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奈良の明日香村で超小型モビリティのレンタル「MICHIMO」がスタート

ソフトバンクモバイル提供のタブレットとナビアプリも

2014年10月11日開始

超小型モビリティのレンタルサービス「MICHIMO」がスタート

 明日香村地域振興公社は、10月11日から日産自動車の超小型モビリティとソフトバンクモバイル提供のナビアプリを組み合わせたレンタルサービス「MICHIMO」をスタートさせた。それに先駆け、前日の10日にオープニングセレモニーを開催。テープカットが行われた後、超小型モビリティの体験試乗会も開催した。

 11日にスタートした「MICHIMO」は、飛鳥地方(奈良県高市郡明日香村、同郡高取町および橿原市)一帯にある史跡などの名所を巡るのに最適な移動手段として、日産の超小型モビリティ「ニュー・モビリティ・コンセプト」を提供するレンタカーサービス。利用料金は1日あたり8000円(税別。保険・充電料金含む)、貸し出し時間は9〜18時。

明日香村村長をはじめ関係者らがサービス開始を記念してテープカット

EV+ナビ用タブレット+充電インフラを提供

 MICHIMOで採用されたニュー・モビリティ・コンセプトは2人乗りのEV(電気自動車)で、回生ブレーキシステムなどを備え、満充電時の航続距離は約100km。最高速度80km/hの性能をもつ。飛鳥地方は古墳や城跡など数多くの史跡、棚田などの観光名所が点在しており、従来からレンタサイクルを提供するなど観光者向けの活動を行ってきたが、今回のMICHIMOによりEVのレンタルサービスが追加されることになる。

式典で展示された5台のニュー・モビリティ・コンセプト
運転席と後部座席
アクセルとブレーキの2ペダル車のため、一般的なAT車と運転方法は同じ。左上に見えるレバーがサイドブレーキ
車両前方に収納されている充電ケーブルを使って充電する

 レンタルした超小型モビリティで走行可能な範囲は、近鉄吉野線の東側一帯のうち、北は藤原宮跡や本福寺、南は地蔵寺や高取城跡といったスポットが含まれる南北に長いエリア。拠点のMICHIMO STATIONは飛鳥駅前に設けられ、ここで超小型モビリティのレンタルや充電ができるほか、その他に2個所設置されている充電スポットも利用可能だ。

 充電設備については、ソフトバンクモバイルが開発した充電・認証システム「ユビ電」により、利用状況などを詳細に管理する。MICHIMOでは今のところユーザーが充電料金を支払うことはないが、将来的に課金の仕組みにも対応することを前提にシステム設計しており、誰がどのように利用しているのかを把握したり、充電量や充電時間に応じた課金も可能にするとしている。

飛鳥駅
駅前に設けられたMICHIMO STATIONはレンタサイクルの営業所も兼ねている

 MICHIMOと似た超小型モビリティを使った取り組みは、2013年7月から2014年3月まで香川県の豊島で行われた実証実験がある(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20130719_608393.html)が、今回のMICHIMOは実験ではなく本サービス。豊島の実証実験で得られた知見などをもとに、システムの改善やユビ電で管理する情報量を増やすといった変更が施されているという。

 また、超小型モビリティに車載する専用ナビアプリをインストールしたiPadも、ソフトバンクモバイルが提供する。あらかじめ収録されている飛鳥地方の名所を簡単なタッチ操作で検索し、そのスポットまでのルートを地図表示で案内してくれる(カーナビのような音声案内はない)。また、スポットの詳しい情報をテキストや画像で表示したり、音声ガイドで教えてくれるほか、MICHIMOで許可されている走行可能な範囲を外れた場合に警告する機能も備える。

運転席の左前方に専用ナビアプリがインストールされたiPadが設置される
スポット検索や、指定スポットまでのルート表示が行える

 ソフトバンクモバイルの担当者によれば、今後ナビアプリのバージョンアップも計画しており、現在はGPSで判断しているユーザーのスポットにおける位置特定を、スポットごとに現地に設置するiBeaconでより正確に行うようにすることも検討中。走行可能範囲におけるモバイルネットワークの通信可否についてもすでにチェック済みで、大部分でソフトバンクの4Gネットワークを利用でき、ごく一部のみ3Gネットワークになる場合がある、としている。

