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SUPER GT開幕戦 岡山は、37号車 KeePer TOM'S RC Fが昨年に続き優勝

GT300は31号車 TOYOTA PRIUS apr GTが優勝

2015年4月5日 決勝

 日本最大のレースシリーズSUPER GTは4月4日~5日の2日間に渡り、岡山国際サーキット(岡山県美作市)において2015年シーズンの開幕戦となる「OKAYAMA GT 300km RACE」を開催した。

 決勝レースが行われた4月5日は、朝から雨が降り続く生憎の天候となり、14時30分にスタートを切った決勝レースもウェットコンディションで行われる難しいものとなった。

 GT500で優勝したのはポールポジションからスタートした37号車 KeePer TOM'S RC Fで、昨年に続き開幕戦優勝となった。GT300は予選5位だった31号車 TOYOTA PRIUS apr GTが序盤でトップに立つとそのまま優勝した。

GT500で2年連続の開幕戦優勝を果たした37号車 KeePer TOM'S RC F(アンドレア・カルダレッリ/平川亮)。何度も2位以下に抜かれ、そのたびに抜き返すという忙しいレースになったが、結果的にはポールツーウインとなった

スタート前に雨は止み、乾きつつあるウェット路面という難しい状況でスタート

 2015年開幕戦となった岡山国際サーキットは、雨が降ったり止んだりする天候で、SUPER GTのサポートレートとして行われた、FIA-F4、ポルシェカップはいずれも雨が降り続く中でのウェットコンディションで行われた。ところが、そのサポートレース終了後に雨は上がり、路面は徐々にドライ方向になっていく判断の難しい状況になった。各チームともスタート直前まで、グリッド上に複数のタイヤを並べて、スリック、ウェットでも溝の浅いの深いのなどを決めかねている様子。結果的に全車がウェットタイヤを装着してレースをスタートした。

 レースは岡山県警の警察車両によるパレードラップから始まった。これは交通安全啓発活動の一環で、SUPER GTの車両が岡山県警のパトカー、白バイに先導されながら1周パレードし、その後通常のフォーメーションラップへと移っていった。スタートでは特に混乱はなかったが、1コーナーの先で36号車 PETRONAS TOM'S RC Fが360度スピン、だか各車ともうまくよけて36号車もそのまま走り続けることができた。しかし、混乱はそれでは終わらなかった。今度は最終コーナー手前で15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTがスピンして、進行方向と反対側を向いてしまい、全車が通過するまで待つことになったため、最後尾まで落ちることになった。

 その後レースはポールからスタートした37号車 KeePer TOM'S RC Fがトップを走り、6号車 ENEOS SUSTINA RC Fなどレクサス勢が続く展開。当初はレクサス勢が独走かと思われたが、路面が乾いてくると同時にレクサス勢が徐々に後退していく展開となった。そうした中で徐々に追い上げてきたのが、予選4番手だった1号車 MOTUL AUTECH GT-Rで、徐々にトップを走る37号車 KeePer TOM'S RC Fへと迫っていった。当初は5秒差程度で推移していたのだが、徐々に差が詰まり、17周目の1コーナーで、1号車 MOTUL AUTECH GT-Rが37号車 KeePer TOM'S RC Fをオーバーテイクしようとするが37号車がブロック。だが、バックストレートの終わりで、再度チャレンジした1号車が見事に37号車をオーバーテイクした。

 そのままレースは1号車がリードを広げていくかと思われたが、後方から意外な車が追い上げてきた。それが1周目にスピンして最後尾まで落ちた15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT。徐々に乾く路面において、NSXとブリヂストンタイヤのマッチングがぴったりだったようで、15号車だけでなく、100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTも激しい追い上げ。トップの1号車、2位の37号車についで、NSX勢が3位、4位になるという展開となった。なかでも小暮卓史選手がドライブする15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTは他の車よりも数秒速いペースで猛然と前を走る2台を追いかけていた。

 そうした中で、徐々にリードを削られていた1号車 MOTUL AUTECH GT-Rに異変が発生したのは22周目。走行中の左リアホイールハウス付近から煙がでて、明らかに何らかの異常が発生した様子が見て取れた。結局1号車はそのままピットロードへ入り、ガレージに直接クルマを入れて修復作業に取りかかった。その後に走り出すが、優勝争いからは完全に脱落した。なお、同じミシュラン+GT-Rの組み合わせとなる46号車 S Road MOLA GT-Rもペースが上がらないまま、結局8位でレースを終えている。

