NEXCO東日本の「雪道体験ドライブレッスン」に参加してみた
スタッドレスタイヤ車とサマータイヤ車を乗り比べ

佐久スキーガーデン「パラダ」の特設会場で開催れた「雪道体験ドライブレッスン」

2011年1月29日、30日開催



NEXCO東日本 関東支社佐久管理事務所 谷川敏治所長。今年は多くのお客さんが、朝から訪れていると言う

 NEXCO東日本(東日本高速道路)が、1月29日、30日に佐久スキーガーデン「パラダ」で開催した「雪道体験ドライブレッスン」。パラダの駐車場に特設コースを設置し、スタッドレスタイヤ装着車とサマータイヤ装着車の乗り比べができる無料イベントで、一昨年、昨年に続いての開催となった。

 今年は、各地で大雪となっているが、上信越自動車道 佐久平PA(パーキングエリア)と直結するパラダは高い晴天率を誇るスキー場で、参加した1月29日も青空が広がっていた。NEXCO東日本 関東支社佐久管理事務所の谷川敏治所長によると、気温が低い日が続いたため特設コースの状態はとてもよく、「昨年の雪面よりも違いが分かりやすいですよ」とのこと。また、このイベントが定着してきたせいか「イベント開始前からお待ちになっている方もおり、朝から参加者が途切れない」と言う。取材に訪れたのは、昼前だったが、多くの人が試乗待ちの列を作っていた。


佐久スキーガーデン「パラダ」は、多くのファミリー客でにぎわっていたコースの混雑度はそれほどでもなく、快適な滑走を行えていたようだ
コース脇の通路を上って、雪道体験ドライブレッスンの会場へと向かっていく

 インストラクターは、勝田範彦選手(2010年全日本ラリー選手権シリーズチャンピオン)と村田信博選手(2010年スーパー耐久シリーズ ST-2クラス2位)の2人。勝田選手は2009年シーズンの2位からチャンピオンに返り咲き、村田選手は2009年シーズンのST-2チャンピオンから惜しくも2位となるなど、両名とも日本でもトップクラスのレーサー。この豪華なインストラクターが、雪道での走りをアドバイスしてくれる。

 ドライブレッスンは、座学から始まる。村田選手の所属するエンドレスのスタッフから雪道に関する注意点などの講義を受け、試乗待ちの列へ。試乗待ちの列に到着すると、勝田選手もしくは村田選手のいずれかによる、同乗走行でのコース説明が行われる。その後、スタッドレスタイヤ装着車もしくはサマータイヤ装着車を1回ずつドライブでき、その違いを体感するというプログラムになっていた。

インストラクターは、勝田範彦選手(左)と村田信博選手。2人とも現役のレーサー。戦績もトップクラスレッスンは、雪道ドライブの注意点についての講義から始まる講義を聞き終えた参加者は、次々に試乗体験を行っていた

手軽に体験できる雪道運転の難しさ
 今年の試乗車両は、スタッドレスタイヤ装着車、サマータイヤ装着車ともに日産の「ノート」。駆動方式は前輪駆動をベースに後輪を一時的にモーターで駆動させる電動式4WDだが、より違いを体感できるよう2WD(FF)モードでの試乗となっていた。

スタッドレス装着車のノート。スタッドレスタイヤはブリヂストンのST30だった
サマータイヤ装着車も同じくノート、いずれも2WDモードでレッスンを行う。サマータイヤは、ブリヂストンのB391

 コースは、急発進、スラローム、右ヘアピン、急停止の順に体感できるレイアウトで、気温が低いためか急発進区間の路面はアイスバーン状態。サマータイヤはもちろんのこと、スタッドレスタイヤでも全開にしてしまうとなかなかクルマが前に進まない。しかし、サマータイヤよりもスタッドレスタイヤのほうがグリップの回復が早いことを体感できる。

 スラロームでは、いずれのタイヤでもコース上に立てられたパイロンを倒さないよう10km/h程度で慎重に運転。この車速であればサマータイヤでもグリップしながら走ってくれるものの、しっかりグリップしていることが分かるスタッドレスタイヤのほうが当然安定している。

