日産、免税(100%減税)のハイブリッド車「セレナ S-HYBRID」発表会
JC08モード燃費は15.2km/L

ミニバン「セレナ S-HYBRID」と日産自動車 片桐隆夫副社長

2012年8月1日発売
216万3000円~288万150円



 日産自動車は8月1日、新ハイブリッドシステム「S-HYBRID」を搭載した車種をミニバン「セレナ」に追加し発売した。また、セレナ S-HYBRID発売にあわせ、セレナ全車の装備を見直している。価格は、216万3000円~288万150円。

 S-HYBRIDシステム搭載車はエコカー減税により自動車取得税、重量税が免税(100%減税)となる。また、4WDのアイドリングストップシステム搭載車は、燃費を改善したことで、自動車取得税と自動車重量税が75%減税に、またアイドリングストップシステムを持たない20S(2WD/4WD)は50%減税となる。

新ハイブリッドシステム「S-HYBRID」を搭載したセレナ。外観上の違いは、S-HYBRID専用エンブレムや高輝度LEDリアコンビネーションランプが目立つ程度

グレードエンジン変速機駆動方式価格減税率
20S直列4気筒 DOHC 2.0リッター直噴CVT2WD(FF)2,163,000円50%
20X S-HYBRID直列4気筒 DOHC 2.0リッター直噴
+モーター(SM23)
2,384,550円免税(100%)
20G S-HYBRID2,635,500円
ハイウェイスター S-HYBRID2,598,750円
ハイウェイスターG S-HYBRID2,799,300円
20S直列4気筒 DOHC 2.0リッター直噴4WD2,436,000円50%
20X2,629,200円75%
20G2,880,150円
ハイウェイスター2,832,900円

日産自動車 片桐隆夫副社長

 同日、日産はセレナ S-HYBRIDの発表会を開催した。現行セレナは、ミニバンのベストセラーであり、日産の国内における最量販車種でもある。そのセレナがハイブリッド化され、税制面での優遇をさらに得ることになる。

 登壇した国内営業担当の片桐隆夫副社長は、S-HYBRIDについて「スマートでシンプルなハイブリッド」と語る。セレナは、このハイブリッドシステムを搭載することで、販売価格帯を据え置きながらクラストップの15.2km/L(JC08モード)の燃費を実現し、エコカー減税の75%減税車から免税車となったと紹介した。

 価格帯据え置きながら、ハイブリッド化を実現できたことについては、日産のエコ技術とコスト抑制技術があると言う。とくにコスト抑制については、日産の九州工場で生産する国内生産体制ながら、徹底的に追求してきたと語る。

 「セレナの販売は、2012年度で10万台以上を予定しており、約25万台のミニバン市場の40%のシェアを獲得していきたい」(片桐氏)と、その意気込みを述べた。


開発責任者 角智彰氏

ミニバンとしての使い勝手を変えずにハイブリッド化を実現
 セレナに投入された、ハイブリッド技術に関しては開発責任者である角智彰氏が解説。セレナの魅力としては、「乗ってひろびろ」「使ってラクラク」「エコでわくわく」と3つあったが、エコでわくわくにS-HYBRIDシステムが含まれる。

 S-HYBRIDのネーミングの由来は「“スマート”で“シンプル”なハイブリッド」だと言い、スマートはセレナの広さや便利さが変わらないこと、シンプルは価格帯が継続されていることであるとした。

セレナはミニバンの販売でNo.1となっている。そこにハイブリッドシステムを搭載するセレナの3つのポイントS-HYBRIDシステムの由来

 S-HYBRIDのシステム構成は、アイドリングストップからの再始動に使うエコモーターを最大150Aの容量から最大200Aの容量に増大。また、鉛蓄電池のサブバッテリーを追加している。このバッテリーは、電気の出し入れがしやすいものとなっている。

 このシンプルなシステムで、ハイブリッド動作を実現。ブレーキで捨てているエネルギーをエコモーターで回収しバッテリーへ充電。ここで稼いだ電気で、アイドリングストップの頻度を高め、アイドリングストップ時間を長くすることで燃料を節約している。また、発進・加速時などに、エコモーターでガソリンエンジンの手助けを行っている。

S-HYBRIDの3つのキーワードシステム構成プレーキ時には回生
回生したエネルギーは、アイドリングストップ時間の延長や、発進加速時に利用するS-HYBRIDにより免税に室内の広さは変わらない
価格帯も同じレベルを維持。標準装備を増やすなどしているS-HYBRIDの外観の変更点

 搭載されるエンジンは、従来同様直列4気筒 DOHC 2.0リッター直噴のMR20DD型。2WD車の場合、最高出力108kW(147PS)/5600rpm、最大トルク210Nm(21.4kgm)/4400rpmで、最高出力1.8kW(2.4PS)、最大トルク53.6Nm(5.5kgm)のモーターがアシストしている。

 その結果、アイドリングストップ付きの現行セレナに比べ、セレナ S-HYBRIDは燃費をJC08モードで1.0km/L改善。15.2km/Lを達成したことでエコカー減税の免税車となった。すべてのハイブリッドシステムがエンジンルーム内に収まることで、室内空間はまったく同じサイズとなっている。

セレナ S-HYBRIDのエンジンルーム
中央に見える白いバッテリーの位置に追加されたサブバッテリーが収まる。写真は展示車用のバッテリーのためサイズが異なる中央の銀色の部品がエコモーター。従来より若干大型化している。サブバッテリーとエコモーターの大型化のみでハイブリッドを実現した
MR20DDエンジンの単体展示大型化されたエコモーター。このエコモーターのベルト経由でアシストをする筒内直接燃料噴射を行う

 また、セレナ S-HYBRIDの発売にあわせ、全車で、2列目・3列目のシート中央席に3点式シートベルトを標準装備し、転がり抵抗を低減した低燃費タイヤを採用。ハイウェイスター(2WD/4WD)では、助手席側ワンタッチスライドドアを標準装備している。

1列目シート2列目シートスライドドアを開けたところ。従来のセレナと室内空間は変わらない
運転席まわりメーターパネルラゲッジルーム。3列目シートは従来同様跳ね上げ式。フラットなフロアが広がっている

 システム構成上、4WD車への搭載も可能となっているS-HYBRIDシステムだが、今回は2WD車のみに設定された。日産スタッフによると、「セレナにおける4WD車の販売比率は15%ほどで、まずは販売の多数を占め、燃費面が第一に検討される2WD車にS-HYBRIDシステムを設定した。4WD車への展開は、今後のお客様の要望によって考えたい」とのこと。

 また、オーテックジャパンは、セレナの20X S-HYBRID、20Xをベースに「エクストレイル」と同様の防水シートなどを装備したセレナ「クロスギア」を発売。スロープ付きの車いす仕様車などもラインアップした。

クロスギアでは防水シートを採用シート表皮
アウトドア用途を意識して、室内レールやリアドアフックなどが追加される

(編集部:谷川 潔)
2012年 8月 1日