 その1号車に替わりトップにたった37号車だが、猛然と追い上げてくる15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTの追い上げには勝てず、結局23周目の1コーナーで小暮選手の豪快なオーバーテイクに為す術はなく、この日2度目となる首位陥落、その後100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTにも抜かれて3位に転落してしまった。この時点ではこの2台の他にも、8号車 ARTA NSX CONCEPT-GTがどんどん順位を上げていくなど、ホンダのNSX CONCEPT-GT+ブリヂストンの組み合わせがコース上の最速の組み合わせとなっていた。

乾いていく路面ではホンダ+ブリヂストン、濡れた路面ではレクサス+ブリヂストンがジャストフィット

 その後順位が大きく動いたのは、40周前後に各車が行ったピットストップだった。せっかく首位、2位だったホンダ勢だが、ピットストップで他チームより大きく時間がかかってしまい、ピットストップが終了すると、ピットストップ前には前にいた車両よりも後ろになってしまったのだ。特に1作業の効率化などに課題を残してしまった。結局ピットインを終えてみると、トップに返り咲いていたのは37号車 KeePer TOM'S RC F。2位には100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTで、ピットストップ前に2位だった15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTは6位まで順位を下げることになった。

 レースが再び動いたのは49周目。100号車が再び37号車を抜きトップにたった。今日の37号車はポールからスタートしながら、3度も2位に抜かれて首位から転落するという忙しい展開。また、100号車は、2度も37号車からトップを奪うという展開で、こちらも忙しいレースとなった。

 しかし、その後のレースは膠着状態となり、レースはこのまま終了すると思われたのだが、終盤に再びドラマが待っていた。それを演出したのは、再びサーキットに落ちてきた雨だった。徐々にスタンドの観客の傘の花が咲くと、サーキットの路面全体が濡れ始めて、各車のタイムが落ちていった。その中で俄然戦闘力を発揮しだしたのが2位だった37号車KeePer TOM'S RC F。同車をドライブする平川亮選手は、前を走る100号車との差をあっという間に詰め始め、71周目の最終コーナーで100号車を豪快にオーバーテイク。その後2位を走る100号車に数秒の単位で差をつけ、最終的に42秒もの大差をつけてそのまま優勝した。平川亮選手はSUPER GTレギュラー参戦初年度の初戦で見事な初優勝、チームメイトのアンドレア・カルダレッリ選手は昨年の開幕戦に次いで開幕戦2連勝となった。

 2位以下は最終ラップまでドラマが続いた。雨量が増えた環境には適さないタイヤを履いていたためかタイムが上がらない100号車に対して、38号車 ZENT CERUMO RC Fはものすごい勢いで追い上げる。1周につき3秒以上速いペースで20秒近くあった差をどんどん詰めて、最終ラップまで激しい追い上げが続いた。最終的には1.5秒差で100号車が逃げ切ったものの、あと1周レースがあればまったく違った展開になっているレースだった。

 結局今回のレースは不運なトラブルに見舞われた1号車は別として、雨量によって、速い車+タイヤの組み合わせが変わるという状況が生じていた。比較的ドライ方向の路面ではNSX CONCEPT-GT+ブリヂストンタイヤが最速で、逆に雨が降って濡れていった時にはレクサスRC F+ブリヂストンという組み合わせが最速という状況が見て取れた。その変わりゆく状況の中で、適合していない時にもダメージを最小限に抑え続けることに成功した37号車KeePer TOM'S RC Fが勝利したレースだった。

GT500 2位の100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也)。伊沢拓也のシリーズ復帰戦初戦を表彰台獲得で飾った
GT500 3位の38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明)、前半の路面が乾いていく局面では順位を落としたが、後半になり雨が降り出すと復活して追い上げて3位表彰台を獲得
GT500クラス
順位カーナンバー車両ドライバー周回ベストタイムタイム差タイヤ
137KeePer TOM'S RC FA.カルダレッリ/平川亮821'32.9322:12'00.419ブリヂストン
2100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本尚貴/伊沢拓也821'31.85942.663ブリヂストン
338ZENT CERUMO RC F立川祐路/石浦宏明821'32.78544.265ブリヂストン
48ARTA NSX CONCEPT-GT松浦孝亮/野尻智紀821'30.70148.768ブリヂストン
539DENSO KOBELCO SARD RC F平手晃平/ヘイキ・コバライネン821'32.31254.612ブリヂストン
615ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT小暮卓史/オリバー・ターベイ821'31.9101'08.923ブリヂストン
712カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/J.P.デ・オリベイラ821'31.8971'13.573ブリヂストン
846S Road MOLA GT-R本山哲/柳田真孝811'32.4011Lapミシュラン
96ENEOS SUSTINA RC F大嶋和也/国本雄資811'33.5651Lapブリヂストン
1019WedsSport ADVAN RC F脇阪寿一/関口雄飛811'32.9711Lapヨコハマ

