フォーミュラ・ニッポン最終戦レポート
タイヤ交換のタイミングを決めたデュバル選手が今期4勝目

4勝目を挙げ、有終の美を飾ったロイック・デュバル選手

2009年9月27日決勝開催



 2009年フォーミュラ・ニッポン最終第8戦の決勝レースが9月27日、スポーツランドSUGO(宮城県柴田郡)で開催された。ポールポジションのロイック・デュバル選手(NAKAJIMA RACING)が一時順位を落としたが、レインタイヤに交換したタイミングがよく今期4勝目を挙げた。2位には雨に強いアンドレ・ロッテラー選手(PETRONAS TEAM TOM'S)、3位には最後尾から追い上げた平手晃平選手(ahead TEAM IMPUL)が入り、今期初表彰台を獲得した。

 全8戦で行われた今年のフォーミュラ・ニッポンも今回のSUGOが最終戦だ。前戦でシリーズチャンピオンはロイック・デュバル選手が獲得しているので、今回の注目はルーキー・オブ・ザ・イヤーの行方とシリーズポイント2位以降の上位争いだ。加えて「5位までに入ればチャンピオン……」といった駆け引きは一切なくなったので、来シーズンに向けてのガチンコバトルにも注目したい。

 ルーキー・オブ・ザ・イヤーを争う3人は、7号車 国本京佑選手(Team LeMans)が0ポイント、10号車 塚越広大選手(HFDP RACING)が15ポイント、37号車 大嶋和也選手(PETRONAS TEAM TOM'S)が10ポイントで最終戦を迎えている。塚越選手は雨のツインリンクもてぎで、大嶋選手は雨の富士スピードウェイで鮮烈な印象を残している。昨年のマカオF3で優勝した国本選手は、マシントラブルやクラッシュなど不運も重なりポイントが取れていない。塚越選手、大嶋選手のどちらがルーキー・オブ・ザ・イヤーを取るのか、国本選手は最終戦でポイントを取ることができたのか。将来、日本を代表するドライバーとなる3人がルーキーイヤーの最終戦を迎える。

 シリーズポイント2位以降の争いはブノワ・トレルイエ選手(LAWSON TEAM IMPUL)が40ポイント、小暮卓史選手(NAKAJIMA RACING)が37ポイントと3点差の争いとなっている。31ポイントのアンドレ・ロッテラー選手(PETRONAS TEAM TOM'S)も優勝すれば2位になる可能性がある。

 ノックダウン方式で行われた前日の予選では、Q2でSUGOのコースレコードを塗り替えた小暮選手をデュバル選手が抑えポールポジションを獲得。2位に小暮選手、3位に塚越選手が入った。ポイント上位争いをするロッテラー選手は7位、トレルイエ選手は9位となった。ルーキー・オブ・ザ・イヤーを争う大嶋選手は6位、国本選手は10位と後方に沈んだ。

 62周で行われる決勝レースのコースはドライだが、今にも雨が降り出しそうな雲に覆われた状況でスタートを迎えた。7月にここSUGOで行われたSUPER GTはスタート直後に晴天から一転、雨となり、その後路面が徐々に乾く天候がレース結果を左右した。また、雨のフォーミュラ・ニッポンといえば5月に行われた第3戦の終盤、チョイ濡れ路面をスリックタイヤで走った塚越選手の鮮烈な走りが思い出される。

 14時30分にレースはスタートした。スタートを決めたのは2番手スタートの小暮選手、ポールポジションのデュバル選手を交わしトップに立った。5番手スタートの松田選手もスタートダッシュを決め1コーナーで3位に上がった石浦選手とサイド・バイ・サイドとなるが、2コーナーで2台が軽く接触、アウト側にはじき出される形で8位に後退した。2年連続シリーズチャンピオンの松田選手は、最後まで運に見放された感じだ。予選3位の塚越選手はやや出遅れたが、最終コーナーからオーバーテイクシステム(OTS)を使い石浦選手に並びかけ、2周目の1コーナーで3位を取り戻した。

スタートでは予選2位の小暮選手がトップに立った。2コーナーで接触し、コースアウトする松田選手(右端)

 1周目の順位は小暮、デュバル、塚越、石浦、ロッテラー、大嶋、松田、ライアン、トレルイエ、伊沢、立川、国本と続き最後尾は平手選手となった。

 3周目の1コーナー、伊沢拓也選手(DOCOMO DANDELION)がOTSを使いトレルイエ選手をパスし9位に上がった。最終戦となり各車OTSを上手く使うシーンが多く見られた。

