日産、GT-Rの認定中古車説明会&試乗会【後編】
「中古車だから出せる性能がある」と水野氏

カーミナル東京で行われたトークショー。左がGT-R開発ドライバーの鈴木利男氏、右が開発責任者の水野和敏氏

2011年1月16日開催



 1月16日に日産ユーズドカーセンターが運営する「カーミナル東京」(東京都武蔵村山市榎)において行われた、NISSAN GT-R認定中古車に関する説明会&試乗会。

 前編ではGT-R認定中古車の認定プロセスと、認定中古車用(07年~09年モデル用)に用意された「アドバンスキット」装着車についての試乗記をお届けしたが、後編では、GT-Rの開発責任者であるチーフ・ビークル・エンジニア兼チーフ・プロダクト・スペシャリストの水野和敏氏と、GT-Rの開発ドライバーを担当し、GT-Rのカスタマイズを得意とするチューニングショップ「ノルドリンク」代表の鈴木利男氏によるトークショーの模様を紹介する。

 このトークショーは、日産のスタッフが司会を行う形で2度開催。基本的に同一内容のものとなるため、初回の内容を取り上げる。

GT-Rの開発責任者の水野和敏氏

認定基準の改定について
 司会から認定中古車の認定基準を「初年度登録から3年以内・走行距離2万km以内」から「初年度登録から5年以内・走行距離10万km以内」に改訂したことについて質問された水野氏は、「普通、クルマで5年・10万kmというとクルマが終わってんじゃねーかと思われるかもしれないが、GT-Rの開発テストでは、(クルマが)持つ持たないではなくて、中古車の価格をどう保証するかという観点でテストを行っている」とGT-Rの開発ポリシーについて話を始めた。

 「例えば、ニュルブルクリンクサーキットで5000km、7分50秒台で走る。その後、同じクルマでフーガなどが行っている耐久テストを(日産の)栃木のテスコースで行う。その後、ラフロード耐久テストをテストベンチ上で行う。なおかつそのテストが終わったクルマをサーキットに持っていって、走行安定性ラップタイムを計る。その上で、このクルマ(GT-R)はOKと言っている。普通のクルマと比べたらGT-Rの耐久性は3倍~4倍ある。GT-Rにとっての10万kmは、フツーのクルマの3万km~4万kmにしかならない。だから5年、10万kmの認定にした」と水野氏は語り、ニュルブルクリンクサーキットでのテストデータを投影した。


テスト時のデータを表示し、解説を行う水野氏1.19Gという数字が記録されている

 このテストデータはGT-Rに取り付けられたさまざまなセンサーからの情報を、時系列に表示するもの。右上のサーキットのコース図には自車位置が表示され、どの位置でどのようなことが起きたか分かるようになっている。

 およそ200項目のデータが同時に収集可能で、速度や加速度、ブレーキの液圧などのデータを表示し、解説を行った。

 「このデータは、09年モデルを使い、7分26秒台で走った際のデータで、このカーブを曲がっているときは2G、ブレーキの際はピークGで1.2G~1.3G」とその数字を水野氏は読み上げる。「通常のスカイラインやフェアレディZをサーキットに持っていって、ベストな状態では1Gくらい。ブレーキGも、Zだと0.98Gくらいになる」と言い、サーキットにおいて常用で1.2Gの負荷をかけているGT-Rは、それだけ“持ちがいいよ”と語る。

 「ニュルブルクリンクで、5000kmテストするというのは、街を走る車で見たら、GT-Rでは20万km~30万km走った状態に相当する。ニュルだけでもそうなんです。さらに(仙台ハイランドの)サーキット走行や耐久テストもやっているので、Zクラスで言うと30万km以上の耐久実力を持っている」と言い、「5年・10万kmはゴミみたいな世界」とGT-Rの耐久性には、膨大なテストの裏付けがあると述べた。

GT-Rの開発ドライバーを務める鈴木利男氏

 とくにニュルブルクリンクは、アップダウンがあるなど厳しいコースとして知られている。鈴木氏は「ニュルでGT-Rの開発が始まる前に、R34のスカイライン GT-RとフェアレディZを持っていって走ったことがあったが、限界域で走らせると1周持たない。ブレーキもそうだし、トランスミッションもそう。最初GT-Rも1周走るのが大変だったくらい。それが開発が進むにつれてクルマがよくなって、5周連続で走るようになって、さらに耐久テストで3000kmとか走るようになって、全然なんともなくなった」と語り、開発による進化を続けてきた結果、GT-Rは高い耐久性を獲得したクルマであると言う。

