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SUPER GT第4戦富士は、ヨコハマタイヤを装着する24号車 D'station ADVAN GT-Rが優勝

ヨコハマは2010年以来のGT500勝利。GT300は55号車 ARTA CR-Z GTが優勝

2015年8月9日 決勝開催

GT500で優勝した24号車 D'station ADVAN GT-R(佐々木大樹/ミハエル・クルム組)。ヨコハマタイヤ装着車が真夏の富士を制した

 SUPER GT第4戦 富士300kmレースは、8月9日に決勝レースが富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で行われ、GT500は予選6位からスタートした24号車 D'station ADVAN GT-R(佐々木大樹/ミハエル・クルム組)が終盤大逆転で優勝を飾った。同車を走らせるコンドーレーシング、およびタイヤを供給しているヨコハマタイヤ(横浜ゴム)が優勝するのは2010年以来で、佐々木選手はSUPER GT初優勝となる。

 注目の選手権争いは、スタートでほぼ最後尾まで下がった12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/J.P.デ・オリベイラ組)が追い上げて3位に入り、前戦までの2位から繰り上がってポイントリーダーとなった。

 GT300はポールポジションからスタートした55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志組)が、ピットイン時を除いて一度もトップを譲らず、危なげないレースでそのままゴールした。選手権争いはレースで6位に入った10号車 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/千代勝正組)がポイントリーダーの座を維持した。

予選は38号車ZENT CERUMO RC Fがポール

 シーズンも折り返しとなる第4戦を迎え、これまでの3戦で上位の車両が大きなウェイトハンデを積んでのレースとなったため、チャンピオン争いをしている上位車両はこのウェイトハンデにどのように向き合うかが課題となるレースとなった。

 GT500ではポイントの倍のウェイトハンデが課されるが、50kgを超えると50kg分を燃料リストリクター(燃料の噴射量を絞ってエンジンのパワーを制限する装置)の絞りをきつくするハンデに置きかえることが可能で、今回は上位3台(37号車、12号車、1号車)がそれに置きかえてレースに臨むことになった。これによりストレートでのスピードはでないが、コーナーではそれなりのスピードで旋回できるため、この特性をどう活かすかがポイント上位の車両にとっての課題となった。

 そうした中で予選の上位は、ポールが38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)、2位が8号車 ARTA NSX CONCEPT-GT(松浦孝亮/野尻智紀組)、3位が36号車 PETRONAS TOM'S RC F(伊藤 大輔/ジェームス・ロシター組)と、第3戦までにポイントをあまり取っていない(=ウェイトハンデが比較的軽い)各車が占め、ウェイトハンデがきついポイントランキング上位の車両は下位に沈む結果となった。

GT500のスタートシーン

 レースの序盤は比較的静かなスタートで、大きな混乱もなく始まった。ポールからスタートした38号車 ZENT CERUMO RC Fが順調にトップを快走し、2位に5秒程度の差をつけて順調にレースを支配した。2位以下も、2位からスタートした8号車 ARTA NSX CONCEPT-GTと3位からスタートした36号車 PETRONAS TOM'S RC Fが順位を入れ替えた程度の変更で、特に大きな動きはなかったが、1周目に8位からスタートした12号車がほぼ最後尾まで落ちるなどの混乱はあったが、静かにレースが展開していった。

 徐々に動きがでてきたのは、各車がピットインを始めた25周前後から。最初に脱落したのは、36号車 ZENT CERUMO RC Fを再び抜き返して2位になっていた8号車 ARTA NSX CONCEPT-GTで、ピットイン時に他車よりピットストップに大きく時間がかかり、ピットイン後には8位まで後退することに。さらに8号車の不運は続き、左のリアタイヤがパンクして8号車は今回唯一のリタイアになってしまった。今回トップを争えるだけのパフォーマンスを示していただけに、8号車にとっては厳しい結果になってしまった。

