【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ
第9回:日産のカーウィングスをスマートフォンから利用する方法


 今回はGT-Rのカーナビを題材にしつつ、最近のカーナビに搭載されているリアルタイム交通情報提供サービスのスマートフォン未対応状況に、ささやかな抵抗を試みてみることにした。

パイオニアのカーナビには純正オプションでオービスポイントのインストールディスクが設定されていて、今年度版はパッケージに赤いGT-Rが描かれている

R35 GT-Rはカーナビを標準搭載。社外カーナビは搭載できない
 R35 GT-Rは、マルチファンクションディスプレイ(MFD)と呼ばれる液晶モニターを搭載していて、カーナビ画面やクルマのメカニズムステータス、走行インフォーメーションなどの表示に利用される。知っている人も多いと思うが、MFDはR34スカイラインGT-Rの時代にも搭載されていた。

 R34の時は、車体発注時に純正カーナビを選択すればMFDをカーナビ画面として利用できた(当時としては最新の“DVD”カーナビが選択できた)が、あえてこれを選択せず、センターコンソールの2DINスロット側に社外のカーナビを搭載することができた。

 R35の場合はどうかというと、純正カーナビは標準搭載となっており、MFDと完全統合されている。センターコンソールに2DINスロットはないため、R35では社外カーナビを搭載できない。「カーナビ標準装備」自体はわるいことではないのだが、クルマ好きであればあるほどカーナビは社外メーカーのものを選びたいという気持ちがあったりもするので、最初期のR35オーナーの間では賛否があったようだ。

 筆者はと言うと、自車位置の追従精度と多機能ぶりでカロッツェリア(パイオニア)のカーナビが好きで、前愛車のRX-7(FD3S)には同社のサイバーナビを入れていた。

 また、サイバーナビには日本全国のオービス(自動速度違反取締装置)位置をカーナビの地図上にインストールできるというユニークなオプションの設定があり、これをインストールするとレーダー探知機的な機能をナビ画面に集約できるので非常に便利なのであった。余談だが、R35にはカロッツェリアのカーナビを搭載できないにもかかわらず、最新版のオービスデータディスクのパッケージには赤いR35 GT-Rが描かれている(笑)。

リアルタイム交通情報サービスがスマートフォンに対応していない理由
 「ないものねだり」をしても始まらないので、筆者はR35 GT-Rに乗り換えると決めてからは、標準搭載の純正カーナビを徹底活用することを決意した。

 GT-R純正ナビはクラリオン製のもので、基本機能自体は同世代の他の日産車(現行フェアレディZ等)と同じものになる。純正カーナビとは言え、世代的には新しいものなので機能自体はそれなりに高い。何しろ最新世代のカーナビには半ば必須搭載機能とも言える、クラウドベースのリアルタイム交通情報取得に対応しているのだ。

 日産のリアルタイム交通情報提供サービスには「カーウイングス」との名前が付けられており、カーウイングスサーバーに集められる全国のリアルタイム交通情報は、搭載カーナビに接続した携帯電話を利用してダウンロードでき、ナビゲーションに役立てることができるようになっている。しかし現状、カーウイングスサーバーへのアクセスは、基本的にガラケーにしか対応しておらず、スマートフォンには対応していないのだ。

 ちなみにカーウイングスだけでなく、カロッツェリアの同種サービス「スマートループ」、トヨタ「G-BOOK」、ホンダ「インターナビ」も同様で、「スマートフォンへの未対応」を公言している。

カーウィングスの対応通信機器一覧ページ。スマートフォンには対応していないことを明言しているトヨタのG-BOOKやホンダのインターナビでも同じ

スマートフォンはハンズフリー通話と電話帳のメモリ読み出しには対応するが、カーウイングスサーバーへのアクセスは行えないとしている

 筆者は比較的、長くガラケー時代を送ってきたが、さすがに2012年からはスマートフォンを使うようになっていた。8月時点での所有機はサムスン製のAndroidスマートフォン「GALAXY NOTE」(NTTドコモ)だ。カーウイングスのWebサイトを一応チェックしてみたが、やはり想像通り。GALAXY NOTEと組み合わせて使えるのは、ハンズフリー通話機能と電話帳(アドレス帳)の読み出し機能のみで、カーウイングスサーバーへのアクセスは行えないと明記されていた。

