アウディ、最も速い「R8 GT」を発売
世界限定333台、日本導入は5台のみ

Audi「R8 GT」と大喜多社長

2011年7月24日発表
2740万円



 アウディ ジャパンは7月24日、Audi「R8」の限定生産バージョン「R8 GT」を発売し、富士スピードウェイで発表会を開催した。R8 GTの価格は2740万円で、世界限定333台。日本に導入されるのは5台のみで、すでにほぼ予約で埋まっていると言う。

日本導入は5台のみのR8 GT

アウディ ジャパン代表取締役社長の大喜多寛氏

 発表会でアウディ ジャパン代表取締役社長の大喜多寛氏は、「昨年社長に就任してから、どうしてもやりたかったことが二つあった」と述べ、1つがモータースポーツ活動であり、もう1つがサッカーのサポートだとした。アウディは「スポーティ」「洗練性」「先進性」をブランドコンセプトにしており、スポーツへのサポートも積極的に行っているとのこと。ヨーロッパではアウディカップを開催するなどサッカーを強くサポートしており、アウディ ジャパンでもなでしこジャパンを含めたサッカーの日本代表のサポートをおこなっている。

スポーティ、洗練性、先進性の3つがアウディのブランドコンセプトヨーロッパではアウディカップを開催
なでしこジャパンを含め、アウディはサッカー日本代表をサポートしている

 モータースポーツのサポートも同じ意図だ。アウディでは「レースは技術の実験室」と考えており、1930年代からグランプリレースに参加。1980年代にはクワトロでラリーシーンを席巻し、最近ではル・マンに直噴やディーゼルエンジンで参戦、すでに10回優勝している。「アウディはレーシング活動で技術を高め、それを市販車にフィードバックしてきた」と大喜多氏は言う。

アウディの創業者 アウグスト ホルヒ氏は最高の素材、最高の技術で最高のクルマを作らねばならないと言い、レースは技術の実験室だとして、1930年代からレースに参加してきた

 R8は、アウディのそうしたコンセプトを具現化したクルマだと言う。そしてさらにスポーツ性を高めた2つの形が生まれたと言い、1つはすでに日本でもスーパー耐久に参戦している「R8 LMS」。これは、レース用に開発したクルマで、「このクルマをベースに世界中でレースに参加してもらい、アウディの技術力やモータースポーツの愉しさを広めていきたい」とした。そしてもう一つが、ロードゴーイングバージョンとしてR8の頂点に立つR8 GTだ。

アウディの上半期の世界販売台数は昨年を18%上回る65万3000台国内でも上半期で1万台を超え、過去最高の記録震災による生産の遅れにより国産メーカーが大幅減なのに比べ、アウディはプレミアム輸入車の中でも断トツの成長率
2003年にコンセプトモデルが登場し、2007年に発売されたR8年間およそ5000台生産され、日本では毎年60~70台程度が販売されているR8をさらに進化させたR8 GTとR8 LMS

 「R8 GTは、レースで培った軽量化や効率性を全部押し込んだクルマで、ライトウェイトバージョンと呼んでいる。アウディはこれからの大きな技術の柱としてウルトラライトウェイトコンセプトというものを挙げている。とにかく快適性、安全性を保ちながらも、徹底的に軽量化の技術を進め、燃費性能の高い環境にやさしいクルマを作っていく」と言い、その一番最初のクルマがこのR8 GTだとした。

 具体的には、カーボンによって軽量化した前後バンパー(-5.2kg)やリアハッチ(-15.6kg)の他、インテリアではシート(-31.5kg)、カーペット(-7.9kg)、バッテリー(-9.4kg)など、ベースとなる「R8 5.2 FSI quattro」より計110kgの軽量化を実現している。

カーボンで軽量化したフロントバンパーサイドにカナードが付くなどR8 GTならではの意匠だスモールライト点灯状態
リアバンパーもカーボンにディフューザーがより大型化されているマフラーエンドも大径になっている
テールランプリアウィンドーはアクリル化リアゲートもカーボンになる
カーボン製のリアウィングドアミラーもカーボン。フロントフェンダーにGTのエンブレムが付くシートは電動レザーシートからバケットシートへ変更。これも軽量化の一環
シリンダーヘッドカバーが赤く塗られたエンジンは、最高出力530PS、最大トルクは6500rpmで540Nmを発生

 また、シリンダーヘッドを赤く塗られたエンジンは、ベースモデルと同じV型10気筒5.2リッターながら、出力で35PS、トルクで10Nmアップ。パワーウェイトレシオは2.72kg/PSで、0-100m加速は3.6秒とアウディの市販モデル最速だ。

 トランスミッションはデュアルクラッチATの6速Rトロニックを採用。パドルシフトも用意し、「スポーツ」「ノーマル」のATモードの他、マニュアルモードも選ぶことができる。また、停止状態からの急発進時にホイールスピンを防ぐローンチコントロール プログラムも搭載する。

 4WDシステムは通常時は前15%、後85%のパワー配分とされ、必要に応じて「ビスカスカップリング式センターディファレンシャル」が1000分の1秒単位で作動、最大30%のパワーをフロントに配分する。また、リアアクスルに装備された機械式ロッキングディファレンシャルは、加速時に最大25%、オーバーラン時には最大40%のロックアップを行い、トラクション性能を向上させると言う。

 フロントの6ピストンアルミニウム製ブレーキキャリパーは、レッドのアルマイト加工を施されたR8 GTの専用品。さらにオプションとして、ベンチレーション機能を備えたカーボンファイバーセラミックディスクを設定。スチール製のディスクと比較して9kg軽量化すると言う。また、ESP(エレクトロ スタビリティー プログラム)にもR8 GT専用チューンが施され、コーナー脱出時のオーバーステアを許容するスポーツモードもボタンひとつで選択できる。さらに、サーキット走行時などのために、完全にESPをキャンセルすることも可能となっている。

フロント(写真左)とリア(写真右)ブレーキ。赤いキャリパーはR8 GTの専用装備

 ボディーカラーは、R8 GT専用色となる「サモアオレンジ」のほか、「アイスシルバー」「ファントムブラック」の3色を設定。また無償でオプションの「Audi exclusive」も選択できる。インテリアはシートやヘッドライニング、ステアリング、ハンドブレーキレバーにアルカンターラを使用。オートエアコン、パワーウィンドー、カーナビやオーディオも標準装備する。

インパネメーター点灯状態
スポーツモデルだが、カーナビやエアコンなど快適装備は標準装着マニュアル操作も可能な6速Rトロニック。シフトレバーにはシリアルナンバーが刻まれるカーペットもR8 GT専用だ

 大喜多社長は「価格は2742万円と少し高いと思われるかも知れないが、技術の粋とレーシングドライバーと同じ感覚が味わえるクルマとして、ぜひ日本のドライバーにも楽しんでもらいたい」とした。

 なお、発表会会場となった富士スピードウェイでは、当日スーパー耐久第2戦が行われており、R8 LMSで参戦する「Hitotsuyama Racing」は開幕戦に続き、総合優勝を挙げていた。

スーパー耐久でST-Xクラスとして参戦するR8 LMS
スーパー耐久にR8 LMSで参戦するHitotsuyama Racingと運営するノバエンジニアリングの森脇氏(写真左)R8 LMSはレギュレーションで後輪駆動になるアウディではFIA GT3カテゴリーのR8 LMSのほか、GT4カテゴリーの「TT RS」も用意する(国内未導入)

(瀬戸 学)
2011年 7月 25日