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予選12位から奇跡の大逆転、1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)がシリーズチャンピオン!!

クインタレッリ選手は史上最多、松田選手とチーム、ミシュランは2連覇

2015年11月15日開催

予選12位から奇跡の大逆転でシリーズチャンピオンになった1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)

 SUPER GT第8戦「MOTEGI GT 250km RACE」が、11月14日~15日に栃木県茂木町にあるツインリンクもてぎで開催された。決勝レースが行われた15日の天気は朝から雨で、決勝レース前までに一度は上がったものの、レース直前に再び雨が一時的に降るなど不安定な天候となっていた。

 最終戦のもてぎでは、第7戦終了時点のポイントリーダーである12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)を2点差で追う1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)とのチャンピオン争いが注目を集めていた。

 予選では12号車が5番手とまずまずの位置につけたのに対して、1号車は12番手と大きく出遅れ、抜きにくいとされるツインリンクもてぎだけに、大逆転には“奇跡”が必要だと考えられていた。

 だが、決勝レースではその“奇跡”が起きた。全車ウェットタイヤでスタートしたレースは、各車スリックタイヤに交換するタイミングを見計らうが、1号車は12号車の1周後というドンピシャのタイミングで交換した結果、ギリギリ前に出ることに成功し、一時はトップを走る快走を見せた。最終的にはポールからスタートした37号車 KeePer TOM'S RC F(アンドレア・カルダレッリ/平川亮組)に抜かれたものの、2位をキープ。4位に終わった12号車をポイントで逆転し、2年連続でGT500のチャンピオンを獲得した。ロニー・クインタレッリ選手は、全日本GT選手権の時代を含めたSUPER GTの歴史上で初めて4度目のGT500ドライバータイトルを獲得したドライバーになり、松田次生選手は昨年に続き2度目の戴冠となる。また、チームとしても2連覇となり、タイヤメーカーであるミシュランも2連覇となった。

 GT300は、ポールからスタートした31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)が、セーフティカーのタイミングで順位を落としたものの追い上げて優勝した。

奇跡が必要な状況に追い込まれた1号車 MOTUL AUTECH GT-R

 決勝日前日の予選が終わった段階で、1号車 MOTUL AUTECH GT-Rがチャンピオンを獲ると予想した人は、おそらく本人達以外にはほとんどいなかったのではないだろうか。1号車は松田次生選手が走った予選のQ1で、コンディションに選択したタイヤがマッチせず、Q1を突破できなかっただけでなく、15台中12位と下位に沈んでしまったからだ。

 今回のレースが行われるツインリンクもてぎはドライバーの間でも抜きにくいと言われているサーキットであり、その意味でも2ポイントリードしているポイントリーダーの12号車 カルソニック IMPUL GT-Rが5位になったことで、圧倒的な優位になったと皆が考えたのは当然の結果だ。

 決勝は各車予選順位のまま順当にスタートした。決勝レース前に降り出した雨により、全車ウェットタイヤを選択したが、決勝レース前に雨は上がり、どのタイミングでドライタイヤに切り替えるのかがレースの鍵になると予想された。

雨が上がった状態でスタートが切られた
予選12位からスタートした1号車 MOTUL AUTECH GT-R

 ポールポジションからスタートしたのは37号車 KeePer TOM'S RC Fで、以下64号車 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)、100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)、38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)、12号車 カルソニック IMPUL GT-Rと続く。

 12位からスタートした1号車は徐々に順位を上げ、序盤の段階で6位になっていた36号車 PETRONAS TOM'S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)に次ぐ7位に上がってきた。しかし、この時点でトップからは20秒近く遅れており、チャンピオン争いをしている36号車が前にいることで、これから順位を上げていくのは難しいかと思われた。

 ところが、11周目に1号車の前を走っていた36号車が突然メインストレートでスローダウン。マシントラブルでピット出口あたりにマシンを止め、そのままリタイア。これにより、1号車はチャンピオン争いの直接のライバルである12号車に次ぐ6位になったが、12号車との差は依然として12~13秒あるという状況でしばらくレースは膠着した。