 6周目、雨がポツリポツリと降り出した。8位を走るリチャード・ライアン選手(DOCOMO DANDELION)に同じチームの伊沢選手が後方から迫る。スリップから飛び出すときに伊沢選手のフロントウィングが、ラインをブロックしたライアン選手の右リアタイヤに接触、伊沢選手のフロントウィングがコースに飛び散った。ライアン選手の右リアタイヤパンクし1コーナーをオーバーラン、2台ともピットインとなり大きく順位を落とした。

 10周目の1コーナー、最後尾から追い上げを狙う平手選手が立川選手をパス、10位に浮上した。10周終了時の順位は小暮、デュバル、塚越、石浦、ロッテラー、大嶋、松田、トレルイエ、国本、平手、立川と続き、接触したDOCOMO DANDELIONの2台が大きく離れる形となった。

 12周目、立川選手が先頭を切ってレインタイヤに交換、路面はかなり濡れてきた。雨に強いトレルイエ選手のペースが速い。バックストレッチで松田選手に並びかけ、馬の背コーナーで順位を7位に上げた。アウト側に膨らんだ松田選手に9位の国本選手も並び掛け、SPコーナー1つ目で8位に上がった。

 13周目、雨は更に強くなりトップを走っていた小暮選手がピットイン、レインタイヤに交換した。大嶋選手、松田選手もピットイン、レインタイヤに交換した。

 トップに立ったデュバル選手に塚越選手が猛プッシュを始めた。1コーナーで並びかけるが抜けず、馬の背でもアウト側から並びかけるがデュバル選手に押し出されダートに片輪を落とした。3位に上がった石浦選手も前2台に肉薄し、滑る路面で激しいバトルを展開した。

 15周終了の順位はデュバル、塚越、石浦、ロッテラー、トレルイエ、国本、平手とスリックタイヤ勢が続き、タイヤ交換した小暮選手が8位となった。レインタイヤに交換した小暮選手のラップタイムは1分21秒台、トップを争う3台は20秒台、この段階ではまだスリックタイヤの方が有利だ。

 19周目、トップ3台の争いはさらに加熱する。1秒差に3台が入る接近戦となり、差の縮まる低速コーナーでは3台が接触しそうな距離でバトルを展開した。すぐ後方でも5位のトレルイエ選手がロッテラー選手に迫り、バックストレッチでパスして4位に上がった。

 徐々に路面は乾いて、スリックタイヤで走るトップ勢のタイムは20秒を切った。小暮選手はレインタイヤを諦めスリックタイヤに戻した。完全にチームの作戦が裏目に出て、優勝争いから脱落した。

 21周目のシケイン立ち上がり、トラクションをかけ過ぎた石浦選手がハーフスピン、コースに横向きになった。すぐ後方のトレルイエ選手はアウトから、ロッテラー選手はインから交わし、接触は避けられた。直後、トップを守っていたデュバル選手が馬の背でコースアウト、塚越選手がついにトップに立った。雨が再び強くなり出したのだ。

 デュバル選手、石浦選手がたまらずピットイン、平手選手もレインタイヤに交換してレースに復帰した。スリックタイヤのまま粘る塚越選手、トレルイエ選手、ロッテラー選手がトップ3、だがラップタイムは26秒台まで落ちてきた。24周目、国本選手もピットイン、レインタイヤに交換した。

 雨は徐々に強くなりトップのタイムは30秒台まで落ちた。レインタイヤに交換したマシンのタイムは27秒台、徐々にトップ3との差が縮まってきた。このまま雨が続けば後方から追い上げるレインタイヤ勢、雨が止めばスリックタイヤ勢が有利となる。また、タイヤ交換したレインタイヤ勢に対しアドバンテージがあるうちにピットインすれば上位がキープできるが、差が縮まってからでは後方に沈んでしまう。先の読めない微妙な天候はこの後も続いた。

 トレルイエ選手、ロッテラー選手の2位争いは白熱した。背後から迫るロッテラー選手に対し、トレルイエ選手はOTSを使い対抗、2度に渡り1コーナーを2台が並んで飛び込み、ホイール・トゥ・ホイール、接触ギリギリのバトルで順位をキープした。

 29周目、ロッテラー選手がタイヤ交換、4位国本選手の後ろ、石浦選手の前でコースに戻った。31周目には塚越選手もピットイン、平手選手の後ろコースに戻り、順位を7位に落としてしまった。2台ともやや判断が遅れた結果となった。これで順位は1台だけスリックタイヤで粘るトレルイエ選手が1位、以下デュバル、国本、ロッテラー、石浦、平手、塚越、大嶋、松田となった。レースはこれから後半戦だ。