静かな展開となったGT300、プリウスが優勝、CR-Zが2位とハイブリッド車が大活躍

31号車 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一)がGT300優勝を獲得。序盤でトップに立つと2位以下を大きく引き離して独走で優勝した

 非常に波瀾万丈だったGT500に対して、GT300の方は難しいコンディションにもかかわらず、単調なレースとなった。スタートは全車が無難に切り、ポールポジションからスタートした10号車 GAINER TANAX GT-Rが、順調にトップのまま1コーナーを通過した。そうした中で大きく順位を上げたのは、予選5位からスタートした31号車 TOYOTA PRIUS apr GT。するすると2位まで順位を上げると、3周目にはトップだった10号車 GAINER TANAX GT-Rを抜くと、ラップ毎に2位以下を大きく引き離す展開となり、結局最終的には2位に42秒もの大差をつけたそのまま優勝した。2位になったのは予選3位だったARTA CR-Z GTで、こちらも7周目に2位の10号車を抜くと、そのまま順位をキープし、2位表彰台を確保した。これにより、JAF-GT300のハイブリッド車でかつブリヂストンタイヤ装着車が1-2という結果になった。

 3位以下は激戦だったが、徐々に順位を上げていったのは2台のアウディ勢。アウディワークスとなるアウディスポーツの後援を受けている21号車 Audi R8 LMS ultra、86号車 Racing Tech Audi R8が徐々に順位を上げていき、最終的には3位、4位でゴールした。アウディワークスのアウディスポーツとの提携により、両チームとも戦闘力を上げてきているようで、今後のシーズンの展開にも両チームの活躍が鍵になる可能性がでてきたと言えるだろう。

 5位は車両を替えた最初のレースなのに、いきなり5位に入賞して見せたGSRの0号車 グッドスマイル 初音ミク SLS。昨年のウィナーである11号車 GAINER TANAX SLSが入賞圏外の12位だったことと比べると対照的な開幕戦となった。なお、6位はマザーシャシーの25号車 VivaC 86 MC、7位がポールからスタートしたGAINER TANAX GT-Rとなった。

GT300 2位は55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志)。序盤で2位になると、ずっと2位をキープしてそのままゴールした
GT300 3位は21号車 Audi R8 LMS ultra(リチャード・ライアン/藤井誠暢)。予選9位から追い上げて表彰台を獲得
GT300クラス
順位カーナンバー車両ドライバー周回ベストタイムタイム差タイヤ
131TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨宏紀/中山雄一771'38.0832:12'24.300ブリヂストン
255ARTA CR-Z GT高木真一/小林崇志771'38.79242.376ブリヂストン
321Audi R8 LMS ultraリチャード・ライアン/藤井誠暢761'38.3191Lapヨコハマ
486Racing Tech Audi R8クリスチャン・マメロウ/細川慎弥761'38.2201Lapヨコハマ
50グッドスマイル 初音ミク SLS谷口信輝/片岡龍也761'39.0921Lapヨコハマ
625VivaC 86 MC土屋武士/松井孝允761'39.8321Lapヨコハマ
710GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/千代勝正751'39.2982Lapsダンロップ
83B-MAX NDDP GT-R星野一樹/高星明誠751'39.3752Lapsヨコハマ
951JMS LMcorsa Z4新田守男/脇阪薫一751'39.4142Lapsヨコハマ
1060SYNTIUM LMcorsa RC F GT3飯田章/吉本大樹751'40.5642Lapsヨコハマ
0号車 グッドスマイル 初音ミク SLS(谷口信輝/片岡龍也)は、マシン変更初戦で5位を獲得
6位はマザーシャシーの25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允)。初戦からそのポテンシャルを示した
朝のフリー走行、22号車がアトウッド手前の高速コーナーでクラッシュ。水煙で見通しのわるいポイントだが後続は間一髪接触を避けた。22号車は決勝への出走はできなかった
ウェットコンディションに足下をすくわれた7号車。決勝レースでは、めまぐるしく変わる路面コンディションへの対応にどのチームも苦労していた

【お詫びと訂正】記事初出時、レース結果について間違いがありました。1号車はリタイヤしておらず、66周を走行して13位完走となっております。お詫びして訂正させていただきます。

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)