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日産、自律移動するアプリも搭載した人型ロボット「Pepper」公開

よしもとロボット研究所と共同開発した“ノリツッコミも可能”なPepperで集客を目指す

2015年12月17日開催

 日産自動車は12月17日、同社の販売店舗に導入した人型ロボット「Pepper」に日産オリジナルのアプリを搭載し、同日から本格的にユーザー対応を開始した。神奈川日産自動車 中央店で、報道陣向けに最新のPepperのデモンストレーションが行なわれたので、その模様をお伝えする。

 日産が「レディー・ファーストショップ」を展開していることをご存じだろうか? 「とびきりの1台に、出会ってほしいから。雑貨や洋服のようにクルマも気軽に楽しく選んでほしい。だから、日産はこれからも変えていきます。お店や体験づくりから、購入後のお付き合いまで。クルマと関わるすべての瞬間をもっとうれしく。」をキャッチコピーとして、女性のクルマ選びのために独自の認定基準を設け、女性目線の店づくりを展開している“女性にうれしい”店舗になっている。

 そのレディー・ファーストショップのうち100店舗にPepperが導入されている。日産のPepperは、来店者をトークで笑わせたりゲームで遊べたりするなど、店舗を居心地のよい場所に変えるために配備されており、主な接客内容としてはクルマに関する質問への返答や、答えが不正解であるほど楽しい「ノリツッコミクイズ」など、日産と吉本興業グループの「よしもとロボット研究所」が総力を挙げて開発したスペシャルアプリを搭載。

 さらにPepperが人を認識し、自律移動を行ないながら障害物を認識し停止・回避するなど、自動運転の技術を分かりやすく体験できるようなアップデートが2016年1月末までに予定されている。

今回のデモ会場となったのは、12月12日にリニューアルオープンしたばかりの神奈川日産自動車 中央店。電気自動車(EV)「リーフ」向けの急速充電器が設置されるほか、GT-Rの特別教育を受けたGT-Rマイスターを配する「日産ハイパフォーマンスセンター」(メーカー認定店舗)でもある

大人も子供も楽しめるような3つのアプリを、よしもとロボット研究所とともに開発

 まず、日産のレディー・ファーストプロジェクトを担当するマーケティング本部 販売促進部 部長 菅野亜紀子氏からプレゼンテーションが行なわれ、「女性はもちろん、初めてクルマを購入されるお客様がもっと気軽に店舗に足を運んでもらえないかと考え、レディー・ファーストショップの設定を行なっているが、お子様連れで来店された際に、クルマの商談中に退屈になりがちなお子様の遊び相手にもなれるようPepper for Bizを配属した」と、Pepper導入の狙いと目的について説明。

 そしてPepperに、大人も子供も楽しめるような3つのアプリをよしもとロボット研究所とともに開発したことに触れ、「1つめのアプリは日産の商品紹介。でも、Pepper目線のトークは少しだけ笑える部分もあり楽しめる」と説明。2つめは「日産オリジナルゲーム」で、日産に関する語句をPepperが早口でしゃべり、その正解を選択してもらうもの。クルマに関する質問を投げかけると、時に真面目に、時に面白おかしく適当な返答をする「クルマで一問一答」という会話型アプリになる。3つめのアプリを体験できるのは2016年1月以降になってしまうが「ブンブンPepper(仮)」。Pepperとしては初となる、センサーを駆使した自律移動を可能としたもので、菅野氏は「日産車に搭載されている自動ブレーキや自動追従の機能の理解はもちろん、将来の自動運転技術の理解にも繋がるものと考えている」と語った。

菅野氏は「楽しめること、ためになることが、さらなる顧客満足度の向上につながると考えている」とPepperの導入と今後の拡張について語った

 また今後のPepperの活用については、「商品紹介やエンタメ機能の充実は継続していき、クラウドを活用したシステムの検討を行なっている。たとえば日産の店舗に何度もご来店いただくオーナー様に対し、顔認証機能を活用して特別な応対を行なうとか、お客様の反応を蓄積して顧客対応の改善に繋げるなど、さまざまな内容を検討している。Pepperの機能を日産らしく活用し、さらなる顧客満足度向上に努めたい」とコメントしている。

ソフトバンクロボティクス プロダクト本部 蓮実氏(右)は「はっちゃけた日産のPepperと他社のPepperを比べても楽しいと思う」と、けっこう満足している様子だった

 次いでPepperについて解説したのは、ソフトバンクロボティクス プロダクト本部 取締役本部長 蓮実一隆氏。蓮実氏は「日産の高い技術は従来より評価されているが、今回Pepperの中にある技術をフルに利用していただいた。今後は顔認証はもちろん、表情や感情を読み取って、お客様ごとの対応ができるようなことも予定している。他の企業にもPepperを導入していただいているが、日産のPepperほど上手にボケたり笑わせてくれるところはないので、ぜひ楽しんでいただきたい」とコメントした。

「クルマで一問一答」「ブンブンPepper」のデモ

現在はまだPepperに問いかけた人間の性別の判別をしたうえでの返答は組み込まれていない

 この後、菅野氏から「クルマで一問一答」のデモが実施され、口頭で「クルマを買うときに必要なものは?」と問うと、Pepperは「お金と印鑑と、あとは“このクルマが欲しい”っていう気持ちですかねぇ~?」と返答。さらに「女性が運転しやすいクルマは?」と菅野氏が問うと、「コンパクトで小回りが利くクルマが運転しやすいですけど、フェアレディZを爽快に乗りまわすレディはカッコいいですね!」と返答し、場内の笑いを取っていた。

 続いて「ブンブンPepper」のデモ。実際に「目と目が合って」認識した相手の後をついて歩くのだが、ちゃんとセンサーが障害物を感知して停止、そして回避を行なえる自律移動であることが分かった。

初めに相手の顔を認識し、後ろを追いかけて進むのだが、障害物を発見すると「自動ブレーキ」。その解説もPepperが行なってくれる
「ノリツッコミクイズ」は、わざと誤った回答をすると楽しめる内容。ここはよしもとロボット研究所とのコラボが効いている。写真右の「なんていった?」は早口言葉のゲームスタート画面
数項目の選択による性格判断から、その人に最適な日産車を提案する「性格診断・商品紹介」の結果
ソフトバンクロボティクス 蓮実氏も「はっちゃけた」と評価する日産のPepper。質問とその回答については、ぜひご自身で販売店で確かめてほしい

(酒井 利)