 スマートフォンが主流になりつつあるこのご時世に、どうしてこういうことになっているか。これは実は、カーナビ側のインターネット接続機能の実装形態に原因がある。

 日産のカーウイングスに限らず、各社のリアルタイム交通情報サーバーにアクセスするにはインターネットを利用する。改めていう必要もないだろうが、スマートフォン自身は3Gネットワークなり、LTEネットワークなりの、各キャリアのネットワークを利用してインターネットに接続が可能だ。

 問題は、カーナビ本体と携帯電話との接続にある。カーナビと携帯電話(スマートフォン)との無線接続にはBluetoothが用いられるのだが、携帯電話が行うインターネット通信を、Bluetooth経由でカーナビ側に伝送する仕組みのDUN(Dial-up Networking Profile)が、スマートフォンのほとんどの機種に実装されていないのである。

AndroidベースのスマートフォンにBluetoothのDUN機能を提供するアプリ「FoxFi」

スマホ非対応カーナビでスマホを使えるようにするアプリ
 今でもカーナビ製品のオプションにVICSビーコンユニットが設定されているが、実はVICSビーコンはそろそろその役割を終えようとしている。代わりにITSシステムが台頭してきているし、何よりカーウイングスのようなクラウドベースのリアルタイム交通情報サービスは、ユーザーからのリアルタイム交通情報フィードバックだけでなく、VICSに代表される公共交通情報を含んだ最新情報を広範囲に渡って取れる。そのため筆者のGT-Rも、カーウイングスの利用を想定したのでオプションのVICSビーコンは付けていない。

 逆に言うと、カーウイングスが使えないと完全スタンドアローンのカーナビになってしまうのだ。「なんとかカーウイングスを動かさなければ……」ということで、ネット上をリサーチしてみると、Android用アプリにBluetoothのDUNを実現するものを発見。そのユーザーレビュー群には、これを利用することで各社のリアルタイム交通情報サービスを利用できたという報告もチラホラ。

 これはということで、実際に筆者も自分のスマートフォンのGALAXY NOTE(Android 2.3)で、GT-Rにて試してみることにした。

 筆者が選択したBluetoothのDUN機能提供アプリは「FoxFi」だ。無料アプリケーションで、8月時点ではVer.1.91.2が最新版となっている。

DUNアプリ「FoxFi」の設定方法
 FoxFiのインストール前、あるいはインストール後でもよいが、スマートフォンとカーナビをBluetoothで接続しておくのが大前提となる。そう、FoxFiは別にカーナビとスマートフォンのBluetooth接続を実現するわけではなく、Bluetooth接続されたスマートフォンにDUN機能を提供するものなのだ。

 確かにカーナビメーカー、自動車メーカーの公式対応状況では、カーナビのリアルタイム交通情報サービスをスマートフォンに対応させていないが、Bluetooth経由のハンズフリー通話や電話帳読み出しには対応している。ここは別途、取扱説明書などを見ながら行っておく必要がある。

 GT-Rの場合は、「設定」-「Bluetooth」メニューから「機器登録」を選択し、登録しようとしている機器が携帯電話であることを指定し、カーナビ側が接続待ち状態になったらスマートフォン側の「無線とネットワーク」設定メニューからBluetooth機器のスキャンを行い、カーナビからの接続待ちを許諾すればよい。

 なお、この工程は一度行えばOKで、以降は車内にそのスマートフォンを持ち込むと自動接続が行われる。

Bluetoothの設定携帯電話の登録を開始
カーナビ側が接続待ち状態になったらスマートフォン側の接続操作を開始Bluetoothの設定は「無線とネットワーク」メニューから接続(ペアリング)完了。以降は設定したスマートフォンを車内持ち込むと自動接続してくれる

 言うまでもないことだが、スマートフォン側のBluetooth機能はあらかじめ有効化しておかなければならない。

 FoxFiは起動しただけではダメで、起動後に「Activate Bluetooth DUN」のチェックをONにする必要がある。この操作後に「Bluetoothアクセス権限の要求」の問いかけがあるが、これには「はい」を選択しておく。

