自工会ら、京都議定書延長と排出権取引導入に反対
温暖化対策には技術で貢献、技術による削減の評価を要望

2010年11月24日



 日本自動車工業会(自工会)はじめ産業9団体は11月24日、「COP16等に向けた産業界の提言」と題した共同提言を発表、都内で記者会見を開催した。

 政府の環境政策に対して産業界の姿勢を表明したもの。自工会のほか、石油連盟、セメント協会、電気事業連合会、電子情報技術産業協会、日本化学工業協会、日本ガス協会、日本製紙連合会、日本鉄鋼連盟が参加している。

 9団体は5月にも地球温暖化対策基本法案への反対を表明しており、これに続くもの。今回は、11月29日(現地時間)からメキシコで開催されるCOP16(気候変動枠組条約第16回締約国会議)において、2012年に期限切れを迎える京都議定書の延長が取り沙汰されていることから、これへの反対が盛り込まれた。

 提言は京都議定書でのCO2削減義務を負う国が、「地球全体のCO2排出量のわずか3割弱しかカバーしておらず、主要排出国である米国・中国・インドが対象となっていないきわめて不公平かつ実効性の乏しい枠組」と批判。日本の産業への悪影響に加え、中国、インドといった日本よりエネルギー効率の劣る国の生産増により、全体でのCO2排出量増加を招くとし、延長を受け入れないよう要望している。

 また、国会に再提出された地球温暖化対策基本法案には引き続き、25%削減目標と、3つの基本的施策(排出量取引制度、地球温暖化対策税、再生可能エネルギーの全量買取)についての議論を求めている。

自工会は排出権取引を批判
 この中で自工会は「国内排出量取引制度導入に関する論点」と題した資料を配付して、同取引制度への反対を表明した。

 資料において自工会は、低燃費車の積極導入やユーザーの自動車利用方法の改善、政府による交通流円滑化などで、1997年に2億6500万tあったCO2排出量が、2007年には2億4500万tになったように、減少基調にあること、削減のために業界平均で1tあたり年間6万~26万円の投資をしていることなどをアピール。

 排出量取引制度が導入されれば、制限のない国への生産シフトなどが起こり、世界的な排出量削減にはつながらず、国際競争力を損なうこと、例えばハイブリッド車は従来のクルマよりも製造時のCO2排出量が多いが、ライフサイクル全体では排出量が少なく、こうしたケースで取引制度が企業や消費者に不適切な負担を負わせる可能性があること、排出権取引にはマネーゲーム化などのさまざまな弊害が指摘されていることなどを、反対理由として挙げている。

 会見に出席した自工会の名尾良泰副会長・専務理事は「排出量取引制度はいろいろな弊害が指摘されている。制度設計は、95%が設計できればいいわけではない。弊害は残り5%から出てくる。もう1度議論すべき」と述べた。

技術で削減に貢献するのが日本の姿勢
 提言では、温暖化対策における日本の産業の役割を「技術力をてこに地球規模での温暖化防止に貢献すること」としている。

 温暖化問題には技術を持って対応するしかないというのが産業界の主張。最先端の技術を導入し世界最高の効率を確保し、それを世界に展開することで、温暖化に技術面で貢献するという姿勢を明らかにした。

 そのためには、技術による貢献を国際的に評価できるような仕組みが必要であり、そうした仕組みの成立を要望するとともに、排出権取引のような制度・枠組が技術開発を妨げる危惧を表明した。

(編集部:田中真一郎)
2010年 11月 24日