ニュース
セントレアにF1マシンを搭載した飛行機が到着
今週末開催のF1日本グランプリ用マシン&機材が韓国から飛来
(2013/10/8 23:40)
今週末の10月11日~13日の3日間にわたり、三重県鈴鹿市にある鈴鹿サーキットにおいて、FIA F1世界選手権の第15戦となるF1日本グランプリが開催される。レースに先駆ける10月7日夜、各F1チームの機材が、鈴鹿サーキットに最も近い国際空港である中部国際空港(愛称:セントレア)に続々と到着した。
F1チームは、先週に韓国のヨンアムで行われた第14戦韓国GPを終えたばかりで、決勝が行われた10月6日の夜には荷造りを開始し、ヨンアムからソウルへと陸送後、7日の午前には第1便がフライトを開始するというスケジュールで機材の運送が行われた。
6つのチャーター便に別れて送られてくるF1の機材
F1関連の機材の運送は、F1チーム、F1の運営会社(FOM=Formula One Management)とFIAによる三者協定(いわゆるコンコルド協定、詳細な内容は非公開)に基づいてFOMが一手に引き受けて行われており、今回もFOMがチャーターした貨物便にF1チームの機材が満載されてソウルの仁川国際空港からセントレアへと空輸された。韓国グランプリが行われた韓国インターナショナルサーキットのあるヨンアムは、韓国の先端に近い南に位置しており、場所としては釜山が近い。しかしながら便数の多さなどを考慮し、韓国最大の国際空港であるソウルの仁川国際空港が選ばれたのだろう。
鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの発表によれば、今回のF1の機材は、以下の6つの便に別れて仁川空港からセントレアへと配送されている。便名にKZが付く便は日本貨物航空(日本郵船の関連会社の貨物専用エアライン)、OZが付く便は韓国のアシアナ航空、KEの付く便は韓国の大韓航空によりオペレーションされているカーゴ便(荷物専用の定期便)で、FOMがこれらのフライトを貸し切り(チャーター)にして荷物が搭載されている。
2013年日本グランプリの荷物搬入に利用されたカーゴ便の概要(モビリティランド発表)
到着時刻 | 便名 | 搭載物 | 重量 | トレーラ・トラック |
---|---|---|---|---|
13:45 | KZ6080 | TV用の機材など | 約116t | 約15台 |
16:00 | OZ1963 | フェラーリ、トロロッソ、ザウバーのチーム機材など | 約109t | 約15台 |
18:00 | OZ1965 | レッドブル、マクラーレン、メルセデスのチーム機材など | 約106t | 約15台 |
19:50 | KE9577 | ロータス、フォースインディア、ウィリアムズのチーム機材など | 約110t | 約15台 |
21:50 | KE9579 | ケータハム、マルシャのチーム機材など | 約106t | 約15台 |
23:30 | KZ6082 | ザウバー2台、ケータハム2台、ペースカーその他 | 約70t | 約15台 |
これらのフライトの中にF1マシンはもちろんのこと、各チームが利用する機材(例えばピットで利用するコンピュータとか、給油装置、タイヤ交換に利用するジャッキやホイールガンなど)がコンテナに詰められており、それらが6つの便に別れて送られるのだ。前述の機材のほか、国際映像を撮影するクルーが利用するTV撮影の機材、パドックでチームやスポンサーが招待客をもてなすために利用するパドッククラブを設営する機材(調理器具など)も含まれており、F1グランプリを開催するのに必要なすべてとなる。
なお、チームとFOMは細かな契約を結んでおり、このFOMのカーゴ便で配送できる荷物(マシンやメカニックが利用する工具、パーツなど)の重量はあらかじめ決められている。そのため、契約に含まれないもの(例えばファクトリーで急遽開発された新型パーツなど)はチームが独自に確保した貨物便などを利用して配送されるため、このFOM便とは異なる便で送られてくる場合もある。
モビリティランドによれば、これらの6便に詰め込まれた機材の合計重量は約617tで、まずはセントレア内で通関検査が行われ、その後に鈴鹿サーキットへと運ばれる手はずになっているという。鈴鹿への配送は10月8日の早朝から順次行われ、機材の配送は合計で約100台近いトレーラーやトラックなどで行われる予定だ。