1号車がドンピシャのタイミングでピットイン、アウトラップの猛攻をしのぐ

 レースが動いたのは、レース中盤となる20周が過ぎたあたり。このタイミングで路面はどんどん乾いていき、すでにレコードラインはドライになりつつあった。ここで難しかったのがタイヤを変えるタイミング。というのも、早くドライタイヤに交換すると、タイヤ交換後のアウトラップはタイヤが暖まっていないため、極端に遅くなり、後から交換した車両に抜かれてしまう危険性があるのだ。

 そうした中、上位で最も早くタイヤを交換したのは38号車 ZENT CERUMO RC F。その翌周にトップを走っていた37号車 KeePer TOM'S RC F、100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTが交換した。これを見ていたポイントリーダーの12号車 カルソニック IMPUL GT-Rもその翌周にピットインを決断し、ドライタイヤへと交換したほか、ドライバー交代、給油を済ませて36.9秒という比較的速い作業時間でピットアウトした。その結果、見事100号車の前に出ることに成功したが、タイヤは冷えており、100号車を抑えることが鍵になりそうだった。しかし、ラップの終わりに12号車は100号車に抜かれ、抑えきることには失敗してしまったのだ。

100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTに抜かれてしまった12号車 カルソニック IMPUL GT-R
激しくアタックするものの抜くことはできなかった。これが勝負を分けるポイントとなった

 これがレースの大きな鍵になった。というのも、その12号車の1周後に入った1号車 MOTUL AUTECH GT-Rが33秒という驚異的な短い作業時間でピットアウトすると、1号車はその100号車と12号車の前に出たからだ。普通であれば、タイヤの暖まっていない1号車は、100号車、12号車に抜かれて不思議ではない状況だが、1号車をドライブする松田次生選手は、巧妙に100号車をブロックし、結局その周の終わりまで100号車、12号車を後ろに閉じ込めることに成功したのだ。これにより、ピットインをしていないためトップに立っていた64号車 Epson NSX CONCEPT-GT、2位の37号車 KeePer TOM'S RC Fに次ぐ3位になったのだ。

 このタイミングで、GT500車両とGT300車両が2コーナー先で接触し、その事故による破片が散乱したためセーフティカーが出された。これによりピットインしていなかった64号車は大きく後退することになってしまった。セーフティカーがピットに入るまでの段階で、順位は37号車、1号車、100号車、12号車の順になり、このままの順位でフィニッシュすれば1号車がシリーズチャンピオンに輝く状況になったのだ。

37号車、1号車、100号車、12号車、38号車が僅差で争う展開に(2番目に写っているのはGT300車両)

1度は1号車がトップに立つが、37号車が炎の走りで抜き返して優勝、2位1号車が戴冠

 だが、レースはそのままでは終わらなかった。32周目にセーフティカーがピットに入りレースが再開されるとすぐ、37号車がコースアウトしタイムロス、この間に1号車がトップに立つことになった。これで順位は1号車、37号車、100号車、12号車の順になり、12号車がシリーズチャンピオンになるためには、1号車を抜いて勝たなければならない状況になった。各車の差はほとんどなく、1位から4位、さらには5位の38号車、6位に上がってきた39号車 DENSO KOBELCO SARD RC F(平手晃平/ヘイキ・コバライネン組)も含めて数秒以内という超接近戦が展開されることになった。

 ここから、37号車に乗る平川亮選手の激しい追い上げが開始され、何度も1号車にアタック。特に最終コーナーでオーバーテイクを仕掛けると、1号車に乗る松田次生選手もクロスラインで抜き返すなど激しい攻防に。周回遅れがからんでくると、何度か順位が入れ替わったり、また戻ったりという状況が続き、抜きつ抜かれつの状態になる。その首位争いに決着がついたのは、43周目で、1号車がアウトに膨らみすぎたところを37号車が豪快なオーバーテイクをして、首位の座を取り返した。

最終的に37号車は、1号車を抑えてトップに立った

 そこからゴールまで、37号車、1号車、100号車、12号車による激しい首位争いが行われるが、各車とも抜くには至らず、1位から6位までが2秒の間に入る超接近戦が展開された。非常に緊張感が高いレースが続いたものの、結局このままの順位でゴールした。優勝は37号車、2位 1号車、3位100号車、4位 12号車という結果になった。これによりチャンピオン争いは、1号車が12号車を逆転して制することとなった。

