三洋電機、自動車用電池事業の説明会を開催
全方位販売で、世界シェア40%を目指す

自動車用電池事業について語った、三洋電機株式会社取締役副社長本間充氏

2009年10月21日開催



 三洋電機は10月21日、報道陣向けに同社の自動車用電池事業の説明会を開催した。

 電池事業について説明したのは、取締役副社長本間充氏。本間氏は三洋電機を「(充放電可能な)2次電池の開発に特化してきた電池メーカー」と位置づけ、最初に環境対応車の動向について語った。本間氏によると環境対応車の本命は、FCV(燃料電池車)ではなく、HEV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)で、将来的にはBEV(電気自動車)であると言う。ディーゼルHEVやPHVであれば、現在のFCVのCO2排出量と遜色なく、FCVに必要なインフラコストを考えると、PHVやBEVが主流になっていくだろうとした。

FCVではなく、PHVやBEVが主流になるとの見通しを立てている

 その上で、三洋電機の取り組みについて語り、「現在は携帯電話用のシェアを下げているが、これは戦略的なものでノートパソコン用やデジタルカメラ用を重視している」とし、これまで培った技術開発力、生産技術力、グローバルサプライチェーンにより、自動車用2次電池にも取り組んでいくと言う。すでにFordやホンダのHEVには同社の電池モジュールが採用されているとしつつ、今後BEVの普及のためには改善が必要な部分があると言う。

 BEV用リチウムイオン電池では、安全性、長期耐久性の部分において問題はほぼ解決したものの、1充電での走行距離、コストなどはさらなる改善が必要で、とくにエネルギー密度においてはガソリンが優位であり、さらなる研究開発をしていくと言い、経済産業省が提言している、2030年に性能7倍、コスト1/40という目標を紹介した。

三洋電機のこれまでの電池に対する取り組み。技術、生産、SCMにより世界的な供給体制を築いている
自動車用電池事業の変遷と問題点。ガソリンのエネルギー密度はまだ電池より優れており、さらなる技術開発が必要

 三洋電機では自動車用電池として、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池を手がけているが、HEV用途にはニッケル水素電池が向くとし、2009年に量産出荷を開始した、第2世代ニッケル水素電池を紹介した。この第2世代ニッケル水素電池は、前世代に比べ出力で1.3倍、耐久性で2倍の性能を持ち、重量と体積を減少させたもの。さらなる高出力化・高耐久化、そしてメモリー効果の改善を図る第3世代ニッケル水素電池も技術的には目処が立っているとした。

ニッケル水素電池は、信頼性やシステム設計などすでに問題を解決しており、マイルドHEVや、小型のストロングHEVに向くと言う。すでに第2世代ニッケル水素電池の量産出荷を開始

 より電池に対する要求が厳しくなるPHVやBEVにはリチウムイオン電池が向いているとし、LiNiCoMnO2の三成分系をベースに開発した同社のリチウムイオン電池では、長期耐久性に優れ、10年~15年の使用にも耐えうると言う。また、PHV用電池は、2011年の量産に向け開発を加速し、BEVに向いた電池も開発中であるとした。

リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池と比べ、よりHEVに向いた特性を持つと言う。また、これまでの民生用リチウムイオン電池の開発曲線を考えると、さらなる特性の向上は可能だとした

 成長戦略に関しては、「三洋電機は自動車メーカー1社だけに供給することでなく、全方位型の販売を行っていく」と言う。これは電池のコストダウンには、数を作ることが必要であり、そのためにも1社だけに頼る販売ではなく、すべての自動車メーカーに供給を行っていきたいと語る。もちろんこれには、技術的に優れていなければどのメーカーからも購入してもらえないというプレッシャーもあるが、三洋電機はこれまでの電池事業で築いてきた、技術力、生産力、そしてSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)力があるため、対応可能であるとした。

 拡大する自動車用電池市場に対応するため、生産能力も引き上げ、兵庫県の加西事業所に新工場を設立し、量産2号ライン、3号ラインの導入で、2015年には月間1000万セルの生産を実現する。将来的には電池の組み立てに関しては海外展開を考えており、独Volkswagenへの電池供給のため、Volkswagenの自動車組立工場の近くに電池の組立工場を設立する。ただし、その場合も政治的な規制がかからない限り、素電池(電池の基幹部分)については1個所の工場で作ることがコスト競争力につながるため、できるだけ国内の工場で生産していきたいと語った。

 また、三洋電機はパナソニックからのTOBを受けることになるが、これに関して「パナソニックから資金提供を受けることで、より開発力を増していく。1+1が3以上にならなければならないという基本合意がある」と語り、「目標は高いほうがよい」と前置きして、2020年には自動車用電池市場で40%のシェアを目指すと結んだ。

加西事業所の量産ラインの増設で、2020年には自動車用電池市場で40%のシェアを目標とする

 

(編集部:谷川 潔)
2009年 10月 21日