グッドデザイン賞、大賞候補のベスト15に「リーフ」と「CR-Z」
1110件の「2010年度グッドデザイン賞」受賞結果を発表

グッドデザイン賞ベスト15に選ばれた企業・団体の担当者

2010年9月29日発表



 財団法人日本産業デザイン振興会は9月29日、1110件の「2010年度グッドデザイン賞」の受賞結果を発表した。あわせて11月に発表される「グッドデザイン大賞」の候補となる「グッドデザイン賞ベスト15」も発表、乗用車では日産「リーフ」とホンダ「CR-Z」が大賞候補となるベスト15に選ばれた。

 ベスト15には、レンズ交換式デジタルカメラのソニー「NEX」シリーズや、教育用ノートパソコンのデル「Latitude 2100」、エアマルチプライヤーのダイソン「AMO1」「AMO2」「AMO3」、エンターテインメントプロジェクトデザインとして「AKB48」なども選ばれた。

 「2010年度グッドデザイン賞」には各分野から3136件が審査対象となり、1110件が選ばれた。内訳は、グッドデザイン賞が1062件、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞が40件、グッドデザイン・フロンティアデザイン賞が8件。

 また、1110件の中から特別賞として上位15件の「ベスト15」のほかに、サステナブルデザイン賞が3件、ライフスケープデザイン賞が3件、中小企業庁長官賞が14件、日本商工会議所会頭賞が1件、審査委員長特別賞が1件選出された。

 なお、今回発表された「グッドデザイン賞ベスト15」を候補として選ばれる「2010年度グッドデザイン大賞」の選出は11月10日に行われ、その場で発表となる。候補となった15件うち、頂点となるのが「2010年度グッドデザイン大賞」、それ以外の14件が「グッドデザイン金賞」となる。当日はインターネットでのライブ中継なども行われる予定。

 さらに、10月8日から12月5日まで、東京都港区の東京ミッドタウンの「デザインハブ」では「GOOD DESIGN EXHIBITION 2010」としてグッドデザイン賞の受賞対象品やパネル等の80点が展示される。

審査委員長の深澤直人氏と、財団法人日本産業デザイン振興会理事長の飯塚和憲氏ベスト15を含む特別賞の各製品や施設、サービスの概要と評価コメントが発表された10月8日から12月5日まで、東京ミッドタウンの「デザインハブ」では受賞対象品やパネル等の80点が展示される予定

「リーフ」の受賞はEV単体ではなく包括的な取り組み
 ベスト15のうち「日産リーフ」が選ばれたが、受賞対象は「電気自動車 日産リーフの普及と、ゼロエミッション社会の推進のための包括的な取り組み」としており、自動車単体の受賞ではない。

 審査員からの評価は「ドライビングのためのインターフェースの完成度が高く、航続可能エリアや充電スポットが瞬時にチェックできるカーナビや、携帯端末からの空調・充電チェックなどのコントロールは、EVの不安を解消してくれる」とEVそのものについて評価されるとともに、「徹底した環境負荷現象から生まれた生産システムやリサイクルシステム、パーキングや充電システムなど、カーメーカーがEVを通してゼロエミッション社会を目指す取り組みを高く評価したい」とされた。

 発表会に来場した日産自動車のグローバルデザイン本部プロダクトデザイン部の井上真人プロダクトチーフデザイナーはリーフについて「化石燃料からエネルギーの大転換期を迎える中、年産10万台規模のEVとして計画、デザインの特徴は、世界中でみなさんに愛していだたく初のEVで、5人がゆったり乗れる。愛される形でなければない」と説明した。

 また、井上氏は「デザインして終わりとは思ってない。電気自動車に必要な環境やインフラがあってこその電気自動車。私たちは電気自動車のある生活や社会をデザインしたいと思っていた」と述べ、電気自動車のインフラを含めた包括的な取り組みを強調した。

リーフ受賞コメントを述べる日産自動車グローバルデザイン本部プロダクトデザイン部の井上プロダクトチーフデザイナー展示会場には実車が持ち込めず、パネルとビデオの展示となった

