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【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ

第21回:元日産GT-R開発責任者、水野和敏氏に聞く「日産GT-Rの真実」(前編)

 「日産GT-R」というクルマは2007年末に登場して以来、その価格、性能、外観、開発様式に至るまで、ありとあらゆる要素が語りぐさになった。性能に関しては賛辞の声が多く、その一方で価格に関しては「スカイラインGT-R」の価格帯から上がってしまったために、残念がる声が多かったが、いずれにせよ日産GT-Rは登場後、クルマ好きからは常に意識される存在となり、日本を代表するスポーツカーとしての立場を確立した。

 登場直後はともかく、しばらくすれば忘れ去られてしまう「無味無臭」な国産車もある中、ここまで話題の尽きないクルマも珍しかったと言えよう。日産GT-Rがここまで特異な存在となったのは、この車両の開発責任者を務めてきた水野和敏氏の存在に因るところが大きいと思う。

 水野氏は、自身が思い描いたスーパーカーの理想形を突き詰めていく形で日産GT-Rの開発を進めた。しかも、その開発スタイルを「開発チーム」という開発の常識に囚われないアプローチで実践したのだった。

 ちなみに一般的なクルマの開発では、クルマを構成する各部位の開発を担当する各部門が、いわば「パーツ単位」で開発をする。日産GT-Rの場合は、そうした各部門から人員が集められ「開発チーム」として招集されたため、日産社内でも特異なプロジェクトとして認知されていたようだ。

 そんなGT-R開発チームを取りまとめていた「ミスターGT-R」の異名を取る水野氏も、2013年3月末日を以て日産自動車を退社。

 水野氏の退社と同期するように、日産GT-Rは異例の「開発チーム制」による開発スタイルを終了し、GT-R開発チームは解散。チームメンバーは元いた所属部署に戻り、日産GT-Rは日産のその他の車種と同じ、開発部門制による開発スタイルに戻されたと言う。水野氏の手から離れた日産GT-Rは、今後どのような進化を見せてくれるのか、実に楽しみだ。今年は東京モーターショーもあるので、その進化の片鱗が垣間見られることを期待したいところである。

 さて、今回は“ミスターGT-R”水野和敏氏にインタビューする機会が得られたので、その模様を2回にわたってお届けしたいと思う。前編では、筆者のオーナー目線で日産GT-Rへの質問にお答えいただいた話題を中心にお届けする。

走りの遺伝子に妥協しないラインアップ展開

 筆者は日産GT-Rを普段の街乗りで使っている。買い物もこれで行くし、取材もこれで行く。

 使っていて便利なのはスポーツカーというジャンルに属するのにトランクが非常に大きいところ。キャリーバッグならば3つは入る広さなので、取材で使う機材は問題なく積める。また、助手席も広く、助手席や助手席フロアもけっこうな荷物置き場にできる。後部座席も、取材先で仲間の記者がいたときは送るのにも使えて便利だ。2シータースポーツカーだとこうはいかないだろう。

 あまり知られていないが日産GT-Rは、意外なことに後部座席がなかなか広い。筆者の前の愛車であるRX-7(FD3S)の後部座席は、大柄な人だとお尻が入らないほど狭かったが、日産GT-Rの場合は、座面自体は一般的なセダンに近い広さがある。ただ、空力デザインの関係で後部ガラスが斜めに落ちているので、身長160cm以上の人だと頭がこのガラスに付いてしまう。ここだけはセダンとは明確に違う部分ではある。

 しかし、逆に言えば身長160cm未満であれば普通に座れてしまう。特に子供や小柄な女性が座るには問題がない。日産GT-Rがこのようにユーティリティ性を重視して設計されたのはどうしてなのだろう?

水野和敏氏(元日産自動車「GT-R」開発責任者)

水野氏:実はこれ、単純なことなんですよ。日産GT-Rを「2+2」の4人乗りレイアウトにしたのは、お客さまが経費で落とせるように、という配慮(笑)。

 日産GT-Rは、私が構想段階から「ユーザーを見て開発する」「このクルマの客層の要求に対応する」ということでした。1000万円前後のクルマになりますから、自営業の方などはこのクルマを経費で買われたりするんですよ。その時に2シーターでは税務署に「なにこれ?」って言われちゃうでしょう(笑)。西川さんもGT-Rを便利に使っているわけですよね? それがGT-Rの開発コンセプトとして掲げた「マルチパフォーマンス」要素の1つでもあるんです。

