雨の混戦をGT-Rが制したSUPER GT開幕戦富士
GT500はMOTUL AUTECH GT-R、GT300はHANKOOK PORSCHEが優勝

開幕戦のGT500クラスを制した23号車 MOTUL AUTECH GT-R

2011年5月1日開催



 5月1日、国内ビッグレースの開幕戦となる2011 AUTOBACS SUPER GT第2戦「FUJI GT 400km RACE」の決勝レースが富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催された。豪雨で66周のレースが59周で赤旗終了となる波乱のレースとなったが、GT500クラスは23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ)が優勝、GT300クラスは33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)が優勝した。

 本来は4月2日、3日に岡山国際サーキットで第1戦が行われる予定だったが震災の影響で延期となり、第2戦の「FUJI GT 400km RACE」が開幕戦となった。フォーミュラ・ニッポンの開幕戦も延期されたので、国内ビッグレースは今回のSUPER GTが今シーズンの遅い開幕戦となった。レースタイトルは「FUJI GT 400km RACE」となっているが、距離は300kmに短縮されている。

GT500クラス
 今シーズンのGT500クラスで注目されるのは、レクサス(トヨタ)陣営のドライバーが大幅に変更されたことだ。同じドライバーコンビで戦うチームは1つもなく、新たに19号車 WedsSport ADVAN SC430が加わり6台が参戦することになった。脇阪選手の移籍、井口選手のステップアップなど話題豊富なレクサス陣営だが、その中で最も目を引くのはF1帰りの中嶋一貴選手の5年ぶりの国内復帰だろう。

レクサス陣営チーム2011年2010年
6号車ENEOS SUSTINA SC430伊藤大輔/大嶋和也伊藤大輔/ビヨン・ビルドハイム
19号車WedsSport ADVAN SC430片岡龍也/荒聖治出走せず
35号車D'STATION KeePer SC430脇阪寿一/アンドレ・クート石浦宏明/大嶋和也
36号車PETRONAS TOM'S SC430アンドレ・ロッテラー/中嶋一貴脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー
38号車ZENT CERUMO SC430立川祐路/平手晃平立川祐路/リチャード・ライアン
39号車DENSO SARD SC430石浦宏明/井口卓人平手晃平/アンドレ・クート

※36号車は昨年は1号車

 日産勢は46号車 S Road MOLA GT-Rが、GT300クラスからステップアップ。ドライバーは柳田真孝選手とロニー・クインタレッリ選手を起用した。昨年はHASEMI SPORTがGT300に移り3台体制となったが、再び4台体制で臨むことになった。ホンダ勢は8号車 ARTA HSV-010がドライバーを一新。インディ帰りの武藤英紀選手と、昨年の夏に鈴鹿サーキットで行われた第6戦で初めて乗るGTマシンでポールポジションを奪取した小林崇志選手という組合せとなった。

 決勝前日に行われたスーパーラップ方式の予選を制したのは39号車 DENSO SARD SC430(石浦宏明/井口卓人)。予選2位は新規参戦の46号車 S Road MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)となりミシュランタイヤを履く2台がフロントローを占めた。

 以下、3位は24号車 ADVAN KONDO GT-R、4位は12号車 カルソニック IMPUL GT-R、5位は6号車 ENEOS SUSTINA SC430、6位は23号車 MOTUL AUTECH GT-Rとなった。ホンダ勢はスーパーラップには1号車 ウイダー HSV-010、17号車 KEIHIN HSV-010、100号車 RAYBRIG HSV-010が進出したが、1号車と17号車はアタック中にスピン。100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)の7位が最上位でやや精彩を欠いた。新規参戦のもう1台、19号車 WedsSport ADVAN SC430は14位と後方に沈み、46号車 S Road MOLA GT-Rとは明暗を分ける結果となった

スタート前、豪雨のスタンドに「がんばろう!日本」

 決勝レースが行われた5月1日は、午前中からパラパラと雨が降っていて、午前中に行われたフリー走行は水煙が上がらない程度のチョイ濡れの路面だった。レーススタート1時間前に行われる8分間のウォームアップ走行も同様でスリックタイヤでも走れる程度の路面コンディションだった。

