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「パサート GTE ヴァリアント」でドイツ~スイスを1000kmツーリング(ドイツ編)

高速道路120km/h時代を前に、速度無制限のアウトバーンで感じたこと

フォルクスワーゲンのプラグインハイブリッド車「パサート GTE ヴァリアント」。このパサート GTE ヴァリアントで1000kmの高速ツーリングを体験した

 フォルクスワーゲンが初夏に日本市場に導入すると言われている「パサート GTE」。型番から分かるように、パサートのプラグインハイブリッドモデルとなる。

 1.4リッターの直噴ガソリンターボエンジンは最高出力115kW(156PS)/5000-6000rpm、最大トルク250Nm/1500-3500rpmを発生し、そのエンジンに85kW(116PS)のモーターが組み合わされ、160kW(218PS)/400Nmのシステム出力/トルクを発生。スペックから想像されるように、豊かなトルクで走るクルージングタイプの車種になる。

 今回、このパサート GTEで、フォルクスワーゲン本社に近いドイツ ハノーファーからスイス ローザンヌまでの約1000kmを1泊2日でドライブする機会を得た。これはジュネーブモーターショーに合わせてフォルクスワーゲン グループ ジャパン(以下、VGJ)が企画したもので、Car Watch以外にも2誌のWeb媒体が参加。ワゴンタイプとなる2台の「パサート GTE ヴァリアント」を、他誌の記者およびVGJスタッフと交代で運転した。ちなみにパサート GTE ヴァリアントのボディサイズは、全長が4767-4887mm、全幅が1832mm、全高が1462-1516mmとワイドで伸びやかなプロポーション。現代的なフォルクスワーゲンデザインが素直に反映されたクルマだ。

現代的なフォルクスワーゲンデザインで構成されたパサート GTE ヴァリアント。石畳の道ともマッチする

ハノーファーからアウトバーンのA2経由でエッセンへ

旅の始まりはシェラトン ハノーファー ペリカン ホテルから。工場跡地を活かしたホテルとなっている

 1000km以上を走行する旅のスタートは、シェラトン ハノーファー ペリカン ホテルから。このホテルは、元ペリカン万年筆の製造工場とのことで、シェラトン系列のホテルとなってからも工場の雰囲気が色濃く漂っている。

 朝早くに2台のパサート GTE ヴァリアントで出発。総勢7名のツーリングなので、片方に3名、もう片方に4名乗車という割り振りになる。記者の海外での運転経験は、主に米国のみ。ハワイやグアムなどの島のほか、西海岸エリアでイベント取材などの際に運転していた。

2台のパサート GTE ヴァリアントでツーリングへ
荷物はこんな感じで搭載。ワゴンタイプのため、旅行鞄や撮影機材も楽に積める
ホテルを出発。トラムとの混合交通は新目白通りっぽい

 欧州での運転の注意点は、とくに日本と変わることはない。信号などの色は同様に判断すればよいし、速度制限の標識もマイル時表示ではなくキロ時表示なので、米国よりもなじみやすいだろう。右側通行が決定的に異なる点だが、決定的に異なるために緊張感を持って「右を走るんだ!!」という意識になる。そのため、慎重に走れば右側通行が問題になることはないだろう。記者の経験でも、危なかったのは帰国してからの気の緩み。日本で右折時に思わず間違えそうになったことがある。もちろんパサート GTE ヴァリアントは6速DSGの2ペダルドライブのため、クラッチ操作が不要というのも運転負荷を下げてくれた要因になる。

 ハノーファーの街中はトラムが走っているため電線が多く、広島市内のやや狭めの道を走っている雰囲気がある。東京では都電と並行して走る新目白通りといったところだろうか。しかしながら市街を抜けると一気にペースアップ。80km/h制限で走ることができた。6号線をノイシュタットアム・リューヘンベルゲ方面(要するに北方面)へ向かい、ガルブセンの近くでアウトバーン 2号線(つまりA2)に乗り換える。そこからは最初の目的地であるエッセンへ向かう。基本的には西南方向に向かう感じとなり、朝日もまぶしくなくて運転もしやすかった。

朝方に雨が降ったのか、少しぬれた路面をA2へと向かう
不慣れな道もナビゲーションで楽々運転。速度制限がナビ画面や、メーターパネル内のマルチインフォメーションディスプレイに表示されるので、心理的な負担が小さかった
6号線からA2へ
速度制限もめまぐるしく変わる場所がある。この辺りは日本の高速道路と同様の感覚

 アウトバーンに入ると当然「速度無制限!!」と思いきや、箇所箇所で適切な速度制限が行なわれている。その速度制限も電光掲示板で大きく表示され非常に分かりやすい。なおかつパサート GTE ヴァリアントのナビ画面にも表示されるため、不必要に緊張感が高まることもなかった。

左上に見えるのが速度無制限の標識
ということで、200km/hオーバーの世界に。この速度で巡航できるのがうれしい

 速度無制限表示は丸に斜線の入ったグレーの標識で、これも同様にナビ画面に表示される。この表示の出ている区間は速度を気にする必要なくアクセルを踏み込むことが可能だ。トルクの厚さを感じるパサート GTE ヴァリアントでは、アクセルを踏み込んだからといって爆発的な加速をすることはないが、踏み込めば踏み込んだだけリニアに車速が上がっていく好ましいものだ。試しに200km/h以上で巡航してみたが、何の不安もなく巡航できた。