 ロニー・クインタレッリ選手は、2011年、2012年、2014年に続く4回目のドライバータイトルの獲得で、全日本GT選手権時代を含めてもSUPER GTの新記録となる。松田次生選手は、2014年に続く2度目のタイトルとなる。

最終戦で優勝した37号車 KeePer TOM'S RC F(アンドレア・カルダレッリ/平川亮組)
大逆転でシリーズチャンピオンを獲得した1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)
SUPER GT最終戦もてぎ GT500決勝結果
順位カーナンバー車両ドライバー周回数ベストラップタイムタイヤ
137KeePer TOM'S RC FA.カルダレッリ/平川亮531'41.7591:43'10.687BS
21MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリ531'41.6060.591MI
3100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本尚貴/伊沢拓也531'41.5311.389BS
412カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/J.P.デ・オリベイラ531'41.6541.63BS
538ZENT CERUMO RC F立川祐路/石浦宏明531'41.5233.112BS
639DENSO KOBELCO SARD RC F平手晃平/ヘイキ・コバライネン531'41.8844.375BS
715ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT小暮 卓史/オリバー・ターベイ531'41.57410.49BS
817KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越広大/武藤英紀531'41.6851'33.028BS
96ENEOS SUSTINA RC F大嶋和也/国本雄資531'41.4611'39.104BS
1019WedsSport ADVAN RC F脇阪寿一/関口雄飛521'41.3841LapYH
118ARTA NSX CONCEPT-GT松浦孝亮/野尻智紀521'41.8331LapBS
1224D'station ADVAN GT-R佐々木大樹/ミハエル・クルム521'41.5691LapYH
1364Epson NSX CONCEPT-GT中嶋大祐/ベルトラン・バゲット511'42.2352LapsDL
リタイア46S Road MOLA GT-R本山哲/柳田真孝251'44.27728LapsMI
リタイア36PETRONAS TOM'S RC F伊藤大輔/ジェームス・ロシター101'50.03443LapsBS
SUPER GT GT500シーズンポイントランキング
順位カーナンバードライバーポイント
11松田次生/ロニー・クインタレッリ79
212安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ74
3100山本尚貴/伊沢拓也60
438立川祐路/石浦宏明59
537アンドレア・カルダレッリ/平川亮56
646本山哲/柳田真孝50
736伊藤大輔/ジェームス・ロシター49
817塚越広大/武藤英紀39
96大嶋和也/国本雄資32
1024佐々木大樹/ミハエル・クルム31
1119脇阪寿一/関口雄飛27
1215小暮卓史/オリバー・ターベイ26
1339平手晃平/ヘイキ・コバライネン23
148松浦孝亮/野尻 智紀10
1564中嶋大祐/ベルトラン・バゲット4

GT300は、31号車 TOYOTA PRIUS apr GTがセーフティカー導入によるハンデを跳ね返して優勝

開幕戦に続き、ノーハンデ戦で優勝した31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)

 すでに前戦(第7戦オートポリス)の段階でタイトルが決定していたGT300は、ノンハンデとなった最終戦で、“どの車両が速いのか”それが明らかになるレースとして注目を集めた。

 結論から言えば、開幕戦と同じく31号車 TOYOTA PRIUS apr GTがポールポジションからスタートして独走した。ただ独走したのではなく、セーフティカーがでた段階で、31号車はGT300の上位では唯一ピットに入っていない車両となっており、セーフティカーの導入でピットに入ることができず、ピットオープンになってからピットインすると、同一周回では最後尾まで下がってしまった。しかし、その時点で5位だった61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)まで周回遅れにしてしまっていたため、同一周回で最後尾といっても4位と大きな傷にならないで済んだのは不幸中の幸い(そして他チームにとっての不幸)。その後追い上げた31号車は圧倒的なパフォーマンスを生かして、前の車を次々と抜いていき、トップに上がっていた0号車 グッドスマイル 初音ミク SLS(谷口信輝/片岡龍也組)をオーバーテイクして再びトップに立つとそのまま優勝した。3位は11号車 GAINER TANAX SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム組)と、今シーズンはやや不調だった0号車と11号車が来季に向けて復活を印象づける表彰台を獲得した。