 ところが、グリッドにマシンを送り出す頃から強い雨が降り出しスタート時点では完全なウェット路面へ急変。しかし、最終コーナー側の空はやや明るく、スタート後に雨が止み路面が回復する可能性もあり、タイヤ選択が難しい状況でレーススタートの14時を迎えた。

 もしレース中に路面が乾き、ウェットタイヤからドライタイヤに変更する必要が生じた場合、ドライバー交代とタイミングがずれると2度のピットインが必要となる。そのリスクを回避するためには、規定で1人のドライバーが走行できる限界である、レース周回の2/3を走りきれる燃料を積み、路面の状況によって早めのドライバー交代を行う必要がある。

 14時、セーフティーカー先導でフォーメーションラップが始まった。本来であればセーフティーカーは1周で退き66周の決勝レースのスタートとなるが、悪天候のためそのまま5周先導を続け、6周目から実質的なレースが開始された。


セーフティーカー先導で5周を周回した(Photo:Burner Images)6周目からスタートしたGT500。1コーナーは39号車が制したが……(Photo:Burner Images)

 スタート直後の1コーナーを制したのはポールポジションからスタートした39号車 DENSO SARD SC430(石浦宏明)。2番グリッドからスタートした46号車 S Road MOLA GT-R(ロニー・クインタレッリ)は止まりきれずコースオフ、すぐにコースに戻るが5位まで順位を落とした。

2位スタートの46号車はコースオフ

39号車が後退し、1位24号車、2位12号車、3位6号車の順

 トップをキープした39号車 DENSO SARD SC430だが、タイヤのグリップが弱く、直後の100Rで24号車 ADVAN KONDO GT-R(ビヨン・ビルドハイム)、12号車 カルソニック IMPUL GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)に立て続け抜かれ3位に後退。さらにヘアピン立ち上がりで6号車 ENEOS SUSTINA SC430(大嶋和也)、ダンロップコーナーの立ち上がりで23号車 MOTUL AUTECH GT-R(ブノワ・トレルイエ)、13コーナーで36号車 PETRONAS TOM'S SC430(アンドレ・ロッテラー)、最終コーナーで38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路)にも抜かれ、あっと言う間に7位まで後退した。


 同じくミシュランタイヤを履きフロントローからスタートした46号車 S Road MOLA GT-Rは1コーナーでコースオフし5位に落ちた。その後も後続に次々に抜かれ9位まで順位を落として6周目(実質1周目)の周回を終えた。7周目には、39号車 DENSO SARD SC430は10位に、46号車 S Road MOLA GT-Rは14位に後退。7周目のラップタイムはトップを走る24号車 ADVAN KONDO GT-Rの1分50秒585に対し39号車 DENSO SARD SC430は2分3秒623、46号車 S Road MOLA GT-Rは2分4秒592と13秒以上の差があり、予選では速さを見せたミシュランタイヤだったが選択したタイヤが路面に合わず、39号車 DENSO SARD SC430は8周でピットイン、46号車 S Road MOLA GT-Rも11周でピットインし、タイヤを深溝のハードから深溝のソフトに変更しコースに復帰した。

 ミシュランタイヤ以外でもダンロップタイヤを履く32号車 EPSON HSV-010(道上龍)とブリヂストンタイヤを履く100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也)がタイヤ選択に失敗し、早々にタイヤ交換を行った。

23号車が6号車を抜きGT-Rが1-2-3体制に

 11周目の1コーナーで4位を走る23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが6号車 ENEOS SUSTINA SC430を抜き3位に浮上。1位24号車 ADVAN KONDO GT-R、2位12号車 カルソニック IMPUL GT-R、3位23号車 MOTUL AUTECH GT-RとGT-R勢が1-2-3体制となった。

 SUPER GT開幕戦2連勝中で雨に強いヨコハマタイヤを履く24号車 ADVAN KONDO GT-Rが有利かと思われたが、12周目の1コーナーで12号車 カルソニック IMPUL GT-R、直後の100Rで23号車 MOTUL AUTECH GT-Rにアウトから抜かれ3位に後退、緊急ピットインを余儀なくされた。突然のスローダウンの原因はフロントウインドーが曇り視界不良になったためだった。これで近藤真彦監督率いるKONDO RACINGの開幕3連勝はなくなった。