 実際、お客さまには好評いただいています。「2シーターじゃないとスーパーカーじゃない」なんて言うような常識に囚われた概念の外でGT-Rは開発しているんです。

 「先代」という表現をすると水野氏に怒られてしまいそうだが、かつてのスカイラインGT-Rは「スタンダード」モデルと「Vスペック」モデルの2グレード構成だった。両車は出力馬力やトルク性能こそ同じだったが、4輪駆動制御システム「ATTESA-ETS」(Advanced Total Traction Engineering System for All・Electronic-Torque Split)に格差が設けられており、Vスペックには後輪の左右輪のトルク配分をよりアクティブに電子制御する「PRO」版が搭載されていた。

 日産GT-Rでは「ピュアエディション」「ブラックエディション」「プレミアムエディション」の3グレードが展開されているものの、ATTESA-ETSは同一のものが搭載されていて、走行性能に差は与えられていない。ピュアエディションは基準グレードに相当し、ブラックエディションは内装をよりスポーティに仕立て上げたもの、プレミアムエディションは内装をラグジュアリーに仕立て上げたものだが、メカニカル部分や電子制御は仕様を共通としているのだ。こうしたグレード展開はかなり独特である。

水野氏:それは私が「性能は1つ」にして「お客さまがどうGT-Rと付き合うか」の部分の方を重視したラインアップに仕立てたからです。「速さの尺度は変えない」「走りのDNAは妥協しない」というのが私のGT-Rへのこだわりです。その絶対性能に対して何をプラスするか、それがGT-Rのラインアップ展開なんです。

 私に言わせれば「性能にグレードを付ける」というのは「大衆車の論議」なんですよ。GT-Rはそうした枠外の存在ですから。そこだけは譲れなかったですね。

 ただ、GT-Rオーナーには富裕層の方も多く、そうした方々の中には、GT-Rをサーキット走行専用に使いたいとおっしゃる方々もおられます。そこで、2012年モデルからは専用の足まわりを搭載できたり、後席を省略することで軽量化できたりする「トラックパック」をオプションで設定しました。

 トラックパックは軽量な分、身軽にサーキットで振りまわすには高い性能を発揮しますが、重量が減った分(トラクションが落ちるため)0-100km/hタイムは基準車よりも遅いですし、ウェット条件の走行ではやはり遅くなります。

ブランド力を築き上げるために

 日産GT-Rは、2013年モデルからプレミアムエディションに対して「ファッショナブル・インテリア」という豪華仕様の内装オプションを新設した。すでに、内装を豪華にしたモデルとしては、約1500万円の「エゴイスト」という特別なグレードが存在するが、このファッショナブル・インテリアは、このエゴイストのエントリーモデルというような位置づけだ。

 エゴイストはともかく、プレミアムエディションに最初からこういう感じのオプションがあってもよかったのではないだろうか。

水野氏:こういう豪華、贅沢仕様というのは後から出すようにしなければダメなんです。どうしてかと言うと、基準車、ブラックエディションなどのオーナーが、自分が乗るのは“廉価仕様”という負い目を感じてしまうからです。

 そのためこういうのは、基準モデルがあるレベルで評価されてから始めないとダメで、そのために基準モデルの内装を最初は3年掛けて磨き上げてきたわけですよ。そして2011年にエゴイストが登場し、だからこそ、それまでのモデルのオーナー達にさえも「憧れ」を感じさせることができたわけです。

 日本車はこれまでどうしても最初から「安いものから高いものまで全部取り揃えていまっせ」というようなスーパーマーケット商法に陥りがちでした。それではブランド力が高まらないんですよ。

 ちなみに欧州車も、GT-Rのようなマーケティング方式を採用していますよね。日本車もこうしたブランド作りのノウハウは彼らから学ぶべきだと思います。

 日産GT-Rは、日本国内だけでなくワールドワイドで販売されている。スカイラインGT-Rの時代は、日産としてはイギリスなどの左側通行国に対して少量輸出したことはあるが、初めからカタログモデルとしてワールドワイドに展開されたのは日産GT-Rが初めてだ。

