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日産、「ダイバーシティ推進活動」により女性管理職比率が8.2%に上昇

在宅勤務を有効活用する「働き方改革“Happy8”」を3月から導入

日産自動車 ダイバーシティディベロップメントオフィス 室長 小林千恵氏
2015年5月29日発表

 日産自動車は5月29日、2015年4月時点の女性管理職比率が、前年度の7.1%から8.2%に上昇したと発表した。発表では、2014年度に管理職以上となっている女性は214人で、女性従業員数が少ない部門も含めた全部門で登用。比率としては、女性従業員の10人に1人が管理職であるとしている。

 この発表に合わせ、同日に神奈川県横浜市にあるグローバル本社で説明会を実施。女性管理職比率上昇の原動力となった、2004年から続けている「ダイバーシティ推進活動」における取り組みについて紹介した。

 説明会では、人種、国籍、性別、学歴などを問わず企業が人材を活用することを指す「ダイバーシティ」を推し進めるため、2004年10月に人事部門から独立した組織として立ち上げられた「ダイバーシティディベロップメントオフィス」の室長を務める小林千恵氏が登壇。10年にわたって続けられている活動の推移や活動の狙い、今後の課題や新たなる取り組みなどについて解説した。

日産自動車は2014年度における販売比率の88%が海外というグローバル企業
1999年に始まったルノーとのアライアンスをはじめ、さまざまな海外企業とのパートナーシップを締結している日産は、文化の違いや女性役員の登用などで大きな影響を受けたという
日産の行動指針である「日産ウェイ」には、最初の項目に「異なった意見・考え方を受け入れる多様性」を心構えとして設定
カルロス・ゴーンCEOは「多様化するユーザーニーズに対応するため、自分たちもキチンとしたダイバーシティの組織を持ち、多様な意見をぶつけることで革新的で強い組織を作りたい」との意向を示している
「女性の活躍推進」「異文化理解」「仕事と人生の両立」「多様性を尊重する風土」の4つが大きな柱となる
日本的な美点を大切にしつつ、グローバルビジネスに勝ち抜ける人材の育成を目指してダイバーシティを推し進めている
ダイバーシティに関わる決定は、各部門の代表役員が出席して年3回実施される「ダイバーシティステアリングコミッティ」で決定される。ダイバーシティディベロップメントオフィスは室長の小林氏を含め、7人のスタッフで構成される
ダイバーシティ推進に対する外部からの評価。経済産業省などが選定する「なでしこ銘柄」には3年連続で選ばれている
意思決定層のダイバーシティを紹介する表。より高い層での女性登用が増えるよう活動を続けたいと語られた
2015年度の新卒採用では、女性が占める割合を「ノンエンジニア」で54%、「エンジニア」で17%と、自主的に定めるガイドラインを上まわる数値となった
女性が子育てをしながら仕事を続けていくための「両立支援制度」の歴史と具体的な施策内容

 小林氏は「自動車業界と聞いて男性をイメージする人もまだ多いかと思いますが、実際には、クルマの購入で意思決定の3分の2に女性が関わっているというデータが日本の場合でも出ています。クルマの登録名義は男性でも、大きな金額をかける物でもありますので、配偶者や家族といった女性の意見も聞いて買うという人が25%となっており、購入の半分以上のケースで女性の意見が受け入れられています。そのため私たちとしても、クルマの魅力を女性のお客さまにきちんと伝えていく必要があると考えています」とデータを紹介。

「そこで私たちは、商品企画から生産、販売に至るまで、すべてのプロセスでダイバーシティの視点を織り込んでいます」と語り、具体例として2014年からスタートさせた「レディー・ファースト店舗」の取り組みを解説。女性が気軽に立ち寄れるディーラーを目指し、女性の視点を多く採り入れ、2014年6月にリニューアルした「府中西原店」をはじめ、これまでに108店舗がオープン。中長期的には300店舗を目指すことを明らかにした。

女性は直接的な購入者としては30%だが、男性がクルマを購入する場合でも女性の意見が反映されるケースが25%あり、合計すると半数以上の購入時に女性の意見が関与するという分析
単純に製品としてのクルマの内容だけでなく、生産時点での手順など、全面的にダイバーシティの視点が織り込まれているという
レディー・ファースト店舗には女性カーライフアドバイザーが常駐し、女性が足を踏み入れやすい店内演出、キッズスペースの設置なども実施
日産における女性管理職の比率の推移。自動車メーカー8社平均は製造業のなかでも低い数値となっているが、日産では平均よりはるかに高い比率となり、2017年までに2桁を目指す
女性のキャリア開発に関する施策やサポート体制
育児休職、時短勤務を利用する人数も右肩上がりで増えている。また、休職に入る前に面談をして復職後について相談する体制が整えられ、復職率はほぼ100%になったとのこと
1年間で女性管理職の比率が7.1%から8.2%に増加した要因の分析
日本国内での日産職員における階層ごとの女性比率。「一般層」「総括層」での比率が高く、「課長代理層」の増加に向けた育成が急務であると解説された
女性役員の候補については、エリアに縛られずグローバルでの育成プログラムを実施している

 また、今後に向けた課題と取り組みでは、まず現状認識として2013年度に行った社内調査の回答内容を紹介。男女、年齢などを同数で調査した結果では、「管理職になりたいと希望しない」との回答が一定数あったことを明かし、まずこの面を課題として認識していると小林氏は言う。理由についての回答では、女性は「仕事と家庭の両立が困難になるため」という項目が半数以上となっており、実際には裁量労働になるものの、「仕事の時間が長くなるのではないか」との不安から管理職を希望しない理由になっているのではないかと分析。

「管理職になりたいと希望しない」との回答は、近年は男性でも増える傾向があるとのこと。「メリットがないあるいは少ないため」という回答の多さに、当事者の管理職の社員がショックを受けたことも紹介された

 この解消を目指し、2015年3月から「働き方改革“Happy8”」というプログラムを新設。「1日8時間勤務を意識して働き方を見直し、8つの項目のハッピーを目指す」というこの活動では、よりコア業務に時間を割けるようになり、私生活も週末だけ充実させるのではなく、平日もプライベートを生み出せると説明。

 大きな施策としては、従来からも一部で利用されてきた在宅勤務をより柔軟に運用できるよう制度を変更。月あたりの利用できる回数を増やし、さらに数時間単位でも申請して使えるシステムになっている。

 最後に小林氏は、「日産自動車は『モノづくり』『ヒトづくり』『おもてなし』といった日本のよさを生かしつつ、日本ベースのグローバル企業として、グローバルビジネスをきちんと勝ち抜く人材を育てていきたいと思って取り組んでいます」と語り、ダイバーシティ推進の意義を紹介した。

2015年3月から始まった「働き方改革“Happy8”」。少子高齢化の時代に向け、時間あたり生産性のよい働き方に変えていく必要があるのではないかという考えも導入を後押ししているとのこと
8項目のハッピーを目指し、働き方を見直して時間の質を向上させる取り組み
1日の24時間を有効に使うため、通勤時間を削減する在宅勤務に注目。グローバル企業である日産では、人によっては海外との会議などを自宅で行う場合もあったが、さらに積極的に使えるよう、上限を「月5回」という要素に加え、「累計40時間」を設定。フレキシブルに利用できる制度とした
在宅勤務の有効活用には、職場環境の整備も必要とのこと。ITを利用する「MSオフィスコミュニケーター機能」を導入している

(編集部:佐久間 秀)