 ウインドーの曇りはホンダのHSV-010勢にも発生した。雨の影響でスタート直後から曇りによる視界不良が全車に発生。序盤で想定外のピット作業や我慢の走りを強いられることとなった。ホンダのレース後リポートには「全車に起きたフロントウインドーの曇りも想定外の問題でした。ウエットコンディションでフロントウインドーが曇ったことはこれまでありませんでしたが、今回は富士スピードウェイ用の空力セッティングにしたことに原因があったと推測されます」と書かれている。

 トップ争いは12号車 カルソニック IMPUL GT-Rと、23号車 MOTUL AUTECH GT-Rの壮絶なバトルとなった。13周目のヘアピン進入ではGT300マシンを2台が両側から抜きヘアピン立ち上がりでは2台がサイド・バイ・サイドの争いを演じるなど、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手とブノワ・トレルイエ選手という、SUPER GTを代表する2人の外人ドライバーによる雨中のパフォーマンスに観衆の目は釘付けとなった。

12号車と23号車の壮絶なバトルが展開された

左ドアと左リアを大破、修復しコースに戻るが周回遅れとなる

 トップ2台のGT-Rのバトルは意外な決着を見た。12号車 カルソニック IMPUL GT-Rが18周目のダンロップコーナーのブレーキングでリアを滑らせハーフスピン。インを譲ったGT300の27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリに左リアをヒットさせ大破、ヒットされスピンした27号車の右フロントが左ドアのヒンジ部分に当たりドアが開いてしまった。

 背後にいた23号車 MOTUL AUTECH GT-Rがあっさりトップに立ち、マシンにダメージを負った12号車 カルソニック IMPUL GT-Rは右コーナーでは左ドアが開いてしまう状態で走行を続けたが、オフィシャルから指示が出てピットイン、修復作業に時間が掛かり周回遅れとなってしまった。

 レースの1/3を消化した22周終了時の順位は23号車 MOTUL AUTECH GT-Rがトップ、14秒差の2位に6号車 ENEOS SUSTINA SC430、以下38号車 ZENT CERUMO SC430、19号車 WedsSport ADVAN SC430、36号車 PETRONAS TOM'S SC430、35号車 D'STATION KeePer SC430と、2位から6位までレクサス勢が並ぶ展開となった。

 GT500新規参戦の19号車 WedsSport ADVAN SC430(片岡龍也)は14番グリッドからスタートとなったが、序盤はタイヤ選択に失敗したマシンを抜き6周目に12位、7周目に9位に浮上。10周目に17号車 KEIHIN HSV-010を抜き8位、12周目に1号車 ウイダー HSV-010を抜き7位、13周目に24号車 ADVAN KONDO GT-Rのピットインで6位、19周目に36号車 PETRONAS TOM'S SC430を抜き5位、22周目に12号車 カルソニック IMPUL GT-Rのピットインで順位を上げ4位まで急進した。雨に強いヨコハマタイヤを履き安定したペースで走行、あと1台抜けばデビュー戦で表彰台を獲得することとなる。

スタート直後に、12号車と8号車を抜いた19号車39号車を抜き、9位に浮上した19号車
8位の17号車に迫る19号車17号車を抜き、8位に浮上した19号車

 レース中盤の27周目、5位を走る36号車 PETRONAS TOM'S SC430がピットインし、アンドレ・ロッテラー選手から中嶋一貴選手にドライバー交代した。いよいよ中嶋一貴選手のGT500決勝レースデビューの時が来た。不安定な路面コンディションだが、参考程度に決勝の2人のタイムを比較すると、ピットイン前24周目から26周目のアンドレ・ロッテラー選手のラップタイムが1分48秒073、49秒621、52秒363に対し、ピットアウトしアウトラップ2周経過後30周目から32周目の中嶋一貴選手のラップタイムは1分48秒834、47秒995、49秒376で1年間のレースブランクは心配する必要がなさそうなタイムとなっている。35周目には36号車 PETRONAS TOM'S SC430のベストタイムとなる1分46秒923を記録している。

