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アウトランダーPHEVのリコール改修作業は8月9日に完了予定

夏期休暇までに完了し、その後は従来の2倍となる月4000台の増産へ

岡崎工場でリコール改修作業を実施中のアウトランダーPHEV
2013年7月8日開催

アウトランダーPHEVは岡崎工場でリコール改修作業を実施する。次々に受け入れ作業を行っていた

 三菱自動車工業は7月8日、名古屋製作所 岡崎工場(愛知県岡崎市橋目町字中新切)において、プラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」のリコール改修作業に関する記者会見を行ったほか、リコール改修作業の一部を報道陣向けに公開した。

 三菱自動車は3月27日にアウトランダーPHEVの駆動用リチウムイオンバッテリーが溶損・短絡した不具合を発表。その原因究明を行い、随時記者発表を行ってきた。リコールについては、6月4日に国土交通省に届け出を行い、全販売台数である4313台がその対象となった。

岡崎工場内で各工程を移動中のアウトランダーPHEV

 リコールの原因は、電池セル製造工程の一部となるスクリーニング工程(電池セル内の異物検出性向上のため実施している工程)で、作業者が誤って電池セルを落下させることで発生した。

 リコールの届け出までに時間はかかったものの、リコール改修作業はアウトランダーPHEVを生産工場である岡崎工場に戻し、リチウムイオン電池モジュールを入れ替えるというもの。アウトランダーPHEVの駆動用電池は、1モジュール8セルからなり、そのモジュールが10ユニット搭載(8×10=80セル)搭載されている。この10ユニットが電池パック内に納められ、車体下部に取り付けられている。

アウトランダーPHEVの電池パック。8セル1モジュールの電池ユニットを10基搭載する。交換を終えた電池モジュールが搭載されていた

 今回の記者会見において、7月5日時点で4313台中1390台がリコール改修作業を終了、1日約100台~120台を改修していることが発表された。三菱自動車の夏期休暇期間(8月10日~18日)までに全数終わる予定だと言う。その後、夏期休暇期間に生産ラインを変更。アウトランダーPHEVの新規生産を再開するとともに、月2000台の生産体制を月4000台の生産体制に引き上げる。

 本記事では記者会見の冒頭行われた三菱自動車工業 代表取締役社長 益子修氏の挨拶を全文掲載する。リコール改修作業やその内容については、後日詳報する。


三菱自動車工業 代表取締役社長 益子修氏

 i-MiEVならびにアウトランダーPHEV駆動用電池で発生した不具合がご購入いただいたお客さまにご不便とご心配をおかけしました。そのお客さまには私から今回のお詫びとリコール作業へのご協力をお願いする手紙を一人ずつお送りしました。

 今回のリコールでは市場に出ております対象車両の駆動用電池を全数交換いたします。

 通常リコールの作業は販売会社で実施しておりますが、今回のリコール作業はお客さまの車両を生産工場に戻して集中的に実施することで、安全性と品質に万全を期しています。

 また、取り外した電池についてもリユースではなく、確実にすべて分解してリサイクルするようにしております。リコール作業を生産工場で実施するという今までにない対応ですが、これにより安全確実に電池交換作業を完了し、お客さまにお車をお返しし、安心してお乗りいただけるものと思っています。

 岡崎工場で実施しているアウトランダーPHEVの電池交換作業はすでに1390台が終了しております。電池交換作業は計画どおり進捗しており、夏期休暇までには終了できる予定です。そして夏期休暇後から新車生産を再開できると考えております。

 国内市場でも今般の不具合が起こったことから、現在までの新規の注文は約1000台。一部キャンセルはありますが注文は増えている状況であります。また、海外では導入予定のあるオランダで1万台を超える注文をいただくなど、この車に対する期待の大きさは変わっていないと認識しています。

 その期待に応えるためにも夏期休暇後の生産再開からは生産能力を今までの2倍となる月4000台に増強し、まずはすでにご注文いただいているお客さまの車を優先的にいたします。

 また、年末年始の休暇を利用し岡崎工場のラインを新世代化し、効率よく車を生産できるように準備を進めております。

 この新世代化により、生産能力を現状の21万台から23万台まで引き上げます。これはPHEV車の生産能力を将来引き上げる際の準備にもつながることです。

 今回のラインの新世代化により組み込みコストを約30%低減します。あわせて台数変更や新車種への対応を早期かつ効率的に行えるようにフレキシブルな生産体をさらに進化させる、日本国内でのもの作りをさらに新世代化し、継続していきます。

 なお、タイ(工場)の新世代化の際に投入する無人部品搬送用台車、AGVと呼んでおりますが、これにはEVで使用した後のバッテリーを搭載することとしております。今後EV、PHEVの販売台数が増えてきますと車に搭載して使用した後のバッテリーの有効理由が課題となります。

 今回、PHEVに搭載するバッテリーのリユースに取り組むことで、環境負荷低減にも貢献していきます。

 基本作業を工場で一括して実施することはもちろん、報道陣向けに公開することは今までにないことです。これは、アウトランダーPHEVをご利用のお客さま、またこれから乗りたいと考えていただいているお客さまに安心してお使いいただくために、よく知っていただくことが重要だと考えたからです。

 私どもが2009年から世界に先駆けて量産したEVは、価格・インフラ・航続距離の課題がまだ十分に克服されておらず、当初の期待ほど市場は熟していません。しかしながら地球環境の維持が人類にとってますます重要な課題になるということを考えますと、電動車両のような環境対応技術を持つことは自動車メーカーにとって必須であると考えています。

 ここに来て世界の自動車メーカーがこぞってこの分野に参入を検討しているのは同じような認識を持っているはずだと思います。我々はEVの経験を活かして、航続距離の問題を解決したPHEVを開発しました。この技術を発展させ、ぜひ環境技術のリーディングカンパニーになりたいと考えております。

(編集部:谷川 潔)