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三菱自動車、「アウトランダーPHEV」駆動用バッテリー溶損・短絡の中間報告

スクリーニング工程に一部問題があったものの、現時点では原因特定にいたらず

三菱自動車工業 常務取締役 商品戦略・事業化統括部門長 兼 開発統括部部門長 中尾龍吾氏(左)、常務執行役員 CSR推進本部長 大道正夫氏(右)
2013年4月10日発表

 三菱自動車工業は4月10日、プラグインハイブリッド車(PHV)「アウトランダー PHEV」に搭載する駆動用リチウムイオンバッテリーが溶損・短絡した問題に関する中間報告を発表した。

 この問題は3月27日に発表。バッテリーの溶損は1件、短絡は2件見つかっており、同社は外部充電およびチャージモードによる利用を控えるよう呼びかけているほか、アウトランダー PHEVの出荷を停止している。

 中間報告を行ったのは、三菱自動車工業 常務取締役 商品戦略・事業化統括部門長 兼 開発統括部部門長 中尾龍吾氏、常務執行役員 CSR推進本部長 大道正夫氏の2名で、アウトランダーPHEV購入者へのお詫びを中尾氏が述べた後、中尾氏が技術的な面を、大道氏が補足事項などを語った。

 この中間報告が行われたのは、問題発生時の記者会見で中尾氏が「1~2週間以内に報告をしたい」と応えたため。不具合につながる可能性のある事象は見つかったものの、3月27日の発表から2週間が経過したため、最終的な結論が出る前の中間報告の実施となった。

発生場所神奈川県東京都岐阜県
車両状態登録納車前お客さまへ納車済み(総走行距離:15km)登録済み納車前
発生内容3月20日 初めて販売会社で満充電
3月21日 車両を移動させようとしたところ、“ON”にはなるが、“READY”にならず。車体下回りから異臭。
3月23日 お客様が“READY”にしたところ、「EVシステム異常」の表示が繰り返し出る。
Dレンジに入れても発進せず。
3月25日 初めて販売会社で満充電
3月26日 定休日
3月27日 電池残量計の表示量が2目盛り減っていた。再度充電を開始したが、充電開始時よりさらに2目盛り減少し、「EVシステム異常」が表示。
事故など関連したケガや建屋の損傷なし関連したケガや建屋の損傷なし関連したケガや建屋の損傷なし
事象バッテリーパックの上蓋中央部に溶損跡が確認された。販売会社へ入庫し確認、パック/セルとも外観上異常なし。故障診断機で電池電圧異常を検出。パック/セルとも外観上異常なし。故障診断機で電池電圧異常を検出。
調査結果電池セル内部に短絡痕を確認した。
バッテリーパックの中では80セルを3ブロックに分け配置しているうちの、1ブロックのみが発熱し、その周辺の樹脂部分が溶けていた。
また、電池セルの内部圧力上昇により、セルが変形(溶損)
電池セル内部に短絡痕を確認した。
溶損は発生していない。
電池セル内部に短絡痕を確認した。
溶損は発生していない。

 三菱自動車は、駆動用電池を製造したリチウムエナジージャパンに加え、GSユアサと共同で原因究明作業を実施。製造工場を京都工場から栗東工場に移行した後にトラブルが発生していることから、作業工程の変更点を洗い出したほか、各工程における製造公差を最大に取った製品を1200種テスト生産。それらの確認をしたと言う。

 その結果、昨年12月に加えた電池セル製造のスクリーニング工程において、セル内部の一部の部品が変形する可能性があること分かったと言う。このスクリーニング工程は、セルのコンタミネーションを確認する工程で、製造を終えた電池セルを人の手で機械にセットし、さまざまな角度の振動を加えるというもの。この振動により、電池セル製造の不具合があれば、不純物がセル内部の正極に析出し、電圧変化により検知できるとのこと。

 この人の手で機械にセットする際に、過度な衝撃が加わり、正極の一部の部品が変形することがあり、これが短絡の要素になったことが疑われると言う。中尾氏は、この問題だけでは短絡に至らないため、「そのほかにイレギュラーなことが起きている」とし、短絡に至るまでの再現試験を計画している。

 現在、アウトランダー PHEVは4300台の登録があり、セル数で言うと、約37万個の電池セルが生産されている。今回はその中の3つのセルで問題(1つは溶損、2つは短絡)が発生した。先ほどの部品の変形のほか、複合的な要因が問題発生につながっているとの見通しを示した。

 今後のスケジュールについては、「4月中には目処をつけたいが、約束できる状況にない」と語り、引き続き不具合の原因究明を行っていくことになる。現時点で判明しているのは、溶損・短絡を引き起こす可能性のある要素の1つが分かっただけで、電池セルの溶損・短絡へとつながる過程は判明していない。リコールなどの実施については、「原因が特定できてから判断」とし、購入者には「外部充電およびチャージモードによる利用を控えるよう」しっかり呼びかけていく。

(編集部:谷川 潔)