 レースは40周を過ぎた終盤に差しかかった。レース周回の2/3にあたる44周までに各車ドライバー交代を行わなければならない。天候はスタート時の強雨が20周目あたりからやや弱まり小康状態となっていたが、ゴールまで路面が乾くことはなさそうだ。

 43周目、2位を走る6号車 ENEOS SUSTINA SC430がピットイン。タイヤ交換は行わず大嶋和也選手から伊藤大輔選手にドライバー交代した。35号車 D'STATION KeePer SC430もピットイン、アンドレ・クート選手から脇阪寿一選手にドライバー交代、浅溝のタイヤに交換しピットアウトした。

 44周目、トップを走る23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが満を持してピットイン。6号車 ENEOS SUSTINA SC430のピットインで2位にポジションアップした38号車 ZENT CERUMO SC430、3位の19号車 WedsSport ADVAN SC430も次々とピットインを行った。

 23号車 MOTUL AUTECH GT-Rはタイヤ交換を行えば作業時間の差で先にピットインを済ませた6号車 ENEOS SUSTINA SC430にトップを奪われる。ブノワ・トレルイエ選手から本山哲選手にドライバー交代し、タイヤ交換は行わずトップをキープしてコースに復帰した。

 38号車 ZENT CERUMO SC430はピットロードでピットアウトする35号車 D'STATION KeePer SC430と交錯しそうになりタイムロス。立川祐路選手から平手晃平選手にドライバー交代、天候が回復に向かうと予想し浅溝のタイヤを選択した。

 19号車 WedsSport ADVAN SC430はタイヤ交換はなし。片岡龍也選手から荒聖治選手にドライバー交代、38号車 ZENT CERUMO SC430をピット作業で逆転し3位でコースに復帰した。

 ピットイン終了時の順位は、トップは変わらず23号車 MOTUL AUTECH GT-R、13秒差の2位に6号車 ENEOS SUSTINA SC430、3位は19号車 WedsSport ADVAN SC430、4位は38号車 ZENT CERUMO SC430、5位は36号車 PETRONAS TOM'S SC430、6位は39号車 DENSO SARD SC430、7位は24号車 ADVAN KONDO GT-R。

 ポールポジションからスタートするも序盤のタイヤ選択に失敗し最後尾まで落ちた39号車 DENSO SARD SC430だったが、代えたミシュランの深溝のソフトタイヤが路面コンディションにフィットしペースを回復。37周目には決勝レースの全車ベストラップとなる1分44秒968を記録し、6位まで順位を上げてきた。ウインドーの曇りでトップから脱落した24号車 ADVAN KONDO GT-Rも徐々に順位を上げ7位までポジションを回復した。


豪雨の中1位との差を縮めた6号車

 50周を過ぎた頃から雨が強くなった。トップ23号車 MOTUL AUTECH GT-Rと2位6号車 ENEOS SUSTINA SC430の差は53周目には11秒あったが、54周目には6.6秒、55周目には4.8秒と縮まった。ここで23号車 MOTUL AUTECH GT-Rも悪コンディションの中ペースアップ、56周目にはその差を4.9秒、57周目には5.9秒と反撃を開始した。

 残り10周となったあたりでさらに雨が激しくなり各所でスピン、コースアウトが続発。ラップタイムも10秒近く遅くなった。浅溝のタイヤに交換した38号車 ZENT CERUMO SC430はラップタイムが20秒以上遅くなり59周目に再びピットイン。トップと2位の差が60周目には3.1秒に縮まり、最悪なコースコンディションの中で最後のバトルに突入するかと思われたが、23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが61周目の周回に入ったところでオフィシャルが危険と判断し赤旗を提示、レースは中断となった。

赤旗中断赤旗中断となりメインストレートに戻るGTマシン

 その直後にレースは終了、成立となった。トップの23号車 MOTUL AUTECH GT-Rは61周目の周回に入っていたが、後続は60周目の周回中なので全車がコントロールラインを通過している59周終了時の順位で確定となった。38号車 ZENT CERUMO SC430はピット作業中に赤旗中断となり5位フィニッシュ、大きく順位を落とさずにレースを終えることとなった。

