F1ドライバー小林可夢偉も走った「グッドスマイルレーシング カートグランプリ」
F1、GT、カート、8人のゲストドライバーとモータースポーツを満喫

「グッドスマイルレーシング カートグランプリ」を走行する小林可夢偉選手

2012年8月12日開催



予選前に一度通り雨があったものの、夏の暑い日差しの中開催された

 グッドスマイルレーシングは8月12日、千葉県の新東京サーキットで一般参加者らによる「グッドスマイルレーシング カートグランプリ」を開催した。

 グッドスマイルレーシングは、SUPER GTのGT300クラスに「GSR&Studie with TeamUKYO」として参戦しており、昨年度は見事チャンピオンを獲得。今年も激しくチャンピオン争いを行っている。

 車体に描かれた「初音ミク」の絵柄で、モータースポーツ界に痛車文化を持ち込むとともに、個人スポンサー制度という新たなスポンサーモデルを構築。レースの世界をより共感できるものにし、従来のレースファンとは異なるファン層を、モータースポーツの世界に呼び込んでいる。

 見るモータースポーツ、支援するモータースポーツに加え、多くの人に参加するモータースポーツを知ってほしいということで開かれているのが「グッドスマイルレーシング カートグランプリ」となる。カートで走行するのは初めてという人から、ベテランカートドライバーまで参加して3時間耐久レースとして開催された。

 グッドスマイルレーシングは、このイベントに同レーシングがかかわる豪華なドライバー陣をゲストドライバーとして招聘。GSR&Studie with TeamUKYOのドライバーとしてGT300クラスに4号車で参戦する番場琢選手、同じく0号車で参戦する片岡龍也選手に加え、F1ドライバーの小林可夢偉選手、GT500ドライバーの本山哲選手、安田裕信選手が参加。さらに、KONDO RACING代表である近藤真彦監督、2011ROTAX MAX Jr WORLDチャンピオン笹原右京選手、2011全日本カート選手権Jrクラス東地域チャンピオン小高一斗選手が参加した。

イベントで挨拶を行う、グッドスマイルレーシング スーパーバイザー 安藝貴範氏イベントに参加したゲストドライバー。左から小高一斗選手、笹原右京選手、番場琢選手、安田裕信選手、本山哲選手、片岡龍也選手、近藤真彦監督、小林可夢偉選手

 これらゲストドライバーは、3時間耐久レースの途中に乱入する予定だったが、急遽チームとして参戦することになり、一般参加者はF1ドライバーやGT300・GT500ドライバー、現役カートチャンピオン、GT500監督との対決をたっぷり楽しむことができた。このグッドスマイルレーシング カートグランプリは、レンタルカートを使用しているためマシンの性能差がそれなりにあり、性能のよいマシンに乗れるか乗れないかは運次第。なぜかゲストドライバーチームはパフォーマンスの低いマシンとなっており、直線で容易に抜かれてしまうほど。そのため一般参加者でも、F1ドライバーやGT300・GT500ドライバーを抜くことができ、夏晴れの1日を楽しんでいたようだ。

3時間耐久レース開催中。22号車がゲストドライバー8名によるチーム笹原右京選手番場琢選手。昨年はグッドスマイルレーシングでGT300チャンピオンを獲得
今シーズンはグッドスマイルレーシングから参戦する片岡龍也選手。ファンの力を改めて認識したとのこと日本を代表するレーシングドライバー本山哲選手安田裕信選手。安田選手はフォーミュラ・ニッポンにも参戦しており、ヘルメットはフォーミュラ・ニッポン仕様
日本人唯一の現役F1ドライバー、小林可夢偉選手
安田選手(左)と、可夢偉選手(右)ファンサービス中の可夢偉選手ゲストドライバーチームは、3時間耐久を10位でゴール

 3時間耐久レース終了後には、ゲストドライバー8人による15周のエキシビションレースを実施。レースは激しい戦いとなり、最終周には現役カートチャンピオンである小高選手が、トップを走る本山選手のインを刺すものの厳しいブロックで失速。一度失速すると体重の軽い小高選手といえども再加速は難しく5位に沈み、本山選手が優勝した。

 レンタルカートによるレースとはいえ、日本を代表するレーシングドライバー同士の戦いだけに本山選手は優勝したことを素直に喜んでいたのが印象的。厳しいブロックに関しては、「レースの世界の厳しさを教えた」と語っていたが、前回のグッドスマイルレーシング カートグランプリで小高選手は可夢偉選手の厳しいブロックにあっており、可夢偉選手は「2回目や~」と語っていた。

