ベントレー、フラッグシップスポーツサルーン「ミュルザンヌ」国内発表
7月受注開始、デリバリー開始は2011年

2010年7月受注開始
2011年第1四半期デリバリー開始
3380万円



ベントレーモーターズ ジャパンのティム・マッキンレイ代表

 ベントレーモーターズ ジャパンは3月16日、フラッグシップスポーツサルーン「ミュルザンヌ」の発表会を都内で開催した。

 2009年8月に海外で発表され、1998年に発売されたアルナージ以来となるフラッグシップモデル。「ミュルザンヌ」はベントレーも活躍したル・マン24時間レースに登場するコーナーの名前であり、その名が表す通りのスポーティサルーンである。

 英国のクルー工場がデザインと設計を行い、同所でほとんど手作業で組立てられるというミュルザンヌは、1台の製造に500時間以上をかける。そのため生産量は自ずと限られ、日本での受注開始は7月に開始され、納車は最短で2011年の第1四半期となる。価格は3380万円。

 発表会でベントレーモーターズ ジャパンのティム・マッキンレイ代表は「クルー工場は60年にもわたり、世界で最良のクルマを数多く作り続けてきた工場と言われている。ミュルザンヌがこの伝統を守り続けていく」と述べた。

タイヤサイズは265/45 ZR20。オプションで265/40 ZR21を選べるドアハンドルのグリップの内側には「ナーリング」と呼ばれるローレットが刻まれるのがベントレーの伝統

 

ミュルザンヌのエンジンの性能曲線

再設計されたV8ユニット
 現在の同社のラインアップのもう1つの柱であるコンチネンタル系が、フォルクスワーゲングループの開発したW型12気筒エンジンを搭載するのに対し、ミュルザンヌはベントレーオリジナルの6.75リッターV型8気筒OHV 2バルブ ツインターボエンジンを搭載し、ZFの8速ATを介して後輪を駆動する。

 エンジンのスペックはアルナージと同じだが、パーツの99%が見直され、再設計された。その結果、クランクシャフトだけでも6kg、エンジン単体で23kg軽量化されたほか、低負荷時に4気筒を休止する「可変排気量」システムや、可変カム位相システム、ボッシュの最新エンジンマネージメントシステム「ME8-17」などを新たに採用することで、燃費や環境性能を改善。一方で最高出力は377kW(512PS)/4200rpm、最大トルクは1020Nm/1750rpmに引き上げられた。

 これにより、5575×1926×1521mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3266mmの大きなボディーに、最高速度296km/h、0-100km/h加速5.3秒という性能を与えた。

「6 3/4リッター」と表記される6.75リッターエンジン。組み立てた人のサインが入る

 

ベントレーモーターズ ヘッド・オブ・インテリアデザインのロビン・ペイジ氏

クラフトマンシップあっての内外装
 短いフロントオーバーハングとロングノーズ、太いDピラー、長いリアオーバーハングと短いリアデッキという英国車伝統のフォルムを持つ。リアよりフロントのドアが長いのはドライバーズカーであることを表すが、後席のフットスペースもアルナージより170mm伸ばされ、後席にも80mmの前後スライドとリクライニング機能が与えられている。

 フロントマスクのモチーフを1957年式S1コンチネンタルから得ており、ステンレス製のマトリックスグリルのすぐ外側に大型の丸型ヘッドランプを、さらにその外側に小型のアウトボードランプを配する。グリルから一段下がってまた盛り上がるアルミニウムのフェンダーもS1同様の造形で、ここには航空機の製造に使われるスーパーフォーミングによって成形される。

 サイドビューは、フロントからリアまで内側に窪んだキャラクターラインが通り、車体下部の同様のラインと共にボディーをスレンダーに見せる効果を得ている。

 リアはテールパイプ、テールランプに楕円形のモチーフが繰り返され、トランクリッドの形状は、トランクルーム内に収納したトランクの形をイメージしたもの。上面の造形はスポイラーの役目も果たす。トランクリッドは電波を通す複合材料で作られており、これにより外部にアンテナなどが突き出さないようにできた。

フロントマスクのモチーフは1957年のS1コンチネンタルウッドパネルが周囲を取り囲む「リング・オブ・ウッド」インテリア

 

ベントレーモーターズ ジャパン マーケティング・PR・アカデミーの横倉典氏

 インテリアは、ウッドパネルがウエストラインを取り囲む「リング・オブ・ウッド」デザインで、ベントレーモーターズのヘッド・オブ・インテリアデザインであるロビン・ペイジ氏はこれを「インテリアという絵を額縁のように取り囲むフレーム」と言う。

 このインテリアは、製造に170時間をかける。レザーには特別ななめし製法が使われ、細かいステッチは機械でなく人の手で縫われている。ベントレーモーターズ ジャパンのマーケティング・PR・アカデミーである横倉典氏によれば「昔の上質な革を再現するため、クラシック・ベントレーのオーナーや退職した革職人に徹底的な聞き取り調査を行い、触感、やわらかさ、シボのだしかた、香りまでこだわり抜いた」と言う。

 さらに、「細かい部分へのこだわりと精緻な作り込みは、一朝一夕ではなし得ないもの。何世代にも渡って受け継がれ、進化した熟練の業と、高い技術力を信じて行われる複雑なデザインワークは、1つ屋根の下でお互いを知り尽くしているからこそ実現できる造形美」と、ベントレーの伝統に裏付けられたクラフトマンシップの成果であることを強調した。

 ボディーカラーは標準で28色で、114色のパレットからツートーンカラーなどを作ることもできる。内装とカーペットは標準でそれぞれ24色、ウッドは9種類が選べる。だがマッキンレイ代表は、「本当のカスタマイゼーションとは、お客様の望むどのような色でも実現させること。そして我々はそれを実現できる」としている。

フロントドアを開けるとウッドパネルの分厚い側面が見える。「高級材料を使っていることを印象づける」(ペイジ氏)ための演出だ
センターコンソールから左右に広がるダッシュボードは、ベントレーのウイングロゴをイメージしたものステアリングホイールの裏にはシフトパドルが備わる
0が上に来るメーター「インバーテッドダイヤル」は、1960年代のベントレーからの引用センターコンソールの3つの計器は左から燃料計、時計、水温計シフトレバーの左下にあるのが「ドライブダイナミックコントロール」のダイヤル。ダンパーとステアリングフィールの設定を「コンフォート」「スポーツ」「カスタム」「ベントレー」から選べる
Bのマークがついたペダルのデザインは、1929年の「ベントレー 6 1/2リッター」のステップからの引用随所にステンレスの加飾が施されたインテリア
センターコンソール上部のカーナビ用ディスプレイカーナビディスプレイの下の「iPodドロアー」。iPodや携帯電話などを入れ、内部のコネクタに接続するグローブボックス内にはCDチェンジャーとSDカードスロット、SIMスロットがある
リアシートは前後に80mmスライドするリアのピクニックテーブルセンターコンソール後端の小物入れとシガーソケット
リアセンターアームレスト内にはシートポジションのコントロールとエアコンのスイッチがあるリアドアの内側トランクは電動開閉
会場に展示された「ベントレー 6 1/2リッター」(1929年)こちらは「S2コンチネンタル H・J・マリナー“フライング・スパー”」(1962年)ペイジ氏(左)とマッキンレイ代表

(編集部:田中真一郎)
2010年 3月 16日