GT500クラスの表彰台(Photo:Burner Images)

 23号車 MOTUL AUTECH GT-Rはミシュランタイヤを履いた昨シーズンは未勝利。ブリヂストンタイヤに戻した初戦で優勝することができた。2009年7月のSUGO以来、久しぶりに表彰台の頂点に立った。2位は6号車 ENEOS SUSTINA SC430、3位は19号車 WedsSport ADVAN SC430が後方から追い上げデビュー戦で表彰台を獲得した。



順位マシン名(ドライバー)
1位23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ)
2位6号車 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)
3位19号車 WedsSport ADVAN SC430(片岡龍也/荒聖治)
4位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(アンドレ・ロッテラー/中嶋一貴)
5位38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
6位39号車 DENSO SARD SC430(石浦宏明/井口卓人)
7位24号車 ADVAN KONDO GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)
8位17号車 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)
9位8号車 ARTA HSV-010(武藤英紀/小林崇志)
10位46号車 S Road MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)
11位35号車 D'STATION KeePer SC430(脇阪寿一/アンドレ・クート)
12位100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)
13位1号車 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル)
14位12号車 カルソニック IMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)
15位32号車 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)

優勝した23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ)
2位の6号車 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)
3位の19号車 WedsSport ADVAN SC430(片岡龍也/荒聖治)

GT300クラス
 今シーズンのGT300マシンの話題はアニメキャラクターなどとのコラボレーション、いわゆる痛車系のマシンが増えたことだ。昨年も大人気となったエヴァンゲリオンレーシングは紫電とタッグを組み2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電となった。さらに弐号機も参戦することとなり、7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTIONとの2台体制で参戦する。

 初音ミクはマシンをBMWに戻し4号車 初音ミク グッドスマイル BMWとして参戦。27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ、34号車 ハルヒレーシングHANKOOKポルシェも加わり、GT300痛車対決は新たなステージに突入した感じだ。

2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTION4号車 初音ミク グッドスマイル BMW
27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ34号車 ハルヒレーシングHANKOOKポルシェ

 新規参戦マシンとしては、11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458の「Ferrari 458 GTC」、4号車 初音ミク グッドスマイル BMWの「BMW Z4 GT3」、7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTIONと33号車 HANKOOK PORSCHEの「PORSCHE 911GT3 R」、360号車 RUNNUP SPORTS CORVETTEの「CALLAWAY CORVETTE」があり、ツーリングカーレースらしく、さまざまなマシンによる戦いを楽しめる。

 マシンだけでなく、ドライバーも話題が豊富。昨年まで7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7をドライブしていた谷口信輝選手が、4号車 初音ミク グッドスマイル BMWに乗り番場琢選手とコンビを組む。7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTIONには、日本とドイツでF3チャンピオンを獲得しているカルロ・ヴァン・ダム選手。43号車 ARTA Garaiyaは、長年コンビを組んでいた新田守男選手が74号車 COROLLA Axio apr GTに移り、高木真一選手と松浦孝亮選手の組合せとなる。66号車 triple a Vantage GT2は、昨年GT300クラスチャンピオンを獲得した星野一樹選手が吉本大樹選手とコンビを組み戦うこととなった。

 決勝前日に行われたスーパーラップ方式の予選を制したのは33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)。2位は27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ(山岸大/山内英輝)、3位は66号車 triple a Vantage GT2(吉本大樹/星野一樹)、4位は4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)、5位は2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(高橋一穂/加藤寛規)、6位は11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)、7位は43号車 ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)、8位は25号車 ZENT Porsche RSR(都筑晶裕/土屋武士)と上位の顔ぶれを見ると誰が勝ってもおかしくはない感じだ。

 スーパーラップで最速タイムを出した88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3(井入宏之/関口雄飛)は、車両重量規定の違反により最後尾スタートとなった。なお、7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTIONは金曜日の練習走行時にエンジンブローを起こし予選、決勝とも出走することはできなかった。