 ちなみに、2台のパサート GTE ヴァリアントが装着していたタイヤはオールシーズンタイヤ。やや当たりの柔らかい感じのするものだったが、シャシーの剛性感がステアリングやシートからしっかり伝わってくるため高速域での車線変更も緊張することなく行なえる。ただ、200km/h以上での巡航となると、クルマより先に自分の目が疲れてくる部分があり、140km/hくらいで走行しているのが気楽でよいなと思った次第だ。

見通しがよいので速度を出していると……
130km/h制限の標識
速度をしっかり落として速度制限を守る。当たり前のことだが、日本での“みんなで走れば……”の世界に比べ、全員が速度規制を守っているのは素晴らしいと思う

エッセンでひと休み、そしてフライブルグへ。と、その前に

 ハノーファーから約250km走行して、第1の目的地であるエッセンのツォルフェアアイン炭鉱産業遺産群へ到着した。エッセンはルール工業地帯の中心地であり、ツォルフェアアイン炭鉱は欧州最大級の炭鉱でもある。その工場跡は、現在はユネスコの世界遺産に指定されており、多目的スペースになっている。

 このツォルフェアアイン炭鉱跡でひと休みして、パサート GTE ヴァリアントの外観を撮影。ツォルフェアアイン炭鉱跡は見学できるようになっていたが、クルマの撮影などをしていたらゆっくりと見学する時間はなくなり、名物エスカレータを1往復だけ乗って次の目的地へと向かった。

エッセンのツォルフェアアイン炭鉱跡に到着
いろいろ撮影
ツォルフェアアイン炭鉱跡
炭鉱のジオラマ
当時の写真など
炭鉱を掘るのに使ったと思われるピット。記者は学生時代地質調査のバイトでボーリングをしていたが、それに比べると遙かに巨大でゴツイ
アッセン市内。やはりトラムが走っている
関東地方で言うと、江ノ電と併走する腰越辺りの雰囲気
こちらは地元のクルマ。トラムを追走している

 このエッセンでは、エッセンに本社を置くエネルギー会社のRWEの外観も見学。このRWE本社前には電気自動車用の充電器もあり、充電端子をチラ見した。本来であれば、パサート GTE ヴァリアントにつないでみたかったのだが……。

 なお、このエッセンでは毎年冬に欧州最大のカスタムカーショー「エッセンモーターショー」が開かれており、米国の「SEMAショー」、日本の「東京オートサロン」と併せて世界3大カスタムカーショーと呼ばれている。2016年の会期は11月26日~12月4日となっており、その際は会場となる「メッセ エッセン(MESSE ESSEN)」はクルマで溢れかえるとのことだ。

エッセン駅。DBはDeutsche Bahnの略でドイツ鉄道のこと
エッセン駅近くのRWE本社近くの充電器
コネクターはこんな形

アウトバーンを使った高速移動

 エッセンでの滞在時間が短かったのには訳がある。そもそも1000km以上を1泊2日で走りきるという旅程の上に、1日目の宿がフライブルグのため、ハノーファーからエッセン経由でフライブルグまで700km以上を走る必要があるのだ。東京からだと、青森や岡山、四国まで到達できてしまう距離になる。

 とはいえ、ハノーファーからエッセンまでの約250kmの移動にかかった時間はデジカメのEXIF情報を確認したところ約2時間。交通法規に違反することなく笑っちゃうほど高速に移動できている。

 これだけの平均速度で都市間を移動できるのは驚異的。パサート GTE ヴァリアントは最新鋭のクルマとはいえ、スーパーカーで移動した訳ではなく、100km/hのところは100km/h以下で、130km/hのところは130km/h以下で、そして無制限の箇所はほとんどの区間を200km/h以下で移動した。この速度で都市間を移動できるなら、100km、200kmという距離感覚は日本の距離感覚とは異なり、「ちょっと出かけてくる」みたいなものだろう。また、今回走った区間はほとんど平地で、アップダウンはあるもののトンネルはなく、明暗差による疲れも生じなかった。この辺りは、トンネルが連続する中央自動車道と、比較的トンネルの少ない宇都宮以南の東北自動車道との違いというところだろうか。

 日本でも高速道路の速度制限を120km/hに引き上げるという議論は始まっており、数年内に一部区間の高速道路は120km/h~100km/hで巡航可能になるだろう。これにより距離感覚の概念が変わるかどうかは分からないが、これまでよりも高速巡航性能に優れたクルマが求められるのは間違いない。欧州車はすでに対応したクルマ作りがなされているが、国産車については、とくに輸出を視野に入れていないクルマについては、割り切って作られている部分もある。高速道路の速度制限120km/h引き上げが早期に実現し、日本車のクルマ作りが違うステージに突入することで、日本でのクルマ旅が変わる時代が楽しみだ。

 ちなみにパサート GTE ヴァリアントによる旅だが、記者のリクエストである技術博物館に立ち寄ることになった。後編となるスイス編では、その技術館からローザンヌまでの旅をお届けする。

エッセンからフライブルグに向かう途中に記者のリクエストで技術博物館に立ち寄り。博物館の紹介は後編となるスイス編で