ケータハム、ザウバーの車両と同時に、セーフティカーとメディカルカーが空輸
今回筆者が取材したのはこのうちの最終便となるKZ6082で、そこにはザウバーとケータハムの車両およびチームの機材、さらにはセーフティカーやメディカルカーなどが含まれている便になっていた。
KZ6082がセントレアに着陸したのは、日本時間の7日23時過ぎで、着陸後セントレアの115番スポットに駐機したのは23時15分前後になった。利用されている機材は、ボーイング747-400F型で、NCA Apolloの愛称が与えられている機体となる(機体番号はJA05KZ)。このNCA Apolloは、日本貨物航空の5機目の747-400Fだが、親会社の全日空経由でなく、初めて直接ボーイングに発注して受領した747-400Fとなり、現在はアジアのカーゴ便などを中心に利用されている個体となる。
なお、ボーイング 747-400Fは機首部分が開いて荷物を降ろすことも可能だが、今回は左後方および、右後方のハッチが開けられ、そこから荷物が降ろされた。主に利用されたのは左後方のハッチで、そこからチーム機材のコンテナや車両が降ろされた。
KZ6082に搭載されていた車両はザウバーチームおよびケータハムチームのそれぞれ2台のF1カーと、セーフティーカー、メディカルカーそれぞれ2台の計8台となる。車両を確認したところ、ザウバーは梱包されている状態ではリアが黒いなという程度しか分からなかったが、ケータハムの車両はグリーンとイエローの色が確認でき、容易に認識することができた。
装着されていたタイヤは、ピレリの輸送用のタイヤで、TRAVEL BOX1(旅行用)というラベルが貼られていた。なお、ピレリのイエローのロゴが入っており、輸送用となる前は、4つある晴天用のタイヤ(スーパーソフト、ソフト、ミディアム、ハード)のうちソフトタイヤであったことが分かる。なお、車両を固定しているラックには、FOMのロゴが入っており、FOMの管理下でマシンが配送されていることを実感させられる部分だ。
サーキットでよく見るセーフティカーとメディカルカーだが、F1では同じ個体の車両を、世界中すべてのサーキットで利用している。日本のレースやほかのFIA世界選手権などでは、セーフティカーやメディカルカーは、サーキット側が用意するものを利用することが多い。これは、バックアップを含めると4台もの車両を飛行機で送るとなるとコスト(一般的にカーゴ便の料金は重さに比例する)がかかるためで、サーキットがすでに持っているセーフティカーなりメディカルカーを利用する方が合理的だからだ。
しかし、F1では何よりも安全性が最優先されており、すべてのレースで同じドライバーやドクターが、セーフティカーやメディカルカーに搭乗する仕組となっている。そうした中で毎回クルマが変わってしまうと、慣れる時間が必要になり、セーフティーカーやメディカルカーのドライバーに負担を強いることになる。そのような問題を避ける意味で、セーフティカーやメディカルカーも世界中に運んでいるのだ。この辺りは、F1だからこそできるお金のかけ方と言ってよいだろう。
先週末のF1韓国グランプリの表彰台でのインタビューで優勝したセバスチャン・ベッテルが「世界で最も優れたサーキットとファンがいるグランプリ」と言っていたとおり、ドライバーが絶賛する鈴鹿サーキットで、今週末にF1日本グランプリが開催される。イベントの格式から言えば、モナコグランプリがNo.1であることは疑いの余地はないが、サーキットの素晴らしさ、そして観客のレベルで世界一は間違いなく鈴鹿サーキットで行われる日本グランプリであり、F1ファンであればそれを見逃さない手はないと思う。
チケットは現在も鈴鹿サーキットのWebサイト(http://www.suzukacircuit.jp/f1/)などで販売されており、ぜひともチケットを手に入れて今週末は鈴鹿で“世界一のファン達”の一員となって見てほしいところだ。
【お詫びと訂正】記事初出時、日本貨物航空の資本関連記述に誤りがありました。また、一部便名の間違いがありました。お詫びして訂正させていただきます。