高速の菅原秀夫社長
2013年4月24日開催

 首都高速道路は4月24日に定例会見を実施。このなかで、2013年度(平成25年度)の事業計画の概要、昨年4月からの1年間における首都高速の通行台数状況などについての報告した。

菅原秀夫社長
2013年度の事業計画では、道路の新規建設で2010億円、既存道路の維持と修繕で1178億円、国や地方公共団体から委託された街路整備事業で248億円、駐車場事業や降下した施設などの予算として17億円、PAの管理費用で4000万円といった事業費を予定している

 同社の菅原秀夫社長は、今年度の大きな実施事業が、「道路の適切な維持管理」「ネットワーク整備・ボトルネック対策」「新しい分野での事業開発」の3点であると説明。このなかでも特に長い時間を割いて説明されたのが、昨年発生して社会的にも大きな問題として注目された笹子トンネルの天井板落下事故を受けた補修強化の取り組みについて。

 首都高速では開通50周年という節目に前後して、大がかりな強靱化計画を推し進めているが、老朽化と日常的な酷使によって大小さまざまな構造物損傷が定期点検で報告されている。ここ数年では年間4万3000件ほどの損傷箇所が発見されているが、時間的、人材的なハードルで処理される件数は3万8000件ほどにとどまり、毎年5000件の損傷箇所が次年度以降に持ち越しとなってきた。

 この結果、現状では約10万件の累積未補修損傷が残されているが、2013年度(平成25年度)から2017年度(平成29年度)にかけた中期計画でこの累積を一掃。さらに、今後発生が予想される未補修損傷についても2017年度には半減させると定められた。

 具体的な対策としては、今年度の予算に330億円の緊急補修予算を追加して、昨年度の4割り増しにするほか、補修の担当部署ごとの責任者を明確にして着実な進捗を促し、関連子会社にスタッフや首都高のOBを派遣して体制の強化を図るとのこと。こうした取り組みにより、2013年度は首都高速にとって「損傷数削減の元年」になると語られた。

 これに加え、笹子トンネルの天井板落下事故後には国土交通省からの指導もあってトンネル内の道路付属物の点検を行い、さらに4月からはトンネル以外に設置された遮音壁、橋桁下の裏面吸音板、各種標識、高圧ケーブルを接続する大型プルボックスなどの自主的な一斉点検をスタート。この点検と並行して、5年に1回行っている遮音壁や裏面吸音材などの定期点検を1年以上前倒しして行い、安全性の確認に大きく力を入れると発表された。

「ただ目標を決めて口で言っているだけではだめなので、補修の体制強化が大切になります」と語り、具体策を紹介する菅原社長
現時点で判明している未補修の損傷は、平成28年度末までに補修・補強を完了するというロードマップが明確化された
安全性の再確認のため、トンネル以外に設置された「道路付属物」も一斉点検が行われている

培ってきた技術を外部に提供する新規事業にも進出

 高速道路事業以外の面では、再生可能エネルギーの技術開発についてサンプル品を紹介しながら解説。首都高速では平成5年から道路施設やPAなどに太陽光発電施設や風力発電装置などを設置して省エネルギー化の取り組みを進めているが、新たな技術開発として日本写真印刷、三菱化学の2社と有機系太陽電池を共同開発することになった。首都高速はPAを実証実験場所として提供し、日本写真印刷の「色素増感太陽電池」は5月から大黒PAで、三菱化学製の「有機薄膜太陽電池」は今夏から代々木PAに設置される予定となっている。

公募によって有機系太陽電池の共同開発を日本写真印刷、三菱化学の2社と行うことが決定。「有機系太陽電池実用化先導技術開発」としてNEDOの助成事業として実施される
「色素が光を吸収して電子を放出する」という原理で発電する日本写真印刷の色素増感太陽電池。菅原社長が手に持つボックスの内側の四角形が新型太陽電池のパネル。透過性のある製品となっており、昼間に太陽光で発電した電力を使い、夜間はPAの利用者の足元を照らすライトとして利用される
三菱化学製の有機薄膜太陽電池の特徴は薄さ。軽量で柔らかく、代々木PAでは施設内の明るさを調節するブラインドとして活用される予定

 また、昨年3月から社内に設置された「知的財産戦略会議」で検討された今後の活動方針に基づき、中期経営計画では知的財産を積極的に活用して社会貢献を行うことも発表された。首都高速では長年の高速道路事業で道路や橋梁の建築技術、既存の建築物を補強する耐荷重力向上技術、道路診断のノウハウなどを高いレベルで保有しており、すでに国内外にも提供しているが、これをさらに推進していくという。

50年以上に渡る道路事業のスペシャリストとして、建設、補修、管理などで特許権34件、意匠権4件、実用新案権1件を保有している
培ってきたノウハウを提供する技術コンサルティング事業も展開中。日本国内に止まらず、ミャンマー、フランスなどの道路関連組織とも積極的に交流している
出水の影響で中央環状品川線の完成予定は1年延期となってしまったが、「3環状」と呼ばれる大規模環状道路事業では最初にミッシングリンクが解消されると強調
横浜環状北線は計画通りに工事が進行中。横浜環状北西線と連結して開通後は、東名高速と横浜港が直結され、保土ヶ谷バイパス経由では約1時間のところが20分ほどに短縮される
昨年4月から12カ月の通行台数は前年度比99.3%とわずかに減少。今年の冬は積雪が多かったことに加え、景気回復が遅れたことも影響したと分析している

(佐久間 秀)