高速道路技術の展示会「ハイウェイテクノフェア2009」リポート

東京ビッグサイトで開催中の「ハイウェイテクノフェア2009」

2009年11月5日、6日開催
入場無料



 ETCの休日特別割引(高速道路料金地方部上限1000円)などで利用台数が伸び、何かと話題となることが多くなった高速道路。その高速道路を支える技術の展示会「ハイウェイテクノフェア2009」が、東京ビッグサイト西3ホール(東京都江東区有明)において、11月5日、6日の2日間にわたって開催されている。主催者は、高速道路に関する調査機関である高速道路調査会で、NEXCO東日本(東日本高速道路)、NEXCO中日本(中日本高速道路)、NEXCO西日本(西日本高速道路)の3社と共催となる。入場料は無料。

 展示内容は、NEXCO 3社が高速道路に用いている、建設・保守・管理技術が中心となり、高速道路に関連する製品を扱う各社が、技術や納入実績、将来採用される製品などさまざまな展示を行っていた。本記事では、その中から特徴的なもの、トレンドとなっていたものをピックアップしてお届けする。

NEXCO 3社
 展示面積のおよそ半分ほどを占めるのが、NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本のNEXCO 3社。高速道路の保守・管理に用いられている技術や製品が多く、今後導入を予定している製品なども一部展示されていた。パソコンとインターネットを使い、遠隔地から監視するシステム、画像認識を使い逆走防止を警告するシステムなども目を引いた。コンピューターやネットワーク技術を、保守・管理業務にどのように取り入れていくかというのが、技術展示の中心になっていた。

NEXCO東日本ブースに展示されていた「画像式逆走防止システム」。上部のカメラで撮影した動画を処理して逆走であることを認識し、電光掲示板で警告する。逆走による事故は社会問題となっているが、それをできるだけ防ぐことを目指したもの。担当者によると、故意の逆走を行った2輪車1例を除き、この警告によってそのほかの逆走は防げたと言う
NEXCO東日本が導入を予定している新型の非常電話。電話の中央部にタッチパネルが装備されており、音声通話のほか、文字メッセージをやり取りできる。管制センター側の端末で、非常電話利用者へのメッセージを送り出し、非常電話利用者はタッチパネルで答える
NEXCO東日本の「降積雪量計測 WEBシステム」。レーザーにより降雪量を計測し、10分間隔でそのデータをWeb配信。Webサーバー上で降雪量などの変化を見られるNEXCO東日本の「ゴム支承反力測定システム」。橋を支える部分に組み込むことにより、高さの測定や施工のミスなどを確認できるNEXCO東日本の「道路画像配信システム」&「広域視程情報提供システム」。道路画像配信システムは、巡回車などから撮影した道路の画像をインターネットで送信するシステム。広域視程情報提供システムは同様の仕組みを用い、視程状況を画像解析によって算出し高速道路の状況を一目で把握する
NEXCO中日本「LEDトンネル照明灯具」。次世代のトンネル用照明設備として展示されていたLEDを用いたライト。LEDは球切れの心配もなく、メンテナンスコストの低減も図れる。高輝度の白色LEDを多数並べて1つのライトユニットを形成している
NEXCO中日本の「とまるくん」。進入車両を強制的に停止させる装置で、とまるくんに突っ込んだ車両を、てこの原理で持ち上げてしまう。50km/hで突入した車両を10.4mで止めることができると言うNEXCO中日本の「からまんでー」。旗が旗棒にからまないという安全旗。持ち手の部分が回転し、布部がからまないような工夫がされているNEXCO中日本の「Newジャンボ風船コーン」。工事中であることを示すコーンだが、風船タイプとなっており、収納時はコンパクトに折りたたまれる。夜間も使える新タイプ
NEXCO中日本の「GPS車両位置管理システム」。手前のGPS搭載車載器を道路パトロールカーなど作業車に搭載することで、どの作業車が高速道路のどの個所で作業しているか一目で把握できるシステム。GPSによって、高速道路上の位置がKP(キロポスト)で把握でき、管制センターのモニターには車両の種類とともに表示されるNEXCO中日本のブースに掲示されていた、新東名(第2東名)のパネル。トンネルや標識の安全性や実用性を確認するため、2010年度から実証実験を開始する
NEXCO西日本の「ひび割れ検出システム」。CCDビデオカメラを搭載したトラックを走らせ、トンネル内壁などコンクリート構造物を撮影。パソコン上で画像をチェックして、ひび割れなどを目視でチェックしていく。60km/hで走行しつつ撮影可能なため、従来より短時間でデータの蓄積ができる。ハイビジョンカメラを用いた80km/h走行システムの解説も行われていた
NEXCO西日本の「ガードレールリメイク工法」。ガードレール上を走行する特殊な自走機械を取り付け、ガードレールに付いたサビなどを落とす。自走機械では、ガーネット(ざくろ石)のブラスト材を噴出しサビを取る下地処理、アーク溶射による防食処理が行え、塗装処理を行えばガードレールをリメイクできる自走機械はガードレールをガイドレールとして用い、ガードレールとの間隔を調整することで、つなぎ目を乗り越えて作業を行える