 そして、スタッドレスタイヤの恩恵を体感できるのが、右ヘアピンと急停止。右ヘアピンは、少し加速しながらクリアしていく必要があり、サマータイヤでアクセルを踏みながら進入すると、あっという間にグリップ力を失い、ステアリングを右に切ってもそのまままっすぐ雪で固められた壁の方に進んでいく。慌ててアクセルを戻してブレーキを踏んでなんとか止まることができたものの、スタッドレスタイヤは苦もなく右ヘアピンをクリアできる。

 その後の、急停止では20km/h程度からのフルブレーキングをそれぞれのタイヤで試しす、体感的にスタッドレスタイヤはサマータイヤの1/2くらいの距離で止まることができた。いずれもフルブレーキングするとタイヤが滑りながらABSが効くが、より路面を噛みながら止まろうとする力を感じられるのはスタッドレスタイヤだった。

コース説明のインストラクターは勝田選手だった前方に見えるのがスラローム区間。10km/h程度で抜けていくこちらは最終区間のフルブレーキエリア。前方に見えるパイロンを過ぎたら思い切りブレーキを踏む
手前がスタッドレスタイヤ装着車、奥がサマータイヤ装着車。参加者が多いので、空いているクルマに乗り込む形でレッスンは進むサマータイヤでの急発進。タイヤがつるつる滑ってなかなか前へ進まないスタッドレスタイヤでの急発進。路面がアイスバーン状態のため滑るものの、高いグリップ感がある。雪の巻き上げがサマータイヤとは異なる
スタッドレスタイヤ装着車でのスラローム区間。雪を確実に捉えているため、運転がしやすい
レッスンの際のインストラクターは村田選手。要所要所で、雪道運転のポイントを教えてくれるレッスンの際に同乗するクルマを打ち合わせる両氏。朝から昼過ぎまで休みなしにレッスンを行っていた

 普段、雪国で生活をしていない人にとって、雪の上でサマータイヤとスタッドレスタイヤの比較ができるのは貴重な体験。ドライビングレッスン前に行われたレクチャーで、雪道でしてはならないこととして「急ハンドル」「急ブレーキ」「急アクセル」を挙げていたが、こうした危険を実際に体感できる実に有意義なレッスンとなっている。

 派手なドリフト走行を行うレッスンではないが、手軽に参加でき、一流ドライバーからのアドバイスを得られる貴重なイベントと言えるだろう。

今年はチェーン装着体験を実施
 今年新たなプログラムとして取り入れられていたのが、金属製チェーンと、ゴム製チェーンの装着体験。NEXCO東日本のスタッフが、サポートする形で、チェーン装着体験コーナーが設けられていた。

 谷川所長によると、「チェーンは持っていても取り付けたことのない人が多く、一度装着体験をしておくことで、降雪時に役立ててほしい」とのこと。ただ、短い取材時間の中では装着している人がおらず、NEXCO東日本のスタッフによるデモ装着を興味深く見ている人が多かった。

今年初めて設けられた「タイヤチェーン装着体験コーナー」。初回とあってか、見学者のほうが多かったようだ金属製チェーンをタイヤに取り付けるNEXCO東日本のスタッフこちらはゴム製チェーン。タイヤ単体での装着でも、大変そうだった
イベント会場では、豚汁が振る舞われていた。晴れてはいても気温が低く、なによりのご馳走地元、長野の農協は牛乳を参加者にプレゼント。空気と水がよいので、とてもおいしいとのこと
勝田選手の全日本ラリーチャンピオンマシンも展示されていた村田選手の所属するエンドレスのデモカーブレーキやサスペンションまわりを得意とするエンドレスならではの仕上がり

 年に1度のイベントが定着したことで参加者も増えてきた雪道体験ドライブレッスン。1日あたり定員50名のこのイベントだが、お昼頃には60名の参加者を数え、大盛況となっていた。プログラムを一部工夫することで、多くの人が体験できるよう対応していたようだ。

 谷川所長は、「とても好評のため、来年も開催します」と言い、今年参加できなかった方は、旅行の途中に立ち寄ってみるのもよいだろう。なお、NEXCO東日本では2月18日にアルツ磐梯で開催する「ウィンタードライビングスクール」の参加者を現在募集中。事前申し込み制のため、気軽に参加というイベントではないが、より本格的な雪道運転レッスンを望む方は、参加を検討してみてほしい。

(編集部:谷川 潔/編集部:小林 隆)
2011年 2月 2日