 フェラーリやポルシェがそうであるように、スーパーカーというのは「ブランド力」も重要であり、ユーザーはそのブランド力を含めてフェラーリやポルシェを選択する。

 日産GT-Rは、そうした欧州スーパーカーに対抗できるくらいのブランド力を築くことを命題にしたモデルでもあった。日産としては難度の高い挑戦であっただろうが、水野氏は日産GT-Rを性能だけでなく、そうした「ブランド力の構築」にも配慮した開発をしていたのだろう。

 今後、この日産GT-Rのブランドはどうなっていくのだろうか。

水野氏:ブランドというのは高い価値が継続されて創出されていくものなんです。だからGT-Rというブランドは、R36が登場しなければ成り立たないと思っています。しかもそのR36は、R35と一貫したコンセプトがなければダメでしょう。

 例えば歌手の中で一発屋のヒットメーカーもいらっしゃいます。スポーツ選手で新人王を取る人もいます。しかしその後、継続して成果を出した人だけが人々の記憶に残り、高い評価を得るんです。

 ブランドで言えば、日本の家電製品がワールドワイドで以前ほどの力を失いつつある。ご存じのようにテレビ製品は、ワールドワイドではナンバー1のシェアを持つのはサムスン(ディスプレイサーチ調べ。2012年に約28%)で、ナンバー2はLGエレクトロニクス(同約15%)だ。日本メーカーはソニーが3位(約9%)、パナソニックが4位(約7%)、シャープが5位(約5%)という状況だ。韓国メーカーが1位、2位を独占という状況だ。

 自動車の方はワールドワイドではトヨタ自動車が1位、GMが2位、フォルクスワーゲンが3位、日産が4位、ヒュンダイ/KIAが5位(日本貿易振興機構調べ)となっている。韓国メーカーであるヒュンダイ/KIAとトヨタとの差は結構あるが、実はヒュンダイ/KIAは8位の本田技研工業の2倍の販売台数を売り上げていて大差がついている。日産GT-Rの話からややずれてくるが、日本車のブランドというものも心配になってくる。

水野氏:ここまで、日本の家電製品が力を落としてきたのはブランド力の低下が原因でしょう。どうしてこんなことが起こったかと言えば、結論から言えば、私は経営者の判断がまずかったと思っています。

 まず、販売店(売り手)の意見を重視した製品を作り続けたのがまずかったですね。売り手というのは、いかに早く商談を済ませてお客の回転率を上げるか、を重視します。いわば1日の販売量を稼ぐための戦略を重視している人たちです。これはお客様を見ているようで見ていないんです。

 売り手の意見を重視してモノ作りをすると、結局、バリュー戦略(お買い得感を優先した製品作り)を取らざるを得なくなります。つまり安く売っていくことだけを重視して製品を開発していくという、魔の落とし穴にはまっていったんです。結果、日本の家電製品は、韓国製品よりもブランド力を下げてしまったのです。

 自動車に話題を戻せば世界中で日本人だけですよ、韓国車より日本車がいいと思っているのは。欧州、北米、中近東の人たちに聞いてみて下さい。「日本車と韓国車どっちがいい?」って。おそらく五分五分の結果になるでしょう。

 こうしたブランド力の低下は、家電業界がここ十数年行ってきたことを顧みれば答えは出ていると私は思っています。つまり、日本のモノ作りを考えたときにバリュー戦略はダメだったと言うことです。

 考えてもみて下さい。(日本の)光熱費はとてつもなく高く、人件費や法人税も世界最高レベルの高さです。こうした最悪の条件下でモノ作りをして利益を上げるにはどうしたらよいかを、今一度考え直す必要があると思いますね。バリューだけを追いかけたら日本のモノ作りの存在価値がなくなっていくことは明白です。

 しかし、「高い価値を持つ」ことを重視してモノ作りをすれば、十分に存在価値は見出せます。具体的に言えば、「日本人の質」が反映されたモノ作りをするべきということです。

日産GT-Rが混流量産ラインを採用した意義とは?

