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シムドライブ、0-100km/h加速4.2秒のEV開発車第3号「SIM-CEL」発表会
Cd値0.199を達成。再生可能エネルギーの有効活用も提案
(2013/3/27 20:32)
シムドライブは3月27日、電気自動車(EV)開発プロジェクトの成果である「SIM-CEL(シム・セル)」の発表会を都内で開催した。
シムドライブは、慶應義塾大学環境情報学部教授の清水浩氏が代表取締役社長を務める、EVの研究開発を行っている企業。車輪それぞれがモーターを持つ「インホイールモーター」と、車体床下にバッテリーやインバーターといった走行コンポーネントを収める「コンポーネントビルトイン式フレーム」を核に、EVの普及に向けた技術開発を行っている。
今回発表したSIM-CELは、同社の先行開発車事業の第3号にあたるモデルで、車両コンセプトは「突き抜ける加速感+ユニークなスペースユーティリティ」。CELは「SIM-Cool Energy link」の頭文字からとったもの。詳細は後述するが、SIM-CELでは新しいエネルギー循環サービスの提案を行っており、「余分な熱を排出しない(=Coolな)」再生可能なエネルギーをより有効利用できるとの願いを込めて付けたと言う。
発表会にはシムドライブの福武總一郎会長、清水氏とともに、SIM-CELの詳細について各担当者が説明を行った。
はじめに清水氏は「EVが普及する条件は、航続可能距離が十分に長いというのが1つだが、何よりお客様が買いたいと思う特長を持たせることが重要。加速も素晴らしい、広さもある、乗り心地も素晴らしい。(これに加え)さらに新しい付加価値をつけていくことによって、(EVという)商品が社会に受け入れられていくのではないか、そう考えるのが私どもの信念。おかげさまで、この信念を素晴らしい形で実現したのが第3号になる」と、SIM-CELの完成度の高さを評価。
SIM-CELのボディーサイズは4840×1830×1400mm(全長×全幅×全高)と大柄なサイズながら、乗車定員は2名というユニークなモデル。これに最高出力65kW、最大トルク850Nmのモーターを各ホイール内に収め、計260kW/3400Nmのパワーを発生する。これにより0-100km/h加速4.2秒、加速度0.7G以上を実現する一方で、走行エネルギーの消費量は91.2Wh/km(JC08モード)を実現し、「突き抜ける加速感と世界最高レベルの電力消費効率を達成した。加速感はEliica(慶應義塾大学開発の8輪EV)と並ぶ」と、清水氏はその特長を語る。一充電あたりの航続可能距離は324kmとしている。
また、SIM-CELのシャシーは昨年発表した先行開発車事業第2号「SIM-WIL(シム・ウィル)」で採用する、スチールパイプ(鋼管)内部に高圧を注入し、複雑な形状を一体成形するという新構造の「スチールスペースフレーム(SSF)」をベースにさらに剛性を高めた改良版を採用。さらにボディーの外板にはカーボン繊維などを使うことで、鉄板を採用したのと比べ79kgの軽量化ができたと言う。
特徴的なエクステリアデザインに関して解説した畑山一郎氏は、「通常、クルマのデザインはデザインをしてから空力の最適化を図るが、SIM-CELは空力的に最適な水滴形状形がありきでデザインを行った」と、通常とは異なるアプローチでデザインを行ったと言う。そのため、「一般的なクルマのCd値は0.35~0.4あたりだが、SIM-CELは我々の目標値である0.2未満の0.199を達成した」と、空力性能に優れることをアピールした。
そのほか、SIM-CELでの利用を想定した新しいエネルギー循環サービスの提案も行った。これは電力会社、EVユーザー、需要家がクラウドサービスで連携し、それぞれにエネルギー充放電装置、接続装置、電力量通信装置を設置し、複数の発電と充電の予定情報から組み合わせる発電・充電を特定してこれらを可視化しようというもの。
例えば風力発電だけでSIM-CELの充電を行い、さらに充電を必要とするレストランにSIM-CELで行き、放電する量に応じて交換サービス(食事やコーヒーなど)を受けることもできると言う。
【お詫びと訂正】記事初出時、車名に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。