SUPER GT第5戦「SUGO GT 300km RACE」リポート【決勝編】
レース途中の雨により、タイヤ選択が明暗を分けた

スタート直後の1~2コーナー。まだ強い日差しが照っていた

2009年7月26日(決勝)



 SUPER GT第5戦の決勝レースが、7月26日、スポーツランドSUGO(宮城県柴田郡)で開催された。夏の日差しが照りつけ、猛暑の中スタートしたレースは、直後に雨が降り、ゴール間近には路面が乾く天候の影響で、タイヤ選択が明暗を分けた。

 第5戦は81周で争われ、GT500クラスは1号車「MOTUL AUTECH GT-R」(本山哲/ブノワ・トレルイエ)が優勝、2位には39号車「DUNLOP SARD SC430」(アンドレ・クート/平手晃平)、3位には18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」(道上龍/小暮卓史)が入った。GT300クラスは33号車「HANKOOK PORSCHE」(木下みつひろ/影山正美)が優勝、2位には2号車「アップル・K-one・紫電」(加藤寛規/吉本大樹)、3位には11号車「JIMGAINER ADVAN F430」(田中哲也/平中克幸)が入った。

 SUPER GTは全9戦で行われ、今回のSUGOラウンドは第5戦で丁度折返しとなる。ここまでのポイントは24号車「HIS ADVAN KONDO GT-R」(J.P・デ・オリベイラ/荒聖治)が37ポイントでトップ、2位は35ポイントの36号車「PETRONAS TOM'S SC430」(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー)、3位は33ポイントで8号車「ARTA NSX」(ラルフ・ファーマン/伊沢拓也)となっている。

 第4戦がマレーシア・セパンでの開催だったので、国内でのSUPER GT開催は5月4日の富士スピードウェイ以来、およそ3カ月振りとなる。土曜日のフリー走行、予選と猛暑の中で行われ、全車がグリッドに着いた時点でも太陽は照りつけ、路面温度は46度に達していた。だが、サーキットの西側、蔵王方面の空は暗く、レース中の雨は予想されていた。

 14時に決勝レースはスタートした。1コーナーは予選トップの3号車「HASEMI TOMICA EBBRO GT-R」がポジションキープ、以下6号車「ENEOS SC430」、24号車「HIS ADVAN KONDO GT-R」、39号車「DUNLOP SARD SC430」、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」と続いた。

序盤から各所でバトルが繰り広げられた

 9周目の最終コーナーで周回遅れのGT300に詰まった3号車「HASEMI TOMICA EBBRO GT-R」を6号車「ENEOS SC430」が抜きトップに立ち、徐々に後方を引き離し独走状態となる。26周目にポツリポツリと雨が降り出したところからレースが動き出した。30周を前後してピットイン、タイヤ交換を行うチームが出始めるが、この段階ではレインタイヤに交換したマシンのペースは上がらない。トップの6号車「ENEOS SC430」はスリックタイヤのままでトップをキープする。一方、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」は早めにタイヤ交換を行い、浅溝のレインタイヤを選択した。

9周目にトップに立ち、一時は独走した6号車「ENEOS SC430」26周目あたりから雨が降り出した30周を過ぎた頃から雨は激しくなった
2コーナーで12号車「IMPUL カルソニック GT-R」に追突されスピンする38号車「ZENT CERUMO SC430」

 33周目、雨が一気に強くなり、スリックで走るチームも全車タイヤ交換。全車がタイヤ交換を行った時点での順位はトップが6号車「ENEOS SC430」、以下1号車「MOTUL AUTECH GT-R」、3号車「HASEMI TOMICA EBBRO GT-R」、39号車「DUNLOP SARD SC430」、38号車「ZENT CERUMO SC430」、12号車「IMPUL カルソニック GT-R」と続く。

 残り30周、雨は小雨、トップは6号車「ENEOS SC430」がキープ。2位以下を10秒以上離し優勝が見えてきた。ところが残り25周となった段階で雨は止み、徐々にレコードラインが乾き出す。浅溝のレインタイヤを選択した1号車「MOTUL AUTECH GT-R」が徐々にトップとの差を縮め出す。残り15周、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」が1コーナーでアウトから6号車「ENEOS SC430」を抜き、ついにトップへ。タイヤ選択の差が、ここに来て大きく順位に影響することになった。

 39号車「DUNLOP SARD SC430」も6号車「ENEOS SC430」を抜き2位へ、6号車「ENEOS SC430」は100号車「RAYBRIG NSX」と18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」にも抜かれ、5位に転落した。最終ラップの1コーナーで18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」が100号車「RAYBRIG NSX」を抜き3位を獲得、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」はそのままトップをキープして優勝した。