 日産GT-Rの組み立ては、同社の栃木工場で行われている。その生産ラインはスカイラインやフェアレディZといったFR車などと同じ生産ラインに混じって行われる混流生産ライン方式となっている。

 筆者が数年前、別の関係者に取材した際には「企画段階の想定販売価格は2000万円〜2500万円だったが、ゴーン社長がノーと言った」という話を聞いたことがあるが、最終的には1000万円前後からそれ以下になったのは周知の通り。

 この価格を下げることにもっとも貢献したのが、この混流生産方式だったと言われている。しかし、こうした量産方式で品質面に問題ないのだろうか。

水野氏:混流生産は必要不可欠でした。この方式で培った技術は、インフィニティブランドの車体製造にもフィードバックされています。

 ただ、品質面について言えば、むしろ混流の生産ラインに載せたことで実現されたと思ってください。GT-Rは「品質を確保する」というレベルより一段上の「精度を確保する」という次元で製造することが求められた車なんです。

 例えば、某国某社の少量生産のスーパーカーを考えみてください。部品の組み付けを現場ですりあわせて組み立てています。だから「当たり外れ」という概念が出てしまうんです。GT-Rに「当たり外れ」を出してはならない。だからラインで製造するんですよ。

 GT-Rの開発コンセプトの1つに「300km/hで走行しながら会話ができる安定性」というのがありますが、これを生産されたすべてのGT-Rで保証するために必要な概念となるのが量産ラインで製造することなんです。

 それと、GT-Rが混流生産だけでコストが下げられていると思ったらそれは間違いですよ(笑)。詳細は話せませんが、例えばGT-Rに採用したブレンボのφ390mmのスチール製ブレーキローターですが、これはブレンボの社内規格外のものです。同様にGT-Rのサスペンションはビルシュタイン製を採用していますが、シリンダー内のガス圧はビルシュタインの社内規格では30kgf/mm2までですが、GT-Rでは50kgf/mm2を採用しています。

 これらは、私自身が設計した“水野スペシャル”です。そうした仕様を実現するための技術を各メーカーに提供したわけです。一般的にこうしたパーツメーカーとの取引は、その相手の言い値になりますが、こちらから向こうに新しい技術を提供するというカードが切れる立場となれば……。あとはご想像におまかせします(笑)。

日産GT-Rの今後。そしてこれまでのオーナーに向けて

 そもそも日産GT-Rの基本設計自体が、それまでのスポーツカーとは異質な考え方で成り立っている。

 「スポーツカーは軽くあるべき」という既成概念があるが、日産GT-Rは、あえてそこに「本当にそうなのか」という疑問符を突きつけた。確かに200PS〜300PS程のスポーツカーではその理屈は正しいのかもしれないが、500PS超のスポーツカーでは、ただ軽いだけではその馬力を路面に伝えられない。クルマは結局、地面に接しているタイヤで走っているので、タイヤがその馬力を路面に伝えられなければ、虚しく空転するだけだ。

 日産GT-Rの場合、500PS超というパワーを路面に過不足なく伝えるために可変4WDシステム(GT-Rは基本的には後輪で駆動する。前輪はATTESA-ETSが必要と判断した時にのみ駆動する)を採用しつつ、重量物を前輪と後輪のそれぞれの車軸上に配置している。

 具体的にはエンジン質量を前輪に、トランスミッションおよびデフギアの質量を後輪に掛けるようにしている(トランスアクスル構造)。500PS超のハイパワーに対して必要な重量を求め、そこから設計されたのが日産GT-Rなのだ。実際、0-100km/h加速や0-400mのタイムを見ると、よりハイパワーなスーパーカーよりも日産GT-Rの方が速い。日産GT-Rはホイールベースの長さからいって、小回り重視のショートサーキットやジムカーナ競技に向いていない。ただ、一般的なサーキットやワインディングでは、日産GT-Rの車重は足かせにはなっていないのである。もし足かせになっていたら、ニュルブルクリンクを7分18秒台で走れるはずもない。

 そして、日産GT-Rはその誕生自体が独創的なわけだが、進化のペースも異様に速い。それこそ日産GT-Rは1代というモデルライフの中で毎年進化させられてきた。

 具体的な進化ポイントを細かいところまで挙げたらキリがないが、例えば馬力に関しては2007年の発売当初からすると、2012年モデルまでに70PSも出力が向上した。それも、燃費を向上させての馬力アップを達成している。これはブーストアップしたチューニングカーとは違い、根本的な進化があったからこそ実現できたスペックアップだ。

 また、2012年モデルからは量産車としては前代未聞のサスペンションの左右非対称セッティングを導入。スポーツ走行時には運転席にドライバーが1人で乗ることになり、左右の荷重バランスが崩れるためそれを中和することが狙いだ。

 このように、日産GT-Rは過去の既成概念から脱した設計を採用し、そこからさらに年次更新で進化をさせてきた。ある意味、IT機器並の進化スピードを自動車で実現させた製品だと言える。