 式典では明日香村村長の森川氏が挨拶に立ち、奈良県のエネルギー政策課長とソフトバンクモバイル担当者の「2人の思いと偶然が重なってMICHIMOを始めることができた」と振り返った。過去に2人が別件で同氏を訪れたにもかかわらず、EV導入について同日に立て続けに提案されたという“偶然”が起こったのだとか。

 MICHIMOのスタートに当たり、プロジェクトに携わる多数の関係者、地元住民に感謝の言葉を贈りながらも、「EVであるMICHIMOはまだ走り始めたばかりで、赤ん坊みたいなもの。今後もさまざまな問題が発生すると思うので、柔軟に課題を克服していくつもり。ぜひ支援をお願いしたい」と力強く語った。

明日香村 村長 森川 裕一氏
国土交通省自動車局次長 和迩(わに)健二氏。「MICHIMOをきっかけに観光振興、地域振興につなげ、全国レベルでの成功事例になっていく可能性に期待したい」とエールを贈った

飛鳥地方の空気を全身で感じられる乗り物

 式典後には、飛鳥駅前と公道上での試乗会も行われた。ニュー・モビリティ・コンセプトの車両自体は2人乗りということもあって見るからに小さく、後部座席に大人が乗り込むのはやや窮屈で苦労することがある。サイドウィンドーもないので雨天時は雨に濡れる可能性も高い。

ニュー・モビリティ・コンセプトの前方と後方から
走行中の様子を後部座席から撮影
伝飛鳥板蓋宮跡付近の風景
ニュー・モビリティ・コンセプトの走行映像

 アクセルを踏み込むと最初だけゆるやかに加速し、その後甲高いモーター音を響かせてリニアにスピードアップしていく感覚は新鮮。地面の細かな凹凸さえはっきりと感じられるほど振動は大きいが、ダイレクトに路面の状態が伝わるところや、窓がないために周囲の音や空気をしっかりと感じられる点は、自然豊かな飛鳥地方の雰囲気を堪能するには最適と思える。クルマというよりも、オートバイのようなダイレクト感と気軽さを味わえる乗り物だ。

 飛鳥地方は、幹線道路以外の名所につながる道路がかなり狭く、通常の軽自動車同士ですらすれ違えない道幅の個所も多数ある。超小型モビリティであればそういった場面でも普通自動車とすれ違えるほどの余裕があるので、運転に自信がない人でも困ることは少ないだろう。窓がないのでアイコンタクトもしやすく、停まっていると現地の人が興味深そうに近づいてきて気さくに話しかけてくれるのも旅行者にとってはうれしいかもしれない。

セニアカーと
明日香村では稲刈りが始まっていた。害獣被害も多いが、当日は台風も接近していたため、収穫を急いでいるという
稲渕の棚田でガイドを聞く
棚田の風景

 ところでニュー・モビリティ・コンセプトを運転する際には、前述の豊島のリポートにもある通り、一般的な自動車よりもブレーキが重いことにも注意したいが、AT車にあるようなクリープがないため、坂道発進時に後退しないよう注意しなければならないこと、方向指示器とワイパーのレバーが国産車とは左右逆であることにも気を付けておきたい。

 MICHIMOでは、この超小型モビリティを日産から借り受ける形で5台導入しているが、10月末までに9台へ増車し、2014年度末には4人乗りの市販EVカーも利用できるようにする。ソフトバンクモバイルの担当者の話では、将来的にはニュー・モビリティ・コンセプトにこだわらず、「面白い車両はどんどん取り入れたい」とのことで、EVのバリエーションが今後さまざまに広がる可能性もある。

 なお、走行可能範囲に対して超小型モビリティの航続距離は十分にあるため、電欠になることはほぼないと想定しているが、万一の電欠時はMICHIMO STATIONに連絡し、その後トラックによる積載輸送が行われることになる。当面は電欠を「なぜ起こったのか」というトラブル分析のケーススタディとして捉え、対応に要する費用は請求しない方針。電欠するような乗り方は避けたいが、安心して利用できるポイントの1つとも言えそうだ。

(日沼諭史)