他車より2秒近く速いラップタイムを叩き出したヨコハマタイヤと24号車が大逆転で優勝

 全車ピットストップが終わってみると、引き続き38号車 ZENT CERUMO RC Fがトップに立っていたものの、2位にはスタートで順位を下げていたが第1スティントで着々と追い上げていた1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が、ピット作業を素早く終えて一気にジャンプアップ。その後、一時は10秒近くあった差を徐々に詰め、レースが残り20周となったところでテールツーノーズとなり、1号車が38号車を追いかけ回すという展開になった。が、燃料リストリクターによる制限を受けている1号車はストレートでのスピードに伸びがなく、コーナーで38号車に迫るものの、抜くまでには至らずという展開がずっと続くことになった。

 そうした膠着した状態の中、ゴールまで残り10周という段階で、4位にいた24号車 D'station ADVAN GT-Rが、3位の36号車 PETRONAS TOM'S RC Fをオーバーテイク、その後あれよあれよという間に上位2車(38号車、1号車)に追いつくことになる。そして残り5周、GT300の車両がバーストしたタイヤの破片が飛び散るストレートで、24号車は1号車 MOTUL AUTECH GT-R、38号車 ZENT CERUMO RC Fをオーバーテイクし、トップに立つ。その後、38号車、1号車の2台よりも2秒近く速いラップタイムを刻み、そのまま優勝した。

2位に入った38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)
3位は12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/J.P.デ・オリベイラ組)。この3位入賞によってシーズンのポイントリーダーに立った

 D'station ADVAN GT-Rを走らせるコンドーレーシング、タイヤを供給するヨコハマタイヤにとっても、GT500で優勝は2010以来となる嬉しい優勝になった。ドライバーのミハエル・クルム選手にとっては2004年以来、佐々木大樹選手は初優勝となる。

 その24号車の歓喜のゴールの後ろでは、最終ラップまで激しい争いが続いた。38号車、1号車が争う中でラップタイムを落とす中、タイヤマネージメントに成功した12号車 カルソニック IMPUL GT-Rが最終ラップで1号車に追いつき、最終ラップのダンロップコーナーで見事オーバーテイクし3位でゴールした。それまでランキングトップだった37号車 KeePer TOM'S RC F(A.カルダレッリ/平川亮組)がポイント圏外に終わったこともあり、12号車はシリーズランキングでトップに立つことになった。GT-R勢は燃料リストリクターの制限になったポイント上位2台が3位、4位に入るなど、燃料リストリクターの制限に適合が進んでいることを伺わせる結果になったとも言える。

順位カーナンバー車両ドライバー周回数トータルタイム
124D'station ADVAN GT-R佐々木 大樹/ミハエル・クルム661:44'07.199
238ZENT CERUMO RC F立川 祐/路石浦 宏明661:44'11.903
312カルソニック IMPUL GT-R安田 裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ661:44'12.964
41MOTUL AUTECH GT-R松田 次生/ロニー・クインタレッリ661:44'14.194
5100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本 尚貴/伊沢 拓也661:44'19.816
615ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT小暮 卓史/オリバー・ターベイ661:44'27.980
736PETRONAS TOM'S RC F伊藤 大輔/ジェームス・ロシター661:44'29.690
817KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越 広大/武藤 英紀661:44'36.003
939DENSO KOBELCO SARD RC F平手 晃平/ヘイキ・コバライネン661:44'37.932
1019WedsSport ADVAN RC F脇阪 寿一/関口 雄飛661:44'48.845
1164Epson NSX CONCEPT-GT中嶋 大祐/ベルトラン・バゲット661:44'56.172
1237KeePer TOM'S RC Fアンドレア・カルダレッリ/平川 亮661:45'10.744
136ENEOS SUSTINA RC F大嶋 和也/国本 雄資651:44'43.205
1446S Road MOLA GT-R本山 哲/柳田 真孝651:44'52.798
R8ARTA NSX CONCEPT-GT松浦 孝亮/野尻 智紀431:08'25.289
佐々木大樹選手は初優勝

