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ノーマルタイヤ・スタッドレスタイヤ装着車で雪道を限界走行
豪華講師陣のNEXCO東日本「雪道体験ドライブレッスン」
(2013/1/29 00:00)
NEXCO東日本(東日本高速道路)は1月26日、27日の2日間にわたり、長野県佐久市の佐久スキーガーデン・パラダで「雪道体験ドライブレッスン」を開催した。
2009年から毎年開催されているこのイベントは、雪道での交通事故を防ぐための交通安全啓発活動。当日受付のイベントのため、会場まで足を運べば誰でも参加できる手軽なドライブレッスンとして、毎回予定人数を上まわる人気となっている。
講師陣も豪華で、2012年の全日本ラリー選手権でシリーズチャンピオンを獲得した勝田範彦選手、2012年のVitzレース東日本シリーズのチャンピオンである村田信博選手、ジムカーナで活躍する岡村貴之選手という3人のプロドライバーがインストラクターを努めていることも人気の理由の1つ。取材に訪れた26日もイベント開始時刻の10時より前から多くの参加希望者が受け付けに並んでいる状態で、最終的には当初予定の1日あたり50人を超える70人以上がドライブレッスンを受講した。
レッスンは、まずテント内に用意された解説パネルなどを使っての座学講習を受ける。ここでは、雪道を走るときに憶えておきたい基礎的な注意点、冬季のクルマのメンテナンス方法、雪道を走る前にクルマに載せておくと安心なアイテムなどについて解説を実施。とくに走行面では「普通のノーマルタイヤ(サマータイヤ)でも、走ること、つまり前進は意外にできてしまうものです。しかし、曲がったり、ブレーキをかけて止まれるかは別問題なので注意が必要です」「タイヤチェーンは手軽に使えますが、ブレーキングでは横側のチェーンとチェーンの合間でタイヤがロックして止まらなくなるケースが出てきます。スタッドレスタイヤにチェーンを装着するのが万全な対策と言えるでしょう」と紹介していた。
10分ほどの座学講習を受けたあと、本番とも言える雪道でのドライブレッスンがスタート。スキー場である北パラダのゲレンデ脇にある駐車場を利用して特設コースを設定。スタッドレスタイヤ装着車、ノーマルタイヤ装着車の2台で同じコースを走り、グリップ力の差や車両挙動の違いについて体感する内容となっている。
同じコースでスタッドレスタイヤとノーマルタイヤを乗り比べ
コース設定は、緩やかに曲がりながらの発進加速から始まり、ステアリングを左右に切り返しながら通過するスラローム路、ステアリングを大きく切り込んで旋回するヘアピンコーナー、全開加速からABSを作動させて停車する直線路という組み合わせで構成。それほど長いコースではないが、雪道運転で注意したいエッセンスが凝縮されている。
限界を超えた領域を経験してもらうのが一番の目的
取材前の予想では、雪道をゆっくりと走りながらスタッドレスタイヤの安心感をノーマルタイヤと比較して参加者に体感してもらうような穏やかなレッスン風景を想定していたが、実際に走行が始まると初期段階からノーマルタイヤ装着車がレブリミッターを作動させながら走り出す姿に驚かされることになった。
さらに、撮影しながらレッスン風景を見ていると、ノーマルタイヤ装着車と同じように、ときにはそれ以上に挙動を乱してコース外周の雪壁にタイヤをぶつけているスタッドレスタイヤ装着車まで出ている。もちろん、冷静に考えれば、前出の写真説明にも書いたようにスタッドレスタイヤ装着車のほうが大幅にスピードが出ていることがその理由だが、この状況でほんとうにいいのか少し疑問を感じてしまう。そこで、インストラクターの勝田選手に質問してみたところ、「これで狙いどおりです」とのことだった。
その理由について勝田選手は「このドライブレッスンでは、みなさんに限界を超えるとクルマがどんな状態になるのか経験してもらうことを重視しています。どんな人でもクルマがスリップすると最初は驚いてパニックになってしまいますが、逆に1回体験すれば次からは冷静に対処できるものです。ここは広くて安全ですし、われわれインストラクターも同乗しているので、ここでスリップを体験して帰ってほしいんですよ」と語る。また、参加者には「前回は怖がって普通に運転してしまったが、今回こそ大胆にガンガン走ってみたい」とリピーターになった人も少なくないそうだ。
そんな説明を聞いたあと、レッスン時間の合間に自分でもドライブレッスンを受けさせてもらったが、確かに安全性が確保されたコースなら逃げ腰にもならずにタイヤがどこまでグリップするかチャレンジできる。また、ノーマルタイヤではクリープ走行から少しアクセルを踏んだ状態でもすぐに限界を超えてしまうのに対して、スタッドレスタイヤはかなり日常的な運転感覚に近く、タイヤが滑り始めてもコントロールできる余地があると実感できた。
コース脇から見ている以上にステアリングの手応えやアクセル操作に対する反応にもはっきりとした差があり、これなら各参加者がタイヤ性能の違いをしっかり理解しているだろうと感じる内容。なにより、運転中から運転後まで笑顔という参加者が多かった理由も納得できた。
4年目となった今回も好評で、すでに来シーズンの開催も予定されているという。午前中はリピーターなども多く混雑気味だが、午後はゲレンデに流れる紹介アナウンスを聞いてやってくるスキー&スノーボード客が中心で比較的楽に参加できる。雪道であまり運転した経験がないという人、冬季はスタッドレスタイヤを使っているが、どれだけ効果があるのか確認したいという人は来シーズンの開催時に参加することを検討してほしい。