 14時、雨の中決勝レースのフォーメーションラップが始まった。セーフティーカー先導のままレースはスタート、2周目にアクシデントが発生した。6位の11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(平中克幸)がコカコーラ・コーナーの手前でコースオフ、大事にはいたらず16位で隊列に戻りそのままピットイン。選択したタイヤが路面コンディションに合わず、タイヤ交換をして最後尾から追走することとなった。

セーフティーカー先導中に11号車はスピン(Photo:Burner Images)
すぐにコースに戻るものの、ピットインしタイヤ交換を行う最後尾でコースに戻った11号車

GT300のスタート。33号車、27号車、6号車、4号車、2号車の順(Photo:Burner Images)

 5周終了時にセーフティーカーがピットに退き6周目からレースがスタート。1コーナーは33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美)がトップをキープ、2位以下は27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ(山内英輝)、66号車 triple a Vantage GT2(吉本大樹)、4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝)、2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(加藤寛規)、43号車 ARTA Garaiya(高木真一)、25号車 ZENT Porsche RSR(都筑晶裕)と最後尾へ落ちた11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458以外はグリッド順のまま通過した。

 1コーナーは順調に抜けていったが、66号車 triple a Vantage GT2がヘアピンでスピン、後方でも34号車 ハルヒレーシングHANKOOKポルシェ(高森博士)がダンロップコーナーの立ち上がりでスピンするなど波乱を予感させるオープニングラップとなった。


4号車が27号車を抜き2位浮上。後方では2号車に25号車が迫る

 最終コーナーからの立ち上がりで、4号車 初音ミク グッドスマイル BMWが27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリに並びかけストレートで2位に浮上、続く7周目の1コーナーでは25号車 ZENT Porsche RSRが2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電のインに飛び込み2台はサイド・バイ・サイドでコーナーを抜け立ち上がりで25号車 ZENT Porsche RSRが4位にポジションアップした。



25号車が2号車のインに入り1コーナーを立ち上がる
2号車を抜き25号車は4位に浮上

 勢いに乗った25号車 ZENT Porsche RSRは続くヘアピンでアウトにはらんだ27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリのインをドリフト状態で抜け3位に浮上。8周目の100Rでは4号車 初音ミク グッドスマイル BMWも攻略し3周で8位から2位まで浮上した。

27号車を抜き3位に浮上した25号車(Photo:Burner Images)4号車に迫る25号車4号車を抜き2位に浮上した25号車

62号車が27号車を抜き4位浮上

 すぐ後方では62号車 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也)も元気のいい走りを見せていた。9番グリッドからスタートし最初の1周で6位、次の周には2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電を抜き5位、続く8周目の1コーナーで27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリも抜き4位まで浮上した。

 2番グリッドからスタートした27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリだが、8周目のダンロップコーナー進入で2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電に抜かれ6位まで後退、タイヤ選択に失敗したためその後もズルズルと12位まで順位を落とし12周目にピットインしタイヤ交換を行った。


2号車も27号車を抜き5位にポジションを回復したが……

 一方、27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリを抜き5位までポジションを戻した2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電だったが、9周目の1コーナーを抜けたところでスローダウン。電気系のトラブルでエンジンがストップしリタイヤとなってしまった。



2号車が停止、リタイヤとなった

 スタート直後にヘアピンでスピンした66号車 triple a Vantage GT2もタイヤ選択に失敗したようで、12周目のコカコーラ・コーナーの手前の直線で突然コースアウトしクラッシュ、こちらもリタイヤとなってしまった。

コカコーラ・コーナーの手前ストレートで突然向きを変える66号車タイヤバリヤのクラッシュした66号車(Photo:Burner Images)早々にリタイヤとなった66号車

徐々に4号車と62号車の距離が縮まる

 トップは33号車 HANKOOK PORSCHEが余裕の快走。2位は25号車 ZENT Porsche RSR、3位は4号車 初音ミク グッドスマイル BMWで、ドイツ車の1-2-3体制となっていたが、そこに割って入ったのは日本車62号車 R&D SPORT LEGACY B4だった。

 14周目の1コーナーで62号車 R&D SPORT LEGACY B4が4号車 初音ミク グッドスマイル BMW抜き3位に浮上、抜かれた4号車 初音ミク グッドスマイル BMWはその周にピットインしタイヤ交換を行い15位まで順位を落とした。