GT300は、ポールからスタートした55号車 ARTA CR-Z GTが無風のレースを独走優勝

 非常にドラマチックな展開になったGT500に対して、GT300のレースは非常に淡々としたレースになった。ポールポジションを獲得したのは、55号車 ARTA CR-Z(高木真一/小林崇志組)で、ポールショットを決めると、レースではピット作業時のタイミングの違いによる入れ替わりを除けば、ずっとトップを快走し、最終的に2位以下に大差をつけた独走した。55号車はハイブリッドシステムを採用しているものの、ストレートがあまり速くないため、スタート時にストレートで抜かれることを防ぐため、20kgあるクールスーツ(ドライバーを冷やすシステム、真夏のレースで必須とされている)を取り外していたことがレース後に明らかにされた。重量を減らせばそれだけストレートで速くなるための苦肉の策だが、それが成功してスタートでリードを奪って以来一度も順位を譲らずに優勝した。

55号車 ARTA CR-Z(高木真一/小林崇志組)。レースをリードし続け、そのまま優勝した

 2位に入ったのは、こちらも予選2位からスタートした65号車 LEON SLS(黒澤治樹/蒲生尚弥組)。3位は11号車 GAINER TANAX SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム組)となった。

2位の65号車 LEON SLS(黒澤治樹/蒲生尚弥組)
3位は、11号車 GAINER TANAX SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム組)

 なお、前戦までのポイントリーダーだった3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/高星明誠組)がリタイア、ノーポイントに終わったため、前半でのGT500車両の接触、スピンによる後退からしぶとく追い上げて6位に入った10号車 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/千代勝正組)がポイントリーダーになった。

順位カーナンバー車両ドライバー周回数トータルタイム
155ARTA CR-Z GT高木 真一/小林 崇志611:45'05.719
265LEON SLS黒澤 治樹/蒲生 尚弥611:45'15.029
311GAINER TANAX SLS平中 克幸/ビヨン・ビルドハイム611:45'19.112
451JMS LMcorsa Z4新田 守男/脇阪 薫一611:45'19.540
525VivaC 86 MC土屋 武士/松井 孝允611:45'24.219
610GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/千代 勝正611:45'33.459
788マネパ ランボルギーニ GT3織戸 学/佐藤 公哉601:44'16.763
861SUBARU BRZ R&D SPORT井口 卓人/山内 英輝601:44'27.411
931TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨 宏紀/中山 雄一601:44'38.998
1022グリーンテック SLS AMG GT3和田 久/城内 政樹601:44'41.651
1187クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3青木 孝行/山西 康司591:44'08.559
1277ケーズフロンティア Direction 458峰尾 恭輔/飯田 太陽591:44'11.992
13111Rn-SPORTS GAINER SLS植田 正幸/鶴田 和弥591:44'40.750
1448DIJON Racing GT-R高森 博士/田中 勝輝591:44'42.667
1560SYNTIUM LMcorsa RC F GT3飯田 章/吉本 大樹591:44'52.758
169PACIFIC マクラーレン with μ's白坂 卓也/阪口 良平591:44'55.054
1730NetMove GT-R小泉 洋史/岩崎 祐貴591:44'58.065
180グッドスマイル 初音ミク SLS谷口 信輝/片岡 龍也591:45'20.021
1947DIJON Racing GT-R湯澤 翔平/柴田 優作561:45'34.174
2021Audi R8 LMS ultraリチャード・ライアン/藤井 誠暢551:45'36.240
21360RUNUP Group&DOES GT-R吉田 広樹/田中 篤541:45'38.808
222シンティアム・アップル・ロータス高橋 一穂/加藤 寛規531:32'19.623
R33Excellence Porscheアレキサンドレ・インペラトーリ/山下 健太411:12'00.338
R18UPGARAGE BANDOH 86中山 友貴/井出 有治411:15'21.650
R7Studie BMW Z4ヨルグ・ミューラー/荒 聖治371:06'43.354
R50SKT EXE SLS加納 政樹/ナニン・インドラ・パユーング291:44'51.213
R5マッハ車検 with いらこん 86c-west玉中 哲二/密山 祥吾916'15.034
R86Racing Tech Audi R8クリスチャン・マメロウ/細川 慎弥744'41.342
R3B-MAX NDDP GT-R星野 一樹/高星 明誠13'45.036

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)