SUPER GT第1戦岡山「エヴァンゲリオンレーシング」リポート
再び初号機のみの出撃。決勝では最後尾からの追い上げ


 5月22日、岡山国際サーキット(岡山県美作市)で「2011 AUTOBACS SUPER GT 第1戦 OKAYAMA GT 250km RACE」の決勝が開催された。東日本大震災の影響で4月の開催が延期され、前回の富士スピードウェイに続く事実上の第2戦となる。レース結果などは既に別記事で紹介しているので、本記事ではCar Watchの読者に人気の高い、エヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細、マシン、ドライバー、レースクイーンのフォトギャラリーなどをお届けする。

 レース前に残念なニュースが飛び込んだ。開幕戦の習熟走行でエンジンを壊した7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTION(カルロ・ヴァン・ダム/水谷晃)はマシンの修復が間に合わず欠場となった。開幕戦の習熟走行ではトップクラスのラップタイムを出していただけに、早期の復帰を期待したい。

快調に走行する初号機コックピットの高橋選手

 開幕戦の富士では、7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTIONは欠場、2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(高橋一穂/加藤寛規)はスタート直後に電気系のトラブルでリタイヤとなった。今回は初号機のみの戦いとなるが、結果を残したい1戦だ。

 レースが開催された岡山国際サーキットはバックストレートまでの前半区間は高速セクション、その後ヘアピン、リボルバー、パイパー、ダブルヘアピンと中低速セクションが続き、マイクナイト、最終コーナーと中高速セクションを経てメインストレートに戻るコースレイアウトだ。

 今シーズンはエンジンパワーで勝るFIA GT勢が優位性を見せているが、コーナリング性能で勝る2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電にとっては、有利とまでは言えないが開幕戦の富士スピードウェイよりは戦いやすいサーキットとなる。

公式練習(5月21日)
 まずは加藤選手からコースイン。1分33秒293とGT300クラストップタイムをたたき出した。セッティングを変更し再びコースイン、確認をすませて高橋選手に交代した。

 高橋選手にはこのレースから元F3000ドライバーで、現在はレーシングガレージ「racing F」の代表の舘善泰氏がアドバイザーとして同行している。コースサイドから高橋選手の走りをチェック、無線でアドバイスを送ったり、走行後も車載ビデオを見てアドバイスをしたりするなど、高橋選手のラップタイム短縮の強い味方だ。アドバイスの効果もあり、前日の習熟走行では1回目は1分37秒013、2回目は1分36秒925と徐々にタイムアップした。

 コースインして2周目には1分35秒829を出し35秒台へ。その後も35秒台、36秒台で走行を続け1分35秒334までタイムを短縮した。36秒前後であれば充分決勝を戦えるタイムだ。

 再び加藤選手に交代しこのセッションベストとなる1分33秒017を記録。さらに高橋選手が最後にステアリングを握り1分35秒162までラップタイムを短縮した。加藤選手の33秒017は、87号車 リール ランボルギーニ RG-3(織戸学)の1分32秒988に続く2位、予選、決勝に向け順調な仕上がりとなった。

予選(5月21日)
 今回の予選はノックアウト方式で行われた。全車走行し、両ドライバーが基準タイム(クラストップ3の平均タイムの105%以内)をクリアしたマシンがQ1に進むことができる。Q1の上位16台がQ2に進出、Q2の上位10台がQ3進出となる。Q2、Q3には条件があり、Q2、Q3は同じドライバーが走る事ができない。またQ2で使用したタイヤをQ3と決勝スタートでも使用しなければならない。

予選Q1を走る初号機

 2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電の場合、加藤選手はQ3でポールポジションを争えるタイムが出せるが、Q3に進出するためにはQ2で高橋選手が10位以内に入らなければならない。高橋選手のラップタイムは長丁場の決勝レースには充分のところまで来たが、予選一発のタイムアタックでQ2突破は難しそうだ。Q3へ進めないと11位~16位からスタートとなる。加藤選手がQ2を走りQ3まで進めば、最低でも10位からスタートできる。今回の予選方式ではQ2を加藤選手、Q3を高橋選手が走るのがベストとなる。

