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「瀬戸内国際芸術祭2013」にあわせ豊島で超小型モビリティのレンタカー開始
ソフトバンクモバイルの「Ubiden(ユビ電)」で充電を管理する実証実験
(2013/7/19 20:42)
豊島モビリティ協議会は7月19日、豊島交流センター(香川県小豆郡土庄町豊島家浦)で豊島マイクロEVレンタカーのオープニングセレモニーを開催した。
このセレモニーは、7月20日から始まる「瀬戸内国際芸術祭2013」の夏期間にあわせて、超小型モビリティをレンタル開始することを祝うもの。レンタルされる超小型モビリティは、2人乗りの日産自動車「ニュー・モビリティ・コンセプト」で、約100kmの航続距離を持つEV(電気自動車)。7月20日~2014年3月30日までレンタカーとして借りることができ、利用料金は充電料を含め1日8400円。豊島マイクロEVセンターのWebサイト(http://resv.jp/ubiden/)から予約できる。
瀬戸内国際芸術祭2013の総合プロデューサーでもあり、電気自動車の普及に力を入れる電気自動車普及協議会会長の福武總一郎氏は、「豊島ではかつて産業廃棄物の不法投棄などの問題があった。豊島の人と一緒にアート活動をやって少しずつ元気になってきた。そのようななか、ソフトバンクモバイルから、(同社の)社内ベンチャーで最優秀を取られた“Ubiden(ユビ電)”の企画のお話をいただいた。また、日産さんとは電気自動車普及協議会として一緒に電気自動車の普及をしていこうという話をしていた。豊島は(瀬戸内国際芸術祭の開催をしている島の中でも)もっとも話題になる島。豊島の岡田町長などの支援もあってこの日を迎えられた」と挨拶した。
福武会長が挨拶で触れているユビ電は、ソフトバンクモバイルの新たな事業への試み。今回の超小型モビリティのレンタカーでは、充電管理システムとして実証実験を行う。
具体的な仕組みとしては、各充電器と超小型モビリティに個体識別可能な機器を搭載。充電器は通信可能な機器が接続され、どの超小型モビリティがどのくらいの電力を充電したのかという情報がクラウド上のサーバーへ送られる。今回の超小型モビリティのレンタカーでは充電代金は含まれているが、この仕組みを使うことで、どのクルマがどれだけ(しかも、場所も管理)充電したか分かるようになり、充電の課金システムの構築ができるようになる。
このシステムの利点は、超小型モビリティの充電プラグを充電器のコネクターに差すだけで、各種の情報をやり取りできるところ。普段の充電作業に特別な手順を増やすことなく、充電管理が行えるわけだ。
サーバーで管理しているため、たとえばタブレット端末やスマートフォンで充電履歴を見ることも可能。データとなっているため、クルマからの絞り込みや充電個所からの絞り込みもできる。
ユビ電の意は、ユビキタス+電気とのことで、このシステムが普及することで充電電力の管理が容易になる。誰が、いつ、どこで、どのくらい充電したか明確になり、使った(充電した)電気だけ、電気料金を払う(もしくは徴収する)ことができるようになる。
ユビ電プロジェクトを担当する、ソフトバンクモバイル ユビ電事業企画室 室長 山口典男氏は、「ユビ電と電気自動車の充電は相性がよい。将来的には、喫茶店のコンセントにユビ電が入ることで、スマートフォンなどの充電電力管理ができる。その場合は、電力量で料金をいただくのではなく、利用時間で料金をいただくのかもしれない」と言う。ただ、将来構想の広がりはあるものの、まずは島という空間で行う実証実験において、ユビ電の使われ方を確認していく。
オープニングセレモニーのテープカットには、豊島モビリティ協議会 代表 兼 土庄町 町長 岡田好平氏、豊島食プロジェクト推進協議会 副会長 兼 土庄町 町議会議員 濱中幸三氏、ソフトバンクモバイル ユビ電事業企画室 室長 山口典男氏、国土交通省 四国運輸局 自動車技術安全部長 井上純男氏、日産自動車 ゼロエミッション企画本部 本部長 牧野英治氏、日産カーレンタルソリューション 代表取締役社長 中川一夫氏、豊島食プロジェクト推進協議会 会長 山本彰治氏、福武財団 理事長 兼 ベネッセホールディングス 取締役会長 兼 電気自動車普及協議会会長 福武總一郎氏が参加。6台の超小型モビリティのレンタル開始を告げた。
豊島の岡田町長は、「(この超小型モビリティで)ゆっくり、のんびり、豊島を満喫していただきたい」と語り、新世代の乗り物がいち早く豊島に投入されたことがうれしそうだった。
ニュー・モビリティ・コンセプトで豊島巡り
テープカットの後、関係者や報道陣向けに超小型モビリティの走行会を実施。記者も取材に訪れていたケータイジャーナリストの石川温氏の後席に座って、瀬戸内国際芸術祭2013と関連する豊島のスポットを巡った。
最初に訪れたのは、セレモニーの行われた家浦港から4kmほどにあるレストラン「島キッチン」近くの駐車場。島キッチンは、豊島の女性が作るメニューを楽しめるレストランで、集落の平屋を改築してある。この島キッチンに訪れる人が便利なよう、豊島モビリティ協議会では島キッチン近くの駐車場に充電器を設置。もちろんユビ電に対応したもので、島内にある充電個所は、家浦港近くの豊島交流センターと、この駐車場の2個所になる。
その後、豊島美術館へと移動。この豊島美術館ではアーティスト 内藤礼氏と、建築家 西沢立衛氏による作品「母型」を見ることができる。
豊島は、島の外周道路を巡っても20km以内に収まる。ニュー・モビリティ・コンセプトの満充電時の航続距離は約100kmなので、回生などが行われることを考えると、電欠なることはまずないだろう。
豊島美術館からの帰路は、石川氏に後席に乗ってもらい、記者が運転したが、電気自動車、しかも超小型タイプの運転感覚は新鮮なものだった。運転する上であえて注意するなら、ブレーキシステムにエンジンの負圧を利用するブレーキブースターが存在せず、ブレーキは踏力とリニアな関係になっている。慣れないうちは、ブレーキが通常より固い、もしくは効きにくいと思ってしまうので、速度や車間にとくに注意してほしい。
前席、後席、いずれにも乗ってみたが、島を巡る上では、島風が気持ちよく吹き込んでくるほか、あちこち脇見が可能な後席が楽しかった。レンタル代が1日単位なので、フェリーの出航時刻に注意して、島でのアート巡りを体験していただきたい。
今週末の予約はすでに満杯とのことで、利用する場合は、早めの予約をお勧めする。