 9番グリッドから3位まで順位を上げた62号車 R&D SPORT LEGACY B4だったが、その後方からさらなる勢いで順位を上げてきたのが31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラ(嵯峨宏紀)だった。

 15番グリッドからスタートした31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラは、セーフティーカー先導中に脱落するマシンのお陰で13位からスタート、直後の6周目に10位、7周目に9位、8周目に8位。9周目には2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電や27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリの脱落もあり一気に5位、さらに4号車 初音ミク グッドスマイル BMWのピットインで14周目には4位まで浮上した。


10位を走る31号車7位の74号車を追う31号車

62号車との差を縮める31号車

 14周目には5.9秒だった、前を行く62号車 R&D SPORT LEGACY B4との差を15周目には4.6秒、16周目には3.6秒と縮め、20周目には1秒を切り21周目には0.34秒と背後に迫った。62号車 R&D SPORT LEGACY B4は20周目あたりからワイパーが動かなくなるがペースを維持。コーナーでは31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラが速いが直線スピードに勝る62号車 R&D SPORT LEGACY B4がストレートで突き放す展開となり、テール・トゥ・ノーズの3位争いは62号車 R&D SPORT LEGACY B4がピットインする34周目まで続いた。



62号車をロックオン(Photo:Burner Images)
テール・トゥ・ノーズの争いは続いた

 さらにさらに後方から2台の争いに加わった赤いマシンはセーフティーカー先導中にスピンした11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458だった。11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458は2周目にスピンしピットイン、タイヤ交換を行い最後尾の21位からスタートした。

 6周目にレースがスタートすると8周目には13位までポジションを回復するが、セーフティーカー先導中のスピンに対しペナルティが課せられ9周目にピットイン、10秒ストップを消化しコースに復帰すると20台中19位まで順位を落とした。ここから怒濤の追い上げを開始した。

最後尾から徐々に順位を上げる11号車ランボルギーニ2台を抜き13位浮上12位を走る66号車に迫るが、この後ペナルティで19位に後退

6位に浮上した11号車

 12周目に15位、13周目に13位、15周目に12位、17周目からほぼ毎周1台を抜き23周目には6位までポジションを回復した。28周目に41号車 NetMove TAISAN Ferrariを抜き5位に浮上、13秒前を走る31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラとの差を一気に縮めることとなった。

 29周目には11秒、30周目には9秒、31周目には5秒、32周目には1秒となり3位争いをする62号車 R&D SPORT LEGACY B4と31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラの背後に迫った。勢いに乗る11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458は33周目のダンロップコーナーで31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラとテール・トゥ・ノーズ、直後のプリウスコーナーで抜き4位に浮上した。

 2位の25号車 ZENT Porsche RSRがピットインしたため自動的に3位にポジションアップ。続く34周目の13コーナーで62号車 R&D SPORT LEGACY B4を大外刈りで仕留め2位まで登り詰めた。35周目にはGT300クラス全車ベストラップとなる1分54秒310を記録した。


13コーナーで62号車を抜く11号車

 終盤に差しかかりGT300クラスの上位陣のピットイン、ドライバー交代が続いた。33周目の25号車 ZENT Porsche RSRに続き34周目には62号車 R&D SPORT LEGACY B4。3位にポジションアップした31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラは42周目、トップを快走する33号車 HANKOOK PORSCHEは43周目、33号車 HANKOOK PORSCHEのピットインで一瞬トップに立った11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458は44周目にピットインを行った。

 11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458がピットアウトすると、先にピットインを済ませた25号車 ZENT Porsche RSRとサイド・バイ・サイド。コカコーラ・コーナーでインを取った25号車 ZENT Porsche RSRが2位ポジションに返り咲いた。

 全車がピットインを完了した時点の順位はトップ33号車 HANKOOK PORSCHE独走状態、2位は25号車 ZENT Porsche RSR、3位は僅差で11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458、4位は31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラ、5位は43号車 ARTA Garaiya、6位は4号車 初音ミク グッドスマイル BMW、7位は62号車 R&D SPORT LEGACY B4となった。