 水野氏は、「ニュルで3000km~5000km走ってテストしていますと何気なく言っているけど、ここを今のZやR34のGT-Rで鈴木利男クラスのドライバーが走ると、1周持たない。タイヤはズルズルに減ってしまい、ブレーキはブカブカになる、ショックアブソーバーが熱を持ってふにゃふにゃになる」「Zやスカイラインをけなしているのではなくて、Zやスカイラインだって、フツーのクルマの耐久信頼性を持っています。(それと比べ)GT-Rは3倍から4倍の耐久性を持っています。だから、5年・10万kmなんて屁みたいな世界ですよということなんです」と、GT-Rはレベルが違うクルマであることを強烈に印象づけた。


GT-Rはレーシングカーを超える
 そのレベルの違いを、ブレーキローターの温度を使って解説。「フロントブレーキのローター温度は、普通に使っていても800度になり、ピークでは900度になる」「普通のクルマは600度になると、(ブレーキが)ブカブカになって効かなくなる。それを我々は(ニュルブルクリンクを)何回もぐるぐる回ってテストしている」(水野氏)とし、レーシングカーとの比較を行った。

 水野氏は、かつて日産のグループCカーの開発に携わっていたことで知られている。その上でブレーキローターの温度について、「レーシングカーはというと富士スピードウェイでは750度くらいを限界で使っている。(GT-Rは)常用で900度でテストを繰り返す。だから、信頼性がありますよ」と、ブレーキローターの図をホワイトボードに描きつつ、またデータを示しつつ語り、GT-Rはレーシングカーを超える能力を持っている部分があると言う。

ホワイトボードを使って、ローター温度の解説。GT-Rはレーシングカーを超える領域でのテストを行っているテスト時のデータ。フロント右ローターで、907度が計測されている

 ここでいきなり話はGT-Rのメンテナンス費関連の話へ。前編で認定プロセスの際に使われていたGT-Rは、水野氏が普段街乗りに使っているもので、現時点の走行距離は2万3000km。「よくGT-Rのタイヤは減ると言われるけど、サーキットに持っていって、あの速さで走るから減るんです。街を普通に走ったら、タイヤの摩耗なんて2mmくらいだし、ブレーキなんか1.5mmくらいしか減らしていない」(水野氏)と、普段街乗りに使っているGT-Rの消耗状態を紹介。

 鈴木氏も「街中では摩耗はほとんど見られないし、サーキットではタイヤの角は減るけど、(街中での)2万kmはなんてことないです。うちの(ノルドリンクの)お客さんでは、初回の車検まで変えた人はいない」と言い、水野氏は「こういう信頼性のあるクルマは乗り方なんです」と、話はGT-Rのメンテナンス費についての話題に移っていった。

意外と安い? GT-Rのメンテナンス費
 その空気を読んだ司会者が「中古車を購入する人は、ランニングコストを気にする人も多いと思うのが」と話を振ると、「エンジンオイルは、(走行中の油温が110度を超えなかったとき)1万5000kmでいいんですと言っています。自分はテストのために2万km変えていないが、なんの問題もない」(水野氏)、「使い方だと思うんですよね。サーキットなどを走る人は7000kmで交換したほうがよいと思うんですけど、普通に使っている限りは指定の交換時期でよいと思います」(鈴木氏)と、トークショーはエンジンオイルの話に。

 「大事なことは、レーシングオイルとか高性能オイルとかあるけど、添加剤がいっぱい入っており、添加剤の影響でオイルの寿命が来てしまう(短くなる)。高いからよいオイルではなく、基板のしっかりしたオイルが本当にいいオイルなんです」「合成オイルを、自社で作っているメーカーは、2年前の情報で世界中で4社しかない。4社が作って、そのオイルをさまざまなメーカーが購入し、いろいろな添加剤を入れて、オイル缶の名前を変えて売っているのが現実なんです」(水野氏)と、エンジンオイルは添加剤に頼らずベースオイルの優れているものが大切であると言う。

