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SUPER GT第5戦鈴鹿、GT500は予選9位に沈んだ36号車 PETRONAS TOM'S RC Fが大逆転で優勝

12号車 カルソニック IMPUL GT-Rはポイントリーダーの座を維持

2015年8月30日 決勝開催

大逆転で優勝した36号車 PETRONAS TOM'S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)

 SUPER GT第5戦「インターナショナルSUZUKA 1000kmレース」は、8月29日~8月30日の2日間に渡り三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開催された。30日に行われた決勝レースでは、スタート時から雨が降り、雨量も刻々と変わっていく難しいコンディションになり、各車ともにタイヤ選択に悩まされることになった。

 そうした難しいコンディションを、見事に読み切って優勝したのは、予選で9位と下位に沈んだ、36号車 PETRONAS TOM'S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)。PETRONAS TOM'S RC Fは昨年も同レースで優勝しており、2年連続優勝となる。ポイントリーダーの12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)は3位表彰台を獲得し、ポイントリーダーの座を維持した。

終盤のレースを支配したPETRONAS TOM'S RC F。昨年に続いて鈴鹿2連覇

チョイ濡れ路面でトップに立ったダンロップタイヤ装着の64号車 Epson NSX CONCEPT-GT

 朝から降り始めた雨はウォームアップ前には上がり、ドライのレースになるかと思われたが、レース1時間前に始まったウォームアップ走行あたりから再び雨が降り始めて、路面を濡らし始めた。結局レースは雨が降ったままのウェット路面で行われることになった。

白バイ6台、パトカー3台の先導によってパレードラップがスタート

 雨のスタートで飛び出したのは、64号車 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)。バゲットがドライブする64号車は、チョイ濡れの路面にタイヤがマッチしたのか、スタートの1コーナーで2位に上がると、デグナーカーブでトップの1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)のインに入り、オーバテイク。その後、2位以下を大きく引き離し始めた。これに対して、2位以下は、10台ぐらいがパックになった状態で激しい争いに。こうした中、64号車が徐々に他車を引き離し独走状態になっていくかと思われたが、雨は強くなり、路面はより濡れ始める。すると、トップを走っていた64号車は、少ない雨用のタイヤを選択したためか、徐々にタイムを落とし始めた。

スタート直後から64号車 Epson NSX CONCEPT-GTが、激しくアタック
64号車 Epson NSX CONCEPT-GTが後続を離し始める
64号車 Epson NSX CONCEPT-GT

 そうした中で俄然目立った動きをし出したのが、7番グリッドからスタートした15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/オリバー・ターベイ組)。雨が強くなってくる路面状況の変化に合わせてするすると順位を3位に上げ、7周目の逆バンクで2位の1号車 MOTUL AUTECH GT-Rを抜く。そのままの勢いでヘアピンで64号車 Epson NSX CONCEPT-GTを豪快にオーバテイクし、トップに浮上し、2位以下を引き離してレースを支配し始めた。その後、予選14位から2位に上がった100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)に10秒以上の差をつけて独走し始めた。

15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/オリバー・ターベイ組)

一度はトップに立った15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTは、ドライタイヤへの交換に失敗

 ところが、1回目のピットストップを終えると、10秒差をつけてトップを走っていたはずの15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTが100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTよりも後ろになる展開に。しかも、いち早くタイヤ交換していた36号車 PETRONAS TOM'S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)がタイヤが暖まらない15号車をオーバテイク、そのままの勢いで100号車に迫り、100号車と36号車でトップ争いが展開されることになった。その後も波乱は続き、ピットイン前にランキング3位の37号車 KeePer TOM'S RC F(アンドレア・カルダレッリ/平川亮組)がデグナーカーブで、さらにピットイン後にはポールポジションからスタートした、ランキング2位の1号車 MOTUL AUTECH GT-Rが2コーナーでグラベルに埋まり、抜け出すのに時間がかかったため周回遅れになってしまう。結局1号車 MOTUL AUTECH GT-Rは周回遅れのままレースを終えることになる。

上位を走行していた1号車 MOTUL AUTECH GT-R
2コーナーでグラベルに埋まってしまい、その後は周回遅れに

 その後レースは、トップを走る100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、2位 36号車 PETRONAS TOM'S RC F、3位 15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTの3台による争いが展開された。

 レースが大きく動いたのは、60周前後。2回目のピットストップで15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTがレインタイヤに交換したのに対して、61周目に100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、36号車 PETRONAS TOM'S RC Fは、ドライタイヤへの交換を決断。すでにコースは乾いており、レインタイヤよりも10秒近く速いタイムでドライタイヤが走れる状況になっていた。ドライタイヤに交換した2車はドンピシャのタイミングでのタイヤ交換となったが、15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTは、レインからドライタイヤに交換するためにもう一度緊急ピットインすることになり、大きく順位を落とすことになった。

36号車 PETRONAS TOM'S RC Fは、タイヤ選択に成功

2度のセーフティカーは悲喜こもごもの結果に、得をしたのは15号車と46号車

 これで15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTのレースは終わったかと思われたが、その直後に200RでGT300車両によるアクシデントが発生し、コースをふさいで止まったため、セーフティカーが出動することになり、その直前に15号車はピットインしたため、ピットストップによるペナルティは帳消しになり、レースが再開したときには4位で、トップから4秒差と、救われることになった。