 一方、一般的な自動車は「開発予算の制限」があるとは言え、進化のペースがゆっくりに思える。その他の自動車の進化がゆっくりなのか、それとも日産GT-Rの進化が速すぎるのか。

水野氏:本来は自動車の進化も速くできるんですよ(笑)。売り手重視のモノ作りをしているために、メーカーがそれをやらないだけです。

 GT-Rに関しては、私はお客さまのためのモノ作りをしたくて「日本人の質」で作り上げてきました。それを社会に示したかった、と言ってもよいかもしれません。こうしたモノ作りができるエンジニアが日本にあと何人いるのか。私はそこに危機感を持っています。

取材後、筆者が乗る日産GT-Rのエンジンカバーにサインをいただいた

 それでは、水野氏の手から離れた日産GT-Rは、どのような進化を遂げていくのか。

水野氏:私はR35 GT-Rについては、初期設計をした段階でハイブリッドシステムを含め、すべての動力源が載るように設計しました。

 ところで、ハイブリッドシステムは優れた燃費を出すためのシステム、という既成概念に毒されていませんか(笑)。例えばF1のKERSシステム(運動エネルギー回生システム)は、燃費を出すためのものですか。違いますよね。回生ブレーキシステムが作動することによって、制動時に捨てていた運動エネルギーを回収して、駆動に再利用するシステムですが、これは同時に従来のメカニカルなブレーキへの負荷低減にも貢献しているわけです。ハイブリッドシステム1つとっても、見方を変えれば自動車に対して別の進化を与えることもできるんです。

 R35 GT-Rは確かにプラットフォームから専用設計としましたが、実際にはSUVやセダンも作れる汎用プラットフォームとして設計しました。これをどう活かしていくかは日産次第で、日産を離れた私からは何かを申し上げることはできません(笑)。

 日産GT-Rは、水野氏の独特な発想力やキャラクターに共感を覚えて購入される方も多い。かくいう自分もどちらかと言えばそちらのタイプだった。2013年モデル以前のオーナーで今後、買い換えを予定していた人、あるいは今後初めて購入をしようと思っていた人は、水野氏が日産を離れた今、どのタイミングで日産GT-Rを購入すればよいのだろうか。

水野氏:それはお客さま次第で、私が申し上げることではありません(笑)。

 ただ1つだけ言わせてください。2013年モデルまでのGT-Rについては、私を信頼して購入してくれたお客さまだと思っています。このお客さまに対して私は、日産を離れたからと言ってその信頼を裏切ることはできません。

 そこで、2013年モデルまでのオーナーの方には、鈴木利男氏(元R35 GT-Rの開発ドライバー。水野氏の退社と時を同じくして開発からは離れている)のショップである「ノルドリンク」(http://www.nordring.jp/)を窓口にして、今後もサポートを続けていきたいと思っています。

 具体的にはメンテナンスパーツや性能強化パーツなどの開発ですね。ちゃんとサーキットでのテストを行いながら開発していきます。こうすることが、私を信頼してGT-Rを購入していただいたお客さまに対する私の義務というものでしょう。

 ただ、申し訳ないのですが、2014年モデル以降については私の手から離れてしまったモデルとなるため、適合や性能を保証できなくなってしまうので適用外となります。

右が日産GT-Rの混流生産ラインを設計された宮川和明氏(元栃木工場工務部第一技術課所属。2012年日産を離れる)のサイン。左が元日産GT-R開発ドライバーである鈴木利男氏のサイン。そして中央が水野氏のサイン。3人の“ミスターGT-R”はすべて開発現場から離れてしまったという事実は少々悲しい

 後編では、「今だから言える」日産GT-Rの開発秘話に加え、日本のモノ作りに対する叱咤激励を水野氏にしていただく予定だ。お楽しみに。

西川善司

テクニカルジャーナリスト。元電機メーカー系ソフトウェアエンジニア。最近ではグラフィックスプロセッサやゲームグラフィックス、映像機器などに関連した記事を執筆。スポーツクーペ好きで運転免許取得後、ドアが3枚以上の車を所有したことがない。以前の愛車は10年間乗った最終6型RX-7(GF-FD3S)。AV Watchでは「西川善司の大画面☆マニア」、GAME Watchでは「西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィック講座」を連載中。ブログはこちら(http://www.z-z-z.jp/BLOG/)。

(トライゼット西川善司)