【2012WTCC日本ラウンド】レース2:リバースグリッドでポールスタートしたBMW ステファノ・ダステが優勝
ホンダ シビックWTCCは10位でゴール


 2012 FIA 世界ツーリングカー選手権(WTCC)日本ラウンドは、本日(10月21日)三重県鈴鹿市にある鈴鹿サーキットにおいて決勝レース1(レース1)が開催され、シボレーワークスの3台が1-2-3フィニッシュを飾った。引き続き15時45分からは決勝レース2(レース2)が行われ、予選トップ10リバースグリッドのルールにより、レース2をポールからスタートした26号車ステファノ・ダステ(BMW 320 TC)がポールトゥウインを決めた。2位は74号車ぺぺ・オリオラ(セアトレオンWTCC)、3位は3号車ガブリエル・タルキーニ(セアトレオンWTCC)。

レース2を優勝したBMWの26号車ステファノ・ダステ

レース2:決勝結果

順位ドライバー車両
1ステファノ・ダステBMW 320 TC
2ぺぺ・オリオラセアト レオン WTCC
3ガブリエル・タルキーニセアト レオン WTCC
4ロバート・ハフシボレー クルーズ 1.6T
5アラン・メニュシボレー クルーズ 1.6T
6イバン・ミューラーシボレー クルーズ 1.6T
7メヒディ・ベナーニBMW 320 TC
8アレクセイ・デュルカノセアト レオン WTCC
9アレックス・マクドウェルシボレー クルーズ 1.6T
10ティアゴ・モンテイロホンダ シビックWTCC
11フランツ・エングストラBMW 320 TC
12トム・ボードマンセアト レオン WTCC
13ダリル・オーヤンシボレー クルーズ 1.6T
14アルベルト・セレックBMW 320 TC
15トム・コロネルBMW 320 TC
16ジェームス・ナッシュフォード フォーカス S2000 TC
17チャールズ・カキンBMW 320 TC
18トム・チルトンフォード フォーカス S2000 TC
19吉本大樹サンレッド レオン WTCC
20レネー・ミュンニッヒセアト レオン WTCC

 この日本ラウンドがデビューレースとなった、ホンダのシビックWTCCは、スターティンググリッドの11位から1つ順位を上げて10位。8号車~10位からスタートしたワークスシボレー勢は、追い上げて2号車ロブ・ハフ、8号車アラン・メニュ、1号車イヴァン・ミューラーの順で4位~6位に入賞した。これにより、2号車ハフと1号車ミューラーは再びドライバーランキングで同点となり、残り2ラウンド(上海とマカオ)を残してドライバータイトル争いは再び振り出しに戻り、残り2レースでさらに厳しいチャンピオンシップ争いが展開されることになりそうだ。

リバースグリッドよりポール獲得のダステが抜きにくい鈴鹿でポールトゥーウインを達成
 WTCCのレース2は、2回の予選を経て決定されるレース1のスターティンググリッドのうち、トップ10をリバースグリッドにする形でグリッドが決定される。このため、予選の結果(別記事参照)では10位だった、26号車ステファノ・ダステがポールポジションとなる形になる。以下9位だった74号車ぺぺ・オリオラが2位、8号車位だったアレクセイ・デュルカノが3位となり、予選1~3位を独占したワークスシボレー勢が8号車~10位という形でスタートすることになった。

26号車ステファノ・ダステがポールポジションからスタートを決める

 そしてレース2のもう1つの特徴は、レース1がセーフティカーの先導からのローリングスタート(SUPER GTなどと同じ方式)であるのに対して、レース2はF1などと同じようにグリッドポジションから静止状態から一斉にスタートを切るスタンディングスタート。このため、スタートが成功するかどうかなどにより波乱が起きることもあるし、昨年の第2レースのように1、2コーナーで接触が発生してレースの展開が大きく変わるということも起こりうる。

 今回の第2レースでこのスタンディングスタートで“大損”をしたのが、昨年の第2レースの覇者である15号車トム・コロネル(BMW 320 TC)。コロネルはスタートでエンストを起こしグリッドにスタック、すぐにエンジンをかけることができ再スタートは切れたものの、最後尾まで交代する結果となった。また、同じくスタートで順位を下げたのは4号車アレクセイ・デュルカノ(セアトレオンWTCC)。予選3位からスタートしたデュルカノだが、スタートで順位を落とすことになり、最初周回が終わってみると、5位に後退していた。さらに、デュルカノは3周目の最終コーナーでアウトに飛び出しさらに交代することになり、8位~10位からスタートしたワークスシボレー勢にもかわされ8位に後退することになった。

 そのチームメイトとは対照的に5位グリッドからスタートした3号車タルキーニはレース1と同様に目が覚めるようなよいスタートを決め、1周目が終わると3位に浮上し、無難なスタートを切った1位26号車ダステ、2位74号車オリオラを追う展開となった。スタートでポールからスタートした26号車ダステは、最初の何周かこそ74号車オリオラに迫られる展開だったが、最後は3号車タルキーニに激しく追われていた74号車オリオラが防戦一方になったこともあり、そのままゴールし、嬉しい今シーズン2勝目を飾った。なお、今シーズン、ワークスシボレーのドライバー以外で2勝目を上げたドライバーはダステが初で、抜きにくい鈴鹿サーキットの東コースという優位性が活きたということであっても、賞賛されてよい勝利だ。

