日産、新型コンパクトカーで車名別ランキングトップ10入りを目指す
第113回定時株主総会を開催

2012年6月26日開催



 日産自動車は26日、第113回定時株主総会を神奈川県 横浜市のパシフィコ横浜 国立横浜国際会議場で開催、2011年度の実績を報告し、2012年度の事業について説明した。

ゴーンCEO

「ダットサン」が「Z」「GT-R」同様に活躍する
 既報どおり、2011年度は複数の自然災害や円高にもかかわらず過去最高の販売台数を記録、2012年も引き続き成長を目指す。

 その鍵は中国、インド、インドネシア、ブラジル、ロシアといった新興市場。中国は経済成長が減速したが、成長は止まっておらず「健全かつ安全な成長を続ける時代に入った」と説明。また依然として世界最大のマーケットであり、グローバルレベルよりも自動車の保有率が低く、内陸部の都市では2桁に達する成長が続いており、沿岸部の都市では代替需要が見込まれるため、過剰投資に気をつけつつ、エントリー向けの「ヴェヌーシア」、メインストリームの「日産」、ラグジュアリー向けの「インフィニティ」の3ブランドで中国市場での拡大を図る。

 またインド、インドネシア、ロシアから投入する新興市場向け「ダットサン」にも言及。ゴーンCEOは「ダットサンブランドは最も歴史の長い日産の財産。ダットサンが活躍した50~60年代の日本と同様の現象が多くの新興市場で起きているが、このセグメントに提案できるクルマが今の日産にはない。今こそダットサンブランドを復活させる時。ZやGT-R同様に、適切な戦略さえあればダットサンが再び活躍するときが来ると確信していた」と述べ、ダットサンを新興市場のエントリー向けに良質な製品を供給するブランドと位置づけた。

 一方、EUの信用不安を抱える欧州市場については「厳しい状態。大きく発展するとは期待していない。欧州全需は5~8%減少する」との見方を示したが、欧州における「ジューク」の販売台数15万台のほとんどが新規顧客であること、ロシアの業績が好調であることなどが欧州経済の減速を相殺し「欧州事業の成長はないが、ロシア事業があれば下がることもない」とした。

車名別ランキングトップ10入りを目指す
 株主から、車名別ランキングのトップ10に入るクルマが「セレナ」のみで、ヒット商品がないという点を指摘されたが、これについては「メーカ別で見ると販売台数は2位で、3以下に大きな差をつけている」「トップ20で見るとホンダは3車種しかないのに対し、日産は5車種ある」「売れ筋のコンパクトをノート、キューブ、マーチとテイストの違う車種に分けて投入しているため、台数がばらけてランク入りしない。この車種を合計すると3位になる」と、商品力や販売力に問題はないとした。

 一方でセレナのみという事実には「満足はしていないしあきらめてもいない。日本市場は依然として世界第3位の市場だし、日産の強みであるものづくりを支えるホームマーケットとして第3位以上の意味がある。パワー88の目標の1つはトップ10にきっちりと入ること」とし、「(トップ10に入れるような)コンパクトカーを仕込んでいる」とした。

会場ロビーにはさまざまな日産車が展示された。左は震災復興の一環として寄贈したアトラスベースの移動図書館。中は先ごろ次世代ニューヨーク市タクシーに選定されたNV200

燃料電池は数年以内に商品化できるレベル
 ゴーンCEOは、多くの人から聞かれる質問として「電気自動車(EV)になぜ取り組むか」を説明。世界人口が今後10年未満で80億人に達し、新興国の発展が目覚しい中、自動車の需要が急激に伸びているが、環境問題から「内燃機関の販売を続けることはできないのは明らか」とし、EVのエネルギーである電気は再生可能エネルギーなどさまざまなものから作られ、航続距離は現状でも十分あり、ガソリンを補給しなくてもいい利便性があると、勝算を語った。

 また燃料電池も重要な課題とし、日産の開発している燃料電池は世界で最も効率が高いうえ、EVと共通するコンポーネントが多いため、技術的には「数年以内に商品化できる」レベルにあるとした。

 ただし、当初はコストが高くなるのが課題。これには、スケールメリットによりコストを下げるべく、ダイムラーとの共同開発を検討しているとした。また水素供給インフラについても、ほかの自動車メーカーや関連企業と共同研究を進めているとした。

9億8700万円のCEO報酬、世界レベルでは高くない
 同社の2011年度の配当は、予定通り20円/株とする。しかし、2012年度は25円/株に増配することを発表した。

 成長したにもかかわらず2011年度の増配を控えたことについて、世界経済の成長は見込むものの、不安定な市場もあり、変動が激しいため慎重になる必要があると説明。また同社の売上高に対するキャッシュ・ポジション(手元資金)の比率は7%で、自動車業界平均の12%よりも低いこと、配当性向(純利益に占める配当金の割合)は2011年度で26.5%、2012年度が28%であり、中期経営計画「日産パワー88」で宣言した配当性向25%を上回っていること、2012年度の配当利回りが業界平均を上回る3.3%になること、2012年以降も増配を想定していることなどを説明し、理解を求めた。

 一方、なにかと話題になる高額な役員報酬についてゴーンCEOは「日産は日本企業であることに疑問の余地はないが、グローバルで活動しており、多国籍で構成される経営陣の多様性が会社を支え、成長に貢献している。日産の役員が引き抜きの対象になっており、最高の人材を確保する力を失うわけにはいかない」と説明。報酬額は人事・財務のコンサルティング企業タワーズワトソンによる比較調査と分析に基づいた公正なものとした。

 2011年の役員報酬総額は18億8000万円で、ゴーンCEOの報酬は前年比0.5%増の9億8700万円。世界的に見れば自動車産業のトップの報酬平均は14億円、日産と同程度の規模の企業でも平均で12億7000万円であり、「中央値を下回っている」とした。

(編集部:田中真一郎)
2012年 6月 27日