トヨタ、2011年度通期の営業利益見通しを4500億円に上方修正
2011年度の第1四半期は1080億円の赤字

2011年度第1四半期(2011年4月~6月)の連結決算を発表するトヨタ取締役専務役員の伊地知隆彦氏

2011年8月2日発表



連結決算の要約

 トヨタ自動車は8月2日、2011年度第1四半期(2011年4月~6月)連結決算を発表した。

 連結売上高は前年同期比29.4%減の3兆4410億円、営業損失は3196億円減のマイナス1080億円の赤字、税金等調整前当期純損失は3435億円減のマイナス805億円の赤字、当期純利益は99.4%減の11億円となった。

 トヨタ取締役専務役員の伊地知隆彦氏は、「第1四半期は震災による影響によって営業損失となったが、関係自治体、仕入先の尽力により、復旧は想定を遙かに超えるスピードで進んだ。業績への影響は最小限に留めることができた。復旧が早まることによって、挽回の時期の前倒しができるようになった」として、2011年度の通期見通しの上方修正を発表した。

 通期の連結売上高予想は、6月公表値に比べて4000億円増の19兆円、営業利益は1500億円増の4500億円、税金等調整前当期純利益は1800億円増の5000億円、当期純利益は1100億円増の3900億円とした。

 営業利益の1500億円の増加のうち、販売台数増加や価格改定といった営業努力によって2000億円、原価改善努力で200億円のプラスを見込む一方、円高の進行による為替の影響で600億円のマイナス、能力増強に伴う費用の増加などの諸経費増で100億円のマイナスを見込む。

 伊地知氏は「グローバルに収益構造の改革を強力に推し進め、生産、販売台数の上積みの可能性を精査し、前期実績を少しでも上回るように収益改善を進めたい。前期の営業利益を少しでも上回るように取り組んでいきたい」などと述べた。

 トヨタ・レクサスの2011年度の通期生産台数は、6月公表値に比べて33万台増の772万台、通期販売台数は15万台増の745万台とした。

2011年通期の連結売上高予想2011年通期の見通しの増減要因トヨタ・レクサスの2011年度の通期生産台数および通期販売台数

 一方、2011年度第1四半期の地域別業績は、日本が前年同期比36.4%減の1兆7845億円、営業損失は1791億円減の2066億円の赤字。北米が前年比42.5%減の6301億円、営業利益は808億円減の289億円。欧州が前年並の4599億円、営業損失は7億円減の75億円の赤字。また、アジアは前年同期比16.2%減の1349億円、営業利益は301億円減の601億円。その他地域(中南米、オセアニア、アジア)は前年同期比18.7%減の849億円、営業利益は200億円減の210億円となった。

 「日本において東日本大震災および円高の影響によって大幅な減益になったのをはじめ、すべての地域で減益となった。北米では、販促費用の低減などの効果があったものの、前年の金融事業における収益が高く、その反動もあった。また、アジア地域では減益となったものの、タイ、インドネシアでの販売増が貢献した」と伊地知氏は言う。

 セグメント別では、自動車事業が前年同期比31.5%減の3兆608億円、営業損失は2992億円減の2025億円の赤字となった。金融事業の売上高は、前年同期比7.1%減の2858億円、営業利益は205億円減の946億円。その他事業の売上高は、前年同期比10.5%減の1905億円、営業損失は60億円減の20億円減の赤字となった。

 連結車両販売台数は、59万9000台減の122万1000台。国内が292万台(前年同期実績は500万台)。そのうちダイハツが10万7000台(同13万7000台)、日野が5000台(同6000台)。また海外が92万9000台(同132万台)。そのうちダイハツが4万台(同4万4000台)、日野が1万6000台(同1万9000台)となった。

 連結車両生産台数は、60万4000台減の118万9000台。国内が55万6000台(前年同期実績は97万台)。そのうちダイハツが12万2000台(同16万5000台)、日野が2万3000台(同2万4000台)。海外が63万3000台(同82万3000台)となり、そのうちダイハツが4万2000台(同4万台)、日野が1万9000台(同2万台)となった。

所在地別営業利益連結車両販売台数
「80円を超える円高は厳しく、限界を越えている」と語る伊地知氏

 一方、伊地知氏は質疑応答のなかで、「9月にはクリティカル(危機的)な部品についてはほぼなくなる。これまでは10月以降が挽回のフェーズとしていたが、これが1カ月前倒しになるだろう。6月時点では、震災の影響によって第1四半期は80万台の減産としていたが、これが76万台となった。また10月以降には、35万台の挽回を図るとしていたが、ここでは60万台挽回する。通期での震災影響は45万台としていたが、15万台程度に留まる」と、震災からの急速な回復ぶりを示した。また、「組合の協力を得て、9月には5直(2.5日分)の振り替え出勤を行うほか、10月~12月では10直(5日分)、2012年1~3月には5直の振り替え出勤を行い、残業も精一杯やることで挽回計画に挑む」とした。

 だが、円高の影響については、「トヨタは、長年に渡る円高との戦いの歴史でもあった。しかし、この80円を超える円高は厳しく、限界を越えている。昨年4月は、92~93円だったことを考えると、1年間で16~17円も高くなっている。北米向けの1台あたりの平均仕切価格は2万ドル。15円あがると30万円の粗利が飛ぶことになる。もっと広く、原価低減を模索していく時期にある。市場と相談しながら値上げをするといったことについても、韓国の自動車メーカーの動きをみるとそれにも踏み切れない。韓国の自動車メーカーの労務費と比べると、ドルベースでは日本が2倍となっている。単にコストだけの競争だけでは負けが見えており、日本でのモノづくりの限界を越えている。価格を改訂したり、モデルミックスを変えたり、仕向け先を変えるといったことで売り上げをあげること、原価を下げて、粗利をあげるしかなく奇策はない。また、品質、コスト、納期、技術力があれば、どこからでも部品を購入するといったことにも踏み出すことが必要である。韓国自動車メーカーと戦うには圧倒的な技術力を持つ必要がある。そのためには日本の生産技術と、車両の開発技術、サプライヤーの生産基盤は、まだ1つ頭が抜けていると考えている。その点でも国内での300万台の国内体制は必要。国内のモノづくりを守りながら、円高に対応していく必要がある」などとした。

 さらに、「来年3月末には適正な在庫に持っていきたい。できるだけ早く、お客様にお待ちいただくことがないようにしたい。北米では供給不足により、10%のシェアとなっているが、9月以降には供給が徐々に回復しはじめることで、2012年3月には震災前の14.1%に近いシェアを獲得できる」とした。

 北米市場における具体的な戦略として、出荷を停止しているフリートの出荷再開、カムリを中心とした新型車の投入、プリウスV(日本名:プリウスα)の投入、iQやヤリス(日本名:ヴィッツ)の新型車投入のほか、インセンティブを活用したシェア獲得にも乗り出すと語った。

(大河原克行)
2011年 8月 2日