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トヨタ、全車エコカー減税対象で購入コストも削減する新型「プロボックス」「サクシード」説明会

“クルマは動くオフィス”の発想で走行性能や使い勝手を徹底追究

新型の「サクシード」(左)と「プロボックス」(右)の間に立つのは、2車種の開発を担当したトヨタ自動車 製品企画本部 チーフエンジニアの金森善彦氏
2014年9月1日発売

プロボックス:131万7600円~179万8691円

サクシード:143万7382円~179万8691円

 トヨタ自動車は8月6日、コマーシャルバンの新型「プロボックス」「サクシード」を9月1日に発売すると発表した。価格はプロボックスが131万7600円~179万8691円、サクシードが143万7382円~179万8691円。両車のグレード構成などについての詳細は関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140806_660656.html)を参照されたい。

「このクルマを使う人の明るい笑顔が、周囲の人や会社をよりいっそう元気にすることを期待しています」と語る金森チーフエンジニア

 この発表に合わせてトヨタ自動車 東京本社で行われた報道関係者向けの車両概要説明会では、新しい「プロボックス」「サクシード」の開発を担当したトヨタ自動車 製品企画本部 チーフエンジニアの金森善彦氏が登壇。12年ぶりに行われた2車種のマイナーチェンジについて解説した。

 金森チーフエンジニアは冒頭で、トヨタが培ってきた約80年に渡る商用車開発の歴史について語り、「1960年代以降は国内販売の主役としての座を乗用車に譲ったものの、トヨタはいつの時代もお客さまの笑顔のために、商用車を大切に育んできました」とコメント。こうした流れのなかから、2002年7月に、企業から個人商店まで幅広く利用される小型コマーシャルバンの専用車として「プロボックス」「サクシード」が発売されることになったと紹介した。

 また、「プロボックス」「サクシード」は広い荷室空間や経済性の高さといった“プロの道具としての資質”が評価され、これまで12年という長い期間で多くのユーザーに愛用されてきたが、取り巻く環境の変化やユーザーの使い方の変化に合わせるため、クルマの骨格とも言えるプラットフォーム、エンジン、トランスミッションを変更することを決断。「プロの道具としてのさらなる高みを目指した」と述べ、「大幅に変更できるこのチャンスに、プロボックスとサクシードをもっとよいクルマにして、働く人をもっと応援したいという思いで企画をスタートさせました」とマイナーチェンジにかけた意気込みを口にしている。

 企画初期には実際にプロボックスとサクシードを使っているさまざまな人から意見を聞き、クルマの維持・管理を担当する経営者からは、「低燃費などによる経済性」「安全性の高さ」といった要望が出され、これに対応するため、エンジンでは2015年燃費規制に対応。改良した1.5リッターの1NZ-FE、新搭載となる1.3リッターの1NR-FEの2つのエンジンとSuper CVT-iを組み合わせ、クラストップの低燃費を達成。4WD車を含めて全車でエコカー減税の対象となっている。

サクシード U(2WD)

 実際に車両を使う現場のユーザーからは、「クルマのなかで過ごす時間が長く、仕事用だからこそ、運転が楽で疲れないクルマが欲しい」という希望が出ていた。この実現によって働く人を応援するためには、扱いやすくて乗り心地がよく、使い勝手の良好な運転席まわりが必要不可欠であると分析。新型では市街地からロングドライブまで乗り心地のよさが実感できる走行性能を目指し、プラットフォームのフロント部分とフロントサスペンションにヴィッツ系の設計思想を採用。コイルスプリングのバネ荷重を下げてショックアブソーバーの減衰力を調整、スタビライザーを大型化して乗り心地とハンドリング性能を両立。さらにキャスター角を増やして直進安定性を高めている。また、リヤサスペンションでもフロント側の変更に合わせてスタビライザーを大型化し、減衰力などの見直しを行っている。電動パワーステアリングには車速感応型を採用し、空車時から積載状態まで変わらない操縦安定性と乗り心地のよさを実現している。

 また、営業職や配送担当などの人にとって“クルマは動くオフィスのようなもの”という発想から、運転席に座っている状態で必要なアイテムすべてに手が届くよう収納スペースをレイアウト。「働く人々にとって本当に使いやすいコクピットを目指した」としている。

 このほかにデザイン面では、フロントマスクを飽きがこないタフな印象のデザインに変更。さらに市街地などで多くの姿を目にする人気モデルとなっている2台だけに、「街をクリーンで明るくしたい」「商用車のハードなイメージを一新したい」という願いから、ボディーカラーに「ライトグリーンメタリック」「ボルドーマイカメタリック」といった新色を追加している。