2位に入った0号車 グッドスマイル 初音ミク SLS(谷口信輝/片岡龍也組)
3位の11号車 GAINER TANAX SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム組)
SUPER GT最終戦もてぎ GT300決勝結果
順位カーナンバー車両ドライバー周回数ベストラップタイムタイヤ
131TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨宏紀/中山雄一501'49.4341:44'47.407BS
20グッドスマイル 初音ミク SLS谷口信輝/片岡龍也501'49.9830.976YH
311GAINER TANAX SLS平中克幸/ビヨン・ビルドハイム491'51.4571LapDL
455ARTA CR-Z GT高木真一/小林崇志491'51.2491LapBS
565LEON SLS黒澤治樹/蒲生尚弥491'50.1581LapYH
610GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/千代勝正491'49.7821LapDL
788マネパ ランボルギーニ GT3織戸学/平峰一貴491'50.3151LapYH
821Audi R8 LMS ultraリチャード・ライアン/藤井誠暢491'51.4411LapYH
97Studie BMW Z4ヨルグ・ミューラー/荒聖治491'51.3661LapYH
1077ケーズフロンティア Direction 458横溝直輝/峰尾恭輔491'50.8001LapYH
1161SUBARU BRZ R&D SPORT井口卓人/山内英輝491'50.6591LapDL
1225VivaC 86 MC土屋武士/谷川達也491'50.4741LapYH
132シンティアム・アップル・ロータス高橋一穂/加藤寛規481'49.7532LapsYH
1433Excellence Porsche坂本祐也/山下健太481'51.6992LapsYH
1551JMS LMcorsa Z4新田守男/脇阪薫一481'51.8202LapsYH
1687クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3青木孝行/佐藤公哉481'52.0822LapsYH
1760SYNTIUM LMcorsa RC F GT3飯田章/吉本大樹481'53.3892LapsYH
1830NetMove GT-R小泉洋史/岩崎祐貴481'52.5682LapsYH
19111Rn-SPORTS GAINER SLS植田正幸/鶴田和弥481'53.0052LapsYH
2047DIJON Racing GT-R井上恵一/柴田優作471'53.0613LapsYH
215マッハ車検 with いらこん 86c-west玉中哲二/密山祥吾471'54.1003LapsYH
2250SKT EXE SLS加納政樹/N.インドラ・パユーング471'53.0463LapsYH
23360RUNUP Group&DOES GT-R吉田広樹/田中篤451'53.6135LapsYH
2422グリーンテック SLS AMG GT3和田久/城内政樹431'52.3057LapsYH
2548DIJON Racing GT-R高森博士/田中勝輝371'52.14513LapsYH
9PACIFIC マクラーレン with μ's白坂卓也/阪口良平222'02.78328LapsYH
3B-MAX NDDP GT-R星野一樹/高星明誠050LapsYH
20UPGARAGE BANDOH 86中山友貴/井出有治050LapsYH
SUPER GT GT300シーズンポイントランキング
順位カーナンバードライバーポイント
110アンドレ・クート94
210千代勝正74
331嵯峨宏紀/中山雄一69
43星野一樹/高星明誠61
511平中克幸/ビヨン・ビルドハイム52
655高木真一/小林崇志49
77ヨルグ・ミューラー/荒聖治47
810富田竜一郎45
965黒澤治樹/蒲生尚弥41
1025土屋武士/松井孝允35
110谷口信輝/片岡龍也35
1261井口卓人/山内英輝30
1321リチャード・ライアン/藤井誠暢28
1488織戸学26
1588平峰一貴22
1651新田守男/脇阪薫一14
1777横溝直輝/峰尾恭輔12
1831佐々木孝太10
1986クリスチャン・マメロウ/細川慎弥9
2033山下健太6
212高橋一穂/加藤寛規/濱口弘5
2288佐藤公哉4
2333アレキサンドレ・インペラトーリ3
2333坂本祐也3
2477飯田太陽3
2520中山友貴/井出有治2
2622和田久/城内政樹2
2760飯田章/吉本大樹2

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)