ホンダ、「N BOX」のユーティリティ性をアップした「N BOX+」発表会
「人を幸せにできるなら持てる技術を惜しみなく使え」

N BOX+と、本田技研工業 常務執行役員 日本営業本部長 峯川尚氏

2012年7月5日開催



 本田技研工業は7月5日、軽乗用車「N BOX+(エヌボックス プラス)」を発売。同日本社で発表会を開催した。N BOX+は、標準タイプとカスタムタイプそれぞれに自然吸気エンジン車とターボ車をラインアップ。各グレードの詳細については、関連記事を参照していただきたい。

N BOX+N BOX+ カスタム
常務執行役員 日本営業本部長 峯川尚氏

「日常や趣味、さらに介護までさまざまな場面で役に立ちたい」
 発表会の冒頭、国内販売を担当する本田技研工業 常務執行役員 日本営業本部長 峯川尚氏が挨拶。「エコカーに関するお客様の関心が高まり、軽自動車やスモールカーといった“ダウンサイジング化”の傾向が加速しています。市場の70%が、コンパクトカーやスモールカー、軽自動車で
そのうち約40%が軽自動車です」とグラフを示し、この市場に向けてすべてを刷新した商品を投入すると言う。

 その第1弾が、昨年12月に発売した新型軽自動車「N BOX」。このN BOXは、存在感のあるデザイン、広い室内空間、走りや燃費のよさなどの評価を得ることができ、4月から3カ月連続で車名別届出車販売ランキングNo.1を獲得。ホンダがこのランキングでNo.1を獲得するのは8年ぶりだと言う。

四輪の国内販売実績。コンパクトカーやスモールカー、軽自動車が70%。軽比率も上昇しているその軽市場で3カ月連続No.1となったN BOXディーラー改革も行っており、軽自動車販売を重視する店舗も全国で74店舗になる

 その第2弾となるN BOX+を、「日常や趣味、さらに介護までさまざまな場面で役に立ちたいという思いが作り上げた新発想アイデア満載のクルマ」と紹介。ホンダ独自のパッケージング技術である「センタータンクレイアウト」がもたらすN BOXの圧倒的な広さを最大限に活かし、「室内に斜めの床をプラスするという独創的なアイデアで軽自動車の新たな可能性を提案したもの」と言い、「N BOX+は、さまざまな用途に幅広く対応できる、まさに究極の軽自動車です」と、その自信を語った。

 N BOX+は、斜めの床を持つことで車いすの搭載も可能だが、8月には車いす仕様車を多彩なバリエーションで追加するほか、秋にはNシリーズ第3弾としてN CONCEPT_4をベースとした新型軽自動車を投入。2012年をホンダにとって新たなスタートの年とし、「2012年度の届け出車販売35万台、国内販売73万台に取り組んでいく」と語った。

Nシリーズ第2弾N BOX+独創的なアイデアを投入
135万円からN CONCEPT_4をベースとした新型軽自動車を秋に発売2012年度の販売目標

NBOX+開発責任者 浅木泰昭氏

「車いす仕様で設計した斜めの床を見ながらその世界を拡げた」
 このN BOX+の開発の経緯については、開発責任者の浅木泰昭氏が説明。浅木氏は、ホンダの創業者である本田宗一郎氏の「人を幸せにできるなら持てる技術を惜しみなく使え」との言葉を紹介。この言葉には「広く社会の役に立つもの、みなさまに受け入れていただく商品を作るには、自分の持っている知識と経験をできる限り投入してチャレンジを続けるという思想が込められている」と語り、N BOXベースの車いす仕様車の開発するにあたり福祉機器展等に出かけ、「この言葉が実践できているのだろうかという疑問にぶち当たった」と言う。

 その最大の点が車いす仕様車が高価であること。車いす仕様車は、年間数千台の市場しかなく、またベース車からの改造車両になることがほとんどのため、どうしても高価になりがち。その問題を解決するために、「自分なりに悩んで作り上げたクルマがN BOX+」で、「車いす仕様で設計した斜めの床を見ながらその世界を拡げていきたいと思った」と言い、最初から斜めの床を持つクルマを大量生産することで、車いす仕様車の価格を大幅に引き下げることができるとする。

NBOX+は、N BOXの持つセンタータンクレイアウトプラットフォームを使用ホンダ創業者である本田宗一郎氏の言葉
NBOX+のコンセプト、「One's ACTIVE MINI」つめる、とまれる、のせられるを実現

 N BOX+は、そもそもは車いす仕様として作られた斜めの床を、車いすを収納するためだけでなく、マルチに使える多目的ラゲッジスペースとして構築。マルチボード小、マルチボード大、エンドボードの3枚のボードを組み合わせ、「上・下段モード」や「フラットモード」「スロープモード」などを持つ「マルチスペースシステム」を実現した。

 このマルチスペースシステムがN BOX+の最大のウリとなっており、上・下段モードでは荷物の積み込みがさまざまな形で行え、前席を後方に倒してフルフラットな空間を作れば、身長約190cmの大人2人が横になることができる。

つめる工夫のせられる工夫
マルチスペースシステムを採用するラゲッジスペース

 また、開口部地上高もN BOXに比べ150mm低くした330mm(2WD車)となっておりスロープモードでは、家族の送り迎えに伴う自転車の積み込み、レジャーで使用する小排気量バイクの積み込み、荷積み台車の積み込みなどが容易に行え、伸縮可能なオプションのアルミスロープを取り付ければ、斜めの床から地面まで緩やかなスロープを描く乗り入れ口を実現。車いすで楽に乗り込めるようになる。

マルチスペースシステムのデモ
下段に荷積み台車、上段にさまざまな荷物を積載
荷物を一旦取り出して……
リアシートを前にたたみ、フラットモードに
マルチボードの位置を上部にセットして、フロントシートを後ろに倒す
フルフラットな空間が出現し、大人2人が車中泊など可能。荷物は下段に置くことができる
前席を倒し、フルフラットにした室内斜めの床オートバイを積み込んだ例

 N BOXの車いす仕様の開発から始まったにもかかわらず、3枚のボードを組み合わせることで、最終的にN BOXを超えるユーティリティ性を持つクルマとして登場したN BOX+。N BOXとの棲み分けについてだが、N BOX+はこのラゲッジスペースを実現するために後席のニースペースが狭くなっている(それでも、フィットと同等とのこと)。浅木氏は、N BOXは後席が広いことから、子育中の人向けのクルマとし、N BOX+は車いす利用者を持つ家族、レジャーなどに使いたい人、車中泊で旅行を楽しみたい人向けのクルマであると語った。

 なお、このN BOX+は車いすの積み込みも容易になっているクルマで、後付けで車いす仕様になるキットの発売が予定されている。8月には最初から車いす仕様となったN BOX+の発売も予定されている。この違いは改造申請の届け出作業の有無などとなり、専用の車いす仕様であれば別途申請が不要だ。車いす利用者の送迎などがすでに必要な方は、専用の車いす仕様のN BOX+を、数年後に必要になるだろうということであれば、通常のN BOX+を選択するのがよいだろう。

アルミスロープと、その展開時

(編集部:谷川 潔)
2012年 7月 5日