各種企業など
 NEXCO 3社の展示と同様、高速道路関連の製品を取り扱う企業の展示も保守・管理業務関連が多かった。これは保守・管理業務にかかるコストが多大で、この部分を改善することによって、大きなメリットがあるからだろう。

 変わったところでは、主催者である高速道路調査会が展示していた「ハイウェイドライビングシミュレータ」が人気となっていた。これは、富士重工業(スバル)が開発した6軸対応のドライビングシミュレータをベースに、東北自動車道の浦和料金所~岩槻IC(インターチェンジ)間のデータを組み込んだもので、料金所通過や本線合流など高速道路の代表的な走行シーンをシミュレートし、走行後は運転結果も表示される。2010年3月完成を目標に現在開発中で、完成後は各種イベントなどで使用し、高速道路走行に対する理解を深めてもらうと言う。

高速道路調査会が展示していたハイウェイドライビングシミュレータ。3面マルチモニターで、高速道路運転を体験できる。運転後は安全運転ドライビングのスコアが表示される
ハイウェイドライビングシミュレータに含まれる走行シーン。スマートICの利用や天候の変化なども取り入れられている左のシミュレータは簡易版。右は一般道のシミュレータでエコ運転を学んでもらうためのものだと言う
開発・設計をアクトが、製造を技工社が、販売をニッポリースが行う路面描画装置「rue-Navi(ヒューナビ)」。道路標示のケガキ(下書き)作業を自動化するロボット。標示データをユニットに送り込み、後は自動でケガいてくれるユニットの裏面。2輪をステッピングモーターで制御し走行する。白い円盤状のものが路面にケガキ線を描画するディスクrue-Naviのコントローラー。パソコンからこのコントローラーにCADデータを送り込む
各種の標識を製造するセフテックのブース。展示されているほとんどの標識が電光式で、太陽電池を用いていたセフテックの「現場見えるゾウ」。Webカメラを用いた道路監視システム。センサーと接続することで、車両通過時の静止画像を送るなどできる。ドップラーレーダーと接続して逆走防止警告システムとしても使えるとのこと現場見えるゾウのコントロール部分。パナソニックのWebカメラをベースとしており、Webブラウザーと連携して各種のコントロールが可能
住友スリーエムの新型道路標識。「沼津」の部分が従来タイプで「三島」部分が新タイプ。従来タイプではガラズビーズを使っていたのに対し、新タイプではマイクロプリズムを用いており、高輝度反射と環境負荷低減を実現したと言う付箋紙「ポストイット」などで知られる住友スリーエムは、接着技術に優れたものを持っている。スコッチレーンは同社の接着技術を活かしたテープで、一時的な仮設レーン標示や、仮の路面補修に役立つ大成ロテックの「リラクスファルト」。これは、弾性に優れた道路用アスファルト舗装。経年変化による道路クラック(ひび割れ)の発生を抑えることができ、一部国道などで利用が始まっているとのこと
日本リーテックの「逆光対策標識」。すでに一部高速道路で採用されている標識で、標識の先に太陽があるような逆光時での見づらさを改良したもの。文字の部分に特定の割合で穴が開いており、そこを太陽光が透過することで標識を読み取れる。逆光の起きやすい東西に走る高速で導入が進んでいると言う
信号器財とキクテックの企業アライアンスであるスキット研究会ブースに展示されていたミストライン(右)。雨水などを浸透する高機能舗装用の白線塗装技術で、左の溶融型がアスファルトの目をふさいでしまうのに対し、吹き付けタイプとすることで浸透機能を保持する。水が白線上にたまることがないので、降雨時の視認性にも優れるミストラインと同様の技術を利用したミストグリップ。近年は混合交通に対するカラー舗装が要求されており、それに対応するとのこと。アスファルトの目をふさがないので、マット(つや消し)塗装となり、不要な反射を防いでいる

 ハイウェイテクノフェアは、高速道路に関連する製品や技術の展示が中心で、一般に購入できる製品展示は少ない。とはいえ、普段はなかなか間近で見ることができない高速道路関連製品を一堂に見られる貴重な機会だ。入場料も無料のため、道路技術に興味のある人は、ハイウェイテクノフェアを訪れてみるのもよいだろう。

(編集部:谷川 潔)
2009年 11月 6日