 序盤にタイヤ交換で順位を落とした4号車 初音ミク グッドスマイル BMWだったが、谷口信輝選手の粘り強い走りで6位まで浮上してきた。昨年までは番場琢選手がエースドライバーと努め、コンビを組むドライバーより1~2秒は速いラップタイムで走っていた。ところがその番場琢選手より谷口信輝選手は2~3秒速いラップタイムで走行してみせたのだ。

 ピットイン前の谷口信輝選手のタイムは1分55秒台、ピットアウト後の番場琢選手のタイムは1分58秒台だ。参戦開始から徐々に成績を上げてきた初音ミクだが、いよいよ表彰台、さらには優勝が狙える可能性が出てきたと言えよう。

25号車と11号車の2位争いは最後まで続いた(Photo:Burner Images)

 最後の最後まで熱いバトルを展開したのは11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458と25号車 ZENT Porsche RSRだった。49周目のダンロップコーナーの進入で11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458が25号車 ZENT Porsche RSRを抜き2位に浮上。抜かれた25号車 ZENT Porsche RSRも諦めることなく追走し、雨が激しくなった56周目の100Rで11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458をアウトから大外刈りで抜き再び2位を奪取、2台の争いは最終ラップの最終コーナーまで続くかと思われたが赤旗中断。抜き返す前の55周終了時点での順位が最終結果となり2位は11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458、3位は25号車 ZENT Porsche RSRとなった。


GT3000クラスの表彰式

 トップの33号車 HANKOOK PORSCHEは独走状態だったが、その後方では熱いバトルが繰り返された。2位に入った11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458はタイヤ選択を失敗しなければ優勝できたかもしれない。3位の25号車 ZENT Porsche RSRも優勝が狙える位置にいる。以下、4位に31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラ、5位は番場琢選手が最後に順位を上げた4号車 初音ミク グッドスマイル BMW、6位は43号車 ARTA Garaiyaとなった。


 健闘した62号車 R&D SPORT LEGACY B4だったが最後にマシントラブルが出て大きく順位を落とした。完走18台の順位は以下のとおり。

順位マシン名(ドライバー)
1位33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)
2位11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)
3位25号車 ZENT Porsche RSR(都筑晶裕/土屋武士)
4位31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラ(嵯峨宏紀/岩崎祐貴)
5位4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)
6位43号車 ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)
7位74号車 COROLLA Axio apr GT(新田守男/国本雄資)
8位88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3(井入宏之/関口雄飛)
9位41号車 NetMove TAISAN Ferrari(山路慎一/小泉洋史/密山祥吾)
10位34号車 ハルヒレーシングHANKOOKポルシェ(高森博士/マイケル・キム/蒲生尚弥)
11位27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ(山岸大/山内英輝)
12位26号車 Verity TAISAN Porsche(松田秀士/峰尾恭輔/山下潤一郎)
13位22号車 R'Qs Vemac 350R(和田久/城内政樹)
14位87号車 リール ランボルギーニ RG-3(余郷敦/織戸学)
15位69号車 サンダーアジア MT900M(メルビン・チュー/吉田広樹)
16位14号車 SG CHANGI IS350(折目遼/アレキサンドレ・インペラトーリ)
17位360号車 RUNNUP SPORTS CORVETTE(田中篤/岡村和義)
18位62号車 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太)

 毎年、最終戦まで複数台が優勝争いをするGT300クラスは、開幕戦から期待を裏切らないレースとなった。今年も毎戦熱いバトルを見せてくれるだろう。

優勝した33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)
2位の11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)
3位の25号車 ZENT Porsche RSR(都筑晶裕/土屋武士)

 このレースの模様はテレビ東京系列で毎週日曜23時30分からの「SUPER GTプラス」(BSジャパンでは毎週日曜10時30分から)で放送される。次戦は震災で延期となった第1戦「OKAYAMA GT 300km RACE」が岡山国際サーキットで、5月21日、22日に行われる。

(奥川浩彦/Photo:奥川浩彦、Burner Images)
2011年 5月 6日