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冬タイヤ開発を加速する「ヨコハマ テスト センター スウェーデン(YTCS:YOKOHAMA TEST CENTER of SWEDEN)」
北欧の地にヨコハマタイヤ専用のテストコースをオープン
(2014/3/26 08:50)
まだまだ北のほうでは雪の情報が多いが、この冬は首都圏でもスタッドレスタイヤの必要性を痛感した人が多かったのではないだろうか? 各タイヤメーカーともスタッドレスタイヤの在庫が底をついたという話も聞く。
ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)も同社のメイン商品であるスタッドレスタイヤ「iceGUARD(アイスガード)」が好調で、ユーザーからの評価も非常に高いが、実は日本向けのスタッドレスタイヤはほぼ日本専用タイヤとなっている。なぜなら欧州では同じ雪道でも路面の性質が異なり、日本型スタッドレスとは異なる性能が求められている。
それに対応する欧州向けのウインタータイヤを各メーカーとも開発しており、ヨコハマタイヤももちろん地域に対応したウインタータイヤを用意している。従来は北海道 旭川の冬季テストコース「T*MARY(ティー・マリー)」をベースにして、スウェーデンのテストコースを借用してテストを行っていたが、本格的にウインタータイヤの需要の増大と開発スピードを上げるためにスウェーデンにヨコハマタイヤ専用の冬季タイヤテストコースを開設することになった。
それが「ヨコハマ テスト センター スウェーデン(YTCS:YOKOHAMA TEST CENTER of SWEDEN)」である。YTCSはスウェーデンのArctic Fallsと長期貸与契約を結んだ冬用タイヤのプルービンググラウンドで、従来からコースレンタルを同社から行っていたが、それをさらに前進させた格好だ。新しい冬季タイヤテストコースは2013年に新たに建設された新コースとなる。
コースの位置するところはスウェーデン北部、北極圏に近い都市、ルーレアからほど近いアルプスビュンにあり、広さは40万m2。11月ごろより4月までの長期にわたってオープンして、冬季タイヤのテストを行うことができる。
YTCSでの主な業務は欧州大陸向けのウインタータイヤ(スタッドレス)とロシア、北欧向けのスパイクタイヤのテストになり、日本向けのスタッドレスは従来どおり旭川のT*MARYで行われることになる。ただし一部T*MARYとYTCSの両方のプルービンググランドで行われるものある。
欧州と日本では冬季タイヤに求められる性能が異なると記したが、世界で最も難しいのは日本の冬季路面だろう。日本は世界でも有数の降雪地帯であるだけでなく、寒暖の差が大きくアイスバーンになりやすい特殊性がある。日本の特殊性というのは雪だけなら通常のウインタータイヤで対応できるが、日中の暖かい日差しで雪が溶け、さらにそれが夜、気温が下がると表面の滑らかなアイスバーンになってしまう。それを繰り返すことでアイスバーン比率が高い。さらにスタッドレスタイヤによる駆動、制動が繰り返されることでブラックアイスと呼ばれる、非常に滑りやすいアイスバーンになってしまう。
翻って欧州でもアイスバーンはできるが、雪質が比較的軽く、豪雪となることが少ないのと除雪が早めに行われるので、日本ほど滑りやすい状況にはならない。ドイツでは冬季はウインタータイヤの装着が義務付けられるが、当然アウトバーンの高速走行も視野に入れた開発となり、日本のスタッドレスに求められる速度レンジ、そしてアイスバーン性能とは異なる。
一方、恒常的に路面に雪が積もる北欧、ロシアではスパイクタイヤの使用が認められており、スタッドレスタイヤとスパイクタイヤが混在して使用されている。地球温暖化の影響と除雪スピードの早さから路面に雪が少ないためにスタッドレスの方が適しているケースが多くなってことが影響している。ともあれスパイクタイヤの需要は相変らず高い。
簡単に言うと冬季用タイヤは使われる地域によって目的が異なり、日本型スタッドレス、欧州向けウインタータイヤ、ロシア・北欧向けスパイクタイヤの3種類が存在する。
今回、オープニングとともにジュネーブショーで発表された新製品の欧州大陸向けウインター・タイヤと北欧/ロシア向けのスパイクタイヤの試乗チャンスがあった。欧州大陸向けウインタータイヤは「W*drive V905」、及び北欧ロシア向けスタッドタイヤ「iceGUARD STUD iG55」である。
W*drive V905は旧商品V902との比較、iceGUARD STUD iG55は同じく従来品のiG35との比較だったが、アイスバーンを含んだ積雪登坂路、積雪のスラローム、アイスバーンのスラローム、そしてハンドリングコースと他社品も含んでテストしたが、いずれも大きく性能が向上していることが確認された。
従来品から比較するとW*drive V905はスノー性能はもちろんだが、アイスバーン性能のアップが目覚ましい。具体的にはスノー路面ではハンドル応答性が確実になり、曲がりやすくなった。さらに路面がアイスバーンになった時にはコーナリングフォースの高さが確認できた。アイスバーン性能は日本型スタッドレスのiceGUARD 5には及ばないが、欧州の凹凸のあるアイスバーンならばかなり高い競争力を持ち、第一級レベルだ。雪上性能は少し上になる。
iceGUARD STUD iG55は従来品iG35との比較だったが、こちらは手裏剣型のスパイクを採用するなどで、スパイクの効果を上げている。もちろんゴムや構造等の変更による性能アップも著しい。これまでのiG35では競合他社に対して負ける部分もあったが、新しいiG55では間違いなくトップレベル以上のグリップ力を確保できている。スパイクによるメカニカルグリップはやはり心理的安心感が高い。
しかし日本向けスタッドレスiceGUARD 5の性能は侮りがたく、アイスバーン性能は優るとも劣らないのには驚いた。路面に応じてグリップ力の変化は大きいが、なかなか健闘しているのが分かる。
技術の進化は目覚ましい。いつの日か3種類のタイヤが1つにまとまる時が来るのかもしれない。そんな将来の為にも欧州における冬季タイヤのプルービンググランド、YTCSは大きな開発拠点になるだろう。