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トヨタ元町工場でスポーツカー「GRヤリス」など高精度生産する「GRファクトリー」が生産施設をレイアウト変更 購入者見学も
2025年4月24日 13:30
トヨタ自動車がスポーツカーを多品種生産するために元町工場内に設置した特別なエリアが「GRファクトリー」。TOYOTA GAZOO Racingのスポーツカー「GRヤリス」「GRカローラ」、レクサスの「LBX MORIZO RR」と、現在3種類のスポーツカーをセル生産+AGV(Automatic Guided Vehicle、自動搬送機)という仕組みで、通常の生産ラインとは異なる高精度で生産している。
ファクトリーは大きく分けて、ボディの組み立てを行なう「ボデー工程」、組み立てたボディを塗装する「塗装工程」、そのボディに対して足まわりなどを組み付けていく「組立工程」、完成した車両のアライメントを補正したりする「検査工程」に分かれている。
以前のGRファクトリーでは「塗装工程」以外を同じ建物内で行なっていたが、トヨタはGRヤリス、GRカローラ、LBX MORIZO RRの販売状況がよく、将来的な台数・種類の増加の潜在的な可能性を探る中でGRファクトリーのレイアウト変更を行なった。「ボデー工程」で1つ、「塗装工程」で1つ、「組立工程」「検査工程」で1つと、元町工場内の3つの施設へと変更した。従来の工場では、「ボデー工程」後、いったん施設外の「塗装工程」へ送られていたので、組立作業的な流れについて大きな変化を起こすことなく、3つのエリアに変更している。
このような柔軟なレイアウト変更ができたのは、冒頭に触れたようにセル生産+AGVという生産工程を築き上げているため。地面に流れ作業を行なうラインを固定で作ったり、ボディを運ぶ吊り下げレールを作ったりといった従来のクルマ作りをGRファクトリーでは導入しておらず、多品種少量生産に耐えるようなクルマ作りを実現している。そのため、今回の生産ライン変更が可能になった。
ただ、逆に言えば、今回の変更はトヨタがGRヤリスの需要を読み違え、さらにGRカローラが人気となり、LBX MORIZO RRもといった状況において、将来的な台数・種類の増加の潜在的な可能性を探る中での取り組みである。「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」というモリゾウ選手こと豊田章男会長のクルマへの思いが、多くの消費者に受け入れられた結果でもある。ラインを使った大量生産を得意とするトヨタで、どのようにスポーツカーに必要な高精度生産を、多品種少量生産を成り立たせるかという工夫の塊でもある。
また、この変更により、レイアウト変更ができることをトヨタは学び、スポーツカー生産の余力の可能性を作り上げたことになる。当然それは、今後登場すると噂されている「GR○○」への布石とも取れるが、それは今回の主題ではない。なお、記事中の写真は秘匿する部分が多いためか、すべてトヨタ自動車の提供によるもの。柔軟な生産ラインの秘密を読み取っていただきたい。
ボデー工程
生産は高剛性なボディ組み立てから始まる。このボディ組み立てからGRならではの生産は始まっており、通常のヤリスが約20mの構造用接着剤を使用するのに対し、約35mの構造用接着剤を使用。ボディを組み立てていくスポット溶接も標準車に対して増し打ちしており、剛性をアップしている。
組み上がったボディに対して検査を行なっていく。検査が終わったボディについては、高精度レーザーで1つ1つのボディを計測。工業製品は公差の範囲内で生産されており、その数値を計測。それぞれのボディの公差を計測し、のちの組み立て工程で公差を打ち消す方向での組み付けを行なっている。
これはGRファクトリーならではの生産方法で、これにより公差の小さい最終製品を実現している。
組立工程
溶接の終わったボディはいったん塗装工程へ送られ、必要なボディカラーに塗られて組立工程へ。新しいGRファクトリーでは、この組立工程が別東となり、広く拡充された。
塗装の終わったボディは、AGVに乗せられて移動。足まわりやパワートレーンなどが組み付けられていく。この際、あらかじめ足まわり部品側も公差によってグループ分けされており、1万通りの組み合わせになっているという。グループ分けや組み付けるボディとの公差の組み合わせはノウハウとなっている。
また、足まわりの取り付け時には、吊り下げ式のボディに取り付ける方式ではなく、あらかじめパワートレーンと地上で組み付けた足まわりとの接続を行なう。あらかじめ地上でパワートレーンとの組み付けを行なうことで、中空ではなく重力がかかった(反力がある)状態での組み付け、いわゆる1G組み付けを実現している。
以前の工程は関連記事で紹介しているとおりで、基本的には変わりないとのこと。気になる方は、以前の工程と見比べてみてほしい
検査工程
できあがったGRヤリス、GRカローラ、LBX MORIZO RRは検査工程へ。ボディ表面の各種仕上がりのほか、アライメント調整を行なっていく。
このGRファクトリーをTOYOTA GAZOO Racingは、購入者向けに公開していく。待合室なども整備され、離れてしまったボデー工程と検査工程のエリアは専用マイクロバスで移動。購入者向けの特別なおもてなしとして提供していく。
【お詫びと訂正】記事初出時、生産能力の拡充としていましたが、現時点では生産レイアウトの変更となります。お詫びして訂正させていただきます。