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ブリヂストン、「2013年度技能オリンピック全国大会」開催
大型車両のタイヤ交換技術を競う
(2013/8/26 13:37)
ブリヂストンは8月22日、大型トラックやバスなど、大型タイヤの交換技術を競う「2013年度技能オリンピック全国大会」を開催した。同社のタイヤ販売店を対象に開催される大会で、今年で4回目。今回は春先から全国36カ所で予選が実施され、参加人数は369人。そのうち24人が21日、22日の2日間にわたって開催される決勝戦に進出した。
「安全は全てに優先する」という方針のもと、同社では安全作業講習会や独自の作業標準策定などさまざまな取り組みをしており、この技能オリンピックもその一環として開催されているイベント。特に安全に関しては、安全を担保する仕組み、安全を支える技術、安全に対する意識作りの3点を柱として取り組んでおり、本大会の運営にも反映されている。
タイヤの交換作業の中でも空気充填作業は危険性が高く、死傷者が発生するケースが後を絶たない。また脱輪事故においても、過去に歩行者を巻き込んだ死亡事故が何度も発生している。
これらを受けて同社では、バーストの危険性を体感してもらうためのバースト実験などを盛り込んだ安全セミナーを実施しているほか、バースト時に作業者を保護する爆風保護シートなども開発している。実際のタイヤの取り付け作業は独自の作業標準化によって安全性を高めている。
また、タイヤの安全にはメンテナンスも欠かせない。同社では運送事業者向けに「エコバリューパック」と呼ばれるソリューションを展開しており、安全運航、経費削減、環境対応を同時に解決できるソリューションとして提案を続けており、本大会はこうしたビジネスの基盤構築にも一役買っている。
競技は、ユーザーによってタイヤがパンクしたトラックが持ち込まれ、その修理を依頼されるところからスタート。約25分の間にジャッキアップからタイヤの取り外し、空気充填や清掃点検、タイヤの取り付けなど一連の作業を確実かつ安全に行うものだ。
タイヤの取り付けは「ISO取付方式」の車両を採用。これは世界の大型トラック・バス市場で95%のシェアを持っている規格。日本では導入されてまだ5年しか経っておらず、採用は全体の1割程度にとどまっているが、他社に先駆けてこのノウハウを構築することも目的の1つだ。
競技は学科と実技によって行われ、上位から最優秀賞1人、優秀賞2人、入賞5人が選ばれる。これらの入賞者は「技能エキスパート」として認定される。また、さらに競技選考で作業標準安全項目を100%遵守し、学科試験で80点以上を獲得した参加者は「技能マイスター」に認定され、機材開発や作業標準の改定業務などにも関わる重要な責務を負うことになる。
競技結果は、作業の平均時間が24分29秒で最短は21分54秒。あらかじめトラブルも仕込まれており、問題点にいかに気がつくことができるかも採点の対象となった。用意されたトラブルは「ナットの緩み」「バルブキャップの不足(2カ所)」「タイヤ内圧の半減」「アルミナットがスチールナットになっている」という5点。これに気がついた選手は、ナットの緩みが3割、ナットの違いと内圧の半減が6割、バルブキャップの不足については7割が気がつき、2人の選手がパーフェクトを達成している。
今回の入賞者は下記のとおり。今年は新たに3人がマイスターに選出され、昨年までに選ばれたマイスター9人に加えて合計12人のマイスターが誕生したことになる。
●最優秀賞
関東タイヤ(株)成田センター 杉山能成氏
●優秀賞
BCTS関東(株)タイヤサービス水戸平須店 水野宏行氏
●優秀賞
(株)ブリヂストンタイヤサービス信州 佐久TRC 宮本淳一氏
●入賞
BCTS関東(株) 野田店 浅沼直樹氏
関東タイヤ販売(株) ミスタータイヤマン宇都宮 田中昌平氏
ブリヂストンリテール長野(株) ミスタータイヤマン岡谷店 伊藤 仁氏
(株)久我タイヤセンター 塩﨑隆幸氏
BCTS中部(株) 福井店 笹岡昌治氏
●技術マイスター認定
関東タイヤ(株)成田センター 杉山能成氏
(株)ブリヂストンタイヤサービス信州 佐久TRC 宮本淳一氏
BCTS関東(株) 野田店 浅沼直樹氏
会場では、2010年にマイスターとなった森氏によるデモンストレーションも実施された。デモでは、2010年に同社の作業標準が導入される以前の作業と現在の違いをひととおり披露。従来はタイヤのナットなどを外してもそのまま地面に置いていたので、砂などの異物が付着しやすかった。ネジの締め方自体も異なっており、従来はとにかくナットをただ順番どおりに取り付け、トルク管理もせずに力任せに締め付けるのがあたりまえだった。手締めしたあとは、トルクレンチを使って800~1000Nmぐらいの力で固定していたという。
次に、ブリヂストンの作業標準に沿った「ISO取付方式」が紹介された。この手順では、まず12時と6時の位置にあるナットを外し、「センタリングスリーブ」と呼ばれる長い棒を外したナットの代わりに取り付ける。これがガイドの役割を果たし、タイヤを外すときにネジ山を傷つける心配がなくなるのだ。その後、残りのナットを外していく。外したナットは清潔なトレイに並べて保管し、取り外した順番も分かるようにしている。このためナットは、外す前と同じ元の位置に再取り付けが可能だ。取り外したナットは丁寧に清掃される。特にISO方式のナットにはワッシャーが組み込まれているため、より丁寧な清掃が必要になる。さらにホイールのインロー部分の清掃とグリスの塗布も欠かせない。インロー部分の清掃を怠ると、融雪剤などの影響でサビが発生してホイールが固着する場合があるそうだ。
タイヤの取り付け手順も以前とは異なり、まずは手締めですべてのナットをボルトに取り付けたあと、トルクセッターを使って対角線ごとに目標トルクの半分程度(ここでは400Nm)ですべてのナットを締め、最後は対角線ではなく順番に規定のトルクまで締めて取り付け完了となる。
なお、今回の手順は3段階の取り付けだが、これは条件付きで可能な方法。その条件とはISO方式で車両が新しく、ホイールも新しいものであること。それ以外の場合は4手順が必要で、トルクセッターを使って目標トルクの半分まで締めたあと、「対角線ごと」に目標トルクまで締め、そこからさらに上記手順のようにもう1度順番に目標トルクで締め付ける作業が必要になる。
ISO方式は作業ごとのばらつきが少なく安定しているそうだが、メンテナンス項目が多く、これによるコストアップが避けられないという。だが、実際にはJISとISOの価格差を付けている店舗はまだ少ないのだそうだ。このあたりは徐々に周知して適正なコストに引き上げていきたいという。