エヴァンゲリオンレーシング、SUPER GT第6戦富士は13位
3戦連続ノーポイントという結果に


 9月9日、2012 AUTOBACS SUPER GT第6戦「FUJI GT 300km RACE」の決勝レースが富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された。今回はCar Watchの読者に人気の高い、エヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細をお届けする。

 全8戦で行われるSUPER GTシリーズはこのレースを含め残り3戦。シリーズチャンピオン獲得の争いもいよいよ佳境だ。エヴァンゲリオンレーシングはシーズン序盤は好調な滑り出しを見せたが、上位入賞を狙った第4戦SUGO、第5戦鈴鹿でノーポイントとなりチャンピオン争いから大きく後退した。

 第6戦の舞台は富士スピードウェイ。長いストレートがあり直線スピードが重視されるため、コーナリングマシンであるエヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電には不利なサーキットだ。だが、今年5月は2位、昨年9月は3位と結果はわるくない。今回も予想外の好成績を期待したいところだ。


練習走行は6番手タイム

9月8日 練習走行、予選
 いつもどおり加藤選手がタイヤ選択、マシンセッティングを進め、ラップタイムは1分41秒712と6番手タイムを出す。トップの33号車 HANKOOK PORSCHEとは1.3秒差とかなりの差だ。いつもは2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電の前にはFIA-GT勢がずらりと並ぶのだが、今回は31号車 apr HASEPRO PRIUS GT、16号車 無限 CR-Z GTの2台のハイブリッド車が上位に食い込んできた。

 加藤選手によりセッティングが決まったところで高橋選手に交代。8月のテストでは1分42秒台が出ていたが、この日のベストタイムは1分43秒492と低迷した。

 今回の予選方式はノックアウト方式。予選Q1の上位16台が予選Q2に進出。予選Q2の上位10台が予選Q3に進出しスターティンググリッドを争う方式だ。Q1、Q2で使用出来るタイヤは1セットで、Q1、Q2で敗退した場合はそのタイヤがスタートタイヤとなり、Q3に進出した場合は新たに1セットタイヤが使用でき、そのタイヤがスタートタイヤとなる。

 ノックアウト方式では同じドライバーが連続して乗ることができないので、通常はQ3を高橋選手、Q2を加藤選手が担当し10位以内を確保する作戦を取っている。普段であれば高橋選手のQ3突破は確実だが、練習走行のタイムではそれも厳しい。少なくとも1分42秒台に入らないとQ2進出はできない。

 Q1を加藤選手が担当することも考えたが、8月のテストで1分42秒台が出ていたことと、いつものように走り込むにつれタイムの上がる高橋選手の予選タイム向上に期待しQ1は高橋選手で臨むことにした。

 予選Q1開始。高橋選手はコースインし2周でタイヤを暖め3周目にタイムアタック。セクター1は練習走行を上回ったがセクター2はやや遅れ、セクター3で挽回するも1分43秒246。練習走行より0.1秒は速くなったが42秒台には届かなかった。

 他車のタイムを見るとQ1突破は1分42秒中盤。0.7秒ほど短縮しないとQ2進出が難しい状況だ。高橋選手はもう1周タイムアタックをするが、1分43秒224とほぼ同じタイムで22番手。これ以上のアタックを試みて、結果Q1の突破ができず酷使したタイヤで決勝をスタートするのはリスクが大きいと判断、Q1突破を断念した。

ピットウォーク、キッズウォーク、グリッドウォーク
 前戦の鈴鹿はレースクイーン5人が勢揃いしたが、今回は2輪のレースと日程が重なったため水谷望愛さん、千葉悠凪さん、高塚麻奈さんの3人が参加。いつもどおりピットウォークは多くのファンが集まり、盛んにシャッターを切っていた。

水谷望愛さん千葉悠凪さん高塚麻奈さん
ピットウォークでは多くのファンがシャッターを切っていたキッズウォークは高橋選手、加藤選手も参加し子供達と記念撮影グリッドにマシンはないが、3人のレースクイーンにファンは殺到した

9月9日 フリー走行、決勝
 天気予報では雨が予想されていたが、この日も天候は晴れ。朝のフリー走行は決勝を想定してフルタンクでの走行。高橋選手は1分44秒台とレースラップとしては充分なタイム。加藤選手は1分43秒台でこれも想定内のタイムだが、他車は想定外に速く4台が1分41秒台で走行した。加藤選手のタイムは16位となり、ここまで低い順位は珍しく、決勝はかなり厳しい戦いになりそうだ。

