トヨタ、2012年3月期は前期比1281億円の営業利益減との見通し
東日本大震災による影響は今期45万台

2012年3月期の見通しを発表するトヨタ自動車 小澤哲取締役副社長

2011年6月10日発表



 トヨタ自動車は6月10日、2012年3月期(2011年4月~2012年3月)の業績見通し説明会を開催した。この業績見通し説明会は、5月11日の2010年度(2010年4月~2011年3月)連結決算発表時に、東日本大震災の影響による生産、販売計画の精査に時間を要するため、後日発表するとしていたもの。小澤哲取締役副社長、早川茂常務役員が出席して行われた。

 小澤副社長は、「震災の影響についてある程度の見通しがついた」と、2012年3月期の見通しについて語り始めた。

 発表によると、トヨタ・レクサスブランドの生産台数は前期に比べ4万8000台増の739万台、販売台数は、26万台減の730万台になる。生産台数の増加は、震災による生産遅れを取り戻すための増産計画を組んでいるため、販売台数が低下しているのは在庫のパイプラインへの補充台数が含まれるためと言う。

 グループ会社であるダイハツ工業、日野自動車工業を含んだ連結販売台数では、6万8000台減の724万台。連結決算では、売上高は前期比3936億円減の18兆6000億円、営業利益は1682億円減の3000億円、当期純利益は1281億円減の2800億円になる。

 前半期、後半期別に営業利益を見た場合、前半期は-1200億円、後半期は4200億円となり、通期で3000億円の黒字という数字になる。現在も車両の供給に遅れが出ており、今後さらなる増産に努めるとともに、収益構造基盤の改善に努めていくとした。

トヨタ、レクサスブランドの売上げ台数見通しダイハツ、日野を含む連結販売台数2012年3月期の業績見通し
業績見通しの増減要因前半期、後半期別の営業利益見通し設備投資や研究開発費の見通し

東日本大震災の影響は今期45万台
 東日本大震災の影響については、「前期(2011年3月期)に22万台の影響があった。2011年4月~6月に80万台の影響を見込んでいるが、7月~9月はプラスマイナスゼロ、下半期は増産などにより35万台の挽回をすることで、今期(2012年3月期)は45万台の影響」(小澤副社長)と言う。すべてのラインで震災の影響が完全になくなるのは、従来どおりの11月とし、年度後半での挽回を目指していく。また、この45万台という数字は、金額換算すると3600億円ほどの影響となる。

 トヨタはこの業績見通しを、前期に比べドルでは4円円高の82円、ユーロでは2円円安の115円で算出している。現時点(6月10日)での対ドルレートは約80円となっており、想定より円が高騰している。

現在の為替水準は、「日本でのもの作りして、海外で販売する限界を超えている」と語る小澤副社長

 このような状況について小澤副社長は、「先日(6月8日)、日本自動車工業会 志賀俊之会長、全日本自動車産業労働組合総連合会 西原浩一郎会長の連名で厳しいメッセージが出ている」とし、「1日にも早い為替の修正を政府に対してお願いしたい」とコメント。「80円は、日本でもの作りをして、海外で販売する限界を超えている。社長は、つねづね『日本のもの作りにこだわりたい』と言っているが、先日『トヨタのもの作りは日本だけのものではないとある人から言われた。そういうふうに言われるとなかなか返事がしづらくなってくる』と言う話をした」と為替環境による悩みを紹介。その上で、「だからどうすると言うわけではないが、世界のマーケットにおいてフェアに戦えるように環境整備をお願いしたい」と一刻も早い円高是正について、強く語った。

 トヨタの経営において、1ドル80円台における1円の円高をリカバーするのに必要になる値上げ率は1.25%。82円から80円へと円高になることにより、2.5%の価格アップが本来必要になるが、グローバル環境ではそのような状況にはないとし、「東北地方の復興のために、セントラル自動車宮城工場、関東自動車岩手工場の人を増やしたいと思っているが、為替の影響を受け一番台数がピンチになっているのが、この工場で生産している北米市場向けの小型車」と語った。

 また、東京電力、東北電力に加え、10日に関西電力が15%の節電を呼びかけているがとの質問に対しては、「自工会での6重苦(円高、法人税の引下げ、CO2削減目標の見直し、労働情勢の問題、FTA/EPA問題、電力問題)という言葉があった。トヨタは(基幹生産工場が中部地方にあるため)中部電力とも連携して最大限の節電努力をしていく」と言い、この6重苦の解消、とくに電力については「ぜひにも、中長期的に、安定した安全な電力を供給していただきたい。電力供給がグローバル競争をする上で、ハンディキャップにならないことを望む」とした。

 前期より売上げが減少する見通しとなったことで、「自動車業界での売上げ世界一の座から滑り落ちるかもしれないことについては?」という質問に対して、「本来は社長が答えること」(小澤副社長)と前置きした上で、「トヨタのビジョンでは、世界一であることの重要性はまったくない。よいクルマを作り、お客様に喜んでいただく。そのことがよい街、よい社会作りに貢献する。その結果利益が上がり、その利益をよいクルマ作りに投資する。その循環が持続的成長につながる。このようなビジョンにもとづく限り、世界一は重要ではない」と答えた。

(編集部:谷川 潔)
2011年 6月 10日