 70周目にレースが再開されると、1位 100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、36号車 PETRONAS TOM'S RC F、3位 38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)、4位 15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT、5位はピットストップで順位を下げることになった12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)で、同一周回は上位5台のみとなり、この5台で上位争いが展開されることになった。その中で、レース再開後には36号車が、100号車をオーバーテイクし、トップが入れ替わることになった。

 だが、76周目に1コーナーと最終コーナーにオイルがでたことにより、スピンする車両が続出。これにより、再びセーフティカーが入ることになる。これにより、最も得をしたのが46号車 S Road MOLA GT-R(本山哲/柳田真孝組)。ほぼ周回遅れだった46号車は、このセーフティカー中に、GT500とGT500の車両を並べ直す独特の方式でメリットを得て、1周分の遅れを取り戻すことになり、同一周回の最後尾になり、かつ上位とはほとんど差がない6位になり、再び勝負権を獲得した。セーフティカーがピットに入りレースが再開されると、順位は36号車、100号車、15号車、38号車、12号車、46号車となり、レースはこの6台で争われることになった。ただ、97周目には、セーフティカー中の追い越し違反に問われた15号車がドライブスルーペナルティーを消化し、周回遅れになってしまったので、レースは同一周回が5台(36号車、100号車、12号車、38号車、46号車)で争われることになった。

終盤は36号車PETRONAS TOM'S RC Fがレースを支配

 99周目、トップの2台(36号車と100号車)が同時にピットストップ。それまでに20秒のリードを築いていた36号車は余裕をもってピットに入ったはずなのだが、右リアタイヤのナットが絞まらないトラブルが発生し、余計に10秒かかってしまい、ピットアウトするときにはほとんど差が無い状況になった。しかし、その後差が縮まった36号車だが、徐々に100号車を引き離し、結局30秒以上のリードを築き独走の展開となった。その2位以下は非常に激しい争いになっており、100号車、12号車、38号車、46号車の4台で激しい争いが展開され、その中で38号車が飛び出し、2位になり、100号車、12号車、46号車の3台で3位争いが展開されることになった。

 この中で一番最初に脱落したのは、46号車。ピットシーケンスの違いで、他車より一回多くピットインする必要があり、この時点で5位以下がほぼ確定した。その46号車を除き、最後のピットストップが終わると、順位は36号車 PETRONAS TOM'S RC F、2位 38号車 ZENT CERUMO RC F、3位 46号車 S Road MOLA GT-R、4位 100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、5位 12号車 カルソニック IMPUL GT-Rという順位に。ここから猛然と追い上げを開始したのは、オリベイラのドライブする12号車 カルソニック IMPUL GT-R。一時は12秒差あった4位との差を瞬く間に縮めて、4位 100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、3位 46号車 S Road MOLA GT-Rを次々と追い抜く、オーバーテイクショーを見せた。

 それでレースはほぼ決まりかと思ったが、そうした観客の度肝を抜いたのが、これまでまったく目立っていなかった19号車 WedsSport ADVAN RC F(脇阪寿一/関口雄飛組)。ドライブしていた関口雄飛は、前を走っていた100号車よりも2~3秒早いペースで走り続け、ゴールまで残り20分となった段階で100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTをシケインでオーバーテイクして4位に上がった。また、同じタイミングで15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTが立体交差したでマシントラブルでストップ氏、前戦優勝の24号車 D'station ADVAN GT-R(佐々木大樹/ミハエル・クルム組)もピットアウト直後に左リタイヤがとれるというトラブルでピットレーン出口先でマシンを止めた。

19号車 WedsSport ADVAN RC F(脇阪寿一/関口雄飛組)

 レースは結局そのままゴールし、優勝は36号車 PETRONAS TOM'S RC F、2位 38号車 ZENT CERUMO RC F、3位 12号車 カルソニック IMPUL GT-Rとなり、ブリヂストンタイヤ装着車が表彰台を占める結果となった。

優勝した36号車 PETRONAS TOM'S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)
2位は38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)
3位に入った12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)
GT500結果(暫定)
順位カーナンバー車両ドライバータイヤ
1位36PETRONAS TOM'S RC F伊藤大輔/ジェームス・ロシターBS
2位38ZENT CERUMO RC F立川祐路/石浦宏明BS
3位12カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラBS
4位100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本尚貴/伊沢拓也BS
5位19WedsSport ADVAN RC F脇阪寿一/関口雄飛YH
6位46S Road MOLA GT-R本山哲/柳田真孝MI
7位1MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリMI
8位37KeePer TOM'S RC Fアンドレア・カルダレッリ/平川亮BS
9位64Epson NSX CONCEPT-GT中嶋大祐/ベルトラン・バゲットDL
10位8ARTA NSX CONCEPT-GT松浦孝亮/野尻智紀BS
11位39DENSO KOBELCO SARD RC F平手晃平/ヘイキ・コバライネン/クリスチャン・クリエンBS
12位15ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT小暮卓史/オリバー・ターベイBS
13位24D'station ADVAN GT-R佐々木大樹/ミハエル・クルムYH
リタイア6ENEOS SUSTINA RC F大嶋和也/国本雄資BS
リタイア17KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越広大/武藤英紀BS

※MI=ミシュラン、BS=ブリヂストン、DL=ダンロップ、YH=横浜ゴム

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)