電気自動車普及協議会、コンバージョンEV製作時のガイドライン発表
EV特有の危険に対策、世界への展開も

左から田嶋代表幹事、福武会長、国交省の野津氏、アドバイザーの草加浩平氏、監査理事の木村忠明氏

2011年4月27日発表



 電気自動車普及協議会は4月27日、東京大学の福武ホールで記者会見を開催し、「EVコンバージョンガイドライン」を発表した。

ガイドラインの概要

EV特有の注意点を網羅
 ガイドラインは、ガソリン車のパワートレーンを換装し、電気自動車(EV)にコンバートする際の注意点をまとめたもの。

 近年では業者だけでなく個人がEVへのコンバートを行う例が増えてきたが、EV特有の危険や事故が予想される一方で、明確な安全基準もないため、ガイドラインを作成した。同協議会の田嶋伸博 代表幹事が部長を務めるEVコンバージョン部会と、国土交通省関東運輸局、自動車検査独立行政法人、軽自動車検査協会東京主管事務所などの所轄官庁、協議会会員各社が話し合い、作成した。

 ガイドラインの内容は、(1)感電から人を守る対策、(2)電気的なトラブルで火災を起こさない対策、(3)強度を確保する対策、(4)走行性能を確保する対策、(5)走行の信頼性を確保する対策、(6)誤操作による急発進等を防止する対策、(7)制動性能を確保する対策の7つ。

 例えば、(1)の感電対策としては、「客室内の高電圧部には針のような細いものでも触れられないように覆う」「高電圧部はすべて橙色の被覆を施す」といったものから、バッテリーを衝突時の衝撃から守れる位置に搭載することや、取り付けの強度、工具を使わずに高電圧を遮断できる仕組みの採用などが求められている。

 また(4)の走行性能の確保では、「大きな出力のモーターよりも小さな出力のモーターのほうが出回っているため、登坂できずにまわりの交通に迷惑をかける例がある」(田嶋 代表幹事)ことから、必要とされる出力以上のモーターを搭載するよう求めている。

 ガイドラインはPDF形式で同協議会のWebサイトに掲載されており、自由にダウンロードできる。

 また今後、ガイドラインを解説する教本を作成し、英語版も用意すると言う。教本は同協議会のWebサイトで配信される予定。

ガイドライン作成に参加した団体、企業田嶋代表幹事

 

福武会長

世界にも展開
 同協議会は、文字通りEVの普及を促進するために2010年6月29日に設立され、会員数は企業が約130、地方自治体などの団体が50、個人が約70となっている。

 会長の福武總一郎氏は会見で、ガソリン車のエネルギー効率は8.6%だが、同じ量のガソリンで発電してEVに使用すれば35%に高まること、夜間の余剰電力の活用やスマートグリッドでEVが大きな役割を果たすことなど、EV普及の意義を訴えた。「ガイドラインにはご意見をいただいてレベルアップを図り、周知徹底していく」と、ガイドラインの改訂を続けるとした。

 また「世界には化石燃料で走っているクルマが8~9億台ある。その一部をガイドラインをもとに改造していくためにも、世界的な展開をしていきたいと本気で思っている。日本発のEVコンバージョンガイドラインが、世界標準になれば」と述べ、世界各国の団体と連携する姿勢を明らかにした。すでに米国、独、ニュージーランドといった国と協議を進めていると言う。

 ガイドラインの作成に加わった国土交通省関東運輸局自動車技術安全部の野津真生氏は「コンバージョンEVは低コストで注目を集めており、国土交通省でも1年ほど前から注目すると同時に、普及のためには安全確保が前提の1つと強い問題意識を持っていた」と同省が参加した理由を述べ、「コンバージョンEVは簡単に作れると言われることもあるが、クルマの基本機能である“走る”“曲がる”“止まる”いずれにも直結しており、決してやさしいものではない。ガイドラインを広く周知するとともに、これに基づいた技術的な問い合わせや相談にも対応する」とした。

 また「ガイドラインは本省を通じて他の地方局にも展開する。さらに本省は、ガイドラインを踏まえて、安全基準の改正などを含む必要な措置を講ずる」とした。

小型コミューターの部会など新設
 会見では、EVコンバージョン部会に続く、3つの新しい作業部会を発足させることも発表された。

 新しくできるのは「EVビジネス情報部会」「超小型モビリティ部会」「地域コンソーシアム部会」。

 EVビジネス情報部会は国内外のEVビジネスや市場の調査、カーナビなどEV周辺の情報技術の標準化、協議会会員同士のニーズ調査やマッチングを行うことで、EVビジネスの促進を図る。部会長は、同協議会の幹事でもあるナノオプトニクス・エナジーの藤原洋社長が務める。

 超小型モビリティ部会は、高齢者向けの小型2人乗りコミューターEVの普及、規格標準化、安全基準設定などを行う。田嶋 代表幹事がEVコンバージョン部会と部会長を兼任し、アドバイザーに東京大学高齢社会総合研究機構・機構長の鎌田実教授、群馬大学大学院工学研究科・連携大学院客員教授の松村修二教授を迎える。

 地域コンソーシアム部会は、各自治体のEV・PHVタウン構想などの情報交流や支援を図る。長崎県産業労働部政策監・EV&ITS推進担当で同協議会のアドバイザーである鈴木高宏氏が部会長を務める。

EVビジネス情報部会超小型モビリティ部会地域コンソーシアム部会

(編集部:田中真一郎)
2011年 4月 28日