 決勝は高橋選手が前半のスティントを担当。加藤選手が後半を担当する。決勝スタート1時間前のウォームアップ走行で高橋選手がブレーキをロックさせ、タイヤにフラットスポットを作ってしまった。

 SUPER GTのルールでは予選で使用したタイヤで決勝をスタートしなければならないので、フラットスポットができたタイヤでスタートしなければならない。交換すればペナルティの対象となる。

 選択できる作戦は3つ。
・このままスタートし決勝レース中にタイヤ交換
・スタート前にタイヤ交換をし、グリッドからスタートしドライブスルーペナルティを受ける
・ピットスタートを選択し、スタートと同時にタイヤ交換を行い最後尾から追い上げる
不幸中の幸いは予選順位が22位と後方に沈んだため、正規のグリッドを捨ててもロスは少ない。チームはピットスタートを選択しレースに臨むこととした。

 14時、フォーメーションラップを終えシグナルグリーン。決勝レースがスタートした。同時にピット作業を開始しタイヤを交換、ジャッキダウン、エンジン始動、高橋選手はピットを後にした。ピットロードの長い富士なのでコースインしたころには他のマシンの後ろ姿も見えないほど差が開いてしまった。

マーシャルカー(FRO)に追われるように最後尾からレースに参加したまさに一人旅

 集団最後尾から10秒以上差が開き高橋選手は序盤から1分44秒台で単独走行。上位陣は1分43秒台だが、下位グループのラップタイムは1分45~46秒台。徐々に差を縮めていった。6周目には前を行く88号車 マネパ ランボルギーニ GT3との差を4秒まで短縮したが、最終コーナーでGT500クラス3位の35号車 KeePer Kraft SC430に追い抜かれた直後に接触しスピンしてしまった。

 スピンによるタイムロスに加え、この接触によりドライブスルーペナルティが課せられ縮まりかけた差は大きく広がった。リタイヤするマシンがあり見かけ上の順位は20位に上がったが、最後尾の位置は変わらず21周目にピットイン、加藤選手にドライバー交代をしてコースに復帰した。

ドライブスルーペナルティを終えコースに復帰する高橋選手後方からトップの66号車が迫ってきた。2号車はこの後ピットインし周回遅れに

 この時点で既に周回遅れ。上位入賞は望めないが、10位以内に入りポイント獲得を目指す。加藤選手は26周目に18位、27周目に17位、32周目に16位と徐々にポジションをアップしていく。レース折返しとなり上位陣もピットインし一旦周回遅れを脱し同周回となるが、トップの33号車 HANKOOK PORSCHEが39周目には背後に迫り再び周回遅れとなった。

 2位の16号車 無限 CR-Z GTと3位の31号車 apr HASEPRO PRIUS GTも加藤選手に迫ってきた。31号車 apr HASEPRO PRIUS GTは1分42秒のハイペースだが、16号車 無限 CR-Z GTはそれほど速くはない。しかし周回遅れが2位、3位を抑えこむわけにはいかないのでペースを落とし2台を先行させた。抜かれても順位が落ちるわけではなく、逆に66号車 triple a Vantage GT3がリタイヤしたため15位にポジションアップした。

トップ33号車の後方、2位の16号車を先行させ2号車が続く16号車、2号車の後方から42秒台のハイペースで31号車が迫ってくる16号車のペースは遅く、終盤は抜き返して14号車とバトルとなった

 加藤選手は45周目の100Rで14位の27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリに並びかけ、続くヘアピンの進入で抜き14位に浮上、13位の14号車 Team SGC IS350を追った。

 14号車 Team SGC IS350との差は11秒。加藤選手は徐々にその差を縮めレース終盤の57周目にバトルに持ち込んだ。ヘアピンの立ち上がりで加藤選手が先行するが、ダンロップコーナーのブレーキングで14号車 Team SGC IS350が前に出る。59周目に5号車 マッハGoGoGo車検Ferrari458がタイヤバーストでリタイヤし13位にポジションアップ。14号車 Team SGC IS350との僅差のバトルは最終ラップまで続くが加藤選手は抜くことができず0.25秒差の13位でチェッカーを受けた。予選Q1敗退、ピットスタート、スピン、ドライブスルーペナルティとわるい流れから抜けることができず3戦連続のノーポイントとなった。

 残り2戦。このレースで優勝しポイントランキング1位に立った33号車 HANKOOK PORSCHEとの差は35ポイント。理論上はチャンピオンの可能性を残しているが、事実上はチャンピオン争いからは脱落した。

 次戦は得意とするオートポリス。今シーズン2回目の表彰台を獲得して欲しい。

(奥川浩彦)
2012年 9月 24日