 加藤選手のドライブでコースイン。早々に1分33秒954を出し、この時点のトップタイムを記録、Q1進出を確実とした。Q2で使用したタイヤをQ3でも使用するシミュレーションも兼ね、そのままのタイヤで高橋選手がコースイン。1分35秒272を記録し、基準タイムをクリアした。再び加藤選手がステアリングを握りタイムアタック。最後に1分33秒280を出し3位でQ2に進出となった。

 1時間半のインターバルをおき、Q2が開始された。ここで使用するタイヤはQ3、および決勝レースの2/3を走るタイヤなので、ロングスティントに対応したタイヤを選択。しかもタイムアタックで傷めないように大事に使用する必要がある。


Q2を走る初号機Q3を走る初号機

 予定どおり加藤選手がタイムアタック。1分33秒424でGT300クラストップタイムを記録しQ3進出を決めた。20分のインターバルの後Q3が開始。高橋選手は1分35秒206を記録するが10位に留まり予選を終了した。予選1位は1分33秒264で11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)、2位は66号車 triple a Vantage GT2(吉本大樹/星野一樹)とFIA GT勢がフロントローに並んだ。

ピットウォーク、グリッドウォーク
 SUPER GTではピットウォーク、キッズウォーク、グリッドウォークなど数多くのイベントが行われ、多くのファンがピットやグリッドでマシン、レーサー、レースクイーンと身近に接することができる。エヴァンゲリオンレーシングのピットは大人気でいつも多くのファンが集まっている。

 日曜のピットウォークでは、多くのファンが見守る中、高橋選手と加藤選手がドライバー交代の練習を行っていた。


ドライバー交代の練習は何度も繰り返し行われた

 毎戦エヴァンゲリオンレーシングのレースクイーン人気は高くカメラの砲列が集まる。今回は7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTIONが欠場し1台体制で参戦することになり、綾波レイ役の水谷望愛さん、碇シンジ役の清水恵理さんの2人だけとなったが、それでも多くのファンがシャッターを切っていた。

グリッドウォークにも多くのファンが集まった

決勝(5月22日)
 天気予報で決勝は雨と思われていた。実際の雨は予報より前倒しとなり、早朝の豪雨で朝のフリー走行は中止となったが、天候は急速に回復、決勝の行われる14時には路面はドライとなった。

 2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電はいつも通り加藤選手がファーストスティントを担当。スタートは混乱もなく10位をキープしたが、バックストレートエンドで41号車 NetMove TAISAN Ferrariに抜かれ11位に後退した。

GT300クラスがスタートヘアピンで41号車に抜かれ11位に後退
27号車フェラーリ、41号車フェラーリ、25号車ポルシェに続き11位後方は86号車ランボルギーニ、62号車レガシィが続く

 順調な滑り出しかと思えたが、序盤に不運が訪れた。レースディレクターから2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電のドアが開いているとの報告。ストレートを通過するマシンを確認するがドアが開いているようには見えない。

右ドアが開くトラブルが発生

 4周目にライブ映像が映し出され、右側のガルウィングドアが開く様子が確認できた。レースオフィシャルからピットでの修復を強制されるオレンジボールが出ることを告げられ、すぐに加藤選手に無線で連絡、5周目にはピットイン、ドアを閉め直し特に問題はなさそうだが、ガムテープで簡単に固定しコースに復帰した。

 ピットでの停止時間はほんの数秒だが、ピットロードでのロスタイムは30秒以上となり最下位へ後退することとなった。ドアが開いた原因はパイパーコーナーの進入でアウト側の縁石に乗ったショックによるもので、滅多に起こることではなく不運としか言いようがない。

 トラブルで最後尾22位に落ちた2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電だが、加藤選手が1分35秒台を連発する鬼神の走りで追い上げを開始した。11周目には13位を走っていた88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3が1コーナーでコースアウト。コースに砂利を持ち込み、そのままスロー走行となったところを抜き21位へ。