「CR-Zの登場は車離れに一石を投じるかもしれない」と審査員コメント
 一方、自動車単体でベスト15に選ばれた本田技研工業の「CR-Z」は審査員コメントで「車の基本である“走り”を高い次元で昇華したハイブリッドシステムのスポーツタイプ。電動アシストが持つ“走りのための特性”を思い知らされる」と評価された。

 外装デザインについても「徹底したエアロダイナミクスから生まれたルーフおよびフロントからサイド、クオーターパネルに流れるデザインは美しく、見事」と評され「走りから生まれたデザインが新しい概念の“エコスポーツ”を呼び起こし、車の魅力を再考するための試金石、車離れの時代といわれる今日、CR-Zの登場はそこに一石を投じることになるかもしれない」と賞賛された。

 本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン開発室の名倉隆主任研究員は「環境問題とかエコロジーが取りざたされ、モビリティに対する環境へのアプローチは、もはや当たり前」とCR-Z登場の背景を説明、「人の心に近い、人の心の奥のほうに入っていけるものを、モビリティの意味あいをもう一度問うという形で、アプローチしてきた」とデザインを振り返った。

CR-Z本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン開発室の名倉主任研究員CR-Zもパネルとビデオ展示となった

グッドデザインは有形から無形へ
 審査委員長の深澤直人氏は、ここまでの審査を統括し、「有形のものが、少なくなっていく」と話した。「重要なのは、インターフェースとかソフトとか、仕組みを作っていくこと」とし、審査の過程でもそういった点について、慎重に進めてきたことを明かした。

 深澤氏が言う有形から無形への流れを示す例としては、建築の分野では「住宅や都市のリノベーションのエントリーが増えている」とし、建物そのものではなく、住み方や環境を重視したものとして応募がされているとした。

 また、文化やサブカルチャーに賞が贈られることについては「デザインの領域で重要な位置を締めるという考え方がある」と説明した。

 審査にあたっては「一般のみなさんが“いい”と思えるものと、賞を与えられたものが同調すべき。こんなものに賞を与えられているんだというズレがないようにしてきた」と振り返り、「受賞された製品などが新たな情報となり、“こういうものがいいデザインなんだ”と伝わるようにしたい」と希望を述べた。

自動車関連ではパッソ/ブーン、マーチほか省燃費タイヤなど多数受賞
 グッドデザイン賞では、自動車関連でも多数の受賞が発表された。生活領域の中から「乗用車、乗用車関連商品」部門ではタントエクゼ、パッソ/ブーン、マーチ、ジューク、エルグランド、ステップワゴンといった自動車のほか、省燃費タイヤ、バッテリー、ドライブレコーダー、タイヤチェーンや自動車パーツなどが受賞している。

 そのほか、電動を含む2輪車や電動自転車等も多数受賞している。

生活領域─乗用車、乗用車関連商品の主な受賞(受賞番号順)

メーカー製品ジャンル製品名
ボッシュ株式会社バッテリーハイテックシルバーII
富士通テン株式会社車載用ドライブレコーダーイクリプス DREC100
株式会社カーメイトタイヤチェーンバイアスロン クイック イージー
横浜ゴム株式会社タイヤブルーアースAE01
株式会社ブリヂストン環境タイヤとその製品展開ECOPIAシリーズ
ダイハツ工業株式会社軽自動車タント エクゼ
ダイハツ工業株式会社乗用車ブーン
トヨタ自動車株式会社乗用車トヨタ パッソ
トヨタ自動車株式会社乗用車トヨタ エティオス コンセプト
日産自動車株式会社乗用車マーチ
日産自動車株式会社乗用車ジューク
日産自動車株式会社乗用車エルグランド
本田技研工業株式会社乗用車ステップワゴン/ステップワゴン スパーダ
株式会社コイズミ カルコア事業部トランスフォームカーゴかるキャン

(正田拓也)
2010年 9月 29日