経営陣が商用車に求めるのは「経済性」と「安全性」
4WD車がエコカー減税に対応したのはクラス初とのこと
VSC&TCSやヒルスタートアシストコントロールなどの標準装備で安全性を強化
商用車を実際に使うユーザーは「楽で疲れない」という要素を重視
“クルマは動くオフィス”という発想で開発
運転席の周囲にビジネスマンが求める収納スペースをレイアウト

 車両解説後の質疑応答では、ユーザーとのコミュニケーションで得た意見で意外だと感じた内容についての質問に対し、「ドアポケットは開け閉めの頻度が高く、雨に濡れてしまう可能性もあるためゴミ箱代わりぐらいにしか使われていない」「これまでのモデルに採用していたペン立てやカードホルダーは、使うためにペンを抜くと戻しにくく、車外から見える位置にカードなどを置けないので使われていない」とのことで、あまり使い方を限定すると使いにくくなってしまうことを今回の変更に反映させていると語られた。また、大がかりな変更にもかかわらず、マイナーチェンジと発表されていることについては、トヨタの社内規定で「アッパーボディーを全面的に変更する」という要素がフルモデルチェンジの定義に含まれており、今回は外観の大きな変更がフロント部分に止まっているためマイナーチェンジと表現されていると説明。ただし、金森チーフエンジニアはプラットフォームやパワートレーンも改良していることから「フルモデルチェンジに近い変更だと思っている」とコメントしている。

「ダークブルーマイカメタリック」のサクシード(左)と「シルバーマイカメタリック」のプロボックス(右)
八角形スタイルのフロントグリル&バンパーや多角形モチーフの新型ヘッドライトなどによってタフで飽きがこないフロントマスクを手に入れた
1NZ-FEエンジンは2WD(FF)が18.2km/L、4WDが15.8km/LのJC08モード燃費
タイヤサイズを前後155/80 R14にインチアップして走行安定性を向上。さらにフロントブレーキも大径ベンチレーテッドディスクに変更して制動性能を高めている
スペアタイヤはリアのフロア下に吊り下げて搭載
最大積載量は400kg。サクシードは全長が短くなって450kgから低下した。
ラゲッジスペースの助手席側にあるデッキサイドポケットは、洗車用のクリーナーやブラシなどを入れることを想定したスペース
スクエアなラゲッジスペースはボックス形状の荷物でもたくさん積めることが自慢。車両の脇に壁のように積まれたコピー用紙の箱も、実際に39個も入ったとアピール
シートバック一体可倒式リアシート。シートバックを前に倒すだけでフラットなラゲッジを作り出せる
シート形状の最適化により、長時間座り続けても疲れにくく、横Gがかかったときにはしっかりと身体をサポート。また、リクライニング角度を大幅に増やし、車内で横になって休めるようにした
内装色は全車ブラック。一番安いグレードのDXとUは4つのドア全部が手動式ドアウインドーとなる
リアドアのそばには後席シートバックを前に倒すときにシートベルトが邪魔にならないようバックルを差し込んで固定するスペースを用意
サクシード ULのインパネ
ステアリング中央もトヨタマークは凹凸で表現。最上級グレードのFではメッキ加飾のオーナメントを設定
メーターはシンプルな単眼式
インパネ周辺の多彩な収納をレイアウト変更。さらなる使い勝手を目指した
スライド式のインパネテーブルは最大荷重10kg。全部引き出すとわずかに角度が変わって水平になる。手前側にはペンやお箸などが転がり落ちないように凹みを設けている
インパネテーブルの下はバインダーなどを差し込めるインパネトレイ。左の写真に写っているiPad miniがぴたりと収まる奥行きがあり、下側手前に滑り止めのゴムストッパーが埋め込まれている
センタークラスターの運転席側にはセンタートレイを設定。1L紙パック飲料も置ける広々としたスペースで、ユーザーごとに使い方を工夫できそうな収納となっている
スマートフォンやメモ帳などを保持できるマルチホルダー。プッシュオープン式の収納スペースにもなっている
マルチホルダーのすぐ下にアクセサリーソケットをレイアウト。左脇のAC100V 100Wアクセサリーソケットは1万1800円高のオプション
CVTのシフトセレクター前方に、ドアキーで施錠できるセンターボックスを用意
エアコン操作パネルのダイヤル配置を工夫して、収納スペースの創出に貢献
オーディオスペースは一般的な2DINサイズ。純正ラジオにはAUX端子を用意
電動ドアミラー、VSC、ヘッドライトレベライザーなどの操作スイッチをメーター右側に配置。直線的なメーターフードの右側にドリンクホルダーを用意する
ラゲッジスペースに荷物が山積みになり、ルームミラーが機能しなくなることも多いことから、「バックモニター内蔵自動防眩インナーミラー」を全車メーカーオプション設定。価格は4万3200円

(編集部:佐久間 秀)