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ブリヂストン、5回目となる「技能グランプリ全国大会」を開催

東北地区初の技能マイスターが誕生

2014年9月28日開催

トラック・バス用タイヤの交換作業の質を競うブリヂストンの「技能グランプリ全国大会」

 ブリヂストンの国内販売会社であるブリヂストンタイヤジャパンは9月28日、「技能グランプリ全国大会」を「ブリヂストン タイヤサービス 仙台港店」(宮城県仙台市)で開催した。技能グランプリ全国大会は2010年に初回を開催、2014年で5回目の開催となる。

 この技能グランプリを設けた理由について、ブリヂストンタイヤジャパン 代表取締役社長 清水実氏は「安全を追求するために開催している。エンドユーザーの安全を図るほか、生産財(タイヤ商品)を扱っている販売店の安全を追求する」といい、タイヤの脱輪など作業に起因する事故を防ぐほか、980MPaなど乗用車より遙かに高圧なトラック用タイヤの作業における事故の防止を目指している。そのためにブリヂストンが取り組んでいるのが作業標準の確立で、技能グランプリは、作業標準を競うとともに、より安全でより効率的な次世代の作業標準の策定に貢献している。

ブリヂストン タイヤサービス 仙台港店
仙台港店の中には、「がんばろう 東北」の垂れ幕が。仙台港店近辺は東日本大震災で大きな被害が出た個所となる
ブリヂストンタイヤジャパン 代表取締役社長 清水実氏

 ブリヂストンタイヤジャパンでは、トラックや乗用車用タイヤの新品を販売するほか、2007年に買収したパンダグの技術を取り入れたリトレッドタイヤをトラック向けに販売している。清水社長は、「新品とリトレッドとサービスの3つで、ソリューションを作り上げる活動を行っている。単品商売だけでなく、ソリューションを提供していく」といい、新製品販売、リトレッド作業に付随するサービスと扱われがちなタイヤ交換作業を高品質にすることで、ユーザーに提案できるものにしていこうとしている。

 技能グランプリの詳細については、ブリヂストンタイヤジャパン 執行役員 技術サービス本部長 古後秀典氏が詳説。古後氏は、技能グランプリ全国大会を開催する背景に、脱輪事故などの存在があるという。脱輪事故は以前社会問題化したこともあるが、その後、自動車メーカー、業界の努力により事故件数は低下。しかしながら、近年それが上昇傾向にあるという。また、タイヤ取り付け時の事故も業界で毎年起きている。これらをなくすため、より安全・確実に取り付けられる機材の開発、そしてより効率的に作業できる機材の開発にも取り組んでおり、それらの機材を使った標準作業手順も策定している。

ブリヂストンタイヤジャパン 常務執行役員 企画・管理担当兼技術サービス統括本部長 中田勇一氏
ブリヂストンタイヤジャパン 執行役員 技術サービス本部長 古後秀典氏
メンテナンス作業の目指す方向性

 ブリヂストンでは、「安全はすべてに優先する」という思いのもと、「意思」「技術」「仕組み」の3分野に取り組んでおり、意思の部分では作業スタッフの安全意識の改善を目指している。たとえば、作業時のタイヤバーストについては、2012年に42回の啓発活動を実施。あらかじめ内部に傷を入れたタイヤを使うことで意図的にバーストするようにし、全国でタイヤ販売店などを対象にバースト実験を実施し、充填作業時の事故の怖さを啓蒙するものだ。このバースト実験はダミー人形がバラバラに飛び去るほど激しいもので、記者も取材の際に見たときに強い衝撃を受けた。

標準作業への取り組み
安全はすべてに優先する
タイヤバースト実験
ブリヂストン タイヤバースト実験
技能グランプリの狙い
作業の価値化
作業訴求トライアル
競技概要
競技車両配置
競技の流れ
表彰概要
これまでの技能マイスター

 このような事故やトラブルの発生をなくすために策定したタイヤ交換の標準作業手順を周知するため、5年前に技能グランプリを初開催。優れた成績を残したサービススタッフを技能エキスパートとして認定し、とくに安全の項目でパーフェクトな結果を残すとともに、学科試験で80点以上の成績を収めたスタッフが、技能マイスターとして認定される。技能マイスターは過去4回で計12人しか認定されておらず、非常に狭き門となっている。

 第5回大会は全国から405名がエントリー。各地区の予選を勝ち抜いた36名が、全国大会の会場となったブリヂストン タイヤサービス 仙台港店に集まった。

標準作業時間は19分、作業時間の半分は清掃と確認

 コンテストでの作業内容は、後輪が複輪となっているトラックの右後輪の内輪と外輪をローテーションするというもの。内と外を入れ替える作業のほか、各部確認、来店したお客さんとのコミュニケーションも評価対称となっている。