ホワイトボードでオイルの解説。水野氏は、経験上モービル1がよいと言う。GT-Rでは、0W-40が指定オイルとなっている

 「その基板が一番よいオイルはというと、僕はモービル1を選んでいる。これは自分がグループCカーでレースをしていたときの経験」「そういう経験の中から、油の基板のしっかりしたオイルを選ぶ。だからモービル1の0W-40を選んだんです。伊達や酔狂で選んでいるのではなく、20何年のレース時代の経験から来ている」「だから、日常からサーキットまで使ってくださいと言っている。日常使用であれば、500馬力クラスのエンジンで、1万5000km使っていいですよと言っているんです」(水野氏)。

 水野氏は、R34のGT-Rでは、オイルの交換指定時期が5000km、ほとんどの高性能車の交換指定時期が5000km~1万kmだと言い、それと比べるとGT-Rのエンジンオイル交換時期は、マーチやキューブと同じ1万5000km、ミッションオイル交換時期は6万kmであるため、メンテナンス費はそんなにかからないと語った。


GT-Rの資産価値とは?
 オイルに関する話題が一段落したところで、司会者は「海外でもGT-Rの資産的な価値が上がっていますけど」と質問を切り出すと、水野氏は「上がっているのではなく、上げているのです」と答え、自身の描くGT-Rのライフサイクルについて語り始めた。

GT-Rの中古車価格。欧州車と比較しても高い水準を維持している

 「中古車で大事なのは残価率。これは、新車価格からどのくらい安くなっているかということ。他社のクルマだと問題があるので、日産車を例に挙げると、例えばスカイラインを450万円で買いました。3年乗りました。150万でした。値落ちは300万円です。GT-Rでは、800万で買いました。3年たって500万円で下取ってもらいました。GT-Rもスカイラインも買い換える際の追い金は同じなんですね」「ベンツやポルシェやBMWなどの欧州車の残価率は高い。ただ、バブル以降の販売の影響があって、現在は80%を割っている。国産車ではこれまで80%というクルマはなかった。欧州の一流ブランドと同等、3年たつと欧州車を超える残価率を持っている」とスライドを見せ、GT-Rは資産価値の高いクルマであると言う。

 ただ、GT-Rは人気が高く、市場に出回る中古車が少ないそうで、カーミナル東京のスタッフもGT-Rの中古車を手に入れるのに苦労していると言う。その背景としては、人気が高いクルマだけに個人間売買が活発なことであると分析する。

 水野氏は「普通のクルマは6年で残価がなくなる。国産車でいいものを長く使っていくという歴史を作ることを考えてほしいよね」と語り、GT-Rの認定中古車向けに設定されたアドバンスドキット開発の背景を明かした。


中古車にしか出せない性能を実現するアドバンスドキット
 水野氏は「中古車だから出せる性能がある」と話を始めた。「R33やR34に乗っていたお客さんに聞くと、(R33やR34は)前にあるエンジンが重いこともあってハンドルを切った瞬間スッと曲がると言う」「GT-Rは、ヨーロッパに行くと、300km/hとかで走っている」と、以前のGT-Rと、現在のGT-Rの主なマーケットの違いを挙げる。

 「日本のお客さんが、箱根や赤城山にいって、スパンスパンと曲がりたいという要望があると思うんです。そういうお客さんのために、アドバンスキットを作ってみた」(水野氏)と言い、以前のGT-Rに乗っていたユーザーや、日本の道路事情にあわせて設定したもので、「自分の趣味で作った」と語る。

 07年~09年モデルのGT-R認定中古車購入時に取り付け可能なアドバンスドキットは、主にサスペンションまわりなど8種類のパーツから構成される。「これは安いです。組み込み工賃込みで約50万円。普通に部品を買ったら80万を超える」(水野氏)と、価格の安さについて触れた後、セッティングの方向性について語った。

 水野氏によるとGT-Rの07年モデル、08年モデルでは、リアまわりのセッティングがフロントまわりに比べ、相対的に固くなっていると言う。マジックをクルマに見立てクルマの動きを再現しつつ、「07年モデルとか08年モデルは、前が柔らかく、後ろが固め。なので、後ろの固さのよさを維持しつつ前を持ち上げると(固めにすると)フラットになる」「だから、(アドバンスキットで実現する)前に10年仕様、後ろに07年・08年仕様というのが、フロントの回頭性を上げる秘訣なんです。10年モデルとか、11年モデルでやってもこの味は出せないんです」と語り、「新車にはできない味を出している。こういうものがあってもいいと思います」と、セッティングの方向性を語った。