 スポーツランドSUGOでは過去15年間優勝できなかった日産チームがそのジンクスを破り、ついに優勝することができた。2位は39号車「DUNLOP SARD SC430」、3位は18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」、GT500クラスの最終順位は以下のとおり。

最終順位ナンバー車名ドライバー
1位1MOTUL AUTECH GT-R本山哲/ブノワ・トレルイエ
2位39DUNLOP SARD SC430アンドレ・クート/平手晃平
3位18ROCKSTAR 童夢 NSX道上龍/小暮卓史
4位100RAYBRIG NSX井出有治/細川慎弥
5位6ENEOS SC430伊藤大輔/ビヨン・ビルドハイム
6位17KEIHIN NSX金石年弘/塚越広大
7位36PETRONAS TOM'S SC430脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー
8位12IMPUL カルソニック GT-R松田次生/セバスチャン・フィリップ
9位3HASEMI TOMICA EBBRO GT-Rロニー・クインタレッリ/安田裕信
10位38ZENT CERUMO SC430立川祐路/リチャード・ライアン
11位32EPSON NSXロイック・デュバル/中山友貴
12位35KRAFT SC430石浦宏明/大嶋和也
13位24HIS ADVAN KONDO GT-RJ.P・デ・オリベイラ/荒聖治
14位8ARTA NSXラルフ・ファーマン/伊沢拓也
優勝した1号車「MOTUL AUTECH GT-R」
2位に入った39号車「DUNLOP SARD SC430」
最終ラップで3位になり表彰台を獲得した18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」
GT300クラスはスタートから81号車「ダイシン アドバン Ferrari」と33号車「HANKOOK PORSCHE」が飛び出した

 GT300クラスも雨で大きく順位が変動した。スタートで飛び出したのは81号車「ダイシン アドバン Ferrari」と33号車「HANKOOK PORSCHE」の2台。その後81号車「ダイシン アドバン Ferrari」が独走し、一時は20秒以上のマージンを稼いでいた。しかし雨が止んだころから順位が大きく変わり出す。

 浅みぞのレインタイヤで走行する33号車「HANKOOK PORSCHE」は雨の強かった間は5番手まで下がるが、路面が乾き始めると再浮上。57周目に26号車「UP STARTタイサンポルシェ」を抜き3位、60周目の1コーナーで2号車「アップル・K-one・紫電」をパスし2位、67周目、ついに81号車「ダイシン アドバン Ferrari」を抜きトップに立った。

 33号車「HANKOOK PORSCHE」はそのままトップをキープし優勝。第2戦鈴鹿以来の今季2勝目を挙げた。「HANKOOK PORSCHE」は今季、資金の関係で4戦しか参戦できず、今回が参戦2戦目で2勝目となった。2位は2号車「アップル・K-one・紫電」。路面が乾き始めペースダウンしたところで再度ピットインし、スリックに交換して2位をゲットした。あと1周あればトップの「HANKOOK PORSCHE」も追い抜く猛追撃を見せた。3位の11号車「JIMGAINER ADVAN F430」も終盤、スリックへの再交換を成功させた。一時は9位まで順位を落としたが、激しく追い上げて今季初表彰台を獲得した。GT300クラスの最終順位は以下のとおり。

最終順位ナンバー車名ドライバー
1位33HANKOOK PORSCHE木下みつひろ/影山正美
2位2アップル・K-one・紫電加藤寛規/吉本大樹
3位11JIMGAINER ADVAN F430田中哲也/平中克幸
4位81ダイシン アドバン Ferrari青木孝行/藤井誠暢
5位19ウェッズスポーツIS350織戸学/片岡龍也
6位46エスロード MOLA Z星野一樹/柳田真孝
7位26UP START タイサンポルシェ阿部翼/黒澤翼
8位74COROLLA Axio apr GT井口卓人/国本雄資
9位43ARTA Garaiya新田守男/高木真一
10位31avex apr COROLLA Axio坂本雄也/峰尾恭輔
ハンコックタイヤの利を活かし優勝した33号車「HANKOOK PORSCHE」
スリックタイヤに交換するギャンブルが成功して2位に入った、2号車「アップル・K-one・紫電」
3位表彰台を獲得した11号車「JIMGAINER ADVAN F430」
話題の808号車「初音ミク Studie GLAD BMW Z4」はスタートから最後尾を独走!? したが見事完走し17位。リアウイングの破損は……
ゴール直後の本山哲選手、ブノワ・トレルイエ選手GT500の表彰台GT300の表彰台

 SUPER GT第6戦は8月23日にポッカ GT サマースペシャルとして、シリーズ最長の700kmで決勝レースが行われる。レース終了時は夜となり、ゴール後には花火も打ち上げられる恒例のイベントだ。灼熱の鈴鹿で行われるSUPER GTのバトルに期待したい。

(奥川浩彦)
2009年 7月 28日