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新しい体験を生み出す旅先提案エンジンの開発 日産「トラベルトリガー」オンライン説明会
トラベルトリガーはユーザーにとってどのような存在になっていく?
2020年11月7日 13:21
- 2020年11月4日 開催
日産自動車は11月4日、ユーザーの行動データ分析を元にした旅行提案を目指す「トラベルトリガー」に関するオンライン説明会を開催。日産自動車でトラベルトリガー プロジェクトリーダーを務める安東慶人氏が開発の狙いについて説明した。
日産が開発に取り組む「トラベルトリガー」は、ユーザーの行動傾向や、趣味嗜好に基づく旅行計画をスマートフォンのアプリへ提案し、新たな体験ができる旅行プランをユーザーに提供するサービス。同日より開始された実証実験では、ユーザーが旅行時のクルマを降りた後に、どのような立ち寄り観光地や店舗などへ行くかといった行動データを分析することで、「トラベルトリガー」の実現に役立てていくという。
日産のコネクテッドサービスビジネス開発グループ
説明会に登壇した安東慶人氏は、前職のソフトバンクで11年間、IoT(Internet of things)の領域で様々な企画に取り組んできたといい、安東氏は「IoTの中で一番その可能性があるのはレベル4以降の自動運転が成立した時の自動車の中のサービスだろうと注目をしておりまして、2年前から日産の方に入りまして、現在コネクテッドサービスビジネス開発グループの課長として、いろいろなものに取り組んでおります」と自己紹介した。
日産におけるコネクテッドサービスビジネス開発グループの役割について、安東氏は「私のチームのミッションは、企画、ビジネスモデル、技術的な実現性の確認、パートナーとの連携、この4つの要素をパッケージにした新規サービスの企画を行なっていくことになります。それぞれの個別に行なっていても新サービスはなかなかうまく立ち上がらなかったり進まなかったりするので、この4つの要素を同時に検討していくというミッションを持って進めております」と解説した。
ユーザーのライフスタイルを理解したサービスを提供
安東氏によるプレゼンテーションでは、まずは日産が目指しているサービスの方向性が示された。日産では、移動だけでなくユーザーのライフスタイルを理解したサービスを提供することを目指しているといい、一人一人の行動傾向や趣味嗜好をよく理解し、ユーザーにぴったり合う行先候補やサービスを提案していくことを目指すという。
安東氏は「今現在、Netflixですとか YouTube のような動画の視聴においても皆さんが色々見られているものの履歴によっておすすめが自動的に表示されてそこからどんどん見ていくという、いまでも70%以上の動画視聴というのは、おすすめから行なわれているというデータもあります」と具体的な事例を紹介して、「実際のクルマなどの行動、移動についても動画の視聴と同様に、行動履歴を分析した上であなたに合うのは、こういったおすすめの行き先じゃないかというのが提示されて、そこから目的地を決めていくのが、当たり前の時代になるのではないかと思っております」とサービスのイメージを説明した。
ビジネスモデルを含めた日産独自のデータプラットフォームを構築
そういったサービスの実現にはデータプラットフォームが必要になるという。トラベルトリガーの実現に向けては、「車両データ」「スマホデータ」「ユーザー入力データ」といった各データを統合して、まずは「ユーザープロファイル」を作成していくことが必要という。
また、ビジネスモデルとしては、日産独自のサービスとして展開して、ユーザーからサービス料金を得ることに加えて、同時に「旅行代理店」「広告会社」「飲食店」といった外部サービス事業者へデータを提供することにより、B to B to C中心で対価を得ていくことを考えているという。
トラベルトリガーのコンセプトは「新しい体験ができる旅のきっかけ」
トラベルトリガーのコンセプトは「新しい体験ができる旅のきっかけ」とし、安東氏は「今現在、日本の中でも魅力的な旅行先はいろいろあると思っていて、なかなか知られてない隠れた場所だったり、新しいスポットなどがどんどん生まれてきていると思っています。ですので、そういった場所に対してお客さんに対してただ闇雲にどんどん提案をするのではなくて、ちゃんとユーザーのライフスタイルを理解した上で、ここに行けばあなたが好きなものに近い体験ができる、もしくは新しい体験ができるという旅の提案を目指したいと思っております。ここでポイントになるのが、好きなものだけを提案していくというよりは、新しい体験ができるというところで、偶然の発見のようなものも含めて提案の中に入れていきたいと思っております」と説明した。
旅先提案エンジンの精度を高めていく完成イメージ
そして、実証実験を通じて開発を進めていくトラベルトリガーの完成イメージが示された。そこではスマートフォンアプリから取得したデータを分析してユーザープロファイルを作成、それにより「旅先提案エンジン」を構築。次のステップとして実際に旅先提案エンジンを動かして、旅先提案を実施、ユーザーフィードバックによってその提案精度を高めていくという。
実証実験のフェーズ1としては、データ分析とユーザープロファイル作成を実施。フェーズ1においては旅先提案を行なわず、2021年度以降に旅先提案を開始予定としている。
インクリメントPとの協業でユーザープロファイルに必要なデータを取得
このトラベルトリガーの実証実験にあたり、日産はインクリメントPと協業することを発表。インクリメントPのポイ活アプリ「トリマ」を利用する会員の行動データの提供を受けて、データを分析することでユーザーの趣向やライフスタイルを理解していくという。
インクリメントPと協業する狙いについて、安東氏は「同社の提供しているトリマアプリを通じてデータを入手して分析を行なって、プロファイル作っていきたいと思っており、その結果をもとに来年度以降、実際の旅の提案というのを開始していきたいと思っております」と話した。
加えて「今回のインクリメントPとの協業については、カーナビの地図事業を手掛けている会社さんでMapFanというブランドで展開をされているので、ご存知の方も多いと思うのですが、その地図ビジネスというところから、さらに人流データなどを使って新しいビジネスを作っていきたいというところがあって、そのあたりでわれわれと目指している方向性が位置するところもあったので今回協業を行なっております」と話した。
インクリメントPと協業する意義について、安東氏は「われわれはクルマの中のデータは持っているのですが、クルマの外のユーザーさんの行動データは持っていないので、まずはそこの部分で、またユーザーさんの属性データで、さらに行動データだけではわからないような、その緯度経度にどういった施設があるのかというPOIの情報を紐付けて提供いただくというところに、われわれとして価値があるところだと思っております」と話した。
最終的にトラベルトリガーはユーザーにとってどのような存在となるのか、プレゼンテーション後の質疑応答の中で、安東氏は「今現在、クルマを使われてない方々に対して、もっとクルマを使いたいとか、買ってもいいとか、もしくは買わなくても利用してみたいと思っていただけるようなサービスにもしていきたいと思っていて、今現在クルマを使っていなくてもこういうものが使えるんだったら、旅に行ってみたいと思ってもらいたいと思っています」と、その利用イメージを語った。