BluetoothをONにしておくのが大前提「Activate Bluetooth DUN」をチェックすることでカーナビがスマートフォン経由でインターネットにアクセスできるようになるここでは「はい」を選択

 FoxFiは、6月のバージョンアップでだいぶ安定性が向上したが、万が一、うまく接続できないときは、一度スマートフォン側のBluetooth設定をOFFにして、FoxFiのDUNもOFFにしたあと「Bluetooth ON→FoxFiのDUN ON」という順番でONにしていくとよい。一度接続がうまくいけば、以降スマートフォン側のBluetooth関連の設定や、FoxFiのON/OFFを変更したりしない限りは自動接続されるはずだ。


正しく動作しているかのチェックは「CARWINGS」メニュー下の「渋滞情報ダウンロード」で行う

スマホが定額データ通信サービスでの利用ならば渋滞情報の自動ダウンロードを設定しよう
 これで設定は終わり。

 動作チェックとしては、車のエンジンを掛けるか、ACCをONにしてカーナビを使用可能状態にして「CARWINGS」メニュー下の「渋滞情報ダウンロード」を選択し、「情報センターから最新の交通情報を取得しました」と表示されればOKだ。

 ちゃんとデータの送受信が行われているかを確認したい人は、スマートフォンでFoxFiのアプリ画面を出してみるとよい。FoxFiのDUN機能が活用されているときは、右上に送受信しているデータ量が表示され、同時にFoxFiの「i」の文字の一部がオレンジに明滅する。


交通情報が取得できれば成功だデータの送受中はFoxFiの「i」の文字がオレンジに明滅する

 リアルタイム交通情報が取れるようになると、カーウイングス対応のカーナビでは「最速ルート探索」が利用できるようになる。VICSビーコンでは進行方向30kmまでの交通情報しか取れないが、カーウイングスサーバーから取ってくるリアルタイム交通情報にはこうした制限がなく、目的地までの全ルートに渡っての広域の交通情報を取ることができる。

 もう1つ、リアルタイム交通情報が取れるようになったらぜひ設定しておきたいのが、自動取得の時間間隔設定だ。これを有効にすると、走行中にドライバーがメニュー操作をしてなくても、カーナビが定期的かつ自動的にリアルタイム交通情報を取得して適宜ルート案内に反映してくれるようになる。

 設定は、「設定」メニューの「電話・通信」-「CARWINGS」にて行える。設定は5分、10分、30分、1時間から選択できる。合わせて、新しい行き先を設定する都度、リアルタイム交通情報を取ってくるように「行き先設定時にダウンロード」も「ON」にしておきたい。

「最速ルート探索」機能はリアルタイム交通情報がとれるようになって初めて利用できる機能だ
自動的にリアルタイム交通情報を取得するように設定しよう車の使用スタイルに合わせて自動ダウンロードの時間間隔を設定しよう

刻々と交通状況が変わる都心部の一般道や首都高を利用する際などは、リアルタイム交通情報サービスは非常に便利。スマホだからといってもう遠慮する必要はないのだ

 今回紹介したようなアプリを用いたDUN経由の通信は、携帯電話の通信料にどう掛かってくるのか気になる人も多いことだろう。

 筆者のGALXY NOTEは、いわゆるデータ通信定額サービスの「Xiパケ・ホーダイ・フラット」での契約になっており、GT-R納車後の約半年間、FoxFi経由のDUNでカーウイングスを利用してきたが、同定額サービスの課金外請求をされたことはない。おそらく、データ通信的にはPCを使用してのテザリングが利用可能なキャリア/機種では、FoxFiの利用は問題ないと思われる。なので筆者は、自動ダウンロードの時間間隔は「10分ごと」の設定にしている。

 ということで、リアルタイム交通情報サービスが利用できないから……ということでスマートフォンに移行をためらっている人は、ぜひとも今回のリポートを参考にして頂きたい。

(トライゼット西川善司)
2012年 9月 24日