 2位争いは、最終周まで3号車タルキーニが激しく74号車オリオラを攻める展開になったが、前のドライバーが何かミスをしなければ、なかなか抜けないコース特性もあり、オリオラはミスをせず最後まで守りきることができた。なお、オリオラはこの2位により、ヨコハマトロフィーで、トップを走る14号車ノルベルト・ミケルズに10ポイント差に迫っており、こちらのチャンピオン争いも残り2戦で激しくなっていきそうだ。

ワークスシボレーの2人は再び同点のまま残り2戦のファイナルバトルへ突入
 8位~10位というグリッドからスタートしたワークスシボレー勢だが、スタートで、2台を抜き6~8位へと浮上し、さらに前述のデュルカノの最終コーナーでのコースアウトの隙に5~7位へと3台そろって進出した。スタート時には8位2号車ハフ、9位1号車ミューラー、10位8号車メニュという順位だった3台の並びは、スタート時に2号車ハフ、8号車メニュ、1号車ミューラーと入れ替わる展開となった。

3位に入った3号車ガブリエル・タルキーニ2戦連続ポイントを取ったホンダの18号車ティアゴ・モンテイロ80号車の吉本大樹

 その後はレースで2号車ハフが4位を走る25号車ベナーニに追いつくものの抜くまでには至らず、膠着した状態が続いた。その均衡が破れたのが23周目の1コーナーで、2号車ハフは25号車ベナーニをオーバテイク。続いてハフに抜かれたベナーニの体勢が若干崩れた隙に乗じて8号車メニュもベナーニをオーバーテイクした。これにより、4位2号車ハフ、5位8号車メニュ、6位25号車ベナーニ、7位1号車ミューラーとなり、このままいくと、ハフがミューラーをドライバー選手権のポイントで逆転するという状況になった。

 ハフにとっては望みうる最高の展開だったが、そこは昨年、一昨年と2年連続でドライバーズチャンピオンを獲得している1号車ミューラーもただ者ではなく、最終ラップの1コーナーでスリップストリームからインに入るというまさに教科書通りのオーバーテイクをみせ、6位に浮上してみせた。これにより、4位2号車ハフ、5位8号車メニュ、6位1号車ミューラーの順でゴールすることになった。

4位となった2号車ハフ5位となったミューラー。これでハフと同ポイントにシリーズチャンピオンをかけた、シボレー3台の争い

 これにより、1号車ミューラーと2号車ハフが345ポイントと同ポイントで並ぶことになり、残り2戦(上海とマカオ)を残し、チャンピオンシップ争いは再び白紙に戻ることになった。おそらく、このまま最終戦までこの2人による激しい争いが展開されることになると予想されるだけに、今後の2レースからも目が離せそうにない。

レース2終了後、ダルマのもう片方の目に目を描き入れ、WTCCチーム3連覇を祝うシボレーチーム。今後は個人タイトル争いが本格化する

課題も見えたシビックWTCCだが、新しい車としてはかなりよいスタートを切った
 11位からスタートしたホンダのシビックWTCCをドライブする18号車ティアゴ・モンテイロは、前を走る13号車フランツ・エングストラを22周目にパスして、10位に浮上しそのままゴール。鈴鹿がデビュー戦となったシビックWTCCに両レースで入賞ポイント獲得という結果を残した。

18号車ティアゴ・モンテイロは、6号車を抜き10位となった

 来年からシビックWTCCに乗ることが決まっているガブリエル・タルキーニも表彰台を獲得した記者会見で「シボレーにせよ、BMWにせよ、デビューシーズンはかなり厳しい滑り出しだった。それを思えば、すでにミッドフィールドで戦えているホンダの出だしはわるくないと思う」と述べ、ホンダがテスト参戦としてはよい滑り出しを見せたという見解を示している。今後ホンダは残り2戦にテスト参戦し、2013年の本格参戦に向けた車の熟成を進めていくことになる。

 シビックWTCCはストレートなどでは他のマニファクチャラにおいて行かれることもなく同等の戦いができていたが、コーナーでははねるなど車としての熟成がまだまだであるという見方をする関係者も多く、今後の2レースでそのあたりの課題を徐々に解消していくことになるだろう。

 なお、日本人選手の80号車吉本大樹は、レース1と同じように車がかなりオーバーステアになっており、何度も飛び出すシーンがあり19位完走。もう1人の日本人選手75号車加納政樹選手は21位完走となった。

【訂正】記事初出時、ティアゴ・モンテイロ(ホンダ シビック WTCC)の順位をレース1、レース2とも10位としておりましたが、レース1では上位選手のペナルティにより9位となりました。それに伴い、一部記述を変更しました。レース2の順位には変更はありません。

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)
2012年 10月 21日