 仕様車両はホイールの取り付けボルトに10本のISO方式ボルトを採用したトラック。かつてのトラックはJIS方式だったが、6年前にISO方式の取り付けボルトが新車導入され、現在では20%程度の車両がISO方式になっているという。

 技能グランプリ全国大会においても、前々回大会からISO方式でのコンテストを実施。ISO方式のボルトは、JIS方式のボルトに比べて長く(285mm→335mm)、ホイールバブに取り付けられたボルトを傷つけないようにホイールを取り外す必要がある。

 技能グランプリ全国大会で定められた標準作業時間は19分。19分を過ぎると減点対象となるため、一定時間の間に安全に、確実に作業をこなしていかなければならない。また、参加者には知らされない5つのトラブルが作業車両には組み込まれており、それをいくつ見つけることができるかも採点対象となっていた。

 技能グランプリ全国大会参加者の作業を何人か見させていただいたが、どの参加者もレベルが高く、スムーズな作業でタイヤローテーションを行っていた。とくに印象的なのは、作業時間の半分を清掃および確認作業に使っていたことだ。指差喚呼による安全確認、ボルトやナット、ホイールの清掃による危険個所の発見や固着防止などなど。特別に訓練を積まないと、これだけの作業をこれだけの短時間でこなすことはできないだろう。

マイ工具をあらかじめ並べ終えてから競技開始。参加者によって並べ方が異なり、それぞれの工夫があるようだ
お店を訪れたお客さんとの会話から審査は始まる。接客態度も重要なポイント
サイドブレーキなどの安全確認をし、「作業中」の札をかけてから実作業に入る
一連作業を写真で。お客さんとの会話に始まり、お客さんへの報告で終わる。とにかくプロの作業はスムーズだった
参加者が作業を終えたら、審査員が各部のチェックを開始。作業が正しく行われているか確認する
作業の最後に使われていた工具「トルクセッター」。インパクトレンチで300Nmに仮締め、最後にこのトルクセッターを使い600Nmで本締めしていた。もちろん数値は車種によって異なる

 高いレベルの作業コンテストで、最優秀賞に輝くとともに技能マイスターとなったのは、東北ブロック代表 三塚タイヤ トラックセンター古川の髙橋純平さん。入賞した関東ブロック ブリヂストンタイヤサービス信州 千曲TRCの北沢隆幸さんも、技能マイスターに認定された。

三塚タイヤ トラックセンター古川 髙橋純平さん
ブリヂストンタイヤサービス信州 千曲TRC 北沢隆幸さん
表彰式風景。ブリヂストンタイヤジャパン 取締役常務執行役員 生産材タイヤ事業担当兼生産材カンパニー社長 梶原浩二氏も表彰式に駆けつけた

 最優秀賞に輝くとともに東北地区選出の初の技能マイスターとなった髙橋さんは、「昨年の大会は地区大会で敗退したため、1年間作業の中で研究を重ねたことが結果につながった。同僚の方、そしてブリヂストンの方、そして(練習のために)車両を貸していただき、肩を叩いて頑張ってこいと言ってくれたお客さまのため恩返ししていきたい」と語り、この大会を目標に1年間技術を磨いてきたという。とくに昨年から進歩した点は、工具の使い方と、より短時間で作業をすませるための動線の短縮とし、この大会があったからこそ、より質の高い作業を身に着けられたのだろう。

総評を述べる清水社長

 清水社長は大会総評として、選手、スタッフ、審査員に「お疲れ様でした」とねぎらいの言葉をかけた後、この大会の第1の目的が「お客さまの安全向上」と「皆様(サービススタッフ)の安全の向上」であるという。それができ、サービススタッフの質が向上することで「ブリヂストンはタイヤがよいだけでなく、人がよくて、サービスがよい」となり、「お客さまの満足度につながる安全と、お客さまの信頼度を大変アップする」という。そして、向上したサービスの技術を、地域に持ち帰って全体の底上げにつなげてほしいと語り、大会を終えた。

 大会終了後、大会のとりまとめを行った古後氏に確認したところ、年に1度の大会開催により、サービススタッフの全体のレベルは確実に向上しているという。大会のベースとなる標準作業手順は、安全や効率の観点から年に1回見直されており、来年の大会はより安全や効率を向上させたもので行われていく。技能マイスターとなったサービススタッフは、以降の大会には参加できなくなるが、後進の指導という新たな役割によって、大会を盛り上げていくことになる。

(編集部:谷川 潔)