がっつり走れる「体育会系ドライビングスクール」にようこそ プロスペック、サマードライビングスクールを開催 |
弊誌でもおなじみのモータージャーナリスト・日下部保雄氏率いるプロスペックが8月20日、富士スピードウェイでドライビングレッスン「2011 YOKOHAMA & PROSPEC Summer Driving School」を開催した。
プロスペックのドライビングスクールと言えば冬の女神湖で行われる氷上レッスンが有名で、リピーターも多い。その参加者から、より基本的なレッスンを受けたいという要望を受け、横浜ゴムの協賛を得て、夏の初級~中級向けレッスンの開催に至ったと言う。料金1万9800円の自車持ち込みレッスンだが、募集枠を超える24台が参加した。
特設コース図 |
■低速で楽しめるレッスン
会場は富士スピードウェイのP2駐車場特設コース。P2は3万6970m2の広大な駐車場で、ここに各種4本のコースが設定された。
第1レーンは、駐車場の外周いっぱいを使う最も長く速度の出るコースで、スラロームと高速コーナーを組み合わせたもの。初級~中級向けというレッスンのコンセプトに合わせ、レーンには水が撒かれ、低い速度で高速走行の挙動を体験できるように設定されている。もっとも当日は終始小雨が降り、一時激しく降るという理想的なコンディションで、散水車の出番は少なかった。
第2レーンはその内側に設けられたツイスティーなコース。大小のパイロンスラロームのほかに、車幅感覚を養うための狭い直角コーナーが設けられている。直角コーナーにはゴムひもが張られ、車体がコースをはみ出してゴムひもに触れたら分かるようになっている。
P2駐車場に特設されたコース | 第1レーン。午前中は雨が少なく、水を撒いてコースを作った | 午後は適度なウェットに |
第2レーンのパイロンスラローム | 第2レーンの直角コーナー。縦に張られたゴム紐で車幅間隔を養う |
第1レーンと第2レーンの走行を車内から撮影 |
第3レーンは低μ路。ゴムシートを敷き、その上に洗剤入りの水を撒いて、雪上程度のμに設定したもの。コース上にクランクが設けられており、低い速度でもタイヤのグリップ能力を超えて滑り出す感覚が味わえるようになっている。
第4レーンはバックスラローム。バックでの車庫出し、バックでの車庫入れの間に、4本のスラロームをバックでクリアしなければならない。内輪差や車幅感覚が要求される、地味ながらなかなかやりがいのあるコースだ。
24台の車両は4台ずつ6組に分かれ、1組に1人、計6人のインストラクターがつく。インストラクターは元アジア-パシフィックラリー選手権チャンピオンの片岡良宏氏、スーパー耐久に参戦した松井猛敏氏と實方一世氏、SUPER GTに参戦した岸剛之氏、モータージャーナリストの竹岡圭氏と、テストドライバーの三浦健史氏。さらに日下部氏も各車に順番に同乗し、アドバイスする。
第3レーンはシートの上に洗剤入りの水を撒いた低μ路。写真中央のロードスターは後輪がスリップしているのが分かる | ||
第4レーンのバックスラローム。タイムを計り、最後に表彰式が行われた | 第4レーンには車幅間隔を養うため、縁石を模した黄色のゴムを地面に置いて、一旦駐車するセクションもある |
■体で覚える方が早い
10時に集合した参加者は、簡単なコースのブリーフィングを受け、思い思いに走行を始める。参加者の走りたいコースを走り、その中でインストラクターから指導を受ける。
インストラクターからの指導は、外部から参加車に1台ずつ渡された無線機を通じて受けることもできるし、同乗して操作をチェックしてもらったり、インストラクターにお手本を見せてもらったりすることもできる。
ペーパードライバーの年配の女性から、プロスペックのドライビングスクールには10年以上前から参加し続け、サーキット走行もこなすという“セミ上級者”まで、参加者のプロフィールは様々。初級~中級向けということで車種は問われない。そのほとんどをスポーツカーが占めたものの、フォルクスワーゲン「ゴルフ」、アウディ「A4」といったファミリーカー、なかにはスバル「サンバー」で参加した人もいた。
参加車両の一部。スポーツタイプが多いが、国産、輸入車、ファミリーカー、コンパクトカー、軽自動車など、バラエティに富んでいた | インストラクターは日下部氏を含めて7名 | ブリーフィングする日下部氏 |
ドライビングポジションを説明する竹岡インストラクター | インストラクターの先導で隊列を組んでコースを走って確認する |
あとはフリー走行。好きなレーンを好きなだけ走り、その間にインストラクターの指導を受ける |
自車のサスペンションをインストラクターにチェックしてもらう参加者 | |
参加者全員に渡されるドライビング診断カルテ。ドライビングポジションからハンドル、アクセル、ブレーキ操作など多岐に渡る項目に、インストラクターからのコメントが付く。写真右はカルテに記入する實方インストラクター |
昼食中もインストラクターに質問できる | 全員で記念撮影 |
昼食前にはレーシングコースを3周する体験走行ができた |
バックスラロームの表彰式 | 最後に片岡インストラクターがバックスラロームを披露。タイムは全参加者より速かったが、最後の車庫入れでパイロンを倒して失格に |
午前中に1時間走行してから、レーシングコースを3周する体験走行と昼食を挟んで、午後は13時から17時までフリー走行。計5時間も自由に走り(もちろん疲れたら休んでいてもよい)、インストラクションを受けることができるのだ。
ざっと紹介したこの流れを御覧いただいて分かるとおり、このスクールには座学というものがない。「以前はやっていたが、どんどん走って体で覚えるほうが早いので、ひたすら走るカリキュラムにした。うちは体育会系スクール」と日下部氏は言う。
参加者はこの、“走って覚える”のコンセプトに好意的だ。プロスペックのドライビングスクールには何度も来ているという参加者の1人は、「駐車場でのパイロンコースなのであまり期待していなかったが、意外に広く、楽しめた」と言う。他のドライビングスクールではあまりやらない高速セクションがあり、「何回かスピンしたことで自分のクルマの挙動が分かった」という参加者もいた。また日頃あまり運転しないという女性も「視線の送り方など指導してもらい、午後には上達したのが分かってうれしかった」と喜んでいた。
ドライビングスクールとしては比較的料金が安く、参加しやすいのも魅力だろう。そのうえ、多くのインストラクターの指導を直接受けることができる。モータースポーツやクルマの開発の経験が豊富なインストラクターに、サスペンションのセッティングを見てもらっていた参加者もいた。
(編集部:田中真一郎)
2011年 8月 23日