アドバンスキットの内容マジックを使って、GT-Rの動きを再現。中古車にしか出せない味があると言う

 また、このアドバンスキットには英国サッチャム基準準拠のアラームシステムも含まれているが、これについて「中古車を買う人は外に置く人が多いと思うのですが、サッチャム仕様の防犯装置をセットにしている。クルマの防盗性ではサッチャムがスタンダード。(GT-Rは)バッテリーとは別にバッテリーを持っている、クルマの角度を計測してのセンサー、人の侵入センサーがある」「新車のGT-Rでは約26万円のラインオプションになっている」と言い、39万9000円のアドバンスキットはお買い得だと述べた上で、「今後、10年モデル、11年モデルの中古車が増えてきたときは、別のアドバンスキットが必要になるだろう」との見解を示した。

GT-Rの高性能は安心して使えるタイヤがあるため
 GT-Rは発売された当初、タイヤに代表される消耗品の価格設定が高いと書いた雑誌があったが、水野氏はこれに非常に不満を持っているようで、「07年に出したときに、パーツ交換はユーザーの自由だろ、なんでGT-Rはタイヤだとかブレーキとかを指定部品として縛るんだ。これは値段をつり上げるための方策か? クルマ本体を安くして、部品を高くして日産がもうけるためなんだろとさんざん書いてくれたよな」と切り出し、GT-Rがタイヤなどを指定部品にしている理由を語り始めた。

 「200km/h以上で走ったときに怖いのは、タイヤがバーストしてしまうこと。例えばレースを見ていたって、150km/h以上でバーストしたらガードレールにへばりつくよね。僕がGT-Rは300km/h以上で会話ができますと言ったら、それを検証した雑誌もある」「僕はバーストというのを徹底的にマークしている。300km/hでバーストして、タイヤに穴があいても安心してスローダウンしてディーラーまで行けるというのを1つの目標にしている」「でもそんなタイヤは世の中に存在していないんです。パンクしても大丈夫だと言うランフラットタイヤは、80km/hまでしか保証してませんから。300km/hでバーストしても大丈夫というタイヤは(が存在することを)誰も信じないのです」と、GT-Rのテストで使用したスライドを掲示した。

 空気圧がゼロになっても走行できるランフラットタイヤは、パンク後80km/hで80km走行できることをISOによって定められているが、GT-Rのタイヤはそれをはるかに超える状況でのテストを行っている。水野氏はテスト中に270km/hでバーストしたタイヤのスライドを見せ、ニュルブルクリンクのコース内でバーストした後、ガレージに帰ることができたと言う。

 発売当初GT-Rの標準装着タイヤには複数メーカーのものがあったが、現在はダンロップの1社のみ。1台分の補修部品として「SP SPORT 600 DSST」が35万7000円で用意されている。

あえてアライメントを変更し、バーストさせたタイヤ。この状態でコースからガレージまで走行できたとのこと

 「タイヤはタイヤメーカー、クルマはクルマメーカーというのは、僕は卑怯だと思う。ダンロップさんは、タイヤを1セット約35万円で売っているけど、僕はもうけがないと思いますよ。なぜなら、今のタイヤを1本作るのに、4000種類くらい作ってますから。F1の2倍から3倍テストしてますから。構造とかコンパウンドとかパターンとか変えて」「将来クルマが進化するのならそれでいいじゃない。ダンロップさんは泣きの涙で付いてきてくれます。僕は人の命は、エコロジーのもっと先にあるものだと思っているし、クルマってなんなのっていうのをベースの所からきちんとやっていかなければダメだと思っている」(水野氏)と言い、タイヤとクルマを一体になって開発しているからこそGT-Rというパッケージが成り立ち、そのパッケージを支えるタイヤの開発費が膨大なものであることを示唆した。

 GT-Rの開発を安心して行えるのは、このタイヤがあるからと言い、「ご存じのようにニュルブルクリンクは、年間40人死んでいるんです。僕らはテストに行って、救急車やヘリが飛んでいるのを腐るほど見ているんです。その中で世界一速いタイムで、ずっとテストを続けられるというのも、こういう基盤があるからできるんです。もし、パンクしたらそれはタイヤメーカーのせいだよと言ったら、乗ってらんないでしょ?」(水野氏)と、話を開発ドライバーの鈴木氏に。

