志賀自工会会長、「『環境自動車税』はとうてい認められない」
11月度定例会長記者会見

志賀俊之自工会会長

2010年11月18日開催



 自工会(日本自動車工業会)は11月18日、11月度の定例会長記者会見を開き、志賀俊之会長は平成23年度の税制改正要望の紹介と、EPA(経済連携協定)/FTA(自由貿易協定)についての自工会の見方を説明した。

平成23年度税制改正要望に関する重点項目
 自動車ユーザーは現在、「取得」「保有」「走行」の各段階で9種類の税金(合計8兆円)が課せられており、特に「取得」「保有」にかかわる車体課税の負担が大きいため、これを簡素化・軽減することを「自動車業界は長年要望している」と志賀会長は言う。

 自動車取得税・自動車重量税については、一般財源化によって課税根拠を喪失していることから、「直ちに廃止すべき」との見方を示した。

 一方、車両重量に応じて課税する自動車重量税と、排気量に応じた税額の自動車税を一本化し、CO2排出量と排気量を課税基準とする「環境自動車税(仮称)」(総務省案)については、本来廃止されるべき自動車重量税の存続を前提とするため、「制度論以前の問題としてとうてい認められるものでない」と述べる。また、軽自動車は小型自動車との税負担の格差を縮小するよう税負担の引上げを行うとしているが、軽自動車の税負担は現在国際的なレベルにあるとし、「軽自動車の税負担を引き上げるのではなく、小型自動車を引き下げるべき」との見解を述べた。

 地球温暖化対策税の導入検討にあたっては、導入の目的や効果のほか、産業や家計に与える影響などを明らかにし、国民的議論を踏まえたうえで決めるべきであり、「自動車ユーザーに過度な負担を負わせている既存の自動車関係諸税の簡素化・軽減化が先決」とした。こうした議論が行われないまま導入されることは、断固反対の立場をとると説明した。

平成23年度の税制改正要望環境自動車税(仮称)の創設には断固反対地球温暖化対策のための新たな課税はすべきでない

EPA/FTAについて
 日本の自動車メーカーは、2008年におきた「リーマンショック」まで、全世界で約2000万台/年の自動車を生産していた。そのうち約1000万台/年を国内で生産し、半分は200カ国以上に向けて輸出していたと言う。自動車産業もグローバル化を進められており、海外生産を拡大する一方で、「リーマンショックまでは一定の規模の生産を国内でも続けてきた」(志賀会長)と述べる。しかし円高や高い法人税、高いCO2排出量削減目標、厳しい労働法制、EPA/FTAの遅れなどにより、「国内での物づくりを継続するのは大変厳しい状態にある」と言う。

 自動車業界にとって、自由貿易の推進と公正なビジネス環境の整備は重要であり、とりわけEPA推進への支援は自工会にとっても最重要課題の1つに挙げられる。

 主要な自動車メーカーを抱える国では、積極的にFTAの推進を行っており、EPA/FTA交渉相手国の自動車市場規模を韓国と日本で比較してみると、韓国は世界で4100万台の車両が関税の恩恵を受けることができるが、日本は810万台にとどまると言う。

 韓国車は2008年の世界同時不況以降、低価格を武器に各地域での市場シェアを伸ばしており、このままFTAによって韓国車のみ関税が撤廃されれば、韓国車の競争力はさらに高くなると志賀会長は予測する。

 2007年を基準に2010年1-6月期の実績比較を行ったところ、欧州、アジア、中近東、大洋州、北米、南米とすべての地域で韓国車はシェアを増加したのに対し、日本車は北米市場以外のすべての地域でシェアを減少させている。

 そのため、国内での生産維持、雇用確保の観点からも「世界市場で公平な競争条件が確保され、韓国をはじめとする他国との競争に劣後しない内容で、我が国のEPAを一層推進していただきたい」「特にEU、米国、中国など主要各国とのEPA交渉を進めてもらいたい」と、政府に対する要望を述べた。

日本の経済・雇用を支える自動車産業韓国は世界で4100万台の車両が関税の恩恵を受けることができるが、日本は810万台
韓国車は各市場でシェアを増加させている。日本車は北米市場では増加しているものの、その他の市場では減少傾向にある政府への要望

(編集部:小林 隆)
2010年 11月 18日