 32周目、平手選手が石浦選手を1コーナーでパスして5位に浮上、スタートでは最後尾の13位だったので、驚異的な追い上げだ。34周目にはロッテラー選手が国本選手を馬の背でパスして3位浮上、国本選手の背後には平手選手が迫ってきた。

 35周目、トップのトレルイエ選手のすぐ背後にデュバル選手が迫っていた。SPアウトコーナーの立ち上がりでトレルイエ選手がリアタイヤを縁石に乗せ、コントロールを失いコースアウト。ガードレールに軽く接触してコースに戻るが、ついにトップの座を明け渡してしまった。

 37周目の1コーナーで塚越選手が石浦選手を抜き6位に浮上、38周目のシケイン立ち上がりではロッテラー選手がトレルイエ選手を抜き2位に、40周目にはハイポイントコーナーで平手選手が国本選手を交わして4位に上がった。

 スリックタイヤで走りきる作戦をとったトレルイエ選手の後ろに平手選手、国本選手、塚越選手が数珠つなぎとなった。タイム的にはあきらかに遅いトレルイエ選手だが、パッシングポイントの1コーナーが比較的路面が乾いているので後続がなかなか抜くことができない。

 42周目の最終コーナーでようやく平手選手がトレルイエ選手をパスして3位、すぐ後方では1コーナーの飛び込みで塚越選手が国本選手を抜き5位に上がった。44周目のハイポイントコーナーで塚越選手がトレルイエ選手をパスして4位、石浦選手は国本選手を抜き6位、続く45周目のシケイン立ち上がりでトレルイエ選手も抜いて5位に浮上した。後半もめまぐるしく順位が入れ替わる展開が続いた。

 48周目の1コーナーでは、塚越選手が単独スピン。石浦選手に抜かれ順位を落とす。50周目、国本選手は大嶋選手に抜かれついに8位、一時は3位を走っていたが、ポイント獲得すら危うい状態になってきた。

 レースは残り10周を切っても順位が入れ替わった。大嶋選手は4コーナーでトレルイエ選手をパスして6位、続いてトレルイエ選手を抜きに出た国本選手は、ラインを外したところを松田選手につかれ9位に落ちてしまった。ついにポイント圏外だ。スピンで遅れた塚越選手は再び追い上げ、石浦選手を抜き4位に浮上した。

 残り4周、9位に落ちた国本選手が、なんとかトレルイエ選手を抜き8位に順位を上げた。このまま走りきれば、待望のポイント獲得だ。

 トップ争いは9秒差までロッテラー選手が追い上げたが、デュバル選手が逃げ切り今期4勝目、チャンピオンの貫禄を見せ有終の美を飾った。スタートで最後尾に落ちた平手選手がミスのない走りとタイヤ交換のタイミングのよさで3位獲得、今季初表彰台を獲得した。最終順位は以下の通り。

順位ドライバーチーム名
1位ロイック・デュバルNAKAJIMA RACING
2位アンドレ・ロッテラーPETRONAS TEAM TOM'S
3位平手晃平ahead TEAM IMPUL
4位塚越広大HFDP RACING
5位石浦宏明Team LeMans
6位大嶋和也PETRONAS TEAM TOM'S
7位松田次生LAWSON IMPUL
8位国本京佑Team LeMans
9位ブノワ・トレルイエLAWSON TEAM IMPUL
10位小暮卓史NAKAJIMA RACING
11位伊沢拓也DOCOMO DANDELION
12位立川祐路CERUMO/INGING
13位リチャード・ライアンDOCOMO DANDELION
4勝目を挙げ、有終の美を飾ったロイック・デュバル選手2位に入ったアンドレ・ロッテラー選手3位に入り、今季初表彰台を獲得した平手晃平選手

 ルーキー・オブ・ザ・イヤーは塚越選手が獲得し、シリーズポイント2位はトレルイエ選手、そしてこのレースで2位に入ったロッテラー選手が小暮選手を抜き3位となった。

表彰式シリーズポイント上位は外人勢が独占したルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した塚越広大選手
チームチャンピオンを取ったNAKAJIMA RACINGの中嶋悟監督チームチャンピオン上位3チームはNAKAJIMA RACING、PETRONAS TEAM TOM'S、LAWSON IMPUL

 優勝回数はデュバル選手が4回、小暮選手が2回、トレルイエ選手、ロッテラー選手がそれぞれ1回で、NAKAJIMA RACINGが2人で6勝と圧倒的な強さを見せた1年だった。平手選手、石浦選手、伊沢選手、塚越選手、大嶋選手といった若手選手の活躍も目立ったシーズンで、来年以降の飛躍が期待できそうだ。

(奥川浩彦)
2009年 9月 28日