 鈴木氏は、「開発ドライバーから言わしてもらうと、1台のクルマは1つ1つの部品の集合体。それが全部集まって1台のクルマなんです。ですからクルマの性能にあった、タイヤ、ボディー、サスペンション、すべてのバランスが全部それなりの必要性があるんです。タイヤもランフラットが絶対必要だと思います。GT-Rって、サーキット行けば(リミッターが解除され)200km/h、250km/hが誰でも出せちゃうクルマですから」と、タイヤの大切さについて語った。

 水野氏は、「開発当初は300km/hでバーストしてディーラーまで行けるタイヤはウソだと思われた」と言い、そのウソを本気で実現しようと思ったからこそ、自動車は進化するのだと強く語った。


車両保証継続マーク(サンプル画像)

GT-R特別指定部品について
 サーキットのスポーツ走行など、高い速度域での使用が想定されているGT-Rでは、基本的に純正部品の使用が推奨されている。純正部品以外に取り替えた部分では、車両保証がなくなるが、日産が指定する「GT-R特別指定部品」であれば、車両保証が継続する。

 この特別指定部品については、車両保証継続マークが付けられており、水野氏はこのマークを「丸適マーク」と表現し、その設定の基準などについて語り始めた。

 「タイヤにしてもブレーキにしても、今までのエンジニアが知らない領域でスタンダードが作られている。それでもアフターパーツを付けたいという。じゃあ僕らはどうするかってんで、NISMOさんだとか(鈴木)利男さんのノルドリンクさんだとか、ノバさんとか日本でも超一流の所に頼んでアフターパーツの開発をしてもらっています。もちろんそれ以外のアフターパーツメーカーさんも申告があればテストします。厳しいテストをしてちゃんと車両の保証を継続できるよとなれば丸適マークをつけます」「丸適マークは、僕らがニュルに行ったり、仙台ハイランドに行ったりして、効果を確認して(パーツに)付けています。効果のないパーツには付けられないし、強度であったり信頼性についてもテストしていますから、その上で付けています」(水野氏)と、サーキットテストなどで効果のある、そして取り付けても問題ないとしたパーツについて発行していると言う。

 その代表として、鈴木氏のノルドリンクがGT-R向けに発売しているマグネシウムホイールを挙げ、「たとえば、利男さんのところで売っているマグネシウムホイール。これは非常によいものですが、(マグネシウムという金属の特性上)1年に1回点検を受けなければならないので、日産というメーカーではできない。マグネシウムは(アルミに比べ)減衰性があるので、乗り心地がよくなるし、高速道路などではハンドルの追従性が高まるし、日産の開発ドライバーもみんな欲しいと言っている」と絶賛。

ノルドリンクによりカスタマイズされたGT-R水野氏もその性能を絶賛するノルドリンクの鍛造マグネシウムホイール

 この車両保証継続マークの付いたパーツは、それほど数多く出ていないが、きちんとテストを行ったパーツだけに、ユーザーにとって安心して使えるものだと言える。

 およそ1時間ほどでトークショーは終了。水野氏や鈴木氏にサインをもらう来場者も見かけられた。

 水野氏の独演会の様相を呈していたこのトークショーだが、「GT-Rの購入者の資産価値を守りたい」、「安心してGT-Rを使ってもらいたい」という水野氏の意図が強く伝わってくるものであった。そのために、数値的に裏付けのある認定中古車制度を設け、アドバンスキットを設定し、といった取り組みを行うことで、購入者の満足度を引き上げ、GT-Rのエコシステムの構築を目指しているのだろう。

 カーミナル東京の中古車展示場に並ぶGT-Rの認定中古車の価格帯は、600万円台~700万円台が中心となっていた。これを高いと思うか、安いと思うかは、購入者がクルマに何を望むのかによる。ただ、1つ言えるのは、GT-Rの購入者の資産価値を最大限引き上げようと考える開発者が、日産には存在することだ。

カーミナル東京に置かれた認定中古車の前で記念撮影。中央はカーミナル東京の戸嶋店長認定中古車には、この認定中古車証が付帯する

(編集部:谷川 潔)
2011年 1月 21日