国土交通省、ユニバーサルデザインタクシー試作車の発表会 日産「バネット」をベースに、誰もが使える扱いやすさを追求 |
国土交通省は10月16日、東京都千代田区霞が関にある国土交通省中央合同庁舎3号館の駐車場で、日産「バネット」をベースにしたユニバーサルデザインタクシー(試作車)の発表会を開催した。
国土交通省自動車交通局はバス・タクシー事業者、自動車メーカー、障害者・高齢者団体、学識者団体等と連携し、同省が推進している「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係わるバリアフリー車両の開発」事業を進めている。しかし、バスやタクシー車両は市場の規模が小さいため、市場原理に委ねるだけではバリアフリーに対応する開発に遅れが出てしまうと言う。
そこで、地域、輸送形態に応じて高齢者、障害者等のニーズを調査するとともに、車両開発にかかる技術的課題やコスト等を踏まえ、普及しやすいように低コストでバリアフリー化されたバス・タクシー車両の開発・改良および仕様の標準化を目指した。
その結果、事前に予約を必要としない「流し」として運行される車両であることを前提に、足腰の弱っているご老人や、妊娠中の女性、子供などを含め、利用者に優しいタクシーである「ユニバーサルデザインタクシー」が開発された。
日産自動車 執行役員 グローバル LCV ビジネスユニット 村上秀人氏 |
今回展示されたユニバーサルデザインタクシーの正式名称は「NV200バネット タクシー」。車両の紹介は、日産自動車 執行役員 グローバル LCV ビジネスユニット 村上秀人氏から行われた。
同氏によると、「NV200バネット タクシーは、国土交通省が推進している『地域のニーズに応じたバス・タクシーに係わるバリアフリー車両の開発』事業に基づいて日産が考えるタクシーとして試作したもの。ボディーに貼られるロゴマークは、ハートとシート(座席)をモチーフにし、ハートは一筆書きで描き、皆が手を取り合って安心して使えるように、シートは安心とやすらぎを感じて欲しいという願いを込めてデザインした」と言う。
NV200バネット タクシーの特徴は3つ。1つに「ゆったり座れて、かつ荷物を多く積めるようにした」こと。2つめに「居心地のよい車いすレイアウトとし、2列目のシートを運転席・助手席側に目いっぱいスライドさせ、リアゲートから車いすに乗ったまま乗車できるようにした」ことと村上氏は述べる。この2列目シートは、標準モデルよりもさらにスライド量を増やしていると言い、スペース確保のほかにも運転席、助手席との距離を縮めることにより、車内での会話が楽しめるような配慮もなされている。
3つめは、「乗り降りしやすい装備を備えた」こと。後席のスライドドアの下には、ドアが開くのに合わせてLED付きのステップが登場する。このステップの高さは地面から200mmとし、足腰の弱った方でも楽に乗降できる工夫がされている。また、室内には大型のアシストグリップも装着する。このグリップの一部はオレンジ色に塗装されており、これは視覚障害者が一番視認しやすい色なのだそうだ。
LED付きのステップ | アシストグリップは視覚障害者が見やすいようにオレンジ色を採用 |
なお、10月24日から一般公開される「第41回東京モーターショー2009」の日産ブースおよび国土交通省自動車交通局のブースで、NV200バネット タクシーは展示される。ここで一般利用客の意見を聞き、来年度に販売する車両に反映していく考えとし、発表会を締めくくった。
(編集部:小林 隆)
2009年 10月 16日