エキシビジョンレースのスタートへと向かうゲストドライバースタートシーン序盤
中盤に3号車 本山選手がトップに立つ事故もないのにセーフティカーが乱入。この時点では7号車 安田選手がトップレース再開。後ろの3号車 本山選手、5号車 可夢偉選手を気にする安田選手
最終周に8号車 小高選手が、トップの3号車 本山選手に仕掛ける。しかし、ブロックは厳しく失速へ優勝を喜ぶ本山選手レンタルカートに日本有数のドライバーが乗る珍しい光景
やはり優勝は嬉しいもの。喜ぶ本山選手中央が小高選手。前回は可夢偉選手と、今回は本山選手と激しい優勝争いを繰り広げた

レースを見つめる安藝氏

 グッドスマイルレーシングのスーパーバイザーである安藝貴範氏は、このようなカートイベントを夏と冬の年に2回行いたいと言い、多くの人たちにモータースポーツの楽しさを知ってほしいと語っていた。次回は、レースのオフシーズンとなる冬の開催が予定されている。参加を狙っている人は、グッドスマイルレーシングの公式応援サイト(http://supergt.goodsmileracing.com/)をマメにチェックしてみてほしい。

 なお、耐久レースの合間に、可夢偉選手、本山選手、安田選手、片岡選手、番場選手、近藤監督に次の戦いへ向けての話を少しだけ聞くことができたので、簡単に紹介する。なお、小林選手の参加するF1の次戦「ベルギーグランプリ」(スパ・フランコルシャン)は9月2日、本山選手らが参加するSUPER GTの次戦「International Pokka 1000km」(鈴鹿)は8月19日に決勝レースが開催される。

 可夢偉選手は、今年のF1では過去最高の4位を獲得するなど、よい成績を収めているものの、下位に沈んでしまうこともたびたびあり、安定した成績を獲得できていない。前半戦を振り返って足りないのはチーム力だと言い、しっかり歯車を合わせきれなかったのが原因と分析している。

 次戦のベルギーグランプリは、スパウェザーと言われるほど天候が読めないレースとして知られているが、「晴れたら自信がある」「雨だったら分からへんで~(厳しい)」と言い、天候次第では好成績を期待できそうだ。

3時間耐久レースの合間に、短い時間ながらゲストドライバーにインタビュー小林可夢偉選手

 一方、4年ぶりに1000kmの長距離で開催されるPokka 1000kmを翌週に控えたGTドライバーたちは、1000kmの長さがポイントになると言う。

 GT500に参戦し経験豊富な本山選手は、この長距離を無事にゴールするのは難しいとしながら、シリーズチャンピオンを狙っていく上では大切なレースであるため、優勝、もしくは2位を目指す。安田選手は、1000kmのレースになれば、自信のマシンであるGT-Rのロングラン能力のよさがポイントになり、またGT-Rにはエアコンがあるのも有利に働くと見ている。

本山哲選手安田裕信選手(右)
番場琢選手片岡龍也選手番場選手と片岡選手は、同じチームながら2台体制のため、ライバル同士の立場となる

 一方、GT300の片岡選手は、BMW Z4の燃費のよさが、ピットインを繰り返すであろう他チームより有利に働くと見ており、片岡選手とほぼ同様の仕様のマシンを駆る番場選手は、シーズンで出遅れた分ウエイトハンデが軽いためここがチャンスと考えている。

 安田選手を擁しKONDO RACINGを率いる近藤監督は、夏に開かれるレースであることからトヨタ車が若干有利なところがあると予想しつつも、自チームのタイヤであるヨコハマタイヤの能力に期待。「当たったときのヨコハマの強さを信用する」と言い、GT500では数少ないヨコハマタイヤユーザーが強みになる可能性について言及していた。

 日本でも有数のレーシングドライバーが一般参加者と一緒に走れるこのイベントについては、異口同音に「楽しい」と語ってくれた。レンタルカートを使用するための性能差で抜かれることも、「Tシャツに日よけしている人に抜かれた」(可夢偉選手)、「インラップの人に抜かれた」(本山選手)と、楽しめていたようだった。

【お詫びと訂正】記事初出時、GT500のヨコハマタイヤユーザー数を誤っておりました。正しくは24号車(KONDO RACING)と19号車(LEXUS TEAM WedsSport BANDOH)の2チームになります。

(編集部:谷川 潔/Photo:安田 剛)
2012年 8月 13日