88号車がコースアウト砂利が撒かれた2コーナーを抜ける初号機

 12周目には360号車 RUNNUP SPORTS CORVETTE、14周目には痛車対決を制し34号車 ハルヒレーシングHANKOOKポルシェを抜き19位。17周目には33号車 HANKOOK PORSCHEがスピンし18位に浮上した。

360号車を抜き20位痛車対決、34号車を抜き19位へ

 21周目には9位走行の25号車 ZENT Porsche RSRがピットインし17位。このあたりから各車のピットインもあり一気に順位を上げていった。22周目には15位、23周目に12位、24周目には10位、26周目には7位、ここから毎周順位を上げ30周目には3位までポジションをアップした。35周目に暫定2位の43号車 ARTA Garaiyaがピットインし2位、40周目に暫定1位の87号車 リール ランボルギーニ RG-3がピットインしついにトップまで浮上した。

5号車を抜き5位へ4位を走る62号車に迫る2号車開幕戦優勝の33号車を引き離すラップタイムで走行を続けた

 ラップタイムはトップを走る11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458を上回ることもあり、ピットアウト後に46秒あったトップとの差は時に40秒差、11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458がピットインする直前には42秒と、その差を縮めながらラップを刻んだ。34周目にはこの日のベストラップとなる1分34秒849をたたき出した。

 加藤選手は見かけ上のトップのまま44周目にピットイン。チームはやや奇策となるタイヤ無交換作戦を行い、交代した高橋選手は4位でコースに復帰した。この時点でトップは66号車 triple a Vantage GT2、2位は11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458、3位は87号車 リール ランボルギーニ RG-3だが、気になるのは前を走るマシンではなく、後方から追い上げてくるマシンだ。

 高橋選手のラップタイムは1分38秒前後で、練習走行、予選で出した36秒前後のタイムより2秒ほど遅い。やはりタイヤ無交換の影響は大きい。残り15周ほどとなる48周目、2秒後方に4号車 初音ミク グッドスマイル BMW、その2秒後方に27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ、さらに4秒後方に74号車 COROLLA Axio apr GTがハイペースで追い上げてくる。

 高橋選手は企業オーナー兼ドライバー、加えてタイヤ無交換。後方から迫る強者に対抗する術はない。51周目には4号車 初音ミク グッドスマイル BMWにバックストレートで抜かれ5位、続くダブルヘアピンの一つ目で27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリにも抜かれ6位に後退した。53周目には74号車 COROLLA Axio apr GTにも抜かれ7位、ゴール直前に26号車 Verity TAISAN Porscheにもパスされ8位でチェッカーを受けた。

 最後に抜かれた26号車 Verity TAISAN Porscheがゴール後もペースを落とさず他車と接触、タイム加算のペナルティがあり7位に繰り上がり、4ポイントを獲得した。後半はやや失速したものの、加藤選手のラップタイムは上位陣を凌ぐものがあり、ドアが開くトラブルが発生しなければ、さらに上位でゴールできただけに少々残念な結果となった。しかし最後尾から追い上げてポイントを獲得できたことは、シリーズチャンピオン争いでは大いに評価できる結果となった。

ストレートで後方に迫るマシンを確認する高橋選手ゴール間近、26号車が背後に迫る
26号車に抜かれ8位へ後退8位でチェッカーを受けるが、繰り上げで7位となった

 次戦は6月18日、19日にセパンで第3戦が行われる。セパンは過去に優勝するなど得意とするサーキット。灼熱の地で一気にポイントを獲得しシリーズチャンピオン争いに加わりたい1戦だ。

エヴァンゲリオンレーシング フォトギャラリー
 以下に、エヴァンゲリオンレーシング関連の写真をフォトギャラリー形式で掲載する。画像をクリックすると、フルHD解像度(1920×1080ピクセル)などで開くので、その迫力の写真を楽しんでほしい。また、拡大写真については、Tv(シャッター速度)、Av(絞り数値)などのEXIF情報を一部残してある。撮影時の参考にしていただければ幸